「なぁ~……、皆そろそろ機嫌直してくれよ~……」
海賊団と桂島の艦娘達が桂島目指してホノルルを発ってある程度移動したところで、未だに顔がボコボコになっている戦治郎が情けない声をあげる
これまでの間に、戦治郎達は何度かタンカー護衛任務に勤しむ艦娘達を発見し、挨拶したり任務が成功する様に声援を送ったりしたのだが、殆どの艦娘が戦治郎の顔を見るなり絹を裂くような悲鳴を上げ、タンカーを連れて脱兎の如く逃げ出したのである。まあ、酷い火傷痕が付いた顔をボコボコに変形させた戦艦水鬼を見かけたら、恐怖の余り誰だって逃げ出してしまうのは当然の事であり、仕方が無い事なのだろうが……
この様な事があった為戦治郎は大いに凹み、思わず情けない声をあげてしまったのである
それから何度もみっともない声で戦治郎が頼み込んだところで、艦娘に逃げられる度にガックリと肩を落とす戦治郎の姿を見て、笑いを堪え続けていた悟がようやく戦治郎に翠緑を使用するのであった。因みに、この時悟は治療を開始する前に
「もう二度とあんな事言うんじゃねぇぞぉ?それが治療してやる条件だかんなぁ」
戦治郎に向かってこう言い放ち、戦治郎がそれに同意した事を確認したところで翠緑を使い始めたのである。その際悟の言葉に疑問を抱いた天津風が、その事について言及したところ
戦治郎と悟が声を揃えてこっちの話だと言い、話をはぐらかせるのであった
こうして顔の治療を施してもらった戦治郎は、治療が完了すると同時にいつもの調子に戻り、皆の先頭に立ち軽やかな足取りで日本に向かって歩みを進めるのだが……
「あん……?ありゃぁ……、戦闘か……?」
遠くで立ち上る黒煙を発見するなり、顔を顰めながら思わずそう呟くのだった
「念の為に確認しておくか……、頼んだぞワイルドッ!」
「んだな、って事で行って来い、鷲四郎っ!」
戦治郎の呟きを耳にした空がそう言うとすぐさまワイルドを発艦させ、それに合わせる様に戦治郎も鷲四郎を発艦し、黒煙が上がっている場所に偵察に向かわせるのであった
それからしばらくすると、鷲四郎とワイルドがかなり慌てた様子で戦治郎と空に状況の説明を始める
『旦那っ!黒いビキニ姿の戦艦棲姫が駆逐艦4人を襲ってやがるぜっ!!』
『あの戦艦棲姫目がイッてるニャッ!!呼吸も荒いし危険なオーラを感じるニャッ!!このままじゃ駆逐艦達がヤバイニャッ!!!』
2匹の報告を受けた戦治郎達は皆に状況を説明した後、黒煙が見える方角へ弾丸の如く勢いよく駆け出すのであった……
「ほぉら……、大人しくしないからこんな事になるんだよぉ……?さてっと……、それじゃあお腹痛い子はお腹出してぇ……、お兄さんが摩ってあげるから……」
興奮の余り呼吸を荒げ、目をギラギラと輝かせる戦艦夏姫が、艤装を沈むか沈まないかのギリギリのラインまで破壊された小学生くらいの駆逐艦達に向かって言い放ち、ジワリジワリとにじり寄って行く。そんな戦艦夏姫の姿を見て、顔色が悪い駆逐艦娘を守る様に囲んだ3人の駆逐艦娘達がガタガタと身体を震わせて怯えていると……
「すみません、ちょっとよろしいでしょうか?」
不意に辺りにその様な声が響くと同時に、何者かが戦艦夏姫の肩に手を置くのであった。突然の出来事に驚いた戦艦夏姫が、ビクリと身体を震わせた後そちらに視線を向けてみると、そこには鬼の様な仮面を装着した軽巡棲姫の姿が……
「な、何だ軽巡棲姫か……、いきなり警察みたいな事言うから、てっきり警察の関係者かと思ったじゃないか……」
軽巡棲姫を自身より格下だと思っている戦艦夏姫が、安堵の息を吐きながらそう言うと、その言葉を聞いた軽巡棲姫はピクリと反応した後……
「深海棲艦が警察を知っていると言うのも、おかしな話だと思いませんか……?貴方……、もしかして以前は人間だったんじゃないですか……?」
軽巡棲姫……、いや……、通の言葉を耳にした戦艦夏姫が、驚いた表情を浮かべたその直後
「通~、どうだった~?」
「どうやら転生個体の様です」
通の背後から戦治郎の声が聞こえ、戦艦夏姫が戦治郎の声が聞こえた方へと視線を向けると、そこには戦治郎達の手によってボコボコにされた上で拘束されている己の艤装の姿が映るのであった……
「道理で艤装の力が強かった訳だ……、っとそれは置いておいてだな……」
己の自慢の艤装が拘束されている姿を見た戦艦夏姫が驚愕の余り硬直していると、戦治郎がこの様な事を呟きながら歩み寄り……
「駆逐艦相手に何やってんだてめえええぇぇぇーーーっ!!!」
この叫びと同時に戦治郎が戦艦夏姫を思いっきりぶん殴り、戦治郎に殴られた戦艦夏姫はそれはもう豪快に吹き飛び、2度3度海面を跳ねてから停止したところで、その後を追って来た海賊団に囲まれ袋叩きにされるのであった……
その後戦治郎達は取調組と修理&治療組に分かれ、取調組は拘束した戦艦夏姫に対して事情聴取を行い、修理&治療組は戦艦夏姫に襲われた駆逐艦娘達の艤装を修理すると共に、顔色が悪い駆逐艦娘に治療を施すのであった
先ず顔色が悪かった艦娘に関してだが、どうやら彼女は体調不良であるにも関わらず無理して長距離練習航海に参加し、帰りがけにその疲れによって体調不良が悪化し動けなくなってしまったそうだ
そして駆逐艦娘達が突然の出来事に驚き慌てふためいていたところに、件の戦艦夏姫が通りかかり……
「苦しむ駆逐艦娘の姿を見て、性欲が抑えられなくなりました」
この様な理由から戦艦夏姫は駆逐艦娘達を襲い、あわよくば彼女達を連れ去ってしまおうと考えていたそうだ……
その後の取り調べの結果、この場に正座させられている戦艦夏姫は幼女を性的対象として見る危険なタイプのロリコンである事が発覚し……
「裁判員の皆さ~ん、判決をど~ぞ♪」
剛のこのセリフと共に、裁判員役をやっていた艦娘達を代表して大和が前に出ると……
「貴方が行おうとしていた事は、被害者達の心に大きな傷を残しかねない行為です……」
大和がそう発言したところで、艦娘達が一斉に主砲や魚雷発射管を向けたり、艦載機の発艦準備に入り……
「その様な事……、この大和が許す訳にはいきませんっ!!!」
大和がそう叫んだ直後、艦娘達の主砲が一斉に火を吹き、魚雷発射管が魚雷を撃ち出し、夥しい数の艦載機達が爆撃や雷撃を開始し、辺りには凄まじい数の爆発音が響き渡り、その中に微かに戦艦夏姫の断末魔の叫びが混ざるのであった……
「まあ……、こうなるよな……」
「特に大和の場合、提督に無理矢理純潔を散らされていると言う話だからな……、この手の話題には過敏になるだろう……」
「つか、あいつ見たところ生えてなさそうだったんですけど、幼女捕まえた後何する気だったんでしょうね?全身舐め回すつもりだったんですかね?」
「へっ……、汚ぇ花火ッス……」
そんな中、駆逐艦娘達の艤装の修理を行っていた戦治郎、空、シゲ、護の4人が、爆砕される戦艦夏姫の姿を眺めながらこの様なやり取りを交わし
「おぅ、次からは体調悪かったら無理して遠征に参加しなくていいからなぁ」
悟は治療を終えた駆逐艦娘に向かってそう言い放つのであった
その後、駆逐艦娘達は戦治郎達にお礼を言うと、4人揃って仲良く自分達の拠点へと帰って行き、戦治郎達はその姿が見えなくなるまで見送るのだった。そして彼女達の姿が見えなくなったところで……
「シャチョー、ここから仕掛けられるみたいッスけど、どうするッス?」
不意に護が戦治郎に対してこの様な事を尋ねる。どうやら彼女達を助けに向かっている間に、戦治郎達は護のサイバー攻撃の有効範囲内に入っていた様だ
護の言葉を聞いた戦治郎が空を見上げたところ、空には沈む夕日と共に薄っすらと星と月が姿を現しており、それを確認した戦治郎は……
「桂島の通信設備を潰すのは、日が完全に沈んでからだ。それまで俺達はここで待機すんぞ」
この様な指示を飛ばし、夜の到来をひたすら海上で待つ事にするのであった……