「これでよし……っと……」
翔は予め準備しておいたクーラーボックスに、アールグレイアイスクリームとそれを盛り付けるガラス製の器、そしてアイスに添える苺を入れ終えると、そう呟いてガタノトーア達にカツカレーを振舞った際使用した、テーブルセットの椅子を引っ張り出して来て、それにゆっくりと腰掛けて一息つく。何故クーラーボックスを準備したのかについては、単純にクトゥルフ達の所にアイスを運ぶ際アイスが溶けない様にする為、苺の鮮度を保つ為だったりする
それから翔は辺りをゆっくりと見回し、未だに宴会を続ける眷属達と、アイスに夢中になる奉仕種族達の姿を見て、思わず苦笑する
「この光景を目にしたら、クトゥルフさんはどう思うんだろうな~……。まあ僕としては僕の料理を気に入ってくれたって事だから、嬉しくはあるんだけど……」
自身が目にした光景に対して、翔が思わずそう呟いていると……
「翔っ!翔っ!!遂に完成したぞっ!!我がこの生涯で初めて作った料理がっ!!!」
不意に給糧妖精さんを殻の上に乗せたガタノトーアが、声を弾ませながら1杯の豆腐と長ネギ、そしてワカメが入った味噌汁を乗せた盆を触腕で持ち、翔の下へ駆け寄って来るのであった
「お味噌汁か……、給糧妖精さんのアイディアかな?」
「うむっ!これなら出汁の取り方も、具材の切り方も学べると言う事だったからなっ!!それで、翔に味見をしてもらいたいのだが……、いいだろうか……?」
翔がガタノトーアに向かってそう尋ねると、ガタノトーアはこの様に返しながら不安そうな表情を浮かべ、味噌汁が乗った盆を翔に差し出す。因みにこの1人と1柱、お互いの年齢(ガタノトーアは人間換算)が同じである事と、師弟関係を結んだ事から、堅苦しい話し方は無しで行く事にしたそうだ。尤も、ガタノトーアの話し方はこれがデフォルトである為、直しようが無かったりするのだが……
「それくらいならお安い御用、では……」
翔はそう言って、ガタノトーアが作った味噌汁が入った椀に手を伸ばすのだが、それを翔が掴もうとした瞬間、突如椀が翔の視界から姿を消してしまうのであった。余りにも突然の出来事に翔達が驚いていると、不意に翔の隣から若い男の声が聞こえて来るのであった……
「ん~……、ヴォ"ェ"ッ!!!不っ味っ!!!何これ?こんなの豚の餌未満じゃないか~」
突然聞こえて来た声に反応して翔達がそちらに顔を向けると、そこには先程ガタノトーアが作った味噌汁の椀を手にした青年が立っており……
「確かガタノトーアだったっけ?君一体何考えてるの?こんなので眷属や奉仕種族を支配しようとかしてたの?バッカじゃないの?頭足りてる?」
青年はそう言いながら、味噌汁がまだ残っている椀を床に勢いよく叩きつけた後、床に落ちた椀を踏み砕いてしまう
「貴様っ!!!何てことをするのだっ!!?それは我が一生懸命作った味噌汁なのだぞっ!?!」
青年の行動を見たガタノトーアが、怒り心頭と言った様子で青年に向かって怒声を浴びせると……
「ほ~ん……、で?」
青年はガタノトーアの言葉に対して、有ろう事かガタノトーアを心底馬鹿にする様な返事をしながら、人差し指で自身の鼻をほじり始めるのであった
「貴様ぁっ!!!我の事を馬鹿にしておるのかっ!??」
「うんっ!!!!!」
「よし分かったっ!!!今から貴様のその根性をっ!!!我が叩き直してくれようっ!!!」
ガタノトーアの問いに対して、青年が指に付いた鼻くそを丸めて味噌汁が染み込んだ絨毯に弾き飛ばしながら、大きく頷いて元気一杯に返事をした途端、怒りが限界を突破したガタノトーアがそう叫び、青年に向かって飛び掛かるのであった。しかし……
「ほい♪」
青年はそう言うと、右手に突然『混沌との激突』と言う文字を浮かび上がらせると、それを実体化させてガタノトーアに向かって振り下ろし、ガタノトーアの身体を床に豪快に叩きつけた後、思いっきり蹴り飛ばしてしまうのであった
「
青年の攻撃を受けたガタノトーアが呻き声を上げると、事態を察したダゴンとハイドラ、オトゥームの3柱が杯を投げ捨てて、急いでガタノトーアの下へ駆け寄る
「
「
「
オトゥームがそう言いながら床に倒れ伏せたガタノトーアを抱き起こし、青年の前に立ち塞がるダゴンとハイドラが青年を威圧しながら大声で叫ぶ。だが……
「あらやだ、そんな怖い顔しないでよ~。僕はただ~、僕がやりたい事をやってるだけだ……よっ!!!」
青年はニヤニヤしながらそう言った直後、今度は『うがっ?!!』と言う文字列を実体化させるなりオトゥームの方へ投げつけてオトゥームを部屋の奥の壁に磔にし
「実はこんな事も出来たりしま~す♪」
そう言いながら、今度は『ガタノトーア様っ!?ご無事ですかっ?!』と言う文字列を出現させると、その文字列をバラバラにするなりまるで艦載機の様に飛ばし、ダゴンとハイドラに攻撃を仕掛ける
「何だこりゃぁっ!??」
「一体どうなってんだいっ??!」
青年の謎の攻撃を何とか凌いだ2柱が、思わずそう叫ぶと……
「隙あり~☆」
青年はそう言いながら、『てめぇっ!!!若に何て事しやがんだっ!??』と言う文字列と、『そこのあんたっ!自分が何やってんのか分かってんのかいっ?!?』と言う文字列を繋ぎ合わせたものを蛇腹剣の様に扱って、2柱を拘束してしまうのであった……
「これで戦闘担当は鎮圧完了っと☆しっかしホント手応えなかったね~……、やっぱりあの紛い物や人間に感化されたのが、弱体化の原因かな?かな?……な~んてね♪単純に実力の差って奴だよね~☆あいつらは幾ら集まっても所詮は小神、外なる神の僕にはどう足掻いても勝てないのは道理って奴だよね~♪そこのこっち見てる君達、そうそう、この話読んでる君達ね?君達もそう思わない?」
青年はまるで誰かに話し掛ける様に、虚空を見上げながらこの様な事を口にする
「貴様……、何者だ……?」
その直後、青年の攻撃を受けてボロボロになったガタノトーアが、呻く様に青年に向かってこの様な言葉をぶつけると……
「あ、それ今聞いちゃう?聞いちゃうの?マジで?ホントにぃ?ん~……、どうしよっかな~?正直ルルイエに引き籠ってる事が多くて、外の世界の事を碌に知らない様な箱入りお坊ちゃんに教えてあげる筋合いはないんだけど~……、いいやっ!僕の正体知って絶望する君の顔を見れるかもしれないし、特別に教えてあげちゃう☆いや~、僕ってマジで親切だよね~?きっと読者さん達もそう思ってるはずだよね?ね?」
青年はそう言いながらガタノトーアの下に歩み寄るなり、城全体を揺らす程の力を込めて、倒れ伏せるガタノトーアを踏みつける
「
ムナガラー、イダー=ヤアー、カソグサの3柱に守られたクティーラが、その光景を目にして思わずそう叫ぶと……
「アボーンッ!!!」
直後にガタノトーアを踏みつけている青年が、視線も向けずに火の点いた導火線が生えた『お兄様っ!!?』と言う文字列を、クティーラの方へと投げつける。それに即座に反応したムナガラーが、射線上に立ってクティーラ達を庇い……
「ぐはぁっ!!!」
ムナガラーの身体に接触した刹那、文字列が大爆発しムナガラーの身体を吹き飛ばし、ムナガラーはダゴン達が折角修理した扉を突き破って、部屋の外に叩き出されてしまうのであった……
「ついつい声に反応しちゃったZE☆まあいっかっ!!!そ~れ~よ~り~も~……」
青年はヘラヘラしながらそう言うと、ガタノトーアの身体をグリグリと踏みにじりながら言葉を続ける
「僕が何者かって話だったよね?じゃあ今から教えてあげるから、耳の穴かっぽじって聞いてよ~?僕はニャルラトホテプ、『這い寄る混沌』や『無貌の神』など多くの別名を持つ外なる神さ。分かる?僕は外なる神なんだよ?人間達に情を持つ様になって弱くなった旧神や旧支配者と違って、宇宙空間で神話生物として有るべき姿を保ち続けている外なる神なんだよ?これで分かった?理解してくれた?君達がどれだけ束になって来ようとも、僕には勝てないって事が、君達は僕に狩られる側で、僕は君達を狩る側だって事、その身を以て知ってくれたよね?だからお願い、僕をもっと楽しませて?もっと絶望に打ちひしがれながら悲鳴を上げて?いいよね?答えは聞いてないけどさぁっ!!!」
青年の姿をしたニャルラトホテプは、自分が言いたい事を言い終えた後、ガタノトーアを踏みつけたまま天を仰ぎながら、甲高い笑い声を上げるのであった……