※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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そう言えばそろそろこの作品の連載を始めて、1年が経とうとしている……


長門 兼継

さて、ここで少しだけ兼継について触れておこうと思う

 

兼継は戦治郎の父である長門 総一と、総一の再婚相手である龍美との間に生まれた戦治郎の腹違いの弟である

 

彼は自分達がやりたい事を職業にした他の兄弟達と違い、自ら望んで長門コンツェルン総帥の座を継ぐ決意をし、大学を卒業後長門コンツェルンの中枢をなす電子機器メーカーに就職、父の意向で平社員として日々の業務を全うする傍ら、父から長門コンツェルン総帥としてやっていく為に必要な知識を学んでいた

 

そんな少し大変だが充実した毎日を過ごす彼を悲劇が襲う……

 

 

 

それは2017年12月24日の事である……、夜中に仕事を終えて帰宅しペットの五代目太郎丸に餌を与えていた彼の下に、兄である戦治郎の訃報が届いたのだ

 

戦治郎及びその部下達の死因は爆発事故、ガソリンを満載したタンクローリーが戦治郎が経営する修理屋兼リサイクルショップである『長門屋』のすぐ傍の道路を走行中、倒れた自転車の傍で寝転がって道路と喧嘩する酔っ払いをタンクローリーの運転手が発見、運転手がそれを避けようとハンドルを切った際タンクローリーは『長門屋』の敷地に侵入、車体のバランスを崩し横転しながら戦治郎達が普段寝泊りしている家屋に突っ込み、タンクローリーが横転した際に地面に漏れ出したガソリンに火が付き、戦治郎達は家屋とタンクローリー諸共爆死したそうだ……

 

その報を聞いた兼継はしばらくの間呆然とした後、フラフラとした足取りで自室のクローゼットへ向かい、その中からHMDを取り出すなりそれを大事そうに抱きかかえながら、静かに涙を流した……

 

このHMDは戦治郎が前日、2017年12月23日に突如フラリと兼続が住むマンションに訪れた際、少し早めのクリスマスプレゼントとして置いて行った、戦治郎達長門屋のメンバーが作り上げたHMDなのである

 

「こいつをパソコンなりタブレットなりに接続して艦これを起動すると、なんとアーケード版のグラでブラウザ版が出来る様になるんだわ!その為にわざわざアーケード筐体買って護に解析させたりと結構手間かけてるから、マジで大事にしてくれよ?」

 

戦治郎はそう言って兼継にHMDを手渡し、しばらくの間2人で雑談を交わした後

 

「そろそろ行くわ、明日ウチでパーティーやるから、その準備の為の買い物の途中だったんだわ。って事で時間あったら来てくれよ~、したらな~」

 

そう言って兼継のマンションを後にした、これが兼継が聞いた戦治郎の最後の言葉だった……。兼継はそれを思い出すと遂に堪えられなくなったのか、嗚咽を漏らしながら夜通し泣き続けるのであった……

 

それからしばらく時間が経ち、戦治郎の死を知りショックで倒れ入院した姉2人の看病と、爆発のせいで見事なくらいバラバラになった戦治郎の葬儀を終え、ようやくショックから立ち直ったところで、兼続はふと戦治郎が作ったHMDの存在と昔戦治郎が口にした言葉を思い出す

 

「道具は使ってナンボじゃい!そして一生懸命働いて壊れた道具を修理と言う形で労うのが、俺達長門屋の仕事なんじゃい!」

 

酒をかっくらって顔を赤くしながら捲し立て、次の日悟に痔の治療を依頼した戦治郎の言葉を思い出した兼継は、何気無くHMDをパソコンに接続してブラウザ版艦これを起動し、HMDを被ってHMDの電源を入れる。すると画面にほんの僅かにノイズが走った後、それを見た兼継はそのまま意識を失ってしまうのだった……

 

 

 

それからしばらくして、2人の女性の声を耳にして意識を取り戻した兼継が、ゆっくりと瞼を開くと彼の目には俄かに信じられない光景が映るのだった

 

彼の目に映ったのは見知らぬ部屋の中に立つ2人の女性の姿、そしてその2人の女性はそれぞれ艦これの金剛と赤城の恰好をし、険しい顔をしながら兼続の方へ砲と弓を構えているのである

 

それを視認した兼継はすぐさま降参とばかりに両手を上げて、何か言葉を発しようと口を動かそうとするのだが、直後に赤城らしき人物の弓から矢が放たれ、その矢は兼続の頬を掠めて兼継の頬に赤い線を描く……

 

「今のは警告です、次に不用意に動けば、矢は貴方の眉間を貫きます」

 

「それが分かったら正直に答えるネー!貴方は誰デスカッ!?テイトクを何処に連れて行ったノッ?!」

 

赤城?の言葉に対して兼継が無言で首を縦に何度も振って答えた刹那、目を吊り上げた金剛?が捲し立てる様にして兼継にそう尋ねて来る。そして金剛?の言葉を聞いた兼継は、簡単に自己紹介をした後……

 

「あの……、テイトク云々は兎も角……、此処何処ですか……?」

 

2人に向かってそう尋ねる、それを聞いた2人は怪訝そうな顔をしながら口を動かそうとした直後、不意に頭痛に襲われてその表情を苦痛に歪めるのだった……

 

2人の様子を見た兼継が心配そうに2人に声をかけると、2人は頭を手で押さえながら訳が分からないと言った様子で口を動かし始める

 

「What……?この人が……、テイトク……?」

 

「一体どう言う事……?一体何が起こったと言うの……?」

 

「はいぃ?」

 

2人の言葉を聞いた兼継は、思わず間の抜けた声を上げてしまうのであった……

 

その後2人の女性は兼継に自己紹介をし、兼継は彼女達が本当に艦娘の金剛と赤城である事を知ると、驚きの声を上げて固まってしまう。その後我に返った兼継が先程の2人の発言について困惑しながら質問すると……

 

「先程、突然頭痛がしたかと思ったら、私の記憶の中にあった提督の姿が、全て貴方の姿に塗り替えられたんです……」

 

赤城の発言を聞いた金剛が目を丸くするなり自身にも同じ現象が起こった事を話し、それを聞いた兼継は更に困惑するのであった……

 

その後、兼継が自分が此処に来るまでの出来事を2人に話し、先程起こった出来事と併せてウンウン唸りながら3人で考えていると、不意にこの部屋の扉が開かれ……

 

「司令官、艦隊、戻ったよ! みんなの無事が、何よりだよね」

 

この言葉と共に睦月型駆逐艦の6番艦である水無月が、遠征の結果を報告する為に部屋の中に入って来る。そして水無月はそのまま兼継の下へ歩み寄り、遠征結果の報告を始めるのであった……

 

それを見た赤城が水無月に対して、兼継の事を尋ねてみると……

 

「その人は司令官でしょ?赤城さんはよく司令官の補佐をやってるはずなのに忘れちゃったの?」

 

水無月はまるで最初からここの提督は兼継だった様に話し、それを聞いた3人は困惑を通り越して混乱し始めるのであった……

 

その後、報告は終わったから部屋に戻っていいかと尋ねて来る水無月に対して、兼継が困惑しながら了承し、水無月の背中を見送った後3人は頭を抱えながら状況整理を開始する

 

そしてその最中に、金剛が佐世保提督が横須賀鎮守府から佐世保鎮守府に異動になった際、大本営から交付された辞令書の存在を思い出し、そちらの内容はどうなっているかが気になった3人は、金剛の記憶を頼りに保管された辞令書を引っ張り出してその内容を確認すると、そこには燦然と輝く『佐世保オパンチュパラダイス鎮守府』と『オパンチュ大天使モモロウ少将』の文字が……っ!!!ここで兼継は鎮守府名と提督の名前が、自分が艦これをプレイしている時に使っていたものである事に気付くと同時に、酒を飲んでベロンベロンに酔った勢いで鎮守府名と提督名を付けた事を激しく後悔するのであった……

 

それから長い時間3人で話し合った結果、3人はこの様な予想を立てる……。兼継がこの世界に来た事で、元々この佐世保鎮守府で提督をやっていた存在は、兼継に存在やその痕跡全てを上書きされ、兼継がこの世界に出現するところを直接目撃した金剛と赤城以外の記憶と記録から完全に消滅してしまったのだと……

 

その事実を知った兼継が、引きつった顔をしながら硬直していると……

 

「こうなっては仕方が無いですね……、そういう訳でこれから兼継さんには、この佐世保鎮守府の提督をやってもらいます」

 

「さっきの水無月の様子を見る限り、多分この鎮守府の皆のMemoryの中では、最初からカネツグが提督だった事になってるはずネー……。無用なconfusionを避ける為にもそうした方がいいと思いマース」

 

2人は兼継に消滅した提督の代わりに、この佐世保鎮守府の提督をやる様に言って来るのだった

 

それを聞いた兼継が、どうしたものかと考えていると、不意に彼の耳に微かにだが犬の鳴き声が聞こえて来る……。そう、彼が飼っている五代目太郎丸の鳴き声である

 

「やっべ!そういやそろそろ餌あげる時間じゃないかっ!!って何で太郎丸の声が聞こえるんだっ!?」

 

太郎丸の鳴き声を聞いた兼継があたふたし、ここからどうやったら元の世界に戻れるのかを思案し始め、その様子を見ていた金剛と赤城が不思議そうな表情を浮かべた直後、突然兼継の手元に緑色の光の線で形作られたタブレットの様な物が出現し……

 

「何これ……?終了……?」

 

このタブレットの様な物の存在に気付いた兼継が、そう呟きながら恐る恐ると言った様子で『終了』と書かれたアイコンを指でタッチすると、突然兼継の視界が暗転し次の瞬間には、兼継の視界にはHMDに映し出されたブラウザ版艦これのログイン画面が映るのだった……

 

それから兼継は五代目太郎丸に餌を与えた後、再びHMDを被って艦これにログインし、自身が先程の場所、佐世保鎮守府の執務室に戻った事を確認すると……

 

「ごめん、提督やれって話は無理かも……」

 

突然消えたかと思ったらまた出現した兼継を見て、驚愕の表情を浮かべる金剛と赤城に向かって、兼継はそう返答するのだった……

 

その後3人は話し合いに話し合いを重ね、兼継は時間がある時だけこの世界に降り立って鎮守府の運営を行い、兼継がいない間は赤城が代理で運営を行う方向で話を付け、兼継は長門コンツェルンで平社員として働きながら、佐世保オパンチュパラダイス鎮守府の提督として鎮守府を運営していく事となるのであった……

 

因みに、何故兼継が長門屋製HMDを通じて2つの世界を行き来する事が出来るのかについてだが……、それはHMD製作の際中心となった製作者である戦治郎の魂とHMDが僅かながら繋がっており、そのHMDを使った者はその繋がりを魂の通り道として自分の世界と艦これ世界を魂だけで行き来し、その魂は艦これ世界の誰かの存在を乗っ取る事で実体化する様になっており、兼継の場合兼継が佐世保サーバーの提督だった事から、その関係で佐世保提督の存在を乗っ取ってこの世界で実体化しているからである

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