加賀達が目的地である佐世保駅付近の海岸に辿り着き、近くの建物の駐車場に車を駐めたところで、数台のパトカーが先程加賀達が走って来た道を通り走り去っていく……。どうやら先程の銃撃戦を行った犯人を捜しているのだろう……
「まあ、どれだけ捜しても見つからないだろうがな」
その様子を見たクタニドが、そう言ってクックックッと笑いを零す
「記憶改竄の魔法か……、本当にお前達神話生物は何でもアリだな……」
「それを何で追跡者達に使わなかったんだよぅ……、そしたらもっと楽に移動出来たと思うんだけどな~……」
クタニドの言葉に対して、加賀のWRXのトランクルームに格納されていた艤装を装着しながら長月が呆れ気味に呟き、長月同様艤装を装着している皐月がこの様に言葉を続けた
「それで追跡者達の記憶にある鳳翔さんを追っている理由を忘れさせたら、追跡者達が捕まった後何も証言出来なくなると思うのだけど……?」
「クタニドさんが記憶改竄すると、とことんまで忘れさせるからね……。前にやった時はやり過ぎて廃人みたいに……」
長月達よりも早く艤装の装着を終えた加賀が皐月の言葉に対してこの様に返し、それを聞いた赤髪の青年の姿をしたヴォルヴァドスが余計な事を口走ろうとした瞬間、クタニドが余計な事を言うなとばかりにヴォルヴァドスの頭を小突くのだった
因みにこの時クティーラは……
「いいな~……、艦娘の艤装ってかっこいいな~……」
長月達の艤装を目を輝かせて見つめながら、この様な事を呟くのだった。これがクティーラが艦娘に憧れる様になる理由になるとは、この場にいる誰もが予想出来ないでいた……
こうしている間に全員の準備が整い、クタニドが加賀のWRXを魔法で作り出した別空間に格納した後、海岸に近付いて念話で付近に潜伏させていたダゴンとハイドラに呼び掛ける。するとその直後にダゴンとハイドラが海中から静かに姿を現す、どうやら派手に登場した際に発生する音で、近隣住民にダゴン達の存在に気付かれない様にする為に、クタニドが予め2柱に指示していた様だ
「よっしゃ!遂に俺達の出番だなっ!」
「とは言っても、あたい達は囮なんだけどね……」
姿を現すなりダゴンがそう言って気合いを入れる一方で、その妻であるハイドラはそう言ってガックリと肩を落とすのであった
「そうぶぅ垂れるなハイドラ、お前達が囮を務めん事には私達の作戦が上手くいかんからな」
そんなハイドラに対してクタニドがそう言うと、ハイドラは分かってるってと短く返答してみせるのだった
「お二方……、私と私の仲間の為に無理をさせてしまって申し訳ありません……」
「気にすんな鳳翔っ!お前と翔は俺達の恩人なんだ、そんな恩人が困ってるってんなら力を貸すのが道理ってもんだろうがよっ!」
「そうそう、派手に暴れられないのは何かモヤっとするけど、それを我慢する事があんた達に対しての恩返しになるってんなら、あたいは喜んでそうさせてもらうよっ!」
「お二方……、ありがとうございます……っ!」
その直後、鳳翔がダゴン達に向かってこの様な言葉を口にしたところ、ダゴン達はニカッと笑いながらこの様に答え、それを聞いた鳳翔は2柱に向かって深々と頭を下げるのだった
尚、その異様な光景を見ていた加賀達は、ゾアで慣れたはずだから大丈夫だろうと思っていた自分達の認識の甘さを恥じながら、その場に硬直してしまうのであった……。まあこれは仕方が無い事であろう、何たってあの大人しそうな鳳翔が、目の前に出現した巨大な2匹の半魚人と平然と会話しているのである……。この光景を赤城が見たら、一体どの様なリアクションをするだろうか……?
その後鳳翔達はダゴン達の背に乗り、全員がダゴン達の背中に乗ったところを確認したクタニドがワープする為の詠唱を開始し、クタニドが詠唱を終えたところで鳳翔達は佐世保の街から姿を消してしまうのであった
その頃桂島泊地にある艦娘寮の一室では、この泊地に所属する高雄が暗い表情を浮かべたまま、自分のベッドの上に腰掛けていた
彼女はこの泊地の主力艦隊のメンバーの内の1人なのだが、先日行われたミッドウェー攻略に参加する艦娘を決定する為の模擬戦で佐世保の長月と戦い敗北、候補から外されてしまったのである
そしてその事が桂島の提督の逆鱗に触れ、彼女はその日から今日まで泊地の地下にある牢獄に監禁され、その豊満な身体をこの泊地に常駐する提督の手下と成り下がった憲兵達に、毎日の様に弄ばれたのであった
その最中、彼女は自分を慰み物にする憲兵達の言葉を耳にする……
「期間限定とは言え、新しい女を抱けるのは嬉しい限りだなっ!」
「前にもらった龍田とか言う女は、もういくらブチ込んでもうんともすんとも言わなくなって、抱いてても面白くないですからね~」
「まああんだけ薬使ってりゃそうなるだろうよ、ああ~、あいつも最初の頃は良かったのにな~……」
「ブチ込む度にアヒンアヒンとよがり狂ってましたからね~」
「あ~、どうせだからこいつとあれ、交換してもらえねぇかな~?」
「無理だろ、提督さんに薙刀突きつけて脅したせいで魚の餌確定してる奴と、まだ主力として使える女、価値が全然違うだろうが」
「だったら、こいつ調教して提督さんに歯向かわせるか?」
「お?死にたいのか?俺は止めねぇぞ?」
この憲兵達をやり取りを聞いた高雄は、ただただ深い絶望感に襲われるのであった……
どうして自分達はこんな目にあっているのか、どうして誰も助けに来てくれないのか……、何時までこの地獄が続くのか……、もしかして自分は死ぬまでこの泊地から出られないのだろうか……?そんな事を考えた高雄の頬を一筋の涙が濡らしたその直後……
突然外からまるで巨大な何かが海面に叩きつけられる様な音が鳴り響き、直後に泊地内にサイレンがけたたましく鳴り響き始めるのであった
「な、何っ!?」
唐突過ぎる出来事に驚いた高雄が、そう叫びながら部屋の窓の方へと駆け寄り、窓を開いて外の様子を確認する。その直後に泊地内に設置されたサーチライトに灯がともり、ある一点にその光を集中させ、先程の音の正体を照らし出すのであった
「なっ!??」
それを見た高雄は、思わず声を上げて硬直してしまう……。サーチライトに照らされた先にいたのは、小山の様に巨大な半魚人の様な何か……、それが2匹もいるのである……
それを見た高雄は我に返るなり、部屋を飛び出し工廠へと向かう。あの存在はきっと危険な存在だ……、放置してはいけない何かなんだ……、そう直感した高雄は艤装が保管されている工廠目指して、一直線に走り出すのだった
その後高雄は自分と同じ考えに至った艦娘達を率いて、この巨大な何かを討伐する為に攻撃を開始する。しかしいくら攻撃を受けてもこの巨大な何かは身動ぎ一つせず、時折お返しとばかりに海面をその巨大な両手で叩き、高雄達に向けて水飛沫を飛ばしてくるのだった
その飛沫はかなり勢いがあり、駆逐艦娘や海防艦娘はそれを受けた途端勢いに負け、思わず尻もちをついていた。それでも彼女達は何とか起き上がり、すぐさま態勢を整えて攻撃を再開するのであった
こうして高雄達が巨大な何か……、ダゴンとハイドラ相手に奮闘している最中、泊地の本庁の扉がひとりでに開いていたのだが、高雄達はダゴン達の相手に必死過ぎた為、この事に誰も気付く事が出来なかったのである……