戦治郎達が人身売買に関する資料の在り処について話し合いを始めてから、一体どれ程の時間が経過しただろうか……?戦治郎がふと執務室にある時計に目を向けてみると、時計の針はマルフタマルマル、草木も眠る丑三つ時を指していた
それを確認した後、戦治郎がこの部屋にいる者達の方へと視線を向け直すと、艦娘達の中に眠そうに瞼を擦る者や、船を漕ぐ者などが多数見受けられるのであった
こんな調子でこのまま話し合っても成果は出ないだろう……、ならば今日の所はこれで解散して明日また話し合うか……。戦治郎がそう考えて皆に声をかけようとしたその時である
「そう言えば……、皆さんは提督のご自宅は調べ終えてらっしゃるのですか?」
不意に鳳翔がこの様な事を言い、それを聞いたこの場にいるもの全てが、鳳翔の方へと視線を向ける
そう、戦治郎達は軍に関わる艦娘に関する情報は泊地内でのみ取り扱うだろうと思い込み、証拠の在り処を泊地の敷地内にある施設のみに絞って話し合いを進めていたのである……
鳳翔の言葉を聞いたところで、戦治郎はこんな大事をやらかしている桂島の提督が、素直に軍の言う事を聞くとは思えないと考え直し……
「そういやそこは調べてなかったな……、んじゃあ明日の朝早速調べに行きますかね。今日はもう遅いし、皆眠そうだからな」
皆に向かってそう言い放ち、今日の所は解散する事にするのであった
そして次の日、木曾達と朝練を行った戦治郎がシャワーで汗を流し、翔達が準備した朝食を摂り、昨晩執務室での話し合いに参加したメンバーが食堂に集まった事を確認すると、今日の予定について話し始める
「今日は昨日の夜に言ってた提督の自宅のガサ入れと、工廠の隠し部屋にあったって言う脚付き饅頭の調査をやろうと思うんだが……」
「それなんだけど、ちょ~っといいかしら?」
戦治郎が皆に向かってそう言ったところで、剛がそう言って発言権を求めて挙手してくるのであった。それに気付いた戦治郎が剛に発言の許可を出すと、剛は立ち上がってこの様な提案をしてくるのであった
「昨日の話し合いの後、戦ちゃんに例の取引先リストを見せてもらったんだけど……、正直、これを放っておいたらアタシが想定していた最悪の事態になりそうなのよね~……。で、かなり無茶なお願いなんだけど……、アタシはこれらの回収の為にしばらくの間戦ちゃん達とは別行動をとりたいの。ただ、アタシだけじゃ絶対不可能だと思うから、輝ちゃんのアルゴス号と運転手として光ちゃんを借りたいんだけど、いいかしら?」
「ああ……、あの件ですか……」
剛の提案を聞いた戦治郎が、取引先リストの内容を思い出しながら呟く……
この取引先リストには、提督がプロフェッサーから仕入れたアリーズウェポンを取引した相手の名前と組織名が、それはもうズラリと並んでいたのである
この件で一番の問題となっている点、それはその取引先の殆どが大日本帝国軍陸軍……、大和が言っていた提督に買収された陸軍の関係者となっている事である
もしこの問題を放置しようものならば、アリーズウェポンの存在により艦娘の立場が危うくなり、最悪内戦の切っ掛けを作ってしまう恐れがあるのだ
そう、剛はそれを阻止する為に行動を起こしてくれようとしているのである。今の戦治郎には、剛の提案を断る理由が存在しない。寧ろ自ら名乗り出てくれた事を、感謝しているくらいなのである。そういう訳で……
「分かりました、では剛さんにはアリーズウェポンの回収をお願いしようと思います。ただ、光太郎だけじゃ心許ないのと、監視任務がある艦娘がいる都合、何人かそちらに付けようと思いますけど……、それでいいですか?」
「構わないわ~、寧ろ大歓迎ね~」
その後、皆で話し合って剛に同行する者を決めた結果、アルゴス号の運転手の光太郎、監視役の川内の他、神通、不知火、瑞穂が剛と共に行動する事となるのであった
「さて、剛さんの件はこれで片付いたが……、新しい問題が浮上したな……」
「新しい問題……、ですか……?」
剛の件が片付いた直後、やや困った顔をしながら戦治郎が呟き、それを耳にした大和が不思議そうに尋ねたところ……
「ああ、ホントはアルゴス号に乗って皆で提督の家に行こうかと考えてたんだが、剛さんの件で使えなくなっちまったからな……。んで、その代わりをどうするかって……」
大和に尋ねられた戦治郎がこの様な事を口にした後、顎に手を当てながら考えこもうとしたところで、不意に大和が予想外な事を提案してくる
「でしたら、大和達の車を使いましょうっ!!」
「待って待って?大和達、車持ってんの?」
「はいっ!少なくとも大和と大鳳さん、それに矢矧と高雄さんは車を持っていますっ!!」
「でも、私達の車って皆2シートだった様な……?」
大和の提案を聞いて驚いた戦治郎が、大和に対して驚きの表情を隠そうともせずに尋ねると、大和は戦治郎に向かって笑顔を浮かべながら元気よく返事をし、それを聞いた大鳳が思わず口を挟む
「あ~……、提督の家ってでかい?」
「それなりに大きいわね……」
大鳳の言葉を聞いた戦治郎が提督の家の規模を尋ねたところ、矢矧がこの様な返答をする。それを聞いた戦治郎は、大和、大鳳、矢矧の車と空のライトニングⅡで提督の家に向かう事を決定するのであった。高雄を残したのは、有事の時鳳翔と共に問題に対応してもらう為である
それから戦治郎達は提督宅のガサ入れを行うメンバーを選出し、車の持ち主である大和、大鳳、矢矧の3人と戦治郎、空、通、護、そして太郎丸の5人、合計8人が提督宅に向かう事となるのであった。因みに護と太郎丸が選ばれた理由だが、護は提督宅にある回線が繋がっていないパソコンから情報を抜く為、太郎丸は隠し部屋が無いかを調べる為に選ばれている
こうして役割が決まったところで皆が一斉に行動を開始、提督宅に向かう戦治郎達もすぐに準備を整え、車を取りに車庫に向かった大和達を泊地の出入口にある門のところで待つ事にする
「しっかし、大和達は車持ってたのか~……、どんな車だろうな~……?」
「2シートと言っていたから、恐らくスポーツカーだと思うが……」
「これで軽トラだったら、自分、爆笑いいッスか?」
「それは……、すみません……、多分私も笑ってしまうかもしれません……」
「その手の話、僕はあまり興味ないな~……。だって犬だし……」
大和達の到着を待つ戦治郎達が大和達の車を予想しながら待っていると、不意に後方からクラクションが鳴らされる。恐らく大和達だろうと思った戦治郎達がそちらへ顔を向けると……
「お待たせしましたっ!それで、大和の車には何方が乗りますか?」
そこにはフェラーリの812 スーパーファストの運転席の窓から頭を出して、戦治郎達に向かってこの様な質問をする大和の姿があった。そしてその後ろにはホンダのNSXに乗った大鳳と、ポルシェの911 GT2 RSに乗った矢矧の姿があった……
\何じゃこりゃあああぁぁぁーーーっ!!?/
その光景を目の当たりにした戦治郎達は、思わず絶叫してしまう……。まあ無理もない、大和達が乗っている車はどれもこれも日本円で2000万円を超える超高級車なのである……
「ちょっち大和?これはどっこと?おっちゃん達に分かり易く教えて頂戴?」
「それは……、提督宅に向かう途中でお話しましょう。それで、何方が誰の車に乗るのですか?」
何故大和達がこの様な超高級車を持っているのか……?戦治郎がそれについて大和に尋ねたところ、大和はそう言って戦治郎達に早く車に乗る様に促すのであった
その後、戦治郎は大和の、護は大鳳の、通は矢矧の車に乗り込み、太郎丸は空のライトニングⅡに搭乗し、提督宅へと向かうのであった