※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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弱ったお腹に煮込みうどん

空達が桂島泊地の工廠の地下で、クローン大和に関する装置の破壊とガサ入れを行っている頃、鳳翔達と合流する為に南に向かった光太郎達はと言うと……

 

「は~い!新しいおうどん上がったよ~!」

 

「ここには悪い提督とやらはおらんからなっ!遠慮せず食すがよいっ!!」

 

奄美大島と屋久島の間に浮かぶ悪石島で、合流した鳳翔達と煮込みうどんを食べていた

 

何故この様な事になっているのか、何故うどんなのか……、それについては順を追って話していこうと思う

 

鳳翔達との合流を果たす為に南に向かう事となった光太郎達は、戦治郎の咆哮のせいで中破してしまった艦娘達を戦闘形態のゾアの背中に乗せて移動を開始、その道中で翔がクタニドに連絡を取ったところ、クタニド達は悪石島で待機している事が判明し、光太郎達はその情報を基に悪石島へと向かったのである

 

そうして悪石島に辿り着いた光太郎達は、一行の姿を見て驚いた桂島泊地の艦娘達に一斉に砲を向けられるのだが、それを鳳翔や加賀達が制した事で事無きを得るのだった

 

その後お互いに自己紹介と現状報告を行ったところで、突如何処からともなく辺りに腹の虫が鳴り響く。それを耳にした翔が眉をピクリと動かし、辺りを見回したところ恥ずかしそうにお腹を押さえる桂島の艦娘を発見、そしてその直後にその腹の虫に呼応する様にして次々と桂島の艦娘達の腹が鳴り始めるのであった

 

それが翔のやる気の呼び水となる……

 

料理人である翔が知覚出来る範囲に、腹を空かせている存在がいる……。それは翔にとって決してあってはならない事……、許されざる出来事なのである……

 

「細かい打ち合わせなどは後にして、先ずはご飯にしましょうっ!!!」

 

こうしてやる気になった翔は、そう叫ぶなり即座に鳳翔から桂島の艦娘達の体調を聞いて献立を考え、献立が決まったところで翔は艤装を展開し料理の準備を始める

 

鳳翔の話によると、どうやら桂島の艦娘達の体調は芳しくないそうで、主に胃腸が弱っている様であるとの事だった。翔はその情報から、胃腸に優しい煮込みうどんを作る事を決意したのである

 

そして準備が整い、いざ調理を開始しようとしたところで、ゾア、鳳翔、そして扶桑が手伝いを申し出て来るのであった

 

「扶桑さん、艤装の修理は大丈夫なんです?」

 

「形代の事を護さんにお願いしている間、私自身は翔さんのお手伝いをしようと思ったんです。形代は近くの子達を庇ったせいで他の子よりも損傷が激しく、私の手ではどうしようもないので……」

 

翔が扶桑にそう尋ねたところ、扶桑は伏し目がちにこの様に答えた後、護の方へと視線を送る。その視線の先には、料理が出来るまで艤装の修理を行おうと考えた海賊団の艦娘達が集まり、自身の手で可能な限りの艤装の修理を施していた

 

その中にハコを展開する大五郎の姿があり、ハコの中の作業台にはボロボロになった形代が横たわっており、そんな形代を護がハコの設備を使用して修理していたのであった

 

先程扶桑が言った様に、戦艦棲姫の黄泉個体となった扶桑の艤装である形代は、主人である扶桑だけでなく自分達の近くにいた艦娘達まで守る為に、両腕を大きく広げて自分の身体を盾にして、扶桑達を戦治郎の咆哮から守ったのである。そのせいで形代の身体は、他の者達よりもボロボロになってしまったのだ

 

因みに、戦治郎の艤装である大五郎も、形代同様他の艦娘を衝撃から守る為に自身を壁にしていたのだが、こちらは主人の戦治郎の強化の影響があった為、衝撃波の直撃を受けても無傷だったりする……

 

尤も、形代や大五郎の頑張りがあっても戦治郎の咆哮による衝撃波は完全に防ぐ事は出来ず、庇われた艦娘は小破寄りの中破、そうでない艦娘はやや大破寄りの中破くらいのダメージを受けている……

 

「成程、そう言う事ならお願いします。正直なところ、人数が人数なので少々困っていたんですよね……」

 

そういう訳で翔は扶桑達の申し出を受け、翔と扶桑は製麺を、鳳翔とゾアはうどんのつゆを作り始めるのだった

 

 

 

それからしばらくすると翔特製煮込みうどんが完成し、うどんはこの場にいる者達全員に振舞われ、うどんを食べた桂島の艦娘達は本当に久し振りのレーション以外の食事を食べられる喜びと、そのうどんの余りの美味しさに思わず涙を流し始めるのであった

 

そんな中、健康そのものなヴォルヴァドスはうどんを一口ほど口にするなり凄まじい勢いでうどんを平らげ、仕舞いには1柱で5杯も食べてしまう。そしてある程度落ち着いたところで、ヴォルヴァドスは翔に向かって丼を差し出しながら話し掛ける

 

「いや~、これホント美味しいですねっ!クタニドさん達が虜になっちゃうのがよく分かりますっ!!」

 

「気に入ってもらえて嬉しい限りですよ」

 

「特にこのつゆっ!しっかりと出汁が効いてて凄く美味しいですっ!!」

 

ヴォルヴァドスが上機嫌になってそう言った直後、ゾアがピクリと反応し……

 

「つゆは我が作ったのだが……?」

 

ゾアは不機嫌そうな表情を浮かべながらそう呟き、それを聞いたヴォルヴァドスは一瞬真顔になった後

 

「これをガタノトーアが?またまたぁ御冗談を~」

 

今度はヘラヘラしながらこの様な事を口にし……

 

「それは本当にゾアちゃんが作ったものですよ、私は具材を切るのを手伝ったり最後に味見をしただけですから」

 

「えっ?!鳳翔さん、それホントですかっ!?やるじゃないかゾアッ!!!」

 

ヴォルヴァドスの言葉を聞いた鳳翔が、笑顔を浮かべながらこの様な言葉を口にし、それを聞いた翔は驚きながらゾアを褒めるのであった

 

「これも翔の教えのおかげだっ!」

 

「やっぱり翔さんありきじゃないか~!」

 

翔に褒められたゾアが照れ隠しにそう言った途端、茶化す様にヴォルヴァドスがこの様な事を言い、それを聞いた者達が笑顔を浮かべていると……

 

「うげぇっ!?」

 

「うわぁ……」

 

大五郎の近くに集まってうどんを食べていた海賊団の面々が、突然嫌な物を見てしまったとばかりに声を上げる

 

それが気になった翔が、海賊団の集まりに近付き何があったか尋ねてみたところ、護が無言で翔にタブレットを手渡し、画面に表示されている動画を再生する。するとそこには、カプセルの中の胎児が急速に成長し、クローン大和になる行程が映し出されるのであった

 

それを目の当たりにした翔が、驚きの表情を顔に貼り付けながら護の方へ視線を向ける

 

「空さんからッス、あのクローン大和の製造プラントを潰したって文章と一緒に、この動画が送られて来たッス」

 

「これは食事中に見る動画じゃないね……、じゃなくって、桂島の提督はここまで堕ちてたのか……」

 

「これはちょい急いで修理を終わらせた方がよさそうッスね~、って事で海賊団のメンバーは、急いでうどん食って艤装の修理終わらせるッスよ~!」

 

\応っ!!/

 

護と翔がこの様なやり取りを交わしたところで、護は立ち上がるなり海賊団の艦娘達に指示を飛ばし、海賊団の艦娘達はその指示に返事をすると急いでうどんを食べ終え、修理作業を再開するのであった

 

 

 

こうして艤装の修理を終えた海賊団は、心身共にボロボロになっている龍田に治療を施している悟を残し、桂島の艦娘達の事をクタニド達に任せ、先ずは戦治郎の様子を確認する為に悪石島を発ち、戦治郎がいるであろう硫黄島付近まで移動を開始する

 

因みに、海賊団が悪石島を発つ直前に、クタニドが食事を開始した辺りから戦治郎が大人しくなっている事を海賊団に教えてくれた

 

そして海賊団が問題の場所に到着すると……

 

「ぉぉぉ……、ぉぉぉぉぉ……」

 

前方からこの様な声が聞こえて来て、思わず全員がそちらの方へ視線を向けながら身構えると……

 

「ぉぉぉぉぉぉ……っ!!!」

 

そこには大量のクローン大和の亡骸に囲まれながら、海面に両膝を突いて両目から血の涙を流して慟哭する戦治郎の姿が映るのであった……

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