※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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混沌退散

「あ"い"だあ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーーっ!!!」

 

翔達の見事な連携を受けたニャルラトホテプは、謁見の間の扉が付いていた場所の少し右の壁を突き破って、廊下の壁に叩きつけられた直後に悲痛の叫びを上げる

 

「む、まだ叫ぶほどの余裕があったか……」

 

ニャルラトホテプの叫びを聞いたクトゥルフは、そう呟きながらニャルラトホテプが壁を突き破ってしまった為に出来た穴から廊下に出るなり、切れ長の目で壁に寄りかかったニャルラトホテプを見据える。因みに今のクトゥルフの姿は、スーツを着用し、顔の彫りが深く、切れ長の目を持ち、髪型をオールバックにした初老くらいのナイスミドルとなっている

 

「ちょっと君達ぃっ!?連携攻撃するのはいいんだけどさぁっ!!流石に刺したフォークを埋没させるのはやり過ぎだと思わないっ?!ちょっとマジで取れなくなっちゃってるんですけどぉっ!??」

 

フラフラしながらも立ち上がったニャルラトホテプが、フォークが埋没している額を人差し指で掻きながら抗議の声を上げると……

 

「何だ、おかわりか。いいぞ、今の私は少しだけ機嫌がいいからな……」

 

青筋を浮かべたクトゥルフはそれを挑発と受け取ったのか、ニャルラトホテプの訴えをガン無視しネクタイを緩めながらそう言うと、右足を半月を描く様に動かしてI字バランスを取った様な姿勢を取るのであった

 

「ちょっとクトゥルフ?僕の話聞いてた?僕そんな事一言も言ってないよね?ってかさ、その高く振り上げた足をどうしようt……」

 

クトゥルフの挙動を見たニャルラトホテプが、思わずクトゥルフが振り上げた足に視線を送ると……

 

「やぁ☆」

 

そこにはガタノトーアの念動力で浮遊する、Eyes ofを発動させた翔の姿が……っ!!

 

「……あふん」

 

翔と目が合ってしまったニャルラトホテプは、短くそう呟くと身動きが取れなくなり……

 

「ふんっ!!!」

 

直後にクトゥルフの右足は無防備なニャルラトホテプの頭部に踵落としの要領で振り下ろされ、それがヒットしてニャルラトホテプの頭がクトゥルフの踵と共にクトゥルフの腰より低い位置に来たところで、クトゥルフは巧みに足を動かして踵落としから踏みつけの態勢に切り替え、ニャルラトホテプの頭を勢いよく踏みつける。これによりクトゥルフの魔法で硬度が強化された廊下の床は陥没し、ルルイエ全土が直下型の激しい地震に襲われるのであった

 

「うっわ!凄っ!!」

 

「あれは父上が作り上げた『ルルイエ式マーシャルアーツ』の奥義なのだっ!!!父上の巨躯を支える強靭な足による踵落としは、振り下ろされた直後に別空間に預けている分も含めた父上の全体重が込められる事で威力が強化され、更にその状態から繰り出される踏みつけは、正に必殺の一撃となるのだっ!!!」

 

「何それ怖い……、って言うかクトゥルフさんってモンクタイプだったんだ……」

 

「父上は攻撃魔法や神通力による戦闘よりも、この『ルルイエ式マーシャルアーツ』による格闘戦の方が得意なのだ。因みにクティーラは父上から直々に『ルルイエ式マーシャルアーツ』を教えてもらっておるぞ」

 

「ぅゎょぅι゛ょっょぃ……」

 

クトゥルフの足技を見た翔とガタノトーアがこの様な会話を交わしていると、クトゥルフに頭を踏まれているニャルラトホテプが呻く様に言葉を発する……

 

「お前ら……、ホント好き勝手しやがって……」

 

「好き勝手したのは貴様の方だろうが……、私の城を滅茶苦茶にした挙句、眷属や息子まで嬲りおって……」

 

ニャルラトホテプの言葉を聞いたクトゥルフは、そう言い返しながらニャルラトホテプを踏みつける足に力を込めるのだが……

 

「うがあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

ニャルラトホテプは気合の咆哮を上げるなり、首の力だけでクトゥルフの踏みつけを弾き飛ばし、その反動を利用して立ち上がると……

 

「さっきは油断したからこんな事になったけど、これからはそうはいかないからなぁっ!!!全員まとめてぶっ飛ばしてやるぁっ!!!」

 

そう叫んで自身の周囲に大量の文字列を出現させ、それらを全て翔達の方へと差し向ける。それを視認したクトゥルフが、直後に翔達を守る様に障壁を展開するのだが……

 

「出来るものならやって見せろ、神話生物界のゴキブリ野郎」

 

その言葉と共にクトゥルフの障壁の前に展開された障壁が、ニャルラトホテプが発射した文字列を全て受け止めるなり弾き返し、弾き返された文字列は寸分の狂い無く、全てニャルラトホテプの方へと飛んでいくのであった……

 

「あびゃあああぁぁぁーーーっ!!?」

 

その光景を目の当たりにして動揺してしまったニャルラトホテプは、戻って来た文字列の直撃を受けて悲鳴を上げ、翔達は僅かに驚いた後、先程聞こえて来た声の方へと視線を向ける。その視線の先に立っていたのは、翔の包丁ケースを手にしたクタニドであった

 

「ここから先は、私もこちらに混ぜてもらうとしよう。っとその前に……、ほれ翔、謁見の間に転がっていたお前の商売道具、全て回収しておいたぞ」

 

クタニドはそう言って手にしていた包丁ケースを翔へと手渡すと、すぐにニャルラトホテプの方へと身体を向けるのであった

 

「あ、ありがとうございます……」

 

包丁ケースを受け取った翔は、手早く中身を見て無くなっている包丁が無い事を確認すると、クタニドに向かって礼を述べるのだが……

 

「礼よりもさっきの発言を取り消してくれ」

 

クタニドはニャルラトホテプから視線を外さずに、この様に答えるのであった。それを聞いた翔が不思議そうな顔をしていると、クタニドは溜息を吐いた後、翔に向かってこう言い放つのであった

 

「こいつに斬りかかった時言っていただろう?もう二度と包丁が握れない身体になろうともとか言う奴、それを撤回してくれと言ってるんだ。折角私もクトゥルフもお前の料理を気に入ったと言うのに、これで最後とかなったら泣くに泣けんだろう?」

 

それを聞いた翔がハッとしたところで、クタニドはこう続ける

 

「お前はこいつを倒すのにそれほどの意気込みが必要だと思ったんだろうが、決してそんな事は無いぞ?何故ならお前には私と言う友がいるんだからな、旧神の頂点に立つこの私がな」

 

クタニドはそう言うと、ようやく翔の方を向いてニヤリと笑うのであった。そんなクタニドの様子を見た翔は、少々恥ずかしがりながらクタニドの望み通り、ニャルラトホテプにぶつけた言葉の一部を撤回するのであった

 

「わ、我も翔の友なのだっ!我の方が先に翔の友になったのだからなっ!!!」

 

その直後、クタニドの言葉を聞いたガタノトーアが慌てた様子でそう言うと、それを聞いたクタニドは声を出して笑いだし、一頻り笑った後その表情を引き締め、再びニャルラトホテプの方へと視線を向ける

 

「さてと……、おいそこのゴキブリ、まだ続けるか?私とクトゥルフを同時に相手するか?全ての攻撃を私に弾き返され、クトゥルフに蛸殴りにされながら無様を晒し続けるか?」

 

クタニドがニャルラトホテプに対してそう言うと、ニャルラトホテプは苦い表情を浮かべながら脂汗を一筋垂らした後、音も無く姿を消すのであった……。どうやら分が悪いと踏んで逃走した様だ……

 

その後クタニドとクトゥルフが消えたニャルラトホテプの気配を探り、ルルイエの何処にも奴の反応が無い事を確認すると、同時に安堵の息を吐き……

 

「あのゴキブリは……、本当に何処にでも湧くな……」

 

「無駄にタフなところもそっくりだな……」

 

口々にニャルラトホテプに対する愚痴を零すのであった……

 

その後翔達が謁見の間に戻ると、そこにはクトゥルフの部屋から遅れて戻って来た鳳翔の姿と、クティーラ主導でニャルラトホテプに破壊されてしまった業務用アイスクリーマーを修理する眷属達の姿があり、鳳翔は翔の姿を発見するなり急いで駆け寄り、翔の無事を喜ぶ余り、静かに涙を流すのであった

 

突然泣き出した鳳翔を見て慌てふためく翔を遠巻きに眺めながら、クタニドはニヤニヤしながらクトゥルフの方を向き……

 

「おいクトゥルフ、翔が鳳翔を泣かせているぞ?あれを見てお前はどう思う?」

 

「やかましい……」

 

クタニドがこの様な事を言うと、自身を説得する妻であるイダー=ヤアーを泣かせたクトゥルフは、そっぽを向いてそう答えるのだった

 

それからしばらくしたところで業務用アイスクリーマーが復旧し、一同はニャルラトホテプ撃退成功を祝うアイスクリームパーティーを開始するのであった

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