「何か凄い事になってるわね……」
戦治郎の能力の効果が及んでいない海上で、横須賀鎮守府を遠巻きに眺める雲龍は、思わずそう呟くのであった
本来彼女は、艦載機を飛ばして鎮守府周辺の警戒を行わなければいけないのだが、それは戦治郎が巻き起こす幾多の自然災害のせいで、艦載機を飛ばす事が出来なくなってしまっているのである……
だが、だからと言ってあの場所に突入し、戦治郎達の安否を確認しようとする度胸を、彼女は持ち合わせてはいなかった……
「皆無事だといいのだけど……」
雲龍は只々その場に佇み、改めてそう呟くのであった……
「おい戦治郎っ!!このままでは寒くて碌に動けんぞっ!!!」
「おめぇの場合特にそうだろうなぁっ!!っしゃ!んじゃあ別の奴に切り替えますか……。っとこれなんか良さそうだな……、よっし、大五郎っ!こっちとあっちにでっかい傘作ってやれっ!!!」
吹き荒ぶ吹雪の中、凍える武蔵が戦治郎に対してそう訴え掛けたところ、戦治郎はこの様に返答した後大五郎に指示を飛ばす
「了解だぁよっ!!!」
すると大五郎はこの様に返答するなり両手を天に掲げ、2つの大きなデュラハライト結晶を出現させ……
「ぐおおおぉぉぉーーーっ!!!」
気合いの雄叫びと共に、燎達の頭上目掛けて片方のデュラハライト結晶を投擲する
「なんじゃありゃあああぁぁぁーーーっ!!?」
その光景を目の当たりにした燎が、驚愕の声を上げながら自分達の方へ飛んで来るデュラハライト結晶を警戒し、艦娘達も結晶が自分達に直撃した際の衝撃に備えて身構えるのだが、結晶の軌道は燎達の予想を裏切って、彼等の頭上に到着するとそこでピタリと止まってしまうのであった
「これは一体……?」
燎の傍にいた長門が、不思議そうにそう呟きながら結晶に触れようとするのだが……
「おぉっとぉっ!!そいつには触れない方がいいかもだぜ、まだ全然詳細を調べた訳じゃねぇけど、それが出た瞬間俺の火傷痕が疼くんだ。だから恐らくそれは『アレ』が関わってる気がするんだわ」
その様子を見ていた戦治郎がこの様な事を言い、それを聞いた長門はその表情を引き攣らせながら伸ばそうとした手を急いで引っ込めるのであった
その後燎達の頭上に結晶が届いた事を確認した戦治郎が、すぐさま『雹』のモヤを握り潰したところ、今まで荒れ狂っていた吹雪が突然ピタリと止み、空に浮かぶ雲からは握り拳大の雹が吐き出され始めるのであった
その雹の威力は中々のもので、直撃を受けた戦車の装甲はボコボコと凹み、車体のフレームも甚大なダメージを受けて歪んでしまう。そして戦治郎が起こした『火災』で火傷を負った歩兵達は、その身体に雹を受ける度に力なく呻き声を発する
そして戦治郎達はこの凶悪な氷の塊が降りしきる中燎達の下へ駆け寄り、彼等との合流を果たすのであった
「外見と言い、能力と言い、しばらく見ねぇ間に随分変わったな」
「そんだけここに来るまでに色々あったって事よ」
戦治郎の今の姿を目にした燎がこの様な事を言うと、戦治郎はニカッと笑いながらこの様に返答し、2人は同時に拳を突き出してグータッチする
「んで、増援はまだ来ると思うか?」
「そりゃもうジャンジャンバリバリ来るだろうよ、何たって陸軍全体の7割が相手なんだからな」
その後燎が戦治郎に増援が来る可能性について尋ねると、戦治郎は自身が得た情報を基にこの様に返答する
「日本中の陸軍兵が、この横須賀に集まって来るのか……。これは骨が折れそうだな……」
「あっちが向かってくるのなら、こっちはそれをただ倒せばいいだけじゃない。まあ……、私達の出番があるか分かんないけど……」
戦治郎の言葉を聞いた日向がやれやれと言った様子で呟くと、それを耳にした足柄がこの様に返答し、戦治郎の方へと視線を向ける。するとそれに倣う様に他の艦娘達も戦治郎の方へ視線を向けると、自身に視線が集まっている事に気付いた戦治郎は、自身の胸元を隠す様な仕種をしながらその頬をほんのり紅く染める……
「何やってんだお前……?」
「いや、つい……」
その様子を見た燎が戦治郎にツッコミを入れ、戦治郎がこの様に答えたその時だ
「どうやら戦治郎が言う通り、おかわりが来たみたいだぞ……?」
今まで勢いよく降り注いでいた雹が止んだ途端、何処かに潜んでいたであろう陸軍兵達が続々と姿を現し、それに気付いた武蔵が陸軍兵達を見据えながらこの様な言葉を口にする……
「武蔵、足柄、今の内に艤装の設定変えとけ。蜘蛛みたいなのは知らんが、あの饅頭みたいな奴の装甲はマカロニや拳、それにヤワな主砲じゃどうしようもねぇぞ」
「了解」「分かった」
「やっぱ俺の読みは当たってたのか……」
戦車部隊の中にキュクロープスの姿がある事に気付いた戦治郎が、武蔵と足柄に向かってこの様な事を言い、傍でそのやり取りを聞いていた燎は思わずそう呟く
「って事でっ!!!歩兵達は俺が何とかすっから、戦艦艦娘は兎に角戦車に砲弾を浴びせまくって、それ以外の艦娘は戦車隊攻撃する時は艤装の主砲で足の継ぎ目を狙えっ!!!」
「この状況、今の俺達なら引っ繰り返せるはずだっ!!!皆気合い入れて行くぞっ!!!」
\了解っ!!!/
その後戦治郎が艦娘達に指示を飛ばし、それに続く様にして燎が皆を激励すると、艦娘達は2人に力強く返答した後陸軍の増援部隊に攻撃を開始するのであった
この時この場にいる艦娘達は、この苦しい状況の中駆け付けて来てくれた戦治郎達に大いに感謝し、彼等がいるならば本当にこの状況を打開できるだろうと、心から信じる事にするのであった。と、その直後……
「うおぉっ!?」
何の前触れも無く、突然戦治郎が驚きの声を上げる
「どうした戦治郎っ!?」
腰に取り付けられたスモールパッケージとシーハンターを、多脚戦車達に向けて発射しながら燎が戦治郎に尋ねたところ……
「いや、なんか一杯出て来たっ!!!」
戦治郎はこの様な意味不明な供述をするのであった……
さて、戦治郎は一体何が一杯出て来たと言っているのか……?それはあの白いモヤの事である
今の戦治郎の視界には、神之型発動中に見えていたものだけでなく、『津波』『地震』『火山噴火』『隕石落下』などと言った、明らかに危険そうな文字が書かれたモヤが追加されているのである
(これ絶対ヤバイ奴だろ……、でも使わないのは勿体ない様な……。取り敢えずこっちに被害出たらごめんなさいするとして……)
「せいやっ!!!」
頭の中でこの様な事を考えた戦治郎は、物は試しと言った調子で掛け声と共に『地震』と書かれたモヤを割る。すると突然横須賀鎮守府内だけで、大規模な直下型地震が発生するのだが……
「こ、今度は何事だクマッ!?」
「戦治郎っ!?今度は何したのっ?!」
地震に翻弄されて倒れる歩兵はその恐怖に負けて悲鳴を上げ、盛大によろけて味方の戦車にぶつかって横転する戦車達……、そんな光景を目の当たりにした球磨が驚きながら声を上げ、足柄はある異変に気付き慌てた様子で戦治郎に問い詰め始めるのであった
何とこの地震、戦治郎達が立っているところだけが全く揺れていないのである
「いや、ちょっち新しく出て来たモヤを割ってみたんだ……」
「新しく出て来た……?って戦治郎、お前のその左目の炎……、最初からそんな形だったか……?」
足柄の問い掛けに気圧されながらも答える戦治郎に向かって、今度は横から話を聞いていた武蔵が戦治郎に対してこの様な質問をするのであった
そう、戦治郎が知らない内に左目の『神』の文字が浮かぶ赤い炎に変化が表れており、いつの間にか出現していた交差する2つの輝く光の輪が、まるで土星の輪の様に戦治郎の左目の炎を囲んでいたのであった……
鬼神紅帝 神帝之型 (きしんこうてい じんていのかた)
戦治郎の能力の1つで帝之型の上位版、帝之型と神之型が強化された状態で同時に発動している状態
神之型取得後に多くの人達から信用と信頼を得た結果、使用出来るようになった型
自身を含む艦隊メンバー全員の全ステータスを2倍に強化する上に、豪雨、落雷、火災、竜巻、強風、吹雪、雹、濃霧、着氷害、霜害、熱波、寒波、砂嵐、洪水、侵食、津波、高潮、地震、隆起、地盤沈下、地割れ、陥没、落盤、土砂災害(斜面崩壊、地すべり、土石流、山体崩壊など)、雪崩、熱帯低気圧、旱魃(かんばつ)、火山噴火(降灰、噴石、溶岩流、火砕流、火山泥流、火山ガスなど。海底火山も噴火可能)、湖水爆発、隕石落下、太陽フレアなどの自然災害を自在に操れる様になる
因みに神之型では自身にも自然災害の影響を受けていたが、神帝之型になるとその影響を受けなくなる
発動中は神之型同様、『神』の文字が浮かぶ赤い炎が左目から噴き出すが、その炎を交差する2つの輝く光の輪が土星の輪の様に囲んでいる