※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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天を吹く風と陥落の気配

私は両親の顔を知らない、物心ついた頃にはとある施設で生活していた

 

その施設には親から捨てられた者から戦災孤児など色んな理由で親族と暮らせない子供が沢山いた

 

私がこの施設にいる理由を知ったのはここ最近の事で、どうやら私はこの施設の正門前に捨てられていたそうだ、最初は捨てられたという事実にショックを受けたが私は両親がどの様な人物だったのか全く知らないので早々に割り切ってすぐに立ち直っていた

 

ある日、施設の職員が私達に尋ねてきた

 

「この中に艦娘になりたい子はいるかい?」

 

この施設は艦娘の育成支援もやっており、希望するのであれば軍に入隊するまで軍学校と同じレベルの教育や訓練などをしっかりサポートしてくれるそうで、私は迷う事なく艦娘になる事を希望した、この施設と施設の仲間達を守りたいからと周囲には言っていたが、両親に捨てられるような私の命が役に立つなら……、両親の事は割り切ったつもりでいても私の無意識の中の何処かでそんな事を思っていたのかもしれない

 

その日から毎日のように厳しい訓練や難しい授業が始まり、私は置いていかれないよう必死に食らいついて頑張っていた、いつか立派な艦娘になる事を夢見て……

 

そんなある日、私達はドイツの艦娘達と交流戦をやる事になったと職員から告げられた

 

最近になってドイツでも艦娘の配備が決定したそうなのだが、如何せん最近になってやっと配備し始めたものだからドイツ艦娘の練度が足りないそうなので親睦を深める意味も込めて合同演習をする事となり、私達の施設は訓練生同士での演習に参加する事になったのだ

 

私達はドイツへと飛び対戦相手との挨拶を終えた後に海上で訓練をやっていたのだが、そこを深海棲艦に襲われてしまったのだ、何人もの仲間が私の目の前で沈んだ、私を含めた数人が捕まってしまった、私達を助けようとした教導艦の先生も必死に戦っていたけど結局数の暴力に負けてしまい沈んでしまった……

 

捕まった私達は深海棲艦の拠点の地下牢に閉じ込められていた、私が入れられた牢の中には妖精さん達も捕まっていて、そのおかげか寂しさといったものは感じる事はなかった、鉄格子の間に金網が張ってあったのは妖精さんの脱走を防ぐためなのだろうか……

 

仲間の1人が牢から出され何処かへ連れて行かれた、どれだけ時間が経ってもその子がこの地下牢へと戻ってくる事はなかった、それから1日に1人、また1人と牢から出されて戻ってこなくなった、気づけば私と妖精さん達しか残っていなかった……、何が起こるのか分からなくて、それが恐ろしくて一睡も出来なかった……

 

そして私はその日を迎える……、はずだった……

 

地下牢の入口で誰かが騒いでいたようで、何事かと思いそちらを見ていたらほんのちょっと甲高い音が聞こえたと思ったら急に扉が物凄い勢いで飛んでいき、その上に乗っていたここの番をしていたと思われる深海棲艦が扉から落下してしばらく転がった後こちらを見ながら停止したのだ……、この深海棲艦……、死んでる……?

 

「ひっ!」

 

思わず声が出てしまったが、この深海棲艦を殺した奴はどうやら私の悲鳴を気にも留めていないのかゆっくりと歩いて近づいて来ていた

 

その足音が段々と大きくなっていく中で牢屋の前に小さな影が現れる、妖精さんだった

 

牢の中の妖精さん達の反応を見る限り、どうやらその子もこの子達の仲間のようで助けを呼びに行っていたみたいだ、足音がする方向へおいでおいでとやっていると遂に妖精さんが連れてきた人物の姿が見えた……、見えてしまった……

 

戦艦水鬼、深海棲艦の上位個体と言われる鬼級や姫級の中でも相当上位に君臨する存在が鉄パイプを肩に担いで姿を現したのだ

 

それを見た妖精さん達は牢の隅にお団子みたいに固まってガクガクと震えていた、私も一瞬呆然としたもののすぐに意識が戻り、静かにこちらを見ている戦艦水鬼と目が合った、凄く怖い……、多分あのリ級を殺したのも扉をぶっ飛ばしたのもこいつがやったのだろう……、そう思うと怖くて怖くて仕方がなかった……

 

もしかしたらこの拠点の深海棲艦と仲が悪いだけで本質的な部分は同類で妖精さんを騙してここに来たのかもしれない……、私を脅して言いなりにさせてから酷い事をしてくるのではないか……、そんな事を考えると身体の震えが止まらなくなった……、でも私も艦娘の端くれ、こんな事で深海棲艦なんかに屈してたまるかっ!

 

「な、何よ貴女! そんな事して私がこ、怖がって言う事聞くとでも思ってるのっ!」

 

言った! 言ってやった! ありったけの勇気をかき集めて言ってやったんだ! 相手はキョトンとした表情のままこちらをまだ見ている、もしかして私のさっきの言葉で気圧されたのか? ならばこのまま捲し立てれば……っ!

 

「さ、さっきは派手な登場の仕方した割に何も言わないなんて、もしかして私に恐れをなして「おい」ひゃいっ!」

 

唐突に話しかけられてつい驚いて裏返った声で返事しちゃった……、恥ずかしい……

 

「危ねぇからちょっちそこをどきな、そうそうそっちそっち、妖精さん達いる方行っときな……、せぁりゃぁっ!」

 

戦艦水鬼に言われるまま妖精さん達のところへ移動すると、この戦艦水鬼はなんと手に持った鉄パイプで鉄格子と金網を叩き斬ってしまったではないか

 

訳が分からない……、鉄格子も金網も簡単に斬れるものだったっけ? それ以前に鉄パイプって物を斬るものだったっけ? それよりも牢に出入口出来ちゃったけどどういう事なの? もしかしてこの人は本当に妖精さん達を助けに来たの? あの人は深海棲艦の仲間じゃないの? 疑問が頭の中を駆け巡る……

 

「おい、大丈夫かあまつん?」

 

声をかけられて意識が戻る、あまつんって誰? もしかして私の事?

 

「え、えっと……」

 

「あっ反応出来るのな、じゃあ細けぇ事は後だ、妖精さん達連れてこっから脱出すんぞ、って事で乗れ」

 

戦艦水鬼はこちらに背中を向けてしゃがみ込む、乗れって事は私をおんぶするって事? 取り敢えず言われるまま背中に乗るとよっこいしょとか言いながら立ち上がる、何かおじさんみたいな戦艦水鬼だな……

 

「よっしゃ、んじゃしっかり捕まっていろよ!」

 

「えっ?」

 

そう言って戦艦水鬼は走り出すのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今出口を求めてあまつんをおんぶしたまま全力疾走している俺は元修理屋の現場でも頑張る経営者、強いて違うところをあげるとすれば戦艦水鬼に生まれ変わっちゃった事かなぁ……

 

「ぎゃあああぁぁぁっ!!! 速い速い速いいいいぃぃぃっ!!! 怖い怖い怖い助けてえええぇぇぇっ!!! 嫌あああぁぁぁっ!!! 落ちるうううぅぅぅっ!!!」

 

あまつんエキサイトし過ぎだろうよ、さっきからおっちゃんの首見事に締め上げちゃってるからな~、早く気付いて~……、おっちゃん脳に血が行かなくなって倒れそう……

 

そんな事考えながら走ってたら、目の前に深海棲艦が姿を現す……、邪魔じゃどけぇぃ!!! 勢いを殺す事なく飛び蹴りを放って相手の首を蹴り飛ばす

 

「ひぃっ!!!」

 

あっあっあっ……、この子グロい映像見たせいで余計締まりが良くなったぞぉ~……、呼吸もし辛くなってきたぞぉ~……

 

それでも俺は脚を止める事なく出口へ向かって突っ走るのであった、今はこの子の命が最優先だからな、足止めなんて喰らってたまるかっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一時帰還!」

 

「おっ旦那、おかえり……ってその子はどうしたんだ?」

 

防衛チームのとこに戻ったら摩耶が出迎えてくれた、しかし旦那かぁ……、おめぇも鷲四郎みてぇな呼び方するのな……

 

俺の背中でぐったりしているあまつんを降ろしながら今の侵攻状況を説明する、更に光太郎と摩耶と翔を呼んで移動中見つけた遺体の事を話しておいた、あまつんには拠点制圧が完了するまでは黙っておいて欲しいと伝えておいた、今の状況であんなの見せられたら自殺しちまいそうだからな……、他の奴には機会見てこっそり伝えてもらう事にした

 

「んじゃまた行ってくるわ、次戻って来るときは制圧完了の知らせ持って来るから期待しとけよっ!」

 

あまつんと捕まっていた妖精さん達を防衛チームに預けて俺は再び拠点へ向かって走り出すのだった、恐らく俺が戻る頃には代表以外殲滅完了してるだろう……、まあ美味しいとこは俺が頂くつもりだけどなっ!

 

今まで島全体に響き渡っていた警報もノイズを吐きだした後沈黙した、いよいよこの拠点の最後の時が近づいてきたようだ……

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