桂島泊地を脱出したクタニド達が、翔達と合流する為に奄美大島目指して進んでいる中、竹島の隣にある硫黄島を越えた辺りで突然ダゴンが大声を上げる
「北の方で大量に引き波が発生してやがる……っ!?どうやら追手が来てるみたいですぜっ!!!」
「こりゃまた凄い数だね……、数百くらいあるんじゃないかい?」
ダゴンの叫びを聞いたハイドラが海面を揺らす引き波の数を大雑把に数え、それを自分達の背に乗るクタニド達に伝えたところ
「泊地の艦娘は全て連れて来たはずなのだが……?」
「まさか……、佐世保鎮守府と鹿屋基地の艦娘が……?」
「いや、それは無いだろう。佐世保鎮守府は桂島泊地の実態を知ってからは、桂島の司令官が変わらない限り桂島とは関りを持たないと宣言していたそうだし、鹿屋基地に至っては桂島の方から何があってもこちらに関わるなと言われたらしいからな……」
「確か鹿屋基地の話はウチの司令官が、桂島泊地の情報集めをしている時に入手した情報だったっけ?」
ハイドラの言葉を聞いたクタニド、高雄、長月、皐月の3人と1柱が、この様なやり取りを交わす。と、その時だった
「……そんな……、そんな事が……」
「どうやらあの提督は、アムステルダム泊地の提督以上の屑の様ね……」
偵察機を飛ばした鳳翔と加賀が、この様な言葉を口にする。鳳翔の方は偵察機から送られた映像を確認するなり、信じられないと言った様子で驚きの表情を浮かべながらその身を震わせ、加賀の方は心底憎らしそうに顔を歪めながら、ギリリと歯軋りするのであった
そんな2人の様子が気になったクタニドが、魔力を使って艦載機のような物を作り出し、加賀達を真似て発艦させて2人が見たものを確認すると……
「まさかこの様なものまで持ち出してくるとはな……」
クタニドは顔を顰めながら、思わずそう呟いてしまうのであった……
その刹那……
「……っ!?仕掛けて来たぞっ!!ダゴンッ!ハイドラッ!速度を上げろっ!!!」
何かに気付いたクタニドが一瞬だけ驚きの表情を浮かべた後、その表情を引き締めながらダゴンとハイドラに指示を出し、自身は大急ぎで自分達を覆い尽くす様に魔法障壁を展開する。その直後、障壁に何かがぶつかるなり大爆発を起こし、それを見たダゴン達の背に乗る泊地の艦娘達が一斉に悲鳴を上げる……
「今のはまさか砲撃かっ!?そうなると……、追手の中に戦艦がいるのかっ?!」
「そうだ長月っ!!私達を追って来ているのは全て戦艦艦娘だっ!!それも……」
驚愕の表情を浮かべる長月がクタニドに向かって叫び、それに対してクタニドが返答しようとしたところで、先程とは比べ物にならない程の量の一式徹甲弾と、夥しい数の二式水戦改がクタニド達の下へと殺到するのであった……
「急げぇっ!!ダッシュダッシュゥッ!!!」
クタニド達と合流する為に奄美大島付近の海で待機していた戦治郎達は、北の方から爆発音が聞こえて来た瞬間、すぐさまそちらの方へ移動を開始した
「一体何処の馬鹿だよっ!!ったくよぉっ!!!」
「泊地の艦娘は全員連れてる、他の鎮守府や泊地とは連絡が取れないから増援は無いと思ってたんだけど……。まさか提督の切り札……?」
「可能性はあるかもな……、一体どの様な物かは皆目見当が付かんが……」
その道中でケートスに乗る輝が愚痴を零し、それを耳にした光太郎がそう呟くと、空が反応してこの様な言葉を発した後、提督の切り札と思われるものの正体について考え始める
「大和さんは何か知らないんです?確か秘書艦やってたんですよね?」
「すみません……、心当たりがあり過ぎて……」
「oh……、その返答は予想外だったッス……」
空が黙考を開始したのとほぼ同じタイミングで、シゲが大和にこの様に尋ねたところ、大和は困った顔をしながら返答し、その内容を聞いた護が思わずそう呟く……
「何が来たって俺達がやる事ぁ変わらねぇっ!!艦娘だったら可及的速やかに無力化して、それ以外だったらいつも通りぶっ飛ばすだけだっ!!!」
シゲ達のやり取りを聞いていた戦治郎がこの様な事を言ったところで、水平線の向こう側からダゴン達が姿を現し、それを視認した翔がクタニドと念話を始めると……
「ちょっ!?それは本当ですかっ?!」
「なっ!?何だあれはっ!?!」
クタニドの話を聞いた翔が驚きの余り思わずそう叫び、身長130mと言う巨大さを誇る戦闘形態となったゾアが、その背の高さを活かしてクタニド達を追う存在を目視したところで、動揺しながら声を上げる
その後クタニド達が凄まじい速度で戦治郎達とすれ違い、先程の翔達の反応を見た戦治郎達が気合いを入れて戦闘態勢に入ったところで、追手がようやく姿を見せる……
「なっ!??」
「……えっ?」
追手の姿を見た戦治郎と大和が、愕然としながらほぼ同時に驚きの声を漏らす……。他のメンバーも追手の姿を確認するなり思わず目を見開いて硬直、この場にいる全員に動揺が走るのであった……
戦治郎達が見たもの……、それは試製51cm砲2基とカタパルトを搭載した小型の艤装を装着した、およそ数百人と言う大和の大群であった……
何故戦治郎達はそれが大和だと分かったのか……、それはこの大量の大和達全員の顔が、現在シゲと護の間に立っている桂島泊地の大和の顔と寸分狂わず全く同じであったからだ……
「これは……、まさか……っ!?」
「間違いなく大和のクローンだろうなぁ……、恐らく例の屑が大和を犯った時に遺伝子情報を手に入れて、密かに量産してやがったんだろうなぁ……」
嫌な予想が頭を過った通が言葉を発すると、爪が掌に食い込む程拳を握り締めた悟が震えながら己の予想を言葉にするのであった……
「桂島の提督は、もう既にクローン技術を手に入れていたのか……っ!?」
「十中八九、プロフェッサーから購入したのだろうな……。あの男は金の為なら、本当に何でもやるからな……」
悟同様怒りの余りにその身を震わせる光太郎がそう言うと、それに答える様にして剛が言葉を紡ぐ。と、剛が発言を終えた次の瞬間、突然バシャリ!と言う音が辺りに響き渡り、皆が何事かと思いそちらに視線を送ると、そこには海面に座り込んだ大和の姿が映し出されるのであった
「あれ……?どうして大和があんなに沢山……?大和は……、大和は……?……大和は大和なのでしょうか……?」
どうやら大和は、自分と全く同じ顔をした大和達の群れを見て、自分が本当にオリジナルの大和なのかどうかが分からなくなり、混乱し始めてしまった様だ……
「どうするんだ戦z……っ?!」
大和の様子を見て不味いと思った空が、指示を仰ぐ為に戦治郎に話し掛け様とするのだが、戦治郎の異変に気付いた瞬間空の全身に鳥肌が立ち、空は思わず言い掛けた言葉を飲み込んでしまう……
「空さん、一体どうしたんだ?」
「何か顔色が悪いぜ?」
戦治郎に話し掛け様としたところで、突然口を噤んでしまった空の様子を見て怪訝に思った木曾と天龍が、空に対してそう尋ねると……
「……全員戦治郎から離れろ……」
空は戦治郎から離れる様に後退りしながら、皆に向かってボソリと指示を出す……。その刹那……
突然戦治郎がまるで猛獣の様に咆哮を上げるなり、大妖丸を勢いよく引き抜いて大和達の群れに突撃して行くのだった
「えちょっ!?アニキッ?!!」
「行くなシゲッ!!!」
その様子を見ていたシゲが突然豹変した戦治郎の下へ駆け寄ろうとした瞬間、空が叫びながらシゲの腕を掴んで彼を止める
「何で止めるんですかっ!?」
「今のアイツに近付くな……」
空の腕を振り解こうと腕を振るうシゲが、苛立たし気に空に向かってそう尋ねたところ、空は短く返答してから自身の腕に視線を向ける。それに倣ってシゲが空の腕をよく観察しその腕に鳥肌が立っている事に気付くと、驚愕しながら空の顔を見るのであった
「これって……」
「恐らく俺の本能が警告しているのかもしれん……、今のアイツに不用意に近付けば、取り返しがつかない事になるぞ、と……」
シゲと空がこの様なやり取りを交わした後、2人は同時に大和達の群れの中で暴れ回る戦治郎の方へと視線を向ける……
そんな戦治郎の左目からは、彼の能力が発動している印となる血の様に赤い炎が勢いよく噴き出していた。但し、その炎の中に浮かび上がっている文字は『帝』ではなく『鬼』となっていた……