※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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裏切りの陸軍大将

雲龍達の策に嵌った戦治郎が、事情の説明の前に事情を知らない艦娘達に向かって自己紹介を行ったところ、戦治郎の名前を聞いた途端事情を知らない艦娘達がざわめき始める

 

それもそのはず、戦治郎達長門屋海賊団の名前は、南方海域での一件以来艦娘達の間で爆発的に広まっているのである。そんな海賊団のリーダーが目の前にいる……、その事実を知れば誰だってこの様な反応をする事だろう……

 

尤も、このざわめきの中には疑いの声も混ざっている……。何せ彼女達の目の前にいるこの戦艦水鬼は、雲龍が考えた非常識な罠に自ら嬉々として引っかかり、芝居とは言え雲龍相手に怯えた姿を晒したのである。それを見て戦治郎がかの有名な海賊団のリーダーだと言う事実を、素直に受け入れる艦娘は一体どのくらいいるのだろうか……?

 

それはさて置き、ざわつく艦娘達を陸奥が鎮めて話が出来る状況が完成したところで、突如陸奥が戦治郎に向かって頭を下げて謝罪し始めたではないか

 

これは一体何事か?そう思った戦治郎が陸奥に謝罪する理由を尋ねたところ、陸奥は自分が長門達の会話を盗聴していた事と、それを基に勝手に行動していた事を正直に告げた後、再度謝罪の言葉を口にするのであった

 

それに対して戦治郎は……

 

「盗聴は褒められた事じゃねぇが……、長門達が秘密にしている意図に気付いて、内容をむっちゃんの中だけで留めてたんなら、俺からは特に言う事……、あっあったわ」

 

そう言って手を打ち鳴らした後、陸奥に向かって笑顔を浮かべながらこの様に続けた

 

「横須賀の艦娘達を避難させてくれてありがとうな、おかげで人質の心配も無くなったからなっ!!」

 

戦治郎の言葉を聞いて驚いた陸奥が、顔を上げ戦治郎の笑顔を直視すると、クスリと笑いながら……

 

「そんな事言っても何も出ないわよ?」

 

この様に返答するのであった

 

その後、戦治郎が桂島の実態について話し、続いて陸奥が現在の横須賀の話をしようとしたところで……

 

「ここにいたかっ!!!」

 

突然後方から叫び声が聞こえて来るのであった……

 

その叫びに驚いた戦治郎が、思わずそちらに視線を向けると、そこには先程戦治郎に投げ飛ばされた武蔵の姿があった……。どうやらこの武蔵、自身の調子が戻ったところで戦治郎を追って来た様だ……

 

「答えろっ!!どうしてお前が大和の事を……」

 

「わっしょ~い」

 

「んなっ!?あががががっ!!?」

 

それから武蔵はそう叫びながら再び戦治郎に殴りかかろうとするのだが、その様子を見た戦治郎は武蔵の腕を取るなり気の抜けた声と共に、武蔵の腕に飛びつき式腕ひしぎ逆十字固めを完璧に極め、自身に襲い掛かって来た武蔵を拘束するのであった

 

「おめぇもしつけぇな……、あれか?俺のファンクラブ会員2号なのか?」

 

「何故いきなり2番なんだ……いだだだだっ!?!」

 

「余計な詮索はしなくてよろしい、って言うかおめぇ、艦隊はどうしたんだ?」

 

「お前との実力差を見せつけられて……、完全に意気消沈した挙句……、全員弾切れを起こしたものだから……、私以外は皆……、各自の拠点に……」

 

「せかせか、っとぉ、丁度いい機会だし今から拘束外すから、おめぇも大人しく俺達の話聞いてけ。そこで俺と大和の関係教えてやらぁ」

 

「分かったっ!分かったから早くその技を解除してくれっ!!このままじゃ腕が折れてしまうっ!!!」

 

このやり取りの後、戦治郎は武蔵を解放して、途中から参加する事となった武蔵の為に再び桂島の実態についてと、戦治郎と大和の関係について話し始めるのだった

 

 

 

 

 

「その桂島の提督……、今すぐ殴り飛ばしに行っていいか?」

 

戦治郎の話を聞き終えた途端、武蔵は拳を固く握り締めて腕全体をプルプルと震わせながら、地を這う様な低い声で戦治郎にそう尋ねる。どうやら武蔵は相当ご立腹の様である……

 

「気持ちはイテェくらい分かるが、それに関しては俺の仲間達に任せてもらえねぇか?今はそれどころじゃねぇからな……、って事でむっちゃんよろしくっ!!」

 

「はいはい、じゃあ今の横須賀鎮守府の状況を説明するわ。後から来た武蔵もしっかり話を聞きなさいよ?」

 

戦治郎はそう言って武蔵を宥めた後に陸奥に現状の説明をお願いし、陸奥はこの様に返答した後武蔵の乱入によって中断していた現状報告を開始するのであった

 

 

 

 

 

「はぁっ!?横須賀鎮守府が陸軍に襲われてるですってっ!??」

 

「厳密に言やぁ、桂島の提督の手先になった陸軍の兵だな。因みに俺達の方の情報ソースは、横須賀の伊勢から佐世保の加賀を経由した感じだな」

 

「私達の方は、私の元上司だった源中将から、直接私の方に連絡が来たわ」

 

「では私達は知らず知らずのうちに、その片棒を担がされていたのか……?」

 

「そうなるわね……」

 

陸奥の話を聞き終えたところで、大湊の足柄が冗談じゃないとばかりに声を荒げ、戦治郎が足柄の発言に微修正を加えながら自分達の情報ソースを開示、それに続く様にして舞鶴の雲龍が自身の情報ソースを開示したところで、呉の武蔵が不快そうな表情を浮かべながら呟き、横須賀の陸奥が武蔵の呟きに対してそう返答した

 

と、その直後である

 

「提督はご無事でしょうか……?」

 

陸奥の話を静かに聞いていた大淀が、不意にこの様な言葉を口にするのであった

 

それが気になった戦治郎が、大淀にどう言う事か尋ねてみたところ、どうやら舞鶴の提督は元帥と同期で非常に仲が良く、機を見てはよく一緒に飲みに行く様な関係なのだとか……

 

「不味いわね……、それが本当なら舞鶴の提督も元帥の関係者として、攻撃対象になっている可能性があるわ……」

 

大淀の話を聞いた陸奥が、この様な事を口にした瞬間、大淀は動揺したのかビクリと大きく身体を震わせた後、不安そうな表情を浮かべながら俯いてしまうのであった……。どうやら大淀は、舞鶴の提督を慕っているらしく、提督の事が心配で仕方が無いようであった……

 

「よし、だったらこっちの事は俺達に任せて、大淀は至急舞鶴に戻って提督さんを避難させるんだ」

 

「なら、私も戻らせてもらうわ」

 

大淀に気を遣った戦治郎がそう言うと、大淀は一瞬驚いたもののすぐに表情を引き締め、戦治郎に向かって敬礼しながら了承の返事をする。と、その直後、大淀の隣にいた大井がこの様な事を口にするのであった

 

戦治郎が大井に理由を尋ねたところ、大井は鎮守府に残っている北上を、この戦いに巻き込みたくないからと答える。それを聞いた戦治郎は、大井の話に引っかかりを覚えながらも、大井の帰還も了承するのであった

 

それから戦治郎が、今の内に言っておきたい事や、質問が無いかを皆に尋ねたところ、桂島の提督の日記を読んでいた天城が、挙手しながら日記を持って来た戦治郎に質問するのであった

 

「あの……、この日記に書かれている『剣持陸軍大将』と接触出来ないのでしょうか……?」

 

「それは……、陸軍の拠点潰して回っている剛さん次第になるんじゃないかと思うわ……」

 

天城から質問された戦治郎は、後頭部をバリバリと掻きながら困った様な表情をしながら、そう答えるのであった

 

 

 

 

 

さて、ここで先程天城の口から出て来た『剣持陸軍大将』とやらについて触れておこう

 

本名は剣持 刃衛(けんもち じんえい)と言い、彼は下士官時代から多くの武功を上げ、その実力だけで大将にまで上りつめた、現在の陸軍の武闘派の最頂点に君臨する人物である

 

そんな彼に纏わる噂の中には、何と生身で深海棲艦と戦い勝利したと言うものがあるのだが、その真偽を知るものは本人以外存在していない上に、彼自身そこまで口数が多い人物ではなく、その話について尋ねてみても沈黙を貫き通してしまう為、その話は噂の領域を出ないのであった……

 

さて、では何故天城は彼と接触出来ないかについて尋ねたのか……、それは桂島の提督の日記の内容が関係している

 

『陸軍の剣持大将が裏切った……、どうやら奴はプロフェッサーが仕入れて来る武器を手に入れる為だけに、自分に接触して来た様だ……。その裏切りの代償……、しっかり払ってもらおう……』

 

『奴の拠点に送り込んだクローン大和50体が戻ってこない……、一体どういう事だ……?まさかとは思うが……、奴に始末されたとでも言うのか……?』

 

『奴直筆の手紙が額に張り付けられたクローン大和の首50個が自宅に届いた……、奴は化物か何かなのか……っ!?』

 

これが桂島の提督の日記にあった、剣持大将についての情報である。そう、彼は桂島の提督からアリーズウェポンを購入するだけ購入して、傘下に加わる話を蹴ったのである

 

少し前に大和が陸軍の7割ほどが、提督の傘下に下ったと言っていた事を覚えているだろうか?この話を聞いて、残り3割はどうなっているのか疑問に思った者もきっといるだろう……

 

そう、この3割こそが、剣持大将率いる大日本帝国陸軍武闘派の関係者なのである

 

日記を見た天城が剣持大将と接触出来ないか尋ねたのは、彼が率いる武闘派に協力を要請し、共に提督傘下の陸軍兵を一掃しようと思ったからである

 

これに関しては、日記の発見者である戦治郎も同じ事を考えたようで、戦治郎は陸軍拠点襲撃の旅に出た剛達が、剣持大将と接触する事を切に願うのであった……

 

そんな剣持大将は今……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいだらあああぁぁぁっしゃあああぁぁぁらあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

「おぉーっ!!曲がった曲がったっ!!!今の曲がるとか凄い凄いっ!!!」

 

「姉さん……っ!お願いだから席に座って……っ!光太郎さんの運転の邪魔をしないで……っ!!」

 

「この速度で今のカーブを曲がるなんて……、ホント光ちゃんのドライビングテクニックは凄いわね~……」

 

「不知火さんっ!しっかりしてくださいっ!!」

 

「し……、不知火に何か……、落ち度で……も……?」

 

シゲが取り付けたロケットブースターを使って、500km/hで剣持の部下のおかげで貸し切り状態となった高速道路を爆走するアルゴス号の最後部座席に座り……

 

「全く……、騒がしい連中だ……」

 

腕を組んでいかめしい表情を浮かべ、アルゴス号の中で騒ぐ剛達を眺めながら、小さくそう呟いていたのであった……

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