※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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チーム戦決着

「遂にこの時が来たか~……」

 

「確か少し前くらいから見たいと言っていたね、時雨と天龍さんの対決を」

 

スクリーンの中で対峙する時雨と天龍の姿を見て、思わずシゲがそう呟いたところで、ヴェルがシゲに視線を向けながらこの様な言葉を口にする

 

「ああ、個人的にはこの2人が優勝候補だと思ってるからな、そんな2人の対決……、ぜってぇ盛り上がるはずだわ」

 

ヴェルの言葉を聞いたシゲがこの様に返答した直後、スクリーンの中の2人が同時に動き出し、激しいバトルを開始するのであった

 

「うおっ!?あんのヤドカリもどき、あんな動きも出来んのかよっ?!」

 

「あの機体の足には、舗装された道路用のローラーが付いていますからね、それと壁面走行機能を利用すれば、あの様な動きも可能なんですよ?」

 

勢いよく飛びついた建物の壁面を蛇行しながらローラーダッシュして、天龍の猛攻を掻い潜る時雨の様子を見た輝が思わずそう叫び、それを聞いた扶桑が自身がピロシキを操縦した時の事を思い出しながら、驚く輝に対してこの様な言葉を掛ける

 

因みに、もし扶桑がこの大会に参加していた場合、彼女は一切他者を寄せ付けず、ぶっちぎりで優勝していただろうと、試乗会の時に彼女の操縦技術を見ていたシゲは言っていた……

 

「シゲさん、この戦い……、どちらが勝つと思う?」

 

「あ~……、正直甲乙付け難ぇんだよな~……、操縦技術は恐らく時雨が上なんだろうが、それをプレッシャーで潰せそうなくらい、天龍の気迫が凄まじいんだよな~……」

 

不意にヴェルがシゲにこの様な事を尋ね、それを聞いたシゲは難しい顔をしながらそう答える。そんなシゲの目には、天龍の機体から滲み出る闘志が映っていたのだった

 

シゲとヴェルがこの様なやり取りを交わしている間に、スクリーンの中の状況に変化が起こる。この戦いで一番最初にスタート地点送りとなった暁が、戦線に復帰し天龍のサポートを開始したのである

 

「お?暁はもう復帰したのか……、確かあの塗料、簡単には拭き取れない様にしておいたはずなんだがな~……?」

 

「何でわざわざそんな事してんだよ?それじゃあすぐに戦線復帰出来なくなっちまうだろが」

 

「シゲさんが塗料を簡単には落とせない様にしたのは、塗料を拭き取る様子を機体の修理している様子に見立てる為なんだ」

 

「こんな感じのペナルティー付けないと、死に戻りを利用する参加者が出る可能性ありますからね」

 

暁の復帰が予想より早かった事に対してシゲが疑問を口にすると、それを聞いた輝が不思議そうな顔をしながらシゲにそう尋ねる。それに対してシゲの代わりにヴェルがこの様に返答し、それに続く様にしてシゲが補足を入れるのであった

 

因みに、暁の復帰がシゲの予想より早かった理由だが、それは雷が塗料の汚れを分析し、適切な汚れの落とし方を導き出し、それを実行した事で素早く効果的に汚れを落とせる様になったからだったりする

 

「取り敢えず塗料の事は把握した……、っとそれはそうとこれ時雨は大丈夫なのか?2対1は不利なんじゃねぇの?」

 

「それならきっと大丈夫だと思います、輝さん、スクリーンをよく見てみて下さい」

 

シゲとヴェルの話を聞いた輝が、この様な疑問を口にしたその直後、微笑みを浮かべた扶桑がスクリーンに向けて指を差し、それに従って輝だけでなくシゲとヴェルまでスクリーンに視線を送ると……

 

「あ~……、納得した……」

 

「あれは……、ダメみたいですね……」

 

「暁……」

 

スクリーンに映し出された映像を見た3人は、やや呆れながらそれぞれ言葉を口にするのであった……

 

3人が呆れてしまった理由、それは数の優位性に胡座をかき、慢心して動きが緩慢になってしまっている暁の姿を見てしまったからである……。恐らく今の暁は忘れてしまっているのだろう、1チーム作るのに一体何人の艦娘が必要であるかを……、相手チームには時雨、江風、天津風以外にも後1人メンバーがいる事を……

 

その直後、暁機に突如ペイント弾が撃ち込まれ、暁機にまたも塗料がべっちょりと付着する。その事実に気付いた暁が、自身を討った相手を見つける為にカメラを操作したところ、カメラはここからかなり離れた場所で、頭頂部の主砲から煙を吐き出す陽炎機の姿を捕捉するのだった……

 

「慢心、ダメ、絶対」

 

「これで形勢逆転か……」

 

その様子を見ていたシゲと輝がそう言った瞬間、突然時雨機が天龍機に背を向けて走り出し、そんな時雨機を追おうとする天龍機の前に、陽炎機が立ち塞がる……

 

「あん?時雨が戦線離脱?何でまた……?」

 

「恐らく提督を探しに行ったのでしょうね……」

 

数の優位性を捨てる様な時雨の行動に対して輝が疑問を抱くと、扶桑がそう言いながらカメラの視点を変更し、雷達の様子をスクリーンに映し出す。するとそこには付着した塗料の9割が拭き取られた初霜機と雷機、そして今正に最後の仕上げとばかりに残った汚れを拭き取ろうとする雷と初霜の姿が映るのだった

 

「うっへぇっ!あいつらどんだけ汚れ拭き取るの得意なんだよっ!?」

 

「なるほど……、時雨達は再び形勢逆転される前に、勝負を付けようとしているのか……」

 

その映像を見たシゲが驚きながらそう叫び、ヴェルが納得した様にウンウンと頷きながらそう言うと、まるでヴェルの発言に合わせる様に陽炎機が天龍機に討ち取られ、天龍機は時雨機の後を追い始めるのだった……

 

こうして天龍と時雨による追跡劇が始まるのだが、それはもう凄まじい展開が連続して繰り広げられ、観戦席を今まで以上に沸かせるのだった

 

天龍は自身の前を走る時雨を討ち取らんと、その背中に向けて嵐の様に砲撃や銃撃を放つのだが、時雨はそれを蛇行や壁面走行、更には三角跳びなどを駆使して巧みに躱し、挙句の果てには時折振り返ったり、空中で捻りを加えたりして、天龍の砲撃を妨害する為に足元に砲撃したり、天龍の砲撃を自身の砲撃で撃ち落としたりしているのである

 

「ちょっ!?時雨すげえええぇぇぇーーーっ!!!」

 

「時雨が中でどんな操縦してるのか、もうこれ分かんねぇな~」

 

「ハラショー、自分が作るのに関わった機体をああも使いこなしてくれている姿を見ると、本当に嬉しくて仕方が無いね」

 

「これは……、時雨が車の免許を取った時が楽しみね……」

 

そんな時雨の様子を見た輝が興奮しながら絶叫し、自身の予想を遥かに超えた操縦技術を見せる時雨に驚いたシゲがこの様な言葉を発し、ヴェルと扶桑はこの様な事を口にしながら柔らかく微笑むのであった

 

シゲ達がこの様な事をしている間にも状況は進んで行き、遂に時雨は自分の方に尻を向けながらブルブルと震える全裸の提督を発見する。どうやら提督は、未だにゾアの精神攻撃にその心を苛まれている様だ……

 

提督を発見した時雨は、勝負を決める為にアクセルをベッタリ踏み込み一気に加速、その様子を見た天龍も時雨に続く様にして加速し始めるのだが、突然自身目掛けて飛んで来るペイント弾の存在に気付き、天龍はそれを回避しようと大きくカーブし、傍にあった壁に凄まじい勢いで突っ込んでしまうのであった

 

壁に激突した天龍が、ペイント弾が飛んで来た方角に視線を送ると、そこには主砲から煙を立ち昇らせる江風機の姿があった。どうやらスタート地点送りになった天津風と陽炎が、自分達より先にスタート地点に戻って塗料落としを行っていた江風を手伝って想定より早く汚れを落とし、戦線復帰した江風に時雨達を追わせたのだろう。そして誰の妨害も受けなかった江風は、すぐに時雨達に追いつき、時雨をサポートする為に天龍に砲撃したのである

 

そうしている間に時雨は提督との距離を詰め……

 

「もらったよ……っ!」

 

そう呟きながら、時雨は提督をピロシキの脚で豪快に撥ね飛ばす……

 

こうして、チーム戦の決勝戦は時雨達海賊団駆逐チームの勝利と言う形で、その幕を閉じるのであった

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