「あれは……、泣いてるの……?」
「恐らくそうだと思いますが……、戦治郎さんは一体どうなさったのでしょう……?」
血の涙を流しながら慟哭する戦治郎の姿を見て、川内が驚きながらもこの様な事を口すると、それに続く様にして神通がやや困惑しながら疑問を口にする
「突然暴れ出したかと思えば、今度は泣いてンのか……」
「新しい能力は、発動したら精神が不安定になるんッスかね~?」
その傍らで、江風と護がこの様なやり取りを交わしていると……
「ご主人様っ!!!」
そんな戦治郎の姿を見る事に耐えられなくなったのか、太郎丸が戦治郎に呼び掛けながら走り出す。その様子を見た光太郎が慌てて太郎丸を止めようとするのだが、太郎丸は光太郎が伸ばす腕を掻い潜り、己の主の下へ辿り着くなり戦治郎を強く抱き締めながら、その目に涙を湛えながら必死になって戦治郎に何度も声をかけるのであった
この時、光太郎はまた戦治郎が暴れ出してしまう可能性を危惧し、急いで太郎丸を連れ戻そうとするのだが、光太郎が戦治郎達に近付いたところで戦治郎の左目から炎が消えている事に気付き、その直後に戦治郎が太郎丸の声に反応する姿を目の当たりにすると、光太郎はしばらくの間2人の様子を観察する事にするのであった
「太郎……丸……?」
「気が付いたんだねっ!?そうだよご主人様っ!太郎丸だよっ!!」
戦治郎が弱々しい声で太郎丸の名を呼び、それに気が付いた太郎丸がこれまで以上の力で戦治郎に抱き着きながら、戦治郎に向かってこの様に返答したところ……
「どうしよう太郎丸……、俺……、この世界の人間を……、殺しちまったよ……」
戦治郎は太郎丸に向かって、声を震わせながらこの様な言葉を口にするのだった……。それを聞いて驚く太郎丸を余所に、戦治郎は猶も身体と声を震わせながら言葉を続ける……
「あんだけこの世界の人間は殺さねぇって言ってたのに……、俺は無意識の内にこの大和達を……、手にかけちまったんだよ……。なぁ太郎丸……、俺は、一体どうしたら……」
戦治郎がここまで言葉を発したところで……
「……閃転っ!」
突然光太郎がシャイニング・セイヴァーに変身すると一気に戦治郎との間合いを縮め、戦治郎の右頬を思いっきり殴りつけるのであった
「え……っ!?」
余りにも唐突過ぎる出来事に、その様子を見ていた海賊団の面々と光太郎に殴られた戦治郎が驚愕の表情を浮かべていると、光太郎は間髪入れずに戦治郎の胸倉を掴み、怒りを露わにしながら戦治郎に向かってこう尋ねる……
「戦治郎……、お前……、今クローン大和達の事を人間と言ったか……?」
「あ……?」
「答えろ戦治郎っ!!!お前はクローン大和達を人間扱いしたのかっ!!?」
「ああそうだよ……っ!作られた命とは言え、あいつらは人間……」
戦治郎がここまで言った直後、再び光太郎が戦治郎を殴りつける
「いってぇ……っ!ったくっ!!一体何なんだよっ!?さっきから人の事ボコボコ殴りやがってっ!!!ふざけんのもいい加減にしやがれっ!!!」
流石に理由もよく分からないまま一方的に殴られる事に苛立ちを感じた戦治郎が、光太郎に向かってそう叫んだところ……
「ふざけてるのはそっちだろうがっ!!!いいか戦治郎、クローン大和達を人間だと認めちまうとどうなるか、ちゃんと分かってんのか……っ!?!」
光太郎は更に怒気を増しながら戦治郎に尋ね、それを聞いた戦治郎が怪訝そうな表情を浮かべた事を確認すると、この様に言葉を続けた
「あれをお前が人間だと認めちまうと、お前が大好きな大和さんと言う存在は、オリジナルだろうがクローンだろうが替えが利いてしまう安く軽い命を持った存在になり下っちまうんだぞっ!!!お前は本当にそれでいいのかよっ!??」
光太郎にここまで言われたところで、ようやく戦治郎が自分の発言がどういうものだったかに気付いてハッとする。光太郎はそんな戦治郎の様子に気付きはするのだが、猶も言葉を続ける
「人間の命は唯一無二、替えが利かない物のはずだろ?だから人間は必死に生きてるんだろ?そんな替えが利かない物だからこそ、俺や悟は命がけで命を救おうとしてるだろ?もしお前がクローン大和達を人間だと認めちまったら、クローン技術を肯定したら、それは俺や悟の頑張りを冒涜する事と同じなんだよ……」
光太郎はそう言いながら戦治郎の胸倉から手を放し、鋭い眼差しで戦治郎を見据えるのであった。戦治郎は光太郎の言葉を聞いてから、しばらくの間その場で佇み沈黙するのだが……
「おおおぉぉぉーーーっ!!!」
突如戦治郎が大声を上げながら勢いよく立ち上がり、気合いを入れる様に力強く己の両頬を叩くと
「済まねぇな光太郎、おかげで目が覚めたわ。ありがとうな」
「これでもまだ納得出来ない様なら、今度は悟に向かってそう言ってみるといい。そしたら間違い無くバッチリ目が覚めるだろうからな」
「そりゃ勘弁願いてぇな……、もし実行したらどんな拷問されるか分かったもんじゃねぇ……。取り敢えずクローン大和達は全部俺達の脅威、振り払うべき火の粉って事で落ち着く事にするわ」
光太郎とこの様な会話をしながら、互いに差し出した拳でグータッチをするのであった
その後、光太郎が戦治郎に現状を説明し、状況を把握した戦治郎は光太郎達と合流し、共に空達が待つ桂島泊地へと急ぐのであった……
「戦治郎っ!?正気に戻ったのかっ?!」
「皆済まなかったな、俺はもう大丈夫だから」
戦治郎達が桂島泊地に辿り着くと、工廠の傍で待機していた空が戦治郎がいる事に気付くなり驚きの表情を浮かべながらこの様な声を上げ、それに対して戦治郎は謝罪の言葉と共に頭を下げる
それからすぐに戦治郎達は空達と情報交換を開始し、現状で出来る事が工廠地下以外のガサ入れと桂島提督への制裁くらいしか無い事を確認すると……
「じゃあ、執務室のガサ入れと提督への制裁は俺達がやるから、艦娘達は執務室と工廠地下以外のガサ入れを頼むわ」
\了解っ!!!/
戦治郎がこの様な指示を飛ばし、それを聞いた艦娘達は即座に返答すると早速行動を開始するのだった
「さて……、では早速執務室に向かうか」
「空、ちょっち待った。それについてはちょっちやりたい事があるんだよな」
艦娘達の姿が見えなくなったところで、空がそう言って本庁に向かって歩き出そうとするのだが、それを戦治郎がこう言って呼び止める。それを聞いた長門屋の面々が不思議そうな顔をしながら戦治郎の方へと視線を向けると、戦治郎は自身がやりたいと言う行動について話し始める……
「「「「「「乗った!!!」」」」」」
「戦ちゃん……、アタシそれの事全然知らないんだけど……?」
「大丈夫ですって、今から教えますんでっ!!!」
「ゾアは大丈夫そう?」
「問題ないぞっ!!!」
戦治郎の話が終わると、空、光太郎、シゲ、護、通が食い付き、剛が困り気味にそう言うと戦治郎はこの様に返答、そんな中翔がゾアにこの様に尋ねると、ゾアは自信満々に返事をする
「ボス達がお楽しみの間は、俺様達が周囲警戒か~。まあ超ウルトラスペシャルグレートイケメンな俺様と望ちゃんがいたら、この程度の事完全完璧パーフェクトにこなせちゃったりしちゃったりするんだけどね~」
「あ、あはは……、頑張りましょうね、司さん……」
「ぼ、ぼぼぼ僕と輝さんも、い、いる~んだけどなぁ……」
「藤吉、司が言う事一々気にしてたらハゲんぞ?」
そんな戦治郎達の様子を見ていた司がそう言うと、望が苦笑交じりに返事をし、藤吉が不満そうな声を上げた直後、輝が耳の穴に小指を突っ込みながらこの様な事を口にするのであった
「よっしゃっ!!んじゃやんぞーっ!!!」
\応っ!!!/
それからしばらく経ったところで、準備が整った事を確認した戦治郎が声を上げ、空達が気合十分な様子で返答すると、戦治郎達は早速行動を開始するのであった
「えぇい!!!憲兵達は一体何をやっているんだ……っ!!!」
クタニドの魔法のせいで部屋から出られなくなっている桂島の提督が、異常事態であるにも関わらず何時まで経っても執務室にやってこない憲兵達に苛立ちながら、部屋の中をウロウロしていた
そんな提督が待ち望んでいる憲兵達は、ヴォルヴァドス達の手によってスッポンポンにひん剥かれた上で鉄格子で作られた拘束具で拘束され、地下牢に転がされている訳なのだが、そんな事をこの提督が知る由も無かった……
「くそっ!この際誰でもいいから早く来て、私をここから出せっ!!!」
遂に苛立ちが限界に達したのか声を荒げながら提督が叫んだその瞬間、突然執務室の窓が大きな音を立てて割れ、驚いた提督がそちらに視線を向けると、そこには床に片膝を突いた戦治郎がいた。突如姿を現した戦治郎の姿を見て、提督が怪訝に思っていると戦治郎は……
「1つ!非人道的な作戦を憎みっ!!」
天に向けて右手の人差し指を1本立てた後、この様な事を言いながらポーズを取り、最後は親指を立てながら人差し指と中指で提督を指差す。その直後に再び窓が割れて、今度は空が執務室に入って来る
「2つ!腐った作戦立案者を追ってっ!!」
空は執務室に入るなり、天に向けて右腕を真っ直ぐ伸ばしながらVサインを作った後、この様な事を口にしながらポーズを取り、戦治郎同様提督を指差す。すると今度は通が窓を割りながら執務室に侵入すると……
「3つ!あらゆる手段で捜査っ!!」
今度は3本の指を天に向けて立てた後、戦治郎達同様セリフを言いながらポーズを取る。そして通がポーズを取り終えたその刹那、今度はシゲが執務室に飛び込んで来て……
「4つ!良からぬ海軍の癌をっ!!」
4本の指を天に掲げた後、戦治郎達の様にポ-ズを取りながらこんなセリフを吐く。その後は光太郎が執務室に突っ込んで来ると……
「5つ!刹那にスピード除去っ!!」
光太郎は広げた手を天に向けて掲げた後、これまでの流れと同じでポーズを取りながらこの様な言葉を発する。これで終わりかと言えばそんな事は無く、今度は護が執務室の中に入って来て……
「6つ!無駄な抵抗は止めるッスッ!!」
広げた手の前に指を1本添えながら、護がこんなセリフを口にしながらポーズを取った直後……
「長門屋海賊団っ!!!」
戦治郎がそう叫ぶと同時に6人が一斉にポーズを取り、それに合わせる様にして発艦した鷲四郎とワイルドが6人の背後で大きな海賊旗を広げる。そしてしっかりと海賊旗が広がったところで
「長門 戦治郎っ!!!」
「石川 空っ!!!」
「神代 通っ!!!」
「愛宕山 重雄っ!!!」
「南 光太郎っ!!!」
「秋月 護っ!!!」
戦治郎達は、それぞれポーズを取りながら自分の名前を名乗っていき……
「「「「「「私刑戦隊!!〆ルンジャー!!!」」」」」」
最後はえらく物騒な戦隊名を全員で言いながら、6人揃って決めポーズを取るのであった
その様子を見ていた提督が呆然としながらその場に突っ立っていると、更に追加で剛と翔が執務室に飛び込んで来て……
「百歩穿楊で撃ち砕く!地獄の猟犬、稲田 剛っ!!!」
「八百万の邪神に慕われし黒き料理人、出雲丸 翔っ!!!」
後からやって来た2人も、戦治郎達と同じ様にポーズを決めながら名乗りを上げるのであった。因みに、翔の足元ではオムナイトの姿となったゾアが、翔と同じ様なポーズを取っていたりする
こうして長門屋海賊団の実力者達と対峙する事となった提督が、状況を理解出来ず混乱していると……
「さて桂島の提督さんよぉ……、あんたが今までやって来た事の責任を取る日がやって来たぞ……?覚悟は出来てるか……?」
戦治郎が不敵な笑みを浮かべながら、動揺する桂島の提督に向かってそう尋ねるのであった……