横須賀の方で桂島泊地解放戦の話が進んでいた頃、戦治郎達は何をしていたかと言うと……
「海水浴の時間だあああぁぁぁーーーっ!!!」
女性の身体でありながら、上はパーカータイプのラッシュガードを羽織り、下は膝丈上のサーフトランクスを穿いた戦治郎が叫ぶ様にしてそう宣言すると、水着に着替えた長門屋海賊団の面々と桂島泊地の関係者達は、歓声を上げた後思い思いの行動を開始するのであった
そう、戦治郎達はホノルルのサンド島の兵器開発研究所の復旧を終わらせた後、島の南にあるビーチで僅かな時間ながら南国の島を満喫する事にしたのである
こんな状況でこいつらは一体何をやっているんだと思う方もいるだろうと思われるが、そこは大目に見て欲しいところである
先ず長門屋海賊団についてだが、彼らはこの海域に到着してから忙しなく活動したかと思えば、神話生物と邂逅し同盟を結んだ挙句、この世界や転生個体に関する真実を突然伝えられた事で、精神的に参っている者が多数いたりするのである
特に戦治郎に関しては、スパロボのイデオンやゴッドマーズよろしくある条件が整ってしまうと、世界を滅亡させてしまう途轍もなく危険な存在となってしまう可能性を自身が秘めている事と、それを危惧して警戒していたり楽しみにしている神話生物が存在している事を知らされた為、表には出さないものの実は内心では物凄く混乱しているのだ
そして大和達桂島泊地の艦娘達は、長い間提督に辛い思いをさせられ心に大きな傷を負っているところで、神話生物と邂逅したり世界の真実を知らされて大いに混乱している者が殆どなのである
そんな皆の様子を見て、こんな状態で作戦に参加しても良い結果は出せないだろうと判断した戦治郎が、急遽作戦参加を1日先送りしてしっかりと休養を取ろうと提案し、この様な事になったのである
こうして海賊団と桂島の面々が南国のビーチをエンジョイする中、戦治郎はその様子をビーチチェアの上に寝そべった状態で見守っていた
「皆楽しんでるみたいだな、善哉善哉。これなら皆作戦に集中して取り組めるだろうよ」
そんな戦治郎がニヤリと笑みを浮かべながらそう言ったところで
「あの……」
不意に誰かがそんな戦治郎に向かって、迷いがある様な声で話し掛けて来るのであった。声を掛けられた戦治郎がそちらに視線を向けてみると、そこには水着姿の大和が困惑した表情を浮かべながら立っていた
「よぅ大和、楽しんでるか~?」
「あっはい、それなりに……、じゃなくって……」
そんな大和に対して戦治郎が気さくに話し掛けたところ、大和はこの様に答えた直後にブンブンと頭を振ると、真剣な表情をしながら戦治郎に尋ねる
「その、大和達は本当にこんなところでこんな事をやってていいのでしょうか……?桂島の方では今も尚、皆が提督に苦しめられていると言うのに……」
言葉を続けるにつれ大和はその表情を暗くしていき、やがては目尻に涙を浮かべながら黙り込んでしまうのであった
「大和が桂島の艦娘達を早くどうにかしてやりてぇって気持ちは、ホント痛いくらい良く分かった……。けどよ、碌にコンディションが整ってない状態で敵地に突っ込むのは、いくら何でも無謀だとは思わねぇか?特に奴さんはミッドウェーの飛行場姫同様、プロフェッサーとやらと繋がってたみたいだから、冗談抜きで何してきやがるか分かったもんじゃねぇ……。そんな中に精神的に疲弊して判断力が低下してるかもしれねぇ奴を突っ込ませるのは、愚策中の愚策だと思わねぇか?」
「それは……、そうですけど……」
「それに先行して戻った長門達の準備もある事だし、少しくらい間をおいて準備を整える時間をあげるのも悪くはねぇだろう?」
「はぁ……」
「安心しろ、今のお前達にゃ俺達が、長門達や加賀達、それに超チートクラスの翔の友達もいるんだ、この作戦は必ず成功するさ。だからそんな顔すんな」
戦治郎と大和はこの様なやり取りを交わし、戦治郎はそれでも不安そうな大和に笑顔を向けながら、その頭を優しく撫でてあげるのだった
それからしばらくの間、戦治郎は大和の頭を撫で続け、大和の表情から不安や焦りが消えた事を確認すると……
「よっしゃ!んじゃこの辛気臭い空気をぶっ飛ばす為に……、泳ぎに行くぞ大和っ!!!」
「えっ!?」
戦治郎はそう叫んで大和の手を取ると、驚いている大和の手を引いて海の方へと駆け出し、大和と共に南国の海を満喫するのであった
余談だが、これとほぼ同時刻くらいにウミウシをナンパしていると思われる司の姿が、翔とゾアによって目撃されるのであった……
司曰く……
「いやさ、確かクタニドさんだったっけ?このウルトラグレイトフルスペシャルアメイジングイケメンな俺様に会いたいって言ってた神話生物っての。その姿って一応人間の姿してるみたいだけど、本当はゾアみたいな感じだったりしちゃったりするんじゃないの?だからこのスーパーハイパーミラクルレジェンド美男子の俺様は、どんな姿であれクタニドさんを賛美出来る様にこうやってウミウシちゃんで練習しちゃったりしてる訳よ~」
と、言う事らしい……。因みに、実際にクタニドと会った司は、練習通りクタニドを口説いたのだが、クタニドには鼻で笑われ一蹴されるのであった……
この件に関して、翔とゾアは彼の事を気遣って見なかった事にしたのだが、この後にウミウシをナンパする司の姿を目撃したシゲ、通、護、摩耶、神通、川内、阿武隈、龍驤の計8名から、司は【女性の要素さえあれば雌雄同体すら口説く男】の称号を贈られ、この話は戦治郎達の関係者の間に、広く伝えられる事となるのであった
「……皆集まったか……?」
日が沈み、海水浴を楽しんだ艦娘達が皆床に就いた頃、砂浜の上で胡座をかいた戦治郎はそう言いながらグルリと視線を巡らせて、集まった面々の顔を確認する
この場に集まっているのは、戦治郎が海水浴を終えた後に声を掛けた長門屋のメンバー+望の13人。戦治郎が全員いる事を確認したところで
「こんな時間に俺達を集めて……、一体どうしたんだ?」
不意に空が怪訝そうな顔をしながら、自分達をこの場に集めた張本人である戦治郎に向かって尋ねる
「いやな、ちょっち考えてた事があるんだがよ……」
そう言って戦治郎が話を切り出し、この場にいる全員に話をしたところ……
美しい月が海面に浮かぶ夜の砂浜に、幾つもの生々しい打撃音と、尋常ではない数の罵声と怒声が長らくの間響き渡るのであった……。夜中にもよおした艦娘はそれらの音を聞いた途端、それはそれは仰天し足早にトイレに向かって用を足すとすぐさま布団の中に潜り込み、これらの音が鳴り止むのを震えながら待ったそうだ……
それから時は経ち、日が昇り朝を迎えたところで……
「皆、疲れはちゃんと取れたか?忘れ物はないか?」
顔をジャガイモの様にボコボコに腫らした戦治郎が、浜辺に集まった面々に対してそう尋ねるのであった……。そんな戦治郎の顔を見た駆逐艦達はざわめき、皆の代表として龍鳳が顔の事を尋ねたところ……
「いやいや、ちょっち転んじまってなぁ……」
戦治郎はそう言って誤魔化す様に笑いながら、ある方角へとチラリと視線を向ける。その視線が気になった面々がそちらに顔を向けてみると、そこには戦治郎に対して鋭い視線を向ける長門屋の面々の姿があった……
戦治郎と長門屋のメンバーの間に、一体何があったのか……?それがどうしても気になった夕立が空に尋ねたところ……
「何、気にする事は無い……。しばらくしたらいつも通りに戻るさ……」
鬼の形相をしていた空は、そう言うといつも通りの表情をしながら、夕立の頭の上にてを置くのであった
「よっし!問題無さそうだし、そろそろ俺達も行動開始すんぞっ!!!長門屋海賊団、日本は鹿児島県、桂島へ向けて抜錨だあああぁぁぁーーーっ!!!」
その後、戦治郎がそう宣言したところで海賊団と桂島の艦娘達は海に出て、目的地である桂島に向かって進み始める。こうして、長門屋海賊団としての最後の作戦である『桂島泊地解放戦』の幕が切って落とされるのだった……