クトゥルフの説得にクティーラが加わったところで、謁見の間から凄まじい大きさの声が聞こえて来る
「さあ戦士達よっ!!!今こそイハ=ントレイに住んでいた者達の無念を晴らす為にっ!!!今も戦争を続ける愚か者共のその身にっ!!!その魂にっ!!!偉大なる我らの力をっ!!!海の本当の恐ろしさをっ!!!刻み込む時が来たのだっ!!!!!」
その内容から聞こえて来た声はクトゥルフのもので、どうやら演説は終わりを迎えようとしている様であった
「おおっと、どうやらここでお喋りしている間に、演説が終わりそうになっているな。これは流石にもう時間がないし、行くとするかっ!」
謁見の間から聞こえた声を耳にしたクタニドが、そう言いながら翔達の顔を見る。それに対して翔達が頷き返したところで、クタニドは例によって例の如く、謁見の間の扉を蹴り飛ばして強引に扉を開き、吹っ飛んだ扉の下敷きになったディープ・ワン達には目もくれず、腕組みをしながらズカズカと謁見の間の中へと入って行くのであった
「何者d……、お前は……、クタニドか……っ!?」
「久しぶりだなクトゥルフ、前に会ったのは確か……、紛い物の頭目の情報をイースの連中が持ち帰った時だったか?」
突然の乱入者に対してクトゥルフが怒声をぶつけようとするのだが、乱入者の姿を見るなりクトゥルフは忌々し気な表情を浮かべながら声を上げる。それに対してクタニドは、飄々とした態度を取りながら、この様に答えるのだった
因みにそんなクタニドの背後では、扉の下敷きとなったディープ・ワン達を助ける為に、翔、鳳翔、ガタノトーア、クティーラが協力して巨大で重厚な扉を何とか退かそうと奮闘していた
「貴様がここに来たと言う事は、私が何をしようとしているのか既に分かっているという事だな……?」
「その通りだ、貴様の企みは私が止めて見せる」
クトゥルフがクタニドにそう尋ねると、クタニドはその表情を引き締めながらそう答え、クタニドの返答を聞いたクトゥルフは、奥歯を噛み締めながら戦闘態勢に入ろうとする……
クトゥルフとクタニドの間の空気が緊迫する中、翔達はと言うと扉を退かす為に翔の艦載機やガタノトーアの眷属であるロイガー族まで使って頑張っていた。その様子を見ていた周りのディープ・ワン達は、1人、また1人と翔達に協力し始め、仕舞いにはその様子を見かねたダゴンとハイドラ、オトゥームまでもが翔達に協力し出すのであった
「まあ待て、先ずは話し合う事から始めてみないか?」
「……何?」
「私はお前が何をしようとしているかについては知っている、だがお前がどんな気持ちでそう言う手段に出ようとしているのかについては、とんと見当も付かんからな。そういう訳でだ、先ずはお前が何故戦争を仕掛けようとしているのかについて、お前の口から嘘偽りなく私に教えて欲しいんだ。まあここでは部下がいる手前、流石に話し難いと思うからな、ここは場所を移動してサシで話し合おうではないか」
戦闘態勢に入ったクトゥルフに向かってクタニドはこの様な提案をし、直後に翔達の方へとチラリと視線を向ける。クタニドの提案を聞いたクトゥルフは、しばらくの間クタニドの様子を窺った後、戦闘態勢を解除してクタニドに向かってこう言い放つ
「上に行くぞ、そこなら誰にも聞かれる心配はないからな……」
「了解、素直な奴は好きだぞ。っとそっちのお前達、そこにいる連中は私の客人だから手を出すなよ?もし翔達の身に何かあった時は、お前達全員の首を捻じ切ってやるからな?肝に銘じておけ」
クトゥルフの提案を聞いたクタニドは、その提案を受けクトゥルフと共に謁見の間の上にあるクトゥルフの私室に向かうのだが、その途中に後ろを振り返ってこの様な事を言い残し、再びクトゥルフの後を追って移動するのであった。そんなクタニドの発言に、クトゥルフの眷属達はおろか、翔達も只々戦慄するのであった……
クトゥルフ達が謁見の間から姿を消した後、謁見の間は少しばかり騒がしくなっていた
「お前達!先程扉の下敷きになった者達を、急いで医務室に搬送しろっ!!」
そう言ってオトゥームが自身の手下に指示を出して、扉の下敷きになった眷属達を次々と謁見の間から運び出し
「あんたぁっ!!この邪魔臭い扉を早くどっか持って行きなっ!!!」
「わぁってるってっ!!っとお前らっ!!このクソ重い扉を付け直すから手伝いやがれっ!!!」
続いてハイドラが自分の旦那であるダゴンに、クタニドが蹴破った扉をどうにかする様に指示すると、ダゴンは部下のディープ・ワンや淵みに棲むものを連れて扉の修理を開始する
「皆の者、本当に済まぬ……。我がクタニド殿を止めていればこの様な事にはなっていなかったのだが……」
その様子を見ていたガタノトーアが、忙しなく動くクトゥルフの眷属達に向かって申し訳なさそうに謝罪すると……
「いえ、私は騎士として当然の事をやっているだけですので」
「これについて事故みたいなもんだから、若が気にする事じゃないさね」
「つか、若のその恰好は何だ?それと何でお嬢までここにいるんだ?俺はそっちの方が気になるんだが……?」
クトゥルフの眷属達は、思い思いに言葉を口にするのであった
「私が此処にいる理由は皆が心配だったからだよっ!!正直なところ黙って戻って来たのは、私達の事を心配してくれているお父様には悪い事したな~って思ったけど、どうやら戻って来て正解だったかもっ!!」
「その口振り……、どうやらクティーラ様はお父上が何をしようとしているのか知った様ですね……」
クティーラの言葉を聞いたオトゥームが、目を伏せながら呟く様にそう言うと、クティーラは1度だけ力強く頷いた後、この様な事を口にする
「お父様がやろうとしている事は、クタニドさんとガタノトーアお兄様から聞いたよっ!!もし戦争を始めちゃったら絶対戦う相手が増えて、皆が大怪我するのが目に見えてるもんっ!!私、皆が無駄に傷つく姿なんて見たくないもんっ!!だから私、お父様を止めたいのっ!!!」
「我もクティーラと全く以て同意見だ、父上が人類や深海棲艦に対して怒りを覚えるのは解る、だがだからと言って不用意に戦争を開始しようものなら、間違いなくハスター殿やゴル=ゴロス殿、果てはニャルラトホテプが介入し、地球規模の戦争では留まらず、最悪宇宙規模の戦争になりかねん……。そうなると何処の陣営にも多大な死傷者が出るのは明白だ、我は何としてでもそれを阻止したいと考えておるのだ……」
クティーラの言葉を聞いたガタノトーアが、クティーラに続く様にして発言し、それを聞いたオトゥームは静かに頷き、ダゴンとハイドラは2柱の言葉が余程嬉しかったのか、2柱揃って感涙しその身を震わせていた
「クティーラ様が此処にいる理由、そしてガタノトーア様がどの様なお考えであるかについてはよく分かりました……。それでガタノトーア様、そのお姿について教えて頂きたいのですが……?」
それからしばらくして、オトゥームが改めてガタノトーアの姿に関して尋ねると……
「この姿か、これはクタニド殿が連れて来た助っ人達に対しての配慮の一環だと思ってくれ」
ガタノトーアはそう言いながら、件の助っ人の1人である翔の方へと視線を向ける。それに釣られる様にして、眷属達が翔の方へ視線を向けると……
「話し合いの場に相応しい料理……、それに僕の全力をかけるとするなら……、そうなると……」
そこには何かをブツブツと呟きながら、艤装を展開して料理の準備を始める翔の姿が映る。こうして、翔の戦いの火蓋は切られるのであった
「う~~~ん!これはこれは香ばしい混沌の香り☆きっと中では頗る楽しそうな事が起こってるよ・か・ん♪さてさて、どんな事件が僕を楽しませてくれるのかな~?」
翔が謁見の間で料理の準備を進めている頃、この様な事を口走りながらスキップで城内に侵入しようとしている影が1つあり、その背後には、恐らくその影がここまで来る為に乗って来たのであろうSu-35が、機首から地面に突き刺さっていた
「あ、そうだ、君はもう帰っていいよ。帰りは自力で何とかするからね」
ふと何かを思い出したのか影はピタリと足を止め、地面に突き刺さるロシア戦闘機の方を振り返りながらそう言うと、突如戦闘機はその姿を変え始め、全身に鱗を纏い、馬の様な頭を持った、象ほどの大きさの鳥の様な姿に変身し終えると、蝙蝠の様な翼をはためかせて空へ飛び立ち、その姿はやがて見えなくなってしまうのであった……
「これでよし!さてさてっとぉ、それじゃあ早速パーティー会場を引っ掻き回しに行きますか~☆」
自身が乗って来た巨大な鳥の様な生物、シャンタク鳥の姿が見えなくなったところで、影は前へ向き直るなりそう言って、楽しそうに鼻歌を口ずさみながらスキップで城内に侵入するのであった……
まあ僕の出番はもうちょっと先みたいだけどね♪