※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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怪傑ズイン

昔ある所に、1人のシステムエンジニアがいた

 

その男は毎日朝早くから出勤して仕事を始め、日付が変わってからしばらく経つまで残業する様な日々を送っていたのであった

 

そんな彼はある日体調を崩し、病院に行く為に上司に頼み込んでなんとか午前中だけ有給を貰い、診断の結果医師から今日は休む様にと言われたにも関わらず、それを無視して会社に向かう途中で、ビルの窓を清掃する作業員の墜落事故に巻き込まれてしまい、彼は作業員の下敷きになった事が原因で、26歳と言う若さでこの世を去ってしまうのであった……

 

 

 

そんな彼が目を覚ました時、彼の身体は何処かの公園に設置された噴水の中で、プカプカと浮かんでいたのであった……

 

「え……?此処何処……?」

 

そう呟いた彼が、状況を把握する為に辺りを見回した時、不意に自身の身体が視界に入り……

 

「……なんだこれ……?」

 

自身が身に纏っている服が変わっている事に気付くと、彼は慌てて噴水から出て噴水の水面を恐る恐ると言った様子で覗き込み、そこに映し出された恐ろしい程に白い肌を持ち、彼岸花の花弁の様な髪型と真っ白な髪を持つ少女の顔を見て、ただただ愕然とするのであった……

 

その後彼は我に返り、自身の身に何があったかを思い返し、自分が事故に巻き込まれた事を思い出し、それが原因で自分は死んでしまい、この様な姿に生まれ変わったのではないかと推測する

 

自分の死を自覚した彼は、悲しむよりも先に喜びの感情に心を支配されるのであった。これでもうあのブラック企業とおさらば出来る……、彼にとってこの事実が何よりも嬉しかったのである……

 

それからしばらく後に、彼は自分が無一文である事に気付き、彼はしばらくの間ホームレス生活を強いられる事になるのであった……

 

そんなある日、そんな彼に転機が訪れる

 

日課のゴミ箱漁りを終えて、寝床に戻ろうとしていた彼の目の前で、母親から力づくで娘を奪い、連れ去って行くと言う物凄く派手な事件が発生したのである

 

その現場を目の当たりにした彼は、最初は巻き込まれない様無視を決め込むつもりだったのだが、泣き叫ぶ母親の声が耳を打つ度に自身の胸に熱いものが込み上げて来る事に気付き、それが心の臨界点を突破した瞬間、彼は無意識の内に走り出していたのであった

 

これより前に、彼は複数人のホームレス達に襲われ性的に食べられそうになった時、必死に抵抗した際に自分の身体能力が凄まじい事になっていた事に気付いたのである

 

そんな彼は今、その身体能力をフル活用して母親から娘を奪った男が乗った車を走って追いかけ、その途中で法定速度を守る原付を抜き去り、法定速度を守る車を追い抜き、他の車を絶えず煽りながら追い越し運転で突っ走るDQNの車をぶっちぎり、遂に目的の車に追いつくのであった

 

その後彼はその車のリアバンパーを掴むと……

 

「ふんがあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

両足でブレーキを掛けながら、その車の後方を持ち上げて後輪を浮かせ、強引に車を停止させてしまうのであった

 

その直後、車の中から数人の男達が姿を現し、彼に襲い掛かって来るのだが、彼は襲い掛かって来た男達を次々とワンパンで倒してしまうのであった

 

それからしばらくすると、運転席に乗っていた男が車から降りて来て、彼に拳銃の銃口を向け、そのトリガーを躊躇い無く引いてみせるのであった

 

危ないっ!!!その光景を見ていた多くの人達と、男の標的となっている彼自身がそう思った直後、拳銃から放たれた銃弾は彼の額に直撃すると、カンッ!と言う音を辺りに響かせて弾かれた後、そのまま地面へ落下するのであった……

 

その後拳銃を持った男は、弾倉が空になるまで彼に銃弾を浴びせるのだが、その度に拳銃の弾は乾いた音を出しながら彼の足元に落ち、そこでようやく彼に拳銃は効かないと悟った男は、恐怖心に駆られそのまま彼に背を向けて、走って逃げてしまうのであった

 

男が逃げた後、彼は持ち上げていた車の後部をゆっくりと降ろし、車の中に入って拘束されている女の子を自由にしてあげる。その直後、現場にパトカーがやって来て、中から女の子の母親が姿を現し、それに気付いた女の子が母親に飛びついて泣きじゃくり始める。そんな光景を目にした後、彼はこの場を後にしようとするのだが、すぐに警察に呼び止められ、彼はそのままパトカーに乗せられ警察署に向かい、事情聴取を受ける羽目になるのであった

 

それからしばらくして、ようやく解放されたところで、別室で事情聴取を受けていた母親とばったり遭遇し、彼は母親から何度も感謝の言葉を述べられ、幾度となく頭を下げられるのであった

 

その後、母親が後日お礼がしたいから連絡先を教えて欲しいを言われた時、彼はつい口ごもってしまうのであった。それもそのはず、彼は今絶賛ホームレス生活の真っ最中なのであり、正真正銘の住所不定無職、連絡先を教えたくても教えるべき連絡先が存在しないのである……

 

突然口ごもってしまった彼を見て、不思議に思った母親が彼に事情を尋ねると、彼は正直に今の自分の生活状況を母親に話すのであった……。すると……

 

「そう言う事ですか……、なら……」

 

母親はそう言うと、何処かに電話を掛け始める。そして電話で話している途中で彼に通話中のスマホを手渡し、受け取った電話と母親の顔を困惑しながら交互彼に見ている彼に対して電話に出る様に促し、彼は戸惑いながらも電話に出るのであった

 

その電話の先にいたのはどうやらこの母親の夫の様で、話を聞く限りどうも旦那さんは一人暮らし用のアパートを経営している様だ。そして母親から事情を聞いた旦那さんは、彼に対してこの様な提案をしてくるのであった

 

「お住まいの事で困っていらっしゃるのなら、この件のお礼としてどうぞウチのアパートの一室をお使い下さい。家賃についてですが、娘の命の恩人から取る様な真似は流石に出来ませんから、気にしないでください」

 

これに対して彼は家賃の件は流石に自分の方が心苦しくなるからと言う理由で断ろうとするのだが、相手も頑なに譲ってはくれなかったのであった。その後双方がしっかり話し合った結果、彼が収入を得る様になるまでは無料で部屋を貸し、彼が収入を得る様になったら通常の家賃の半分の額を家賃として納める決定がなされるのであった

 

こうして彼はめでたくホームレス生活を卒業し、このアパートを拠点に活動を開始し、近所のコンビニでアルバイトを始めるのであった

 

それからしばらく経ったある日、バイトが休みで部屋でゴロゴロしていた彼のところに母親が尋ねて来て、彼は立ち話もなんだからと彼女を家に上げ、2人はお茶を啜りながら雑談を応じるのであった

 

この時、偶々点けていたテレビから人攫いに関するニュースが流れ、そこで彼はここ最近ずっと疑問に思っていた事がある事をを思い出し、いい機会だからと母親に尋ねる事にするのであった

 

「奥さん、テレビを見ててずっと思ってたんですけど、なんか人攫いのニュースが多過ぎやしませんか?」

 

彼の言葉を聞いた母親は、何も知らないのかと言った様子で1度驚いた後、彼がこれまでホームレスだった都合、情報の入手方法が捨てられた新聞程度だった事を思い出すと、彼に対してこの国の治安について話し始めるのであった

 

ここに来て、彼はこの世界が艦これの世界である事に気付き、自分は未知の深海棲艦になってしまった事に思い至るのであった

 

そして彼は母親の話を聞いて、思わず愕然としてしまうのであった

 

現在、この日本は深海棲艦との戦争が長引いている事が原因で、非常に治安が悪くなっており、ある理由のせいで女性や少女を狙った人攫いが多発しているのだとか……

 

その原因とは、艦娘に関するものである

 

艤装を兵器として運用出来る艦娘は、基本的に軍属の艦娘に限られているらしく、民間用の艤装にはリミッターが掛けられており、とても兵器としては使えない仕様になっているのだとか……

 

そしてその事を快く思っていない者達が一定数存在し、その様な連中が艦娘の適性を持つ女性や少女を攫っていて、それらの多くは自身を深海棲艦から守る為の私兵を欲しがる企業の人間だと言うのが、もっぱらの噂となっているそうだ……

 

「それ以外にも薬物の取引や強盗など、色々な犯罪が今の日本の至る所で頻発しているんです……。その中でもここ横須賀や、佐世保と言った大きな港がある街は特に酷いんだそうです……」

 

暗い表情をしながら、母親はこの様な言葉を口にするのであった……

 

その話を聞いた途端、彼の心に熱いものが、あの時と同じ様に込み上げて来るのであった……

 

 

 

それからしばらくして母親が帰宅した後、1人になった彼は先程の話を思い返し、拳を固く握り締める……

 

「まさかこの世界の日本が、犯罪大国になっているなんて……」

 

そう呟いた後、彼はある決意を固める

 

「この世界は僕がいた世界とは違うけど、ここが日本である事は変わらない……っ!ならば平和な日本を取り戻そう……っ!!僕のこの力は、きっと神様がそうする様にと僕に与えてくれたものなんだ……っ!!!」

 

こうして彼……鶴田 武蔵は平和な日本を取り戻す為に、犯罪者達と戦い続ける事を胸に誓うのであった

 

そしてムサシは、その第一歩として横須賀を平和にする為に活動を開始。先ずは犯罪者達に身元を簡単に割らせないようにする為の変装用の衣装と、武器として使用するスタンバトンとスリングショットを通販で買い揃え、ネットの情報を基に武器の威力強化や衣装の耐久性の強化を行った

 

こうして犯罪者達と戦う準備を整えたムサシは、自身が子供の頃大好きだったゲームに登場したキャラクターと、自身とよく似た姿をした艦娘から名前を取って付けた『怪傑ズイン』と言う名を名乗り、犯罪者達との戦に身を投じるのであった。これがムサシの第二の転機である

 

それから1年間、ムサシは怪傑ズインとして横須賀の犯罪者達と激闘を繰り広げ、その途中で横須賀鎮守府の陸奥達と出会い、多くの市民に勇気を与えて立ち上がらせる事に成功するのだが、この結果に絶望してしまうのであった……

 

1年間もボロボロになりながらも戦い続け、平和にする事が出来たのは横須賀市だけ……。こんな調子で本当に日本の平和を取り戻せるのか……?自分の戦いに意味はあるのか……?

 

こうして思い悩んだムサシは、ズインとしての活動を引退する事を決め、今まで迷惑をかけて来た分を取り返す為に、必死になってコンビニバイトに勤しむ事にするのであった

 

そんなムサシの下に、第三の転機が訪れる……

 

 

 

ある朝、ムサシはいつもの様に早起きし、彼岸花の花弁の様なくせっ毛を整髪料を使って大人しくさせる為に、激闘を繰り広げている最中、突然スマホに着信が入るのであった

 

そしてそれがワンコールで切れた事を確認すると……

 

「遂にか……」

 

ムサシはそう呟くとバイト先に電話をし、今日のバイトを休む事を伝える

 

『ムサシ君、確か前に言ったと思うけど……』

 

「はい、覚えています……。今まで本当にお世話になりました……」

 

その後ムサシはこの様なやり取りを交わした後、電話を切ってクローゼットの前に立つと、静かに両目を閉じてこう呟く

 

「口では引退したって言ってたクセに……、やっぱ未練たらたらだったんだな……」

 

ムサシは自身の胸に手を当て、先程から熱く滾っている心に対してそう問い掛ける……。そして……

 

「よしっ!!いくぞっ!!!」

 

大声でそう叫ぶと、ムサシはクローゼットを豪快に開き、中に仕舞ってあった衣装を手に取るとすぐに着替え始め、この瞬間からムサシは怪傑ズインに変身するのであった

 

そして怪傑ズインとなったムサシは飛び出す様にして外へ出て、アパートの傍にある大家さんのとこの物置目指して猛ダッシュし、その中にあったバイクに跨り、キーを挿してエンジンに火を入れ、アクセルを開いて物置から飛び出して道路に出ると、横須賀鎮守府目指して走り出すのであった

 

それからしばらく走行したところで、ムサシは市街地でカーチェイスを展開する3台の車を発見、そしてその運転手の中に伊勢と蒼龍の姿を見たムサシは……

 

「彼女達が追い掛けている車に、陸奥さんが言っていた通信士がいる可能性があるのか……。なら……っ!!!」

 

そう言うと自身の土地勘とバイクの機動性をフル活用して先回りを実行し、ムサシは件の通信士を捕まえる事に成功するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みにムサシが乗っていたバイクについてだが、これは陸奥がムサシに対して海軍のある将校が企業相手に資源の横流しをしている現場を押さえ、可能ならばその将校を拘束して欲しいと言う依頼をし、それをムサシが無事に達成した報酬として、自腹を切って買い与えたものだったりする……

 

こう言う経緯で入手したムサシのバイクは現在、通信士が乗っていた車と正面衝突した後通信士の車に乗りあげられ、廃車確定なほどグチャグチャになっていたのであった……

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