「よしおめぇら!先ずは散開して自陣内から調べて行くぞっ!!!」
\了解っ!!!/
そう言ってメンバーに散開の指示を出すのは、コイントスとくじ引きの結果戦闘エリアの最南端にして最西端にスタート地点を設置する事となった泊地チームのリーダーである天龍
彼女がこの大会に参加した理由は、優勝賞品であるキュクロープスを未だに視覚障害と難聴と戦っている龍田に譲る為である
天龍はこの大会に参加するまで、ずっと医務室で龍田の看病をしていたのである。龍田の容態は天龍が悪石島で彼女の姿を見た時よりは回復しているのだが、それでもまだ耳鳴りは多少なれどしているらしく、視力の方も本調子とは言えず物をハッキリ見る為には、相当顔を近付けなければいけない様だ
そんな龍田が、天龍の方へ顔を向けながら、この様な事を口にしたのだ
「天龍ちゃん……、私ね、あの提督から解放された後に身体の調子が良くなったら~、天龍ちゃんと一緒に深海棲艦をやっつけたいって思ってるの~」
「ああ……、そうだな……っ!俺と龍田、2人が揃えば無敵だからなっ!!だから龍田、すぐに良くなるんだぞっ!!!俺はそれまでずっと待ってるからなっ!!!」
そう言って微笑む龍田に向かって、天龍は泣きそうになるのを必死に堪えながら、ありったけの空元気を出しながらそう返答するのであった
と、その直後である、龍田のベッドを囲むカーテンが突如開かれ、そこから悟が姿を現し天龍に向かってこう言ったのだ
「おぅ天龍よぉ、龍田の事は俺に任せてよぉ、おめぇは食堂に飯でも食いに行きやがれってんだぁ。さっき翔の方から連絡きたぞぉ?朝飯の時天龍の顔が見えなかったってなぁ」
「あら~、そうなの~?ダメじゃない天龍ちゃん、ちゃんと朝ご飯食べないと~」
「龍田の事が心配なのは分かるんだがよぉ、そのせいでおめぇまで倒れられたらよぉ、こっちとしちゃぁいい迷惑なんだよなぁ。それによぉ、そんな事になったらきっと龍田が黙ってねぇぜぇ?」
「そうね~……、もしそんな事になっちゃったら~……、しばらく天龍ちゃんとは口を利いてあげないかもしれないわね~?」
「分かった分かったっ!!今から飯食いにいきゃいいんだろっ!?」
悟の言葉を聞いた龍田が、悟と一緒になって天龍に食事しに行く様にと促し、それを聞いた天龍は慌てた様子で龍田のベッドの傍に設置された椅子から立ち上がり、悟の横を通って食堂に向かおうとする
「ついでだぁ、飯が終わったら気晴らしがてらしばらくそこらブラついて来なぁ。そうすりゃぁ、多少なれどおめぇの不安も解消されるだろうからよぉ」
その刹那、悟が小声で天龍にボソリと呟く。それを聞いた天龍は一瞬ギョッとした後、ばつの悪そうな顔をしながら医務室を出て……
「あの人にはお見通しって訳か……」
後頭部をバリバリと掻きながらそう呟くと、天龍は悟達に言われた通り食堂に向かい、食事を摂る事にするのであった。そう、彼女は龍田の事が心配過ぎて、昨晩はよく眠れなかったのである。悟はそんな天龍の様子を察して、あの様な事を言ったのである
こうして食事を終えた天龍が、気晴らしの為に泊地内をうろついていると、突如泊地内に轟音が響き渡る。それを聞きつけた天龍は急いで現場に向かい、轟音の原因をシゲ達から聞くとその場を立ち去ろうとするのだが……
「ようしっ!!ここに来たのも何かの縁だっ!!天龍っ!!ちょっとあたし達に付き合えっ!!!」
突然摩耶がこの様な事を口にし、強引に天龍をキュクロープスの試乗会に参加させるのだった。実際のところ、摩耶達海賊団の巡洋艦達はこのちょっと前に悟から連絡を受け、天龍の気晴らしを手伝って欲しいと頼まれていたりするのである
そう言う訳で天龍はキュクロープスの試乗会に参加した訳だが、ここで彼女は彼女にとって非常に気になる言葉を耳にする
「これスゲェな……、何処までも遠くが見えるし、かなり小さな音まで拾えるんだな……」
「そのせいで、未だ耳鳴りが止まらねぇけどな……」
「この会場、かなり賑やかになってきましたからね~……」
「センサー系か……、まあ今マモがいねぇからな……。戻って来たらちょい調整してもらうか……」
「護が調整したら、今のよりエライ事になりそうな気がするんはウチの気のせいやろか……?」
海賊団の面々のやり取りを聞いた天龍に、電流が走る……。この時には天龍もキュクロープスの試乗を終えており、そのセンサー類の優秀さに驚かされたのだが、シゲ達の話を聞く限り、彼等はあのセンサー類の性能を更に向上出来る様なのである。それを聞いた途端、天龍はある事を思いつくのだった
そう、センサー類を強化したキュクロープスがあれば、万が一……、いや、億が一……、兆が一悟が龍田の治療に失敗しても、龍田の願いを叶えてあげられるのではないか……?
そう考える天龍は、決して悟を信用していないと言う訳ではない。むしろ自身をここまで回復させた腕を持つ悟なら、きっと龍田の事もどうにかしてくれると、心からそう信じているくらいである。だが、彼女は悟の事をいくら信じていても、どうしても不安を払拭出来ないでいたのである……
こうして天龍が考え事をしていると、不意に摩耶がシゲに対して質問をするのであった
「なあシゲ、このオリジナルのキュクロープスって誰が使うんだ?」
「あ……、そういやそこらへん全然考えてなかったわ……。俺はもうリュウセイがあるしな~……、……誰か使いたい奴いるか?」
「だったら俺にくれっ!!!」
摩耶の質問に答えた後、シゲがこの場にいる全員にこの様な事を尋ねる。それを聞いた刹那、天龍は瞬時に手を上げてシゲの問いに答えるのであった
その後、シゲがキュクロープスを『キュクロープス争奪 泊地内サバイバルゲーム』の賞品にする事を決定し、参加希望者は4人1組のチームを組む様にと指示を出したところで、天龍は初霜、雷、電、暁に声をかけ、チームを組んで欲しいと頼み込むのであった
この時、天龍から事情を聞いた雷と初霜は天龍の頼みを快諾し、電は自分は皆の足を引っ張りそうだからと参加を辞退、それを見ていた暁がならば自分が電の代わりにと参加を表明、こうして天龍は泊地チームを結成、龍田にキュクロープスをプレゼントしたいと言う一心でこの大会を戦い抜き、彼女達は何とか決勝戦に辿り着いたのである
そして彼女達は天龍の指示で散開し、ターゲットである提督を探し始めるのだが……
『中々見つからないわね……』
『南エリアの西側は全部調べたから……、残りは相手陣地である北エリアと東側ね……』
『なら、この建物に登って北エリアの方を少し見てみましょうっ!!』
南エリアの西側の探索を終えた初霜達が、ピロシキ内に取り付けられた通信機を使用してこの様なやり取りを交わし、暁がそう言ってピロシキの壁面走行機能を使って、近くの建物に登り始めたその時だった
暁が駆るピロシキが登っている壁が彼女の機体諸共突如吹き飛ぶと同時に、建物の中から天津風が駆るピロシキが姿を現し、暁のピロシキに豪快に体当たりをお見舞いしたのである
『きゃあああぁぁぁーーーっ!?』
『喰らいなさいっ!!』
天津風機の体当たりを受けて、機体ごと反対側の壁に叩きつけられた暁が悲鳴を上げた直後、天津風はそう叫びボディー前面から突き出した主砲で砲撃を行い、暁機に塗料を付着させる。その光景を望遠カメラで目撃してしまった初霜達が、驚きの余り硬直していたところで……
『見つけたよ……っ!』
『敵機発見っ!やったるぜぇっ!!』
初霜のところには時雨が、雷のところには江風が姿を現し、硬直する彼女達目掛けて砲撃を開始するのであった
『……っ!?こうなったら……、やっちゃいますっ!!』
『暁の仇、取らせてもらうわっ!!』
時雨達の砲撃音で我に返った初霜達が、咄嗟に砲撃を避けるなり、時雨達に向かってそう言い放つと、彼女達は激しい攻防戦を展開するのであった
「あいつら……、先に俺達を動けなくして、その間にこっち側を調べようって魂胆か……っ!!?」
初霜達が戦っている間に、天龍はそう呟きながら南エリアの東側に向かおうとするのだが……
『見つけたわっ!!』
そこに先程暁を仕留めた天津風が立ち塞がり……
「悪いが通してもらうぞっ!!!」
天龍はそう叫び、天津風と交戦を開始するのであった……
一方その頃……
「がっはっはっはっはっ!!!天津風の奴、豪快に壁を破壊しやがったっ!!!」
「ま、まままたぼぼ、ぼ、僕達のししし仕事がふ、ふふ~えるんですね……」
「藤吉君……、そのぉ……、頑張って……?」
扶桑の艦載機に取り付けたカメラで撮影されている映像が映る簡易スクリーンを見ていた輝が、天津風が豪快に壁を破壊した瞬間大爆笑し、藤吉がげんなりしながらそう呟く。そしてそんな藤吉に対して、扶桑が苦笑しながらそう声を掛ける
「あいつら……、俺がボーっとしてる間にピロシキの安全装置を外しやがったな……っ!」
「これについては、大会開始前に勝手に改造するのを禁止していなかったシゲさんのミスだね」
その傍らで、シゲとヴェルがこの様な会話を交わし、シゲはガックシと肩を落として溜息を吐くのであった……