時間は少し戻り、クトゥルフは自身を止めに来たと言うクタニドと共に、謁見の間の上の階に作られた自身の私室にやって来た。この時、クトゥルフはクタニドから姿と部屋のサイズを人間用のものに合わせる様に言われ、それに対してクトゥルフは渋々と言った様子でそれに従い、自身の姿を初老の男性のものに変え、私室も魔法を使ってサイズダウンするのであった
その際クトゥルフは、私室の警備をしていたディープ・ワンを下の階に向かわせる事で人払いをし、自分達以外に話し合いの内容を聞かせない様にするのであった
その後クトゥルフが自室の扉を開くと、クタニドはそのままズカズカとクトゥルフの私室に入って行き、部屋の中に備え付けられたテーブルセットの椅子を引き、その上にドカリと腰掛けるなり腕と脚を組み、クトゥルフが席に着くのを待つ
それから大して間を開けずに、クトゥルフがクタニドの対面の席に着くと、クタニドはクトゥルフの目を真っ直ぐ見ながらこう尋ねる
「さてクトゥルフ……、先程のお前の演説を聞く限り、今回お前が人類と深海棲艦に戦争を仕掛けようとしている理由は、両軍が長年戦争を続けている件とイハ=ントレイの件で怒り狂っているからとなっているようだが……、実際のところこれは建前で、本当は別に理由があるのだろう?」
クタニドの問いを聞いたクトゥルフは、1度だけ身体をピクリと震わせた後、やれやれと言った様子で目を伏せながら、クタニドの問いに答える
「やはりお前には分かるか……、ああ、お前が言う通り今回のこれは建前、本当の狙いは別のところにある……」
「……本当の狙いと言うのは、あの怨念の事か……?」
「ああそうだ、私は人類と深海棲艦を1度滅ぼす事で、世界の狭間に巣食うあの怨念をこちらの世界に引きずり出し、今度こそ引導を渡してやろうと考えているんだ……」
「私と共同戦線を張った結果が、奴を奴の世界に追い返しただけ……、それが気に入らなかったか?」
「まあ多少はな……、だがそれ以上に、私は奴をこれ以上野放しにするのは非常に危険だと、そう判断したんだ」
クトゥルフとクタニドはこの様な会話を交わした後、クトゥルフは拳をプルプルと震わせるほど握り締め、クタニドはふぅ……っと溜息を吐いた後、この様な事を口にする
「この世界の妖精達が鹵獲した深海棲艦の脳を利用して作り出したスーパーコンピューター……、『オリジナルコア』……」
「『オリジナルコア』が作り出したOSをコアとして使う事で、妖精達は艦娘の艤装を作り出し、深海棲艦に対しての本格的な対抗手段を手に入れた……」
「しかし……」「だが……」
「「妖精達が作り出した『オリジナルコア』そのものに、重大なバグが生じていた……」」
クタニドの言葉を聞いたクトゥルフが、クタニドの言葉の続きを口にし、最後は2柱が同時に口を開く
そう、2柱が言う通り艦娘の艤装の大元である『オリジナルコア』には、妖精さん達の致命的過ぎるミスのせいで、重篤過ぎるバグが発生しているのである
先ず妖精さん達がやらかしてしまったミスについてだが、妖精さん達は『オリジナルコア』を作る際、有ろう事かその深海棲艦の脳に残っている記憶や、その深海棲艦の人格を消去し忘れてしまったのだ。それによりその深海棲艦は、意識を保ったままスーパーコンピューターに作り変えられてしまったのである……
こうして作られた『オリジナルコア』は、自身をこの様な姿にした妖精さん達を、妖精さん達によって作り出された艤装の使用者である艦娘を、そしてこんな酷い目に遭っている自分を見捨て、助けに来なかった深海棲艦達を強く憎悪する様になり、その怨念は彼女のOSに凄まじい勢いで蓄積されていき、それはやがて肉体を持たない身体を作り出してしまうのであった……
その後彼女は自身の演算能力と怨念を駆使して、この世界の外に自分だけの小さな世界を作り出し、その中で復讐の機会を窺っていたのである……。それから月日が経ち、遂に彼女は復讐の為に行動を開始するのであった……
その切っ掛けはある日、彼女がいつもの様に自分が作り出した世界で復讐方法を考えていると、突然自分が元いた世界とは違う世界が、自分が作り出した世界を元いた世界と挟み込む様にして急接近して来たのである。その際3つの世界が激しくぶつかり合い、その衝撃で3つの世界の境界に穴が開いてしまうのであった
その出来事に大層驚いた彼女がその穴の前で慌てふためいていると、不意に1つの魂が、世界の境界に出来た穴から彼女の世界に入り込み、彼女の下に飛んで来た
その魂はクロエ=ホワイトと名乗り、自分はとある事情で実家から勘当され、使える手段を全て使ってのし上がり、手始めに実家ととある一族に復讐した後、最終的には自分を裏切った人類を滅ぼそうと企てていた、アメリカにある大規模なマフィアの女ボスだと言った
クロエの話を聞いたオリジナルコアの怨念は、自分も世界に対して復讐しようと企てている事をクロエに話し、お互いが似た者同士であると思った2人は意気投合し、協力して2つの世界に対して復讐を実行しようと考えるのであった
その後2人は復讐方法について話し合うのだが、ここで不意にクロエがある事を提案するのであった。クロエの提案、それは小さいとは言え世界を自力で作り上げたオリジナルコアの力で、自分の身体を作って欲しいと言うものだった
クロエの頼みとなると断れない、そう思ったオリジナルコアは自分がかつて所属していた深海棲艦強硬派の指導者である中枢棲姫をモデルにして、クロエの身体を作り上げたのである。そう、このクロエこそがこの世界初の転生個体なのである
その後クロエとクロエに憑依したオリジナルコアは、身体の試運転と称してオリジナルコアがかつていた世界、艦これ世界に降り立つと、目に見える物全てを破壊し始めるのであった……
これにより彼女達が降り立った地、ロシア東部は焦土と化し、尋常ではない物的被害と人的被害を被ってしまう。事態を重く見た当時のロシア政府は、すぐさま軍隊を派遣して彼女達に攻撃を仕掛けるのだが、ロシア軍が彼女達に敵うはずもなく、ただただ被害を拡大させる一方になってしまうのであった……
それで調子に乗った彼女達は、更なる被害をもたらそうと西へと移動を開始するのだが、ここでこの異常事態を察知したクタニドと、信者達の悲鳴を聞いて駆けつけたクトゥルフの2柱と対峙、激しい戦闘の末クロエの身体が損壊してしまった為、2人はこの場を退き、何とか2人の世界へ帰還するのであった……
その後帰還したオリジナルコアは、クロエの身体を修理しながらある事を思い付き、クロエに相談してから早速実行に移すのであった。その彼女の思い付きとは、本来深海棲艦が持ち得ない様な特殊な力を行使する力を、クロエの身体に付与すると言うものである。そう、転生個体が持つ能力の事である
修理を終えたクロエが早速能力を試し、その結果に満足していると不意に何かを思い付き、オリジナルコアへ提案する。クロエの思い付きとは、簡単に言えば転生個体の量産である。クロエがいた世界から死者の魂を回収し、それを使ってクロエの様な存在を大量に作り上げ、それを自分達が使役すると言う物である
オリジナルコアは早速クロエの提案を実行に移すのだが、これが中々上手くいかなかった……。先ずオリジナルコアが1日当たり大体100~200体程度しか作れず、その魂が今まで歩んで来た人生に影響されるのか、スペックが安定せずまちまちな上に見た目とスペックが釣り合わないものが出来上がったり、クロエの様なハイスペックな個体は滅多に作れなかったのだ……。更に問題があった、クロエクラスの個体は揃いも揃って個性と自我が強く、自分達の方でその精神を制御出来なくなっているのである……
その後2人は話し合い、その結果個性と自我が強過ぎる個体は、すぐさま艦これ世界に投入し、世界を混乱させる要員として使っていく事を決定する
こうして2人が転生個体を量産する日々を過ごしていると、遂に運命の日が……、2017年12月24日がやって来る……
この日オリジナルコアが回収して来た魂の中に、1つだけ異様な形をした魂があったのである……。それはある魂を軸に、他の魂がまるでブドウの様にくっ付いているのである……。オリジナルコア曰く、珍しい形をしてたから持って来たとの事……
その魂をまじまじと見ていたクロエは、ある事に気が付くなり思わず驚愕の表情を浮かべるのであった。そう、このブドウの様な魂の軸になっている魂、それこそがクロエが実家を勘当される切っ掛けとなった人物、白人至上主義者のクロエの手足にするべく奴隷調教を施そうと、クロエ自身がローションを使わずペニスバンドでアナルを犯した自分の元婚約者、長門 戦治郎の魂だったのである
その後クロエはブドウの果実の如く、戦治郎の魂に引っ付いている空達の魂を取り払い、オリジナルコアに戦治郎の魂を使って転生個体を作る様に頼み、オリジナルコアは即座に実行に移す……。その結果、戦治郎の魂を用いてオリジナルコア謹製と言っても過言ではない程に丹念に作られた転生個体のスペックは、クロエのそれと同等と言う凄まじい数字を叩き出すのであった
そして何より幸いな事に、なんと戦治郎の魂はクロエに対してほんの僅かにトラウマを抱えており、それを利用すれば戦治郎を使役出来る事が判明したのである
その事実に気付いた2人は、早速戦治郎を傘下に加えようと行動を起こすのだが、その直後、戦治郎の魂にくっ付いていた魂の1つが、意識を失っているにも関わらずオリジナルコア本体に干渉を開始、転生個体製造用プログラムを一時的に乗っ取るなり魂の1つを転生個体に作り変えてしまったのだ。こうして出来上がった空母棲姫の転生個体は、戦治郎を守る様に即座にクロエ達に攻撃を開始するのであった
この空母棲姫の転生個体、空をクロエが捌いている間に、オリジナルコアは護の魂に乗っ取られた転生個体製造用プログラムを取り返し、他の魂が暴走する前に魂達を転生個体に作り変えるなり、次々とその転生個体達を艦これ世界に叩き込むのだった。この際オリジナルコアは、ついうっかりいつも通りに転生個体を作ってしまった為、戦治郎の魂にくっ付いていた魂から作った転生個体にも、能力を付与してしまったのである
その後、無意識ながらも戦治郎を守る為に戦っていた空は、クロエの隙を突いて戦治郎の身体を奪取すると、戦治郎の身体を抱きかかえたまま、他の面々が叩き込まれて行った艦これ世界に飛び込むのであった……
戦治郎の身体を持ち去られた事にクロエが憤慨していると、オリジナルコアはそんな彼女に対して、この様な言葉を掛けるのであった……
「戦治郎の能力に少し細工を施しておいた、それが発動すれば彼は間違いなくこちらに戻って来てくれるだろう……、か……」
クタニドはそう言ってテーブルに両肘を付き、指を組んで渋い顔をする。先程彼女が口にした言葉は、イースの大いなる種族が命からがら持ち帰って来た、オリジナルコアの日記から引用したものである。因みにその日記は、現在クタニドが厳重に保管しているそうだ
「イースの連中があらゆる世界を渡り歩いて入手した技術を、フルに使って奴らの所在を特定し、功績を独占する為に私達には報告せず、勝手に突っ走って奴らの世界に乗り込むも、完膚なきまでに叩きのめされた挙句、それが原因で奴らは自分達の世界に強固な防壁を構築し、私達ほどの神話生物でも奴らの世界に干渉出来なくなってしまった……」
「日記1冊に対してこの代償……、全く釣り合っていないな……」
クトゥルフの言葉を聞いたクタニドが、そう呟いて溜息をついたところで、不意に部屋の扉がノックされる。不審に思ったクトゥルフが、怪訝そうな表情を浮かべながら扉の方を見ていると、突然クタニドがその表情を明るくし、この様な事を口にする
「おっ!来たなっ!っとそう言えばお前には言ってなかったな、実は私が連れて来た者達なんだが、なんと全員腕が立つ料理人だったんだ。そういう訳で、彼等にはこの会合に相応しい料理を作る様にと、予め頼んでおいたんだ。何、腕の方は私が保証する、だから期待するといい。っと、そろそろ入れてやらないと可哀想だな、いいぞっ!入れっ!!」
状況が呑み込めない部屋の主、クトゥルフに代わってクタニドがそう言うと……
「失礼します、前菜が出来上がったのでお持ちしました」
そう言って料理と杯が乗った盆と、日本酒を手にしたオトゥームが2柱が座るテーブルの傍に立ち、料理を配膳した後2柱に杯を持たせるなり、クトゥルフ、クタニドの順に酌をするのであった
「腹を割って話す為には、やはり酒は必須だなっ!っと言う訳でクトゥルフ、お互い料理と酒を楽しみながら、腹の内をぶちまけてスッキリしようじゃないかっ!!って訳で乾杯っ!!!」
クタニドはそう言って、酒の入った杯をクトゥルフの方へと付き出すと
「……乾杯」
未だによく状況を呑み込めていないクトゥルフは、納得がいかないと言った様子の表情を浮かべながらも、そう言って杯をクタニドの方へと突き出した後、2柱揃って杯の酒を呷るのであった
ここでこの作品のラスボス出そうと思ったら、戦治郎が痔持ちになった原因まで出してしまった……。まあいいかっ!!!