※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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病院から脱走せよ

戦治郎達が所定に位置について作戦開始時刻になるまで待機していた頃、佐世保オパンチュパラダイス鎮守府付近にある病院では、見舞いに来た赤城と病院に入院している鳳翔が楽しそうに談笑していた

 

鳳翔の容態に関してだが、入院した当初はどうして彼女は立っていられたのだろうか?と彼女を診察した医者が疑問に思うほど衰弱していたのだが、今の彼女はその事実がまるで嘘だったかの様に回復しており、鳳翔が望めばすぐにでも退院が出来る状態になっていた

 

だが鳳翔が入院する際彼女の事情を知った医師達の思いと、佐世保オパンチュパラダイス鎮守府からの要請で彼女の退院は頑なに認められなかったのであった。鳳翔が退院するタイミング……、それは病院側が赤城を通して桂島泊地の件が片付いた事を知らされた時になるのである

 

そんな赤城は自身の師とも呼べる鳳翔がこの病院に入院した日から、毎日の様に鳳翔の見舞いの為に病院に訪れ、鳳翔が意識を取り戻した時は喜びの余り彼女に抱き着き、思わず涙を流したそうだ

 

尤も、彼女が頻繁に鳳翔の下に訪れているのは、ただ単純に見舞いの為だけではない。鳳翔の事を桂島の提督から守る為……、護衛する為に来ているのである。その為彼女のすぐ傍には彼女の艤装が入った、かなり大きな金属製のキャリーバッグが置いてあった

 

赤城は鳳翔を桂島泊地から連れ出した際、桂島の提督が鳳翔を泊地に連れ戻す為に、何か行動を起こすのではないかと考え、自身の鎮守府の提督であるモモロウ大将こと兼継に鳳翔の護衛をさせて欲しいと申し出たところ、二つ返事で了承してもらったのである。これについては、どうやら兼継も赤城と同じ事を考えていたらしく、鳳翔と面識がある赤城に鳳翔の護衛を頼もうと考えていたところだったそうだ

 

さて、こうして2人がお喋りをしている間にも時は過ぎ、2人が気付いた時には太陽はすっかり沈んでしまい、直後に院内に面会時間終了を知らせるアナウンスが流れ始める

 

「それでは鳳翔さん、また明日お会いしましょう……」

 

アナウンスを聞いた赤城が、名残惜しそうに鳳翔に別れを告げ、部屋を出て行ったところで……

 

「鳳翔は赤城に本当に慕われているようだな」

 

鳳翔のベッドの下から突如影が伸び、その影が人の形を作り上げたところで影がこの様な言葉を口にする。そう、赤城同様鳳翔の護衛を担当している旧神達のリーダーであるクタニドである。彼女はあの後すぐに鳳翔の下へと向かい、周囲の混乱を避ける為に昼間など人が多い時間帯は魔法を使って鳳翔の影の中に潜み、夜になるとこうして姿を現し鳳翔の話し相手をしながら、彼女の護衛を行っていたのである

 

「ええ……、そうですね・・・・・・」

 

影の状態から完全に人の姿となったクタニドの言葉に対して、鳳翔は少々暗い表情をしながらこの様に返答する。そんな鳳翔の様子を見たクタニドが、鳳翔に向かって怪訝そうな表情を浮かべながら何事かと尋ねたところ……

 

「先程の赤城さんの言葉を、私が反故にする様な感じがして……、少々心苦しいんです……」

 

鳳翔は暗い表情を浮かべたまま、クタニドの問いに対してこの様に答えるのであった

 

そう、鳳翔は赤城と会話をしている最中に、クタニドから戦治郎達が所定の位置に着き、作戦開始の為に動き出した事を伝えられたのである。作戦が開始されれば、自分はクタニド達と共に病院を抜け出し、桂島へと向かわなければならない……。そうなると先程の赤城との約束を守れなくなってしまう、鳳翔はそれがどうしても気になって仕方が無かったのである

 

鳳翔のその言葉を聞いたクタニドは、溜息を吐きながらやれやれとばかりに頭を振った後、浮かない顔をした鳳翔に向かってこう言い放つ

 

「気持ちは分かるが、そうしなければお前達は何時までもあの地獄を味わう事になるんだぞ?最悪、お前はあの提督に始末され、永久に赤城と会えなくなってしまうかもしれないのだぞ……?それでもいいのか……?」

 

「それは……、そう……、そうですね……っ!すみません、目先の事に囚われて変な事を言ってしまいましたね」

 

クタニドの言葉を聞いた鳳翔は、そう言うとベッドから起き上がり脱走の準備の為に着替えを開始する。その間クタニドは、自分と同じ様に影の中に潜んでいたものの、退屈過ぎて眠ってしまったクティーラを起こし、作戦の再確認を開始するのであった

 

こうして鳳翔達が準備を進める中、突如クタニドの頭の中に魔力がこもった翔の声が響く。どうやら鼓翼の中に刻み込まれた念話の魔法の知識を使い、クタニドに連絡して来た様だ

 

『クタニドさん、護が桂島泊地の通信施設を予定通り掌握しました』

 

『分かった、では今から鳳翔を連れて佐世保駅付近まで向かうぞ』

 

『ああ、それなんですけど……』

 

クタニドが翔と念話でこの様なやり取りを交わしていると、不意に外から車のエンジン音が聞こえ始め、それは次第にこちらに近付いて来るのであった……

 

『加賀さんって言う僕達の仲間が、車を出してくれるそうです。クタニドさん達は、その人の車で佐世保駅付近まで向かって下さい』

 

『成程、チンタラ歩いていたら提督の手先に襲われかねんし、何より鳳翔が疲れるからな……。了解した、そいつもどうやら既に近くに来ている様だし、すぐに合流するとしよう』

 

クタニドはそう言って翔との念話を終え、今しがた翔から伝えられた事を鳳翔に伝え、鳳翔がそれを了承すると同時に着替え終わった事をクタニドに伝えたところ、クタニドは鳳翔をお姫様抱っこするなり、クティーラと共に病院の窓から飛び出し、病院の駐車場にたった今駐車された青いWRXの目の前に、音も無く着地して見せるのであった

 

因みに鳳翔がいた病室は、刺客が病院の入口から侵入した時、鳳翔の病室に辿り着くまでの時間を稼ぐ為と、屋上に刺客を誘い込んで赤城の艦載機で刺客を撃退する為に入院棟の最も高い階層にあったりする

 

「……貴女がクタニド……、でいいのかしら……?」

 

突然の出来事に驚きWRXの運転席で僅かな間硬直していた加賀が、我に返るなりWRXから降りて、窓から飛び降りた時の恐怖で目を回している鳳翔を抱きかかえる目の前の女性に対してそう尋ねると……

 

「ああそうだ、私が旧神クタニドだ。お前が加賀だな?翔から話は聞いている、協力を申し出てくれた事、本当に感謝するぞ」

 

「私はクティーラ!よろしくねっ!!」

 

クタニドはニカッと笑いながらこの様に答え、それに続く様にしてクティーラが加賀に簡単な自己紹介を行う。と、その直後

 

「クティーラってこんなに小さかったんだっ!?」

 

「いや皐月……、クティーラからしたら私達の方が小さいと思うんだが……?」

 

WRXの後部座席に座っていた皐月と長月が降りて来て、クティーラの姿を見るなりそう口にするのだった

 

「何だ、連れがいたのか」

 

「ええ、この子達も私と一緒に話を聞いていたので……」

 

「成程な、で、その車だと今の状態では全員乗る事が出来んな……」

 

「ですね……、さて……、どうしましょうか……?」

 

「それならばこうしよう」

 

皐月と長月の姿を見たクタニドが、加賀とこの様な会話を交わしたところで、クタニドは加賀に自身が抱きかかえていた鳳翔を渡した後、魔法で再び鳳翔の影の中に身を隠すのであった

 

その後、加賀は未だに目を回している鳳翔を助手席に乗せ、クティーラは皐月と長月に挟まれる形で後部座席に座り、全員がWRXに乗った事を確認すると、加賀は佐世保駅付近の海岸目指してWRXを発進させるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして加賀達が病院の敷地から出たところで、いくつかの影が動き出し彼女達の後を追い始める……。この日、夜の県道11号線には硝煙の臭いが漂い、幾多もの銃声が鳴り響く事となるのだった……

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