※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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提督宅の空っぽの金庫

シゲ主催のサバゲーが、そろそろ終わろうとしているところだが、ここで少し時間を遡って戦治郎達の様子を見てみよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和が運転するスーパーファストの助手席で、大和の話を聞いた戦治郎は物凄い顰めっ面をしていた……

 

戦治郎は最初に大和の車に乗った時は、いい歳した大人のクセにそれはもう大はしゃぎしていた。まあそれは仕方が無い事だ、大和の車はあのフェラーリが作った車なのである、これはそれなりに車の知識があるものなら1度は憧れるだろう2シートのスーパーカーで、恐らく車好きの光太郎がこの事実を知れば、みっともなく喚き散らしながら悔しがる事間違い無しと思える程の、それはそれは凄い車なのである

 

因みに、生前は実家が超極絶大金持ちだった上に、年に5回くらい開催される全てのジャンボ宝くじの1等と前後賞を1年間掻っ攫い続ける程の超豪運持ちの戦治郎だが、この手のスーパーカーは興味はあっても購入した事は無かったりする。戦治郎は自分が使う車に関しては憧れやロマンより実用性を重視しており、生前は車検に引っかからないレベルの改造を施して居住性と走破性を向上させた、トヨタのランドクルーザーを愛車にしていたりする

 

そんな戦治郎が顰めっ面になる様な大和の話とは、一体どの様なものだったのか……?

 

至極簡単な話である、大和がどうやってこの車を手に入れたかに関する話である

 

大和のフェラーリ、大鳳のNSX、矢矧のポルシェ、そして戦治郎達がまだ見ていない高雄のアウディのR8 クーペは、全て桂島の提督が秘書艦経験がある彼女達に買い与えた物なのである

 

何故提督は彼女達にこれらの高級車を買い与えたのか?それは尋常では無い数の艦娘達の屍の上に成り立つ凄まじい戦果を上げる提督が各メディアの取材や演説の仕事を受ける際、泊地の実態が表沙汰にならない様取材の場所や演説の会場を指定し、その待ち合わせ場所に彼女達が運転する高級車で向かい、提督を取材する記者や演説会の会場スタッフ、そしてその光景を目の当たりにした民間人達の心を掴む為である

 

提督はこうする事で大衆に提督と艦娘は儲かる仕事だと思わせ、営業スマイルと心にも思っていない嘘八百を並べ立てて記事を完成させたり演説をしたりして、その記事を目にした大衆や演説を聞いた者達を煽り立て海軍に入隊させた後自分の泊地に着任する様手引きし、自身の手駒を数多く作り上げたのである

 

さて、提督が彼女達に高級車を買い与えた理由は分かってもらえた事だろう、では次に何が来るのかと言えば、その高級車を買う為の金は何処から来たのかである

 

これも本当に簡単な話だ、大和達の車を買う為の金は、全て提督が行った人身売買や資源の横流しで入手した金なのである。酷い言い方をすれば、今大和達が運転する車は多くの艦娘達の亡骸で作られ、その魂に担がれて前に進んでいる様なものなのである……

 

こんな話を聞けば、戦治郎でなくても顰めっ面になってしまうだろう……。恐らく大鳳と矢矧の車に乗る護と通も、大鳳達から同じ様な話を聞いて戦治郎と同じ様な表情をしている事だろう……

 

「本当は……、こんな物すぐに捨ててしまえばいいと……、ずっと思っていたんですけど……」

 

不意に大和がそう呟くと、まるで懺悔する様にポツポツと話し始める……

 

どうやら彼女達は、提督に強要されながらこの車達に乗っていたのだが、いつの日かこの車達に愛着を持ってしまう様になってしまったのだとか……

 

彼女達からしたら、この車達は提督の悪行の象徴の様な物なのだが、それと同時に長年連れ添った相棒の様な存在でもあるのである。こんな業の深い物は捨ててしまえと思う一方で、今まで一緒に頑張って来た相棒を手放す事にどうしても迷いが発生する……。そんな彼女達は罪の意識と車への愛情で葛藤し、その心を苛まれていたのだった……

 

こうして大和の独白が終わり、車内にしばらくの間静寂が訪れる……

 

それからほんの少し時間が経過し、大和が自身の話のせいで車内の空気が悪くなった事を謝罪しようと、運転の為に前を向いたまま口を開きかけたその時である

 

「大和……、やる事やって泊地に戻ったらさ……、提督からもらったって車全部ぶっ壊そうぜ」

 

「えっ?」

 

突然戦治郎がこの様な言葉を口にし、それに驚いた大和が声を上げながら戦治郎の方へ顔を向けるのだが、すかさず戦治郎にわき見運転するなと注意され、大和は前へ向き直った後、戸惑いながら戦治郎に尋ねるのであった

 

「やはり、この車達は処分するべきなんですね……?」

 

「ああ、この車に乗ってる間お前がずっと罪の意識に囚われて、精神的に参っちまって悟の厄介になったり、後々事故を起こすような事態になるくらいなら、盛大にぶっ壊してスカッとした方がいいだろうよ。それにその光景を見たら、多分犠牲になった艦娘達も安心して成仏出来るだろうからな。因みに、それでも成仏しない様な執念深い娘がいた場合は、ゾアにお願いしてすぐに天に昇ってもらおうと思っております、はい」

 

戦治郎の言葉を聞いた大和が、ほんの僅かに暗い表情を浮かべた直後、戦治郎は更に言葉を続けて大和を大いに驚かせるのだった

 

「んで、大和達の車を廃車にして、この事件が片付いて俺達が無事に海軍に入れたら、海軍にミッドウェーで手に入れたあの莫大な量の資源を売りつけて、その金で改めて大和達の車を買うと……、って前前前っ!!!さっきわき見運転すんなって俺注意したでしょうがっ!!!んもぉーっ!!!」

 

「す、すみませんっ!!でも、本当にいいんですか……?」

 

「構わんよ、そもそも俺達にはこの世界で初めて出来た友人からもらった金もまだあるし、アフリカの方旅してた時に入手して隠した資源もある、だから気にすんなっ!!」

 

戦治郎の言葉に驚いた大和が再び戦治郎の方へ目を見開きながら顔を向け、それを戦治郎が頬を膨らませながら再度注意、それから2人はこの様なやり取りを交わし、戦治郎は大和に向かってニカリと歯を見せながら笑って見せるのであった

 

そうしている間も大和達の車は進んで行き、遂に戦治郎達は目的地である提督の自宅に到着する。そして全員が車から降りた直後、護と通が戦治郎に駆け寄り、大和達の車の再購入の話を持ち掛け、戦治郎も2人と同じ考えである事を伝えると、2人は安堵の息を吐いて見せるのであった

 

その後、戦治郎達は提督宅の門の前に立つと周囲への警戒を開始、その間に先ず護が提督宅のセキュリティーを外しにかかろうとする

 

「しっかし泊地の関係者以外いないこの島で、自宅にホームセキュリティー付けるたぁなぁ……」

 

「よっぽど家に侵入されたくない様だな……」

 

「それよりも、センサーが侵入者を感知した場合、一体誰が駆けつけるのでしょうか?」

 

「それでもし、泊地の憲兵達が来たら自分爆笑する自信あるッス。……って、うぅ~?」

 

護がセキュリティー解除を行っている中、戦治郎達がこの様なやり取りを交わしていると、突然護が不思議そうな表情をしながら、小首を傾げるのであった

 

「どうしたの?」

 

「いや……、このセキュリティー……、もう解除されてるッス……」

 

護の様子を見ていた大鳳がそう尋ねたところ、護は不思議そうな顔のままこの様に返答し、それを聞いた戦治郎達は更に警戒心を高めるのであった

 

その後、戦治郎達は門を開いて中に入り、本当にセキュリティーが解除されている事を確認すると、更に進んで提督宅の玄関の前に立ち、戦治郎が静かにドアノブに手をかけて扉を開こうとすると……

 

「……太郎丸」

 

「ちょっと待ってね……、……誰もいないね……」

 

玄関に鍵がかかっていない事に気付いた戦治郎が太郎丸に声を掛け、太郎丸に内部把握を実行してもらって家の中に誰もいない事を確認すると、戦治郎は玄関の扉を大きく開け放つのであった

 

「……もしかしたら提督の関係者が先回りして、証拠になりそうなモン持ち出して処分しちまってるかもしれねぇな……。まあこの予想が当たってても、取り敢えずガサ入れはやんぞ、運が良かったらそいつが見落とした証拠が残ってるかもしんねぇからな」

 

「憲兵達はクタニドさんが全員拘束し、通信関係は護が既に潰しているから、その可能性は極めて低いだろうがな……」

 

「そうなると、一体誰が?となりますが……」

 

「まあそこらはガサ入れやったら分かる事ッスよね~」

 

それから戦治郎達はこの様なやり取りを交わした後、戦治郎、大和、通、太郎丸のチームと、空、護、大鳳、矢矧のチームに分かれて、提督の自宅のガサ入れを開始するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、やはりありましたよ、裏帳簿が」

 

「こっちは資源の横流しの取引先リストだね~、これに書かれてるいくつかの番号が、光太郎が見つけたメモに書かれてた数字と同じだから、多分あのメモは取引先の電話番号をメモする時に使ったものかもね」

 

「これは……、人身売買の……、こんなに沢山……」

 

空達と別れた戦治郎達は、すぐさま提督の私室に向かって証拠探しを開始し、早速有力な証拠を発見するのであった

 

この時大和は人身売買に関する書類を発見し、その中身を確認するなり気分を悪くして思わず床に座り込んでしまう。まあ無理も無い、その書類には取引先のリストだけでなく、艦娘達を幾らで購入し、どんな事に使用するかについても書かれていたのだ。そんな悍ましいものが250件以上も書かれているものを目にすれば、誰だって大和の様になってしまう事だろう……。特に彼女の場合、それで入手した金で購入された車に乗っていたのだから、余計に辛いところであろう……

 

「サンキューサンキュー、見つけた証拠は俺の腰のボックスに入れてくれ」

 

証拠になりそうな物を見つけた通達が戦治郎に声を掛けたところ、戦治郎は黒い革で装丁されたハードカバーの本の様な物を読みながら、先程自身に声を掛けて来た通達に対してこの様に返答するのであった

 

「ご主人様、一体何を読んでるの?」

 

「あの馬鹿の日記だ……、どうやらあの提督……、海軍入った時はあんな調子じゃなかったみたいだぜ……?」

 

戦治郎の様子を不思議そうに見ていた太郎丸の問いに対して、戦治郎が渋い顔をしながらこの様に答え、それを聞いた通達は思わず驚愕の表情を浮かべながら硬直する。そしてその直後……

 

「こんなん見たら、今の海軍に入っていいもんか悩むな……。後で時間あったら、長門にここらの事ちょっち確認しとくか……」

 

戦治郎は日記を閉じながら、そう呟くのであった

 

その呟きを耳にした通が、戦治郎に日記の内容を尋ねようとしたその瞬間、空から通信が入って来る

 

『戦治郎、そっちはどうだった?』

 

「大当たりだな、大当たり過ぎて涙出そうだわ……」

 

『……どうやら予想外の情報を手に入れた様だな……。っとそれは兎も角、ちょっと来て欲しいんだが、今から来れるか?』

 

「ああいいぞ、こっちは大体調べ終えたからな、んで、何処行きゃいいんだ?」

 

それから戦治郎と空がこの様な会話を交わし、戦治郎達は空の通信による案内の下、提督宅の地下にある隠し部屋へと向かったのだった

 

そして隠し部屋に到着した戦治郎達は、目の前に存在する銀行にありそうなそれはそれは巨大な金庫に驚き、空がその重厚な扉を開いて中を見せたところで更に驚愕の色を深めるのであった。その巨大な金庫の中は空っぽで、札束も金塊も存在していなかったのである……

 

「何この金庫……?こんだけでけぇのに中身が空なのか……?」

 

「俺達が来た時には既にこうなっていた……、故にこの中に何があったのかはサッパリ分からん……」

 

戦治郎と空がお互いに小首を傾げながら会話をしていると、不意に通が戦治郎に向かってこの様な事を言って来る

 

「先輩、先程私が先輩に預けた裏帳簿……、それを見てもらいたいのですが……」

 

通の言葉を聞いた戦治郎が、言われるがままに先程通から預かった裏帳簿を取り出して、その中身を確認したところ……

 

「ごぶヴぉっ!??現在の手持ち100兆だとっ?!?1個人の分際で国家予算並の金持ってたのかよこいつっ!!!??」

 

「資源に艤装、アリーズウェポンに人体まで売っていれば、これだけ稼げる……のか……?」

 

裏帳簿を見た戦治郎は驚愕の声を上げ、それを横から覗き込んでいた空は愕然としながらそう呟く……

 

「って事は、ここにその金があったって事ッスか?」

 

「でしょうね……、そんな額になったら、普通の金庫じゃ収まらないでしょうし……」

 

「銀行……はダメですね、この額では確実に怪しまれますね……」

 

戦治郎の言葉を聞いた護が疑問を口にし、それに対して矢矧が答え、通が矢矧の発言に続いた後、大鳳が更なる疑問を口にする

 

「そんな事よりも、この金庫の中にあったお金は何処に行ったの?」

 

「100兆円となるとかなりの量の1万円札になると思うんですけど……?」

 

「一体誰がそんな莫大な数の諭吉を、俺達に感付かれずに持ち出したって言うんだ……?」

 

大鳳の言葉を聞いた大和と戦治郎がこの様な言葉を発し、それに合わせる様に一同は金庫の方へ視線を向け、怪訝そうな表情を浮かべるのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海賊団のせいで使い捨て強化クローン兵の計画書と、汎用小型艤装の設計図を取り返せんかった……。あれを使い回してもっと儲けるつもりじゃったんじゃが……、まあ100兆が手に入った事じゃし、良しとするか……」

 

そんな事をボヤキながら、プロフェッサーは種子島付近を航行していた

 

彼は戦治郎達が泊地のガサ入れをやっている間に提督宅に侵入し、提督の自宅から例の100兆円を自身の艤装の中に押し込んで盗み出したのである

 

「取り敢えず、先ずはこの金をいつもの所に仕舞い込んで、いつもの様にやるかのう」

 

プロフェッサーはそう呟くと、羽織っている白衣の胸元のポケットに入れているボールペンを取り出すと、自身の手の中でクルクルと回して弄び始めるのであった

 

そんな彼が持つボールペンは、ペン先からグリップ部分までが、まるで多くの人間の血を吸い続けて来たかの様に、それはそれは赤黒く変色していたのだった……

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