シゲ達が先程改造したキュクロープスの試乗会を始めてしばらく経った頃、工廠の前には多くの艦娘達が集まっており、艦娘達の瞳は何かに対しての期待で輝いていたり、内から湧き上がる闘志で燃え上がっていたりと、様々な様相を呈していた
「はい注も~~~くっ!!!」
そんな中、髪型をポニーテールに纏め、背中には炎の翼の様な絵柄が、袖と裾には赤いファイヤーパターンが入った黒い作業ツナギを纏ったシゲが、突然叫び声を上げて彼女達の視線を集める
「うっし、参加者は皆いるな?んじゃあ……、最初で最後っ!!キュクロープス争奪っ!!泊地内サバイバルゲーーームッ!!!」
\わあああぁぁぁーーーっ!!!/
そして皆が自分の方を見ている事を確認したシゲが、何かよく分からない大会の開催を宣言し、それを聞いていた艦娘達は一斉に歓声を上げるのであった……
「おめぇらあああぁぁぁーーーっ!!!キュクロープスの乗り心地はどうだったあああぁぁぁーーーっ!?!」
\サイテー!!/\お尻痛いー!!/\操縦席をもっと広くしろー!!/
「評判悪ぃなおいぃっ!??でも、操縦は楽しかったんだろぉ~?」
\サイコー!!/\面白~い!!/\た~のし~!!/
「そんなキュクロープスが……、欲しいかあああぁぁぁーーー?!!」
\欲し~~いっ!!!/
「そんなおめぇらに朗報だっ!!このサバイバルゲームで優勝すると……、何とっ!!このキュプロークスが贈呈されるぞおおおぉぉぉーーーっ!!!」
シゲと艦娘達がこの様なやり取りを交わし、シゲがそう叫びながら自身の後ろに待機させているキュクロープスを軽くコツリと小突くと、再び艦娘達から大きな歓声が上がるのであった
何故この様な催しが開催される事になったのか……、それはシゲ達がキュクロープスの試乗会を開始したところまで遡る……
江風の提案で工廠の表でキュクロープスの試乗会を行う事となり、キュクロープスを表に出す為にシゲが工廠の扉を開いてキュクロープスに乗り込んだ江風に、キュクロープスを動かす様にと合図を送る……
「改白露型駆逐艦江風、出るぜっ!!」
すると江風はそう言ってキュクロープスのアクセルをベタ踏みし、最高速度で工廠から飛び出そうとする。だが……
「あちょっ!?これ速っ!!思ってたよりずっと速……あっぶねっ!!?っておおおぉぉぉーーーっ?!!」
どうやらキュクロープスの最高速度が江風の予想を遥かに超えていたらしく、江風は工廠から飛び出した瞬間物凄い速さで迫って来る水平線に驚きながらも、必死になってハンドルを切って海にダイブするのを寸でのところで回避するのだが、直後に視界一杯に広がる壁を見て思わず叫び声を上げる。そしてその次の瞬間、江風が乗るキュクロープスは、泊地の本庁の壁に勢いよく激突し、轟音と共に本庁の1階に大きな風穴を開け、2階にある執務室の窓と壁を直していた藤吉をその衝撃で地面に墜落させるのであった……
因みにこのキュクロープス、見た目とは裏腹にかなり速く走る事が出来、その最高速度は4足歩行でありながら200km/hにも達するのである
「江風ーーーっ!!!藤吉ーーーっ!!!大丈夫かあああぁぁぁーーーっ!??」
「ぼ、ぼぼ僕はだだ、大丈夫……、っていいい今かっかっ江風って……、……こここっこのたたタチコマみたいなのに、か、江風さんがののっ乗ってるんですか……?」
「いてててて……、なンであンな速度で壁にぶつかったのに、江風は無事なんだよ……?」
事故現場に大急ぎで駆け付けたシゲが、2人を心配して声を張り上げながら尋ねると、藤吉はそう言って頭を摩りながら立ち上がり、江風は後部ポッドから這い出ながら、自身の無事を疑問に思うのだった……
因みに江風が無事な理由は、シゲがキュクロープスに後部ポッドを取り付ける際に仕込んでおいた安全装置が作動し、壁に激突する寸前に安全装置が後部ポッドを本体から切り離す様に、後方に向けて射出したからである
その後シゲが江風に危険な事はするなと説教し、本体に射出された後部ポッドを再装着させると、改めてキュクロープスの試乗会を開始。それからしばらくすると先程の轟音を聞いて駆けつけて来た摩耶達が、先程の轟音の原因をシゲから聞いた後試乗会への参加を表明、そしてシゲがそんな事を何度も繰り返していると、気付いた時にはかなりの数の艦娘達がこの場に集まっていたのである
これでは待っている時間が長くなり過ぎ、皆が苛立ち始めるのではないか……?そう思ったシゲは超特急で高雄の下へ向かい、泊地の資源の使用許可を取ると工廠に駆け込み、自身が先程仕上げた設計図を基に一部武装をオミットした量産型キュクロープスの製作を開始、それから少し時間が経過してシゲが3台目の量産型キュクロープスを作ろうとしたところで、試乗会の会場にシゲがいない事に気付いたヴェルが工廠に現れ、シゲの作業を手伝おうとするのだが……
「ちょい待った、そういや別府……、お前作業服とか持ってるか……?」
機械油まみれになったセーラー服を着たヴェルの姿を見たシゲが、やっちまった……っと言った感じの表情を浮かべた後ヴェルに対してそう尋ね、それを聞いたヴェルが首を横に振るところを見た瞬間……
「よっし、今から司のとこ行くぞっ!!!」
シゲはそう言うとヴェルの手を掴む様にして取り、彼女を引っ張る様にして司の所へ向かい、ヴェル用の作業服を発注するのであった
「作業服って言うけど~、具体的にどんなのにするん~?もし何か希望があったらこのグレイトフル(中略)な俺様が、バッチリ要望に応えちゃったりしちゃったりするよ~?」
「そうだな……、ならシゲさんと同じ様な物を頼むよ」
シゲから作業服を作る様に頼まれた司が、ヴェルに向かってリクエストが無いか尋ねたところ、ヴェルはシゲの方を指差しながらこう答える。それを聞いた司は早速作業を開始し、瞬く間の内に袖と裾に青いファイヤーパターンが、背中には暁型駆逐艦の艦娘が付けている『Ⅲ』の形をしたバッジを模した絵柄が入った白い作業ツナギを仕立て上げるのであった
その後、ヴェルは司から受け取った作業ツナギに着替え、今まで着ていたセーラー服を司に渡してクリーニングを依頼し、シゲと共に工廠へ戻り作業の邪魔にならない様に髪を1つにまとめて作業ツナギの中に入れ、すぐさま作業を再開しあっという間に合計8台の量産型キュクロープスを完成させる
因みにこの量産型キュクロープスは、シゲにより『ピロシキ』と名付けられた。その由来は作業を手伝ってくれたヴェルがロシアへの賠償艦である事と、キュクロープスの形状からピロシキを連想したからだったりする。そしてこのピロシキは、泊地の資源を使うにあたって高雄から出された『泊地の資源で作った物は泊地に納品する』と言う条件に従い、全て泊地に納品される事になっている
こうしてキュクロープスの台数を増やしたシゲが会場にピロシキを運び込み、多くの艦娘にキュクロープスの操縦を体験してもらっていた訳なのだが……
「なあシゲ、このオリジナルのキュクロープスって誰が使うんだ?」
シゲが摩耶達とピロシキの所有権関係の話をしていると、不意に摩耶がシゲに対してこの様な質問をするのであった
「あ……、そういやそこらへん全然考えてなかったわ……。俺はもうリュウセイがあるしな~……、……誰か使いたい奴いるか?」
摩耶の言葉を聞いたシゲが、何となく皆にそう尋ねてみたところ、この場にいる殆どの艦娘がオリジナルのキュクロープスを欲しがったのであった……
そう、こう言った経緯があった為、シゲはピロシキを用いて行う『キュクロープス争奪 泊地内サバイバルゲーム』を開催する事にしたのである