※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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『鬼の鎮守府』の連載が1周年を迎えました!

まさかこんなに長く続く事になるとは、夢にも思いませんでした……

これからも完結目指して頑張っていこうと思います!


真・魔道書

「クタニドさん……、すぐに僕を戻してもらえませんか……?」

 

戦治郎達が戦う姿を見て驚愕し硬直してしまった翔が、我に返るなりすぐさまクタニドにそう頼み込む

 

「それは別に構わないが……、お前1人戻ったところであの戦場がどうにかなる訳ではないだろう?」

 

「それは分かっています、けど……、皆が必死に戦っているのに自分だけ暢気に寝てる場合ではないですからね。それに僕の身体が今ある場所は、恐らく今の海賊団の拠点となっている場所だと思います。もしそこが攻め込まれて陥落してしまえば、僕の身だけでなく退路を断たれた戦治郎さん達も危なくなってしまいます。そうならない為にも、僕はすぐにあちらに戻って拠点防衛を開始しないといけないと思うんです」

 

翔の頼みを聞いたクタニドが渋い顔をしながらそう言うと、翔は苦笑しながらそう答えるのであった

 

そう言われては仕方が無いと思い、クタニドが翔にかけられた魔法を解こうとしたその直後、不意にガタノトーアが声を上げてクタニドに待ったをかける

 

「待って欲しいのだクタニド殿っ!!流石にこれは無謀過ぎるのではないかっ!?せめて誰かを付ける事は出来ないのかっ?!」

 

友である翔を心配するガタノトーアが、必死になってそう訴えるのだが……

 

「私もこれが愚策である事は分かっている……、だが翔は意思を曲げるつもりはなさそうだし、誰かを付けようにも鳳翔の件もあるし、これ以上迂闊に戦力を割く訳にはいかんからな……」

 

クタニドは苦い表情を浮かべながら、ガタノトーアにこの様に返答するのであった

 

「ならば私が……」

 

「だからお前が出たら大事にしかならんだろうっ!!!分かったならお前は大人しくここでアイスでも食っておれっ!!!」

 

クタニドの発言を聞いたクトゥルフが翔の手助けを名乗り出ようとするのだが、すかさずクタニドが般若の形相を浮かべながら、クトゥルフを制止し……

 

「解せぬ……」

 

クトゥルフはそう呟きながら、肩を落として元いた場所に戻ってバケツアイスを食べ始める。その際翔は、クトゥルフと空が重なって見えたかと思えば、次の瞬間には何もない草原で、肩口が破れた胴着を身に纏った空とクトゥルフ(人間形態)が対峙する光景を幻視するのだった

 

こうしてクトゥルフが落ち着いたその直後、再びガタノトーアが叫ぶ様にして声を上げる

 

「ならば我が行くっ!!!本来の姿となった我ならば父上ほどの影響が出る事も無ければ、あの戦場をひっくり返す事も出来るだろうっ!!!」

 

毅然とした態度でそう叫ぶガタノトーアに対して、クタニドがどの様な言葉を掛けるべきかで迷っていると……

 

「翔よ……、私の愚息がこう言っているのだが……、どうだろうか?」

 

アイスを食らう手を止めて、クトゥルフが翔に向かってそう言い放つ

 

「確かにガタノトーアが来てくれると心強いんですけど……、いいんですか?」

 

「構わんよ、寧ろ今回の件の礼として、ガタノトーアを翔の眷属にしてもいいとすら考えているが?」

 

戸惑う翔がクトゥルフにそう尋ねると、クトゥルフは何かとんでもない発言をし、それを聞いたガタノトーアは驚愕の表情を浮かべ、翔は思わずムッとするのだった

 

「どうした?何処か不満な点があったか?」

 

急に不機嫌そうな表情を浮かべた翔を見て、クトゥルフが怪訝そうにそう尋ねると……

 

「ありましたよ、すっごく気に食わない点が……。ガタノトーアの事を道具の様に扱うのは止めて下さい、ガタノトーアは僕の友達です、友達の事を道具扱いするのは本当に不愉快です。って言うか、それ以前にガタノトーアは貴方の子供でしょうが、子供はもっと大事に扱ってあげて下さい」

 

翔はその目をやや赤くしながら、クトゥルフに向かってそう言い放つのであった

 

「翔……」

 

翔の言葉を聞いたガタノトーアはそう呟きながら思わず涙ぐみ、そんなガタノトーアに対して翔は目の色を戻した後……

 

「改めて聞くけど、本当にいいの?」

 

頭上のガタノトーアに対してそう尋ね……

 

「構わん!このままここで翔が傷付く姿を只々見ているより、共に戦い傷付く方が何万倍もマシだっ!!!」

 

涙を拭ったガタノトーアは、その表情を引き締めてそう叫ぶのだった

 

「ガタノトーアが向かうのはいいんだが……、本来の姿になったら翔の仲間達が大変な事になるのではないか……?ガタノトーアの本来の姿を見た者は、皆石化してしまうと思うのだが……?」

 

「「あ……」」

 

不意に翔達の事を見守っていたクタニドが、ガタノトーアの本来の姿に関する問題点を指摘し、その事を思い出した翔とガタノトーアは、思わず同時に間抜けな声を出してしまうのであった……

 

「どうしようか……?」

 

「クタニド殿……、何かいい案は無いだろうか……?」

 

「まあそうなると思っていたさ……」

 

この問題をどうやって解決するかで悩んだ1人と1柱が、クタニドに助力を求めたところ、クタニドはやれやれと言った様子で片方の手にはガタノトーアの本来の姿が封じられている雑誌を、もう片方の手にはやたら分厚く大きい封筒を持つと、突然雑誌で分厚い封筒を勢いよく叩いて見せるのであった

 

「よし……っ!」

 

「いやクタニドさん……?今何やったんです……?」

 

「何、この雑誌に入っているガタノトーアの本体を、こっちの封筒の中身……、この雑誌を作る際に私が書いた原稿に移しただけだ」

 

「はいぃ?それってどういう……?」

 

クタニドの行動について翔が尋ねたところクタニドはこの様に返答し、その答えを聞いた翔は更に困惑を深め、それにどういう意味があるのかを尋ねようとしたところで、翔は突然襲って来た途轍もない威圧感に圧倒され、思わず押し黙ってしまう……

 

「そう言えば翔には言っていなかったな、この雑誌は人間の間で出回っている『無名祭祀書』と言う魔道書の原典と言えるものなんだ」

 

そう言ってクタニドは、魔道書について話し始めるのであった……

 

クタニドが言うには、この世界の人間達の間で出回っている魔道書は、例えるならば河原や山の茂みの中に投げ捨てられたエロ本を頑張って復元したり、無事な抜きどころをスクラップブックにした様な物らしく、かなり魔力が落ちてしまっているそうだ

 

「雑誌の購入者が読み飽きたからと適当に雑誌を投げ捨てた結果、魔力が弱まり雑誌の各種防護加工が剥がれ落ち、文字やイラストや写真が海水や宇宙空間のダークマターのせいで滲んだり霞んだりした雑誌が人の手に渡り、それを人間達が頑張って復元して出来たのがこの世界の魔道書なんだ」

 

「そうだったんですか……、って言うかそれ『無名祭祀書』だったんですね……」

 

得意げに説明するクタニドとは対称的に、説明を聞いた翔は只々その表情を引き攣らせながら、震える声でこの様な言葉を口にする

 

「本来の姿は私が書いた各地のイベント情報を盛り込んだ旅行ガイドなんだがな……、っとそれは今はどうでもいいな。翔は先程の私の行動の真意を知りたいと言う事だったな……」

 

雑誌の方を仕舞ったクタニドがそう言いながら翔に歩み寄り、ガタノトーアの姿をオムナイトに変えた時と同じ様に、翔の頭に手をかざして目を閉じ……

 

「……何だこいつは?ガタノトーアの本来の姿よりでかいな……、まあいい、こいつでいいだろう……。……よし出来たっ!!!」

 

一言二言呟いた後大きな声を上げるなり、翔にその手に持った大きな封筒を手渡し……

 

「『無名祭祀書』の原典の原典……、言わば『真・無名祭祀書』とも言えるこの原稿が持つ膨大な魔力は、さっきから翔も威圧感として感じているのではないか?」

 

ニヤリと笑いながらそう尋ねる、それに対して翔は無言で何度も縦に首を振って見せる

 

「その魔力を使う事で、ガタノトーアを今しがた私が作り上げた戦闘形態に変身させ、姿を見た者を石化させずに戦える様に出来るぞ。ああ、ついでにそのちっこい方の姿にも、石化防止フィルターをかけておいたぞ」

 

「あの……、それって雑誌の方じゃ駄目だったんです……?」

 

「いや、それでも問題はなかったんだが、どうせだから今回の騒動の解決に力を貸してくれた礼の意味も込めて原稿の方にしたんだ。それなら余剰分の魔力を、攻撃や防御に回せるだろう?」

 

「僕、魔法の知識とか無いんですけど……」

 

こんな調子で、クタニドと翔がこの様なやり取りを交わしていると……

 

「そう言う事なら私に任せてっ!!!」

 

突如カソグサが声を上げ、クタニド同様いつの間にか手にしていた分厚い封筒を、翔に手渡してくるのであった

 

「カソグサさん……?」

 

「これは私が色んな神話生物を取材して書いた『神話生物名鑑』の生原稿、人間達に合わせて言えば『真・ネクロノミコン』って奴になるかな?取り敢えずこれさえあれば、多くの神話生物の知識と神話生物由来の魔法を身に付けられると思うから、私からのお礼って事で遠慮なく持って行ってよっ!!!」

 

突然の出来事に困惑する翔がカソグサに声を掛けたところ、カソグサは封筒の中身について説明し、それを聞いた翔を大いに驚かせるのであった。と、その直後……

 

「あら、カソグサさんが翔さんにプレゼントをするなら、私の方からも何か出さないといけないわね~」

 

今度はイダー=ヤアーがそう言って、翔に封筒を手渡して来るのであった

 

「これはね~、人間の間では『ポナペ経典』と呼ばれている魔道書の原典の原典なんだけど~、実際のところは私が書いたガタノトーアちゃんの育児日記なの~」

 

「母上っ!?何と言う物を翔に渡そうとしておられるのですかっ!??」

 

イダー=ヤアーの言葉を聞いたガタノトーアが、思わずギョッとして叫ぶのだが……

 

「ちっちゃい頃のガタノトーアちゃんったらね~、動きが面白かったのかチャウグナー・フォーンさんのお鼻を引っ張ってご迷惑をおかけした事があってね~」

 

「母上えええぇぇぇーーーっ!!!恥ずかしいから止めて欲しいのだあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

イダー=ヤアーはマイペースで幼少の頃のガタノトーアの恥ずかしい話を語り始め、ガタノトーアは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらそれを制止しようと絶叫する

 

「もう~、ちょっとでもお友達の翔さんに、ガタノトーアちゃんの事を知ってもらおうと思ってやってるのに~……」

 

「お気持ちは分かりますが……、ガタノトーアが可哀想なのでその辺で結構ですよ……。後はそちらの原稿を読みますので……」

 

良かれと思ってやった事をガタノトーアに止められて、不満そうな顔をするイダー=ヤアーに対して、翔がガタノトーアをフォローする様にそう言ってイダー=ヤアーの機嫌を直したところで、今度はクトゥルフが翔達の元へ歩み寄って来る……

 

「こうなれば、私の方からも礼をせねばな……」

 

クトゥルフはそう言うと、これまた分厚い封筒を懐から取り出し、翔へ手渡すのだった

 

「こいつは私が書いた『ルルイエ異本』の原典の原典、『真・ルルイエ異本』と言える物だ。内容はルルイエの歴史や風土といった、ルルイエに関連する物事を全て纏めたものとなっている。……本来ならもっと違う形でお前に礼をしたいところなのだがな……」

 

「いえ、クトゥルフさんが直接動くとなると、かなり洒落にならない事になるので、正直こういう形でお礼してもらった方が助かります……」

 

「そうか……」

 

翔の言葉を聞いたクトゥルフは、少々ションボリしながらそう呟いて、手にしたアイスの最後の一口を己の口の中に放り込むのであった

 

こうして翔は、壮絶過ぎる魔力を持った『真・魔道書』と言う名の神話生物達直筆の生原稿を、神話生物達から今回の騒動を治めてくれたお礼と言う形で、図らずも1度に4つも手に入れてしまうのであった……




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まだまだ受け付けておりますので、沢山の意見お待ちしております
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