少し時間を遡って和歌山県から南方50km地点、舞鶴の大淀と大井が帰還する姿を見送った戦治郎達は、早速行動を起こす事にするのであった
戦治郎達は先ず大湊の艦娘達を、この戦いに巻き込まない様にする為に父島に避難させる事を決定し、戦治郎は陸奥、天城、羽黒、由良の4名に避難する艦隊の事を任せ、武蔵、雲龍、足柄の3名は、戦治郎とペット衆と共に横須賀に突入する事となるのであった
本来、戦治郎はペット衆以外を横須賀に連れて行くつもりは無かったのだが……
「陸上戦なら私に任せなさい、こう見えても私、艦娘になる前は陸軍に所属していたんだから」
足柄のこのセリフと、そのセリフを肯定する様に首を縦に振る羽黒の様子を見て、戦治郎は足柄の同行を許可し、彼女にこんな事も有ろうかとと言った感じで、自身の腰に付けている武装格納ボックスに入れていたマカロニを手渡したのである
因みに、何故足柄が陸軍から海軍に鞍替えしたのかについてだが……
「戦場が私を呼んでいたからよっ!!!」
この言葉の通り、艦娘の登場によって主戦場が陸から海に変わった関係で、戦いを求めて軍に入隊していた彼女は、すぐさま陸軍を辞めて艤装の免許を取得し、艦娘となって戦いを満喫しているんだそうな……
さて、この様な事があって戦治郎が足柄の同行を認めたところで、今度はその様子を見ていた呉の武蔵が横須賀同行に名乗りを上げる
それを聞いた戦治郎が、武蔵に陸上戦の経験があるのか尋ねてみたところ……
「そんなものは無いっ!だがだからと言ってこの状況を捨て置く訳にはいかんだろうっ!!それにもしそんな事をすれば、誇り高き戦艦武蔵の艦娘の名が泣くだろうっ!!」
「いや、まあそうだろうけどよぉ……」
「それに私には格闘技の心得がある、足柄の様に銃器を扱う事は出来んが、全くの役立たずになる事は無いはずだっ!」
武蔵はこの様に主張し、意地でも戦治郎達に付いて行くつもりでいるようだ……
因みに武蔵に格闘技の心得があると言うのは嘘ではなく、武蔵に殴られそうになった戦治郎はその事を彼女の体捌きから気付いていたりする
尤も、戦治郎はそんな彼女の拳を苦も無く易々と捌いていたが、それは大体今朝方怪物クラスの格闘術使いである空と模擬戦をし、戦治郎が格闘戦の感覚を思い出していた事が原因だったりする……
結局、武蔵の熱意に圧倒された戦治郎が折れ、戦治郎は武蔵の同行を許可するのであった
その後、2人の志願者の同行を認めた戦治郎は、今度は自分の方から雲龍に同行して欲しいと依頼する
「雲龍には、俺達が突入した後の周辺の警戒を頼みたいんだ。多分突入した後俺達は目の前の事で手一杯になると思うからな、そんな中で奇襲とかされたらたまったもんじゃねぇから、雲龍には偵察機で情報集めしてそれらを俺達に伝えて欲しいんだ」
「そう……分かったわ、そう言う事なら私が皆の目の代わりになるわ」
戦治郎が雲龍に理由を話すと、雲龍はこの様に返して戦治郎達に同行する事にするのであった
こうしてチーム分けが終わり、大湊の艦娘達が父島に向かい始めたところで
「鎮守府の事……、そして長門の事……、頼んだわよ……?」
陸奥が振り返り、戦治郎に向かってこの様な事を言い
「その……、妙高姉さんの事……、お願いしますね……?」
「こちらの方は任せて下さい、ですからどうか無理だけはなさらないで下さいね……」
「皆さん、どうかご無事で……」
それに続く様にして羽黒、天城、由良が戦治郎達にそう言って、この場を離れていくのであった
(海賊団に佐世保に桂島、そして更にあいつらの頼みか……、こりゃマジで責任重大だな……)
大湊の艦娘達を避難させる為に移動を開始した陸奥達の背中を見送りながら、戦治郎が内心でこの様な事を呟き……
(っと弱気になってらんねぇ!この期待に応える為にも、気合い入れて横須賀助けないとだなっ!!)
気を取り直して内心でそう叫んだ直後である
「ちょっ!?ご主人っ?!」
「えぇっ!?なにこれっ?!!」
突然慌てた様子で弥七が戦治郎に話し掛け、太郎丸が何かを見て驚きの声を上げる。それに対して戦治郎が怪訝そうな顔をしながら2人に何があったのか尋ねると……
「ご主人の背中が突然光り出したんだぁよ~」
動揺する2人の代わりに、大五郎がこの様な言葉を口にするのであった
「ちょっとどうしたのよこれっ!?一体何が起こってるのっ?!」
大五郎の言葉を聞いて戦治郎の背中を見た足柄が驚きの声を上げ、状況を確認する為に戦治郎の上着をめくり上げると……
「きゃあああぁぁぁーーーっ!!!足柄に食べられるうううぅぅぅーーーっ!!!」
すかさず戦治郎がこの様な叫びを上げ
「ふざけている場合かっ!!!」
即座に武蔵に怒られるのであった……
さて、こうして露わになった戦治郎の背中だが、そこにはある変化が発生していたのであった
戦治郎の背中にある入れ墨の様なものの、今まで空白になっていたところに『神』の文字が浮かび上がり、それはそれは眩い輝きを放っていたのである
「これは一体……?」
「この背中の紋々みたいなのは、どうやら俺が使える能力を表しているみたいなんだが……、帝、鬼と来て神ねぇ……、神……、どんな能力だ……?」
しばらくして光が収まった戦治郎の背中を見て呟く雲龍に対して、戦治郎はこの様に答えた後にこの文字に関する能力が、一体どの様なものなのか考え始めるのだが……
「そんな事よりも、急いで横須賀に向かった方がいいのではないか?」
思考を巡らせ始めた戦治郎に向かって、武蔵が先を急ぐべきだろうと促し、それを聞いて我に返った戦治郎は、武蔵達を連れて横須賀鎮守府へと急行するのであった
それから戦治郎達しばらく移動して浦賀水道から東京湾に侵入、横須賀鎮守府が目視出来る距離まで接近したところで、安全な場所から偵察してもらう為に雲龍と別れて突入の準備を始めるのであった
「おめぇら、準備はいいか?」
「問題ないわ、さぁ、早く突入しましょうっ!!」
「私もいつでもいけるぞっ!!」
「ペット衆の皆も準備OKだよっ!!」
「死にてぇ奴からかかって来なってかぁっ!?」
「新しく手にいれた力で、皆を守り通すだぁよ~!」
「皆気合い十分だなっ!っとそれはそうと弥七、殺しは無しだからな?いい?大丈夫?それと大五郎、あの能力は守る奴だけでいい?攻撃の方は流石に不味いから、ね?」
戦治郎はこのやり取りで全員の状態を確認すると、鬼神紅帝 帝之型を発動させて横須賀鎮守府に突入しようとするのだが……
「……おんりょ?何ぞこれ?」
鬼神紅帝を発動した直後、戦治郎は少々驚きつつ思わずこの様な言葉を口にするのであった
その後、怪訝に思った太郎丸が戦治郎の顔を見たところ、鬼神紅帝を発動した時に出る戦治郎の左目の炎の中の文字が、帝之型の『帝』ではなく『神』になっていた事が発覚するのであった
「それでご主人、さっき驚いてたみたいだけど、何かあったのか?」
「いやな、なんかこれ発動させてから、俺の視界に変なのが映ってその辺漂ってんだわ……。一体何なんだろうな、これ……」
弥七が戦治郎にそう尋ねたところ、戦治郎はこの様に返答しながら、戦治郎にしか見えていない何かを指で突こうと、人差し指を立てた腕を前方に伸ばすのであった
先程戦治郎が言った様に、現在彼の視界には『豪雨』やら『雷雨』、『竜巻』などと書かれた白いモヤの様な物が、そこら中をフヨフヨと漂っているのである
そして戦治郎が『濃霧』と書かれたそれを指で突いた瞬間、文字付き白いモヤはまるで風船が割れる様にパチンと弾け、それと同時に横須賀鎮守府を覆い尽くす様に濃い霧が発生し始めるのであった……
「……あぁ、これってそう言う……」
これによってこの『鬼神紅帝 神之型』の効果を把握した戦治郎は、そう呟くと只々ニヤリと笑みを浮かべるのであった……
鬼神紅帝 神之型 (きしんこうてい かみのかた)
戦治郎の3つの基本能力の内の最後の1つ
発動すると豪雨、落雷、火災、竜巻、強風、吹雪、雹、濃霧、着氷害、霜害、熱波、寒波、砂嵐などの自然災害を自在に操れる様になる
発動中は戦治郎の左目から赤い炎が噴き出し、その炎の中に『神』の文字が浮かび上がる