「……んぉ?」
間の抜けた声と共に重い瞼を開いた戦治郎の視界に見覚えのない天井が映り、戦治郎は意識がぼんやりする中で自身が覚えている情報を基にゆっくりと状況を整理していく……
「お目覚めになられたんですね……っ!?」
その最中、不意に話し掛けられた戦治郎が驚きながらそちらに目を向けると、そこには戦治郎とは違う理由で驚く大和の姿が映し出されるのであった
「大和……?って事は此処は桂島泊地って事か……?」
「いいえ、此処は横須賀鎮守府の医務室ですよ」
「……は?」
戦治郎が大和に現在地を尋ねたところ、予想外の答えが返って来た為、戦治郎は再び間抜けな声を上げながら不思議そうな顔をする
先程状況整理した際、横須賀鎮守府は自身の能力のせいで何処もかしこもボロボロになったはず……、なのに何故何事も無かったかの様に設備が使える……?戦治郎がここまで考えたところで、ある事実に気付き疑問を抱く……
「仮にここが横須賀だとして、何で此処に大和がいるんだ……?」
戦治郎がこの様な言葉を大和に投げかけると、大和は自分が此処にいる理由と現在の横須賀鎮守府の状況について話し始めるのであった
先ず大和が此処にいる理由だが、それは元帥名義で輝と悟と共に横須賀鎮守府に来る様にと連絡があったからだそうだ
その時大和が連絡を寄越して来た長門に、何故この3人なのかを尋ねたところ、輝は剣持傘下の工兵達と共に鎮守府と大本営を復旧させる為に、悟は重症を負った戦治郎の治療を改めて行う為に、そして大和は今回の件で明るみになった提督の悪事についてや、泊地の状況を説明する為に呼ばれた事が判明するのであった
因みにこの連絡を受けた直後、護が泊地に仕掛けていた通信妨害は解除されたんだそうな……
こうして横須賀に向かう事になった大和達だったが、向かうついでに提督をそちらで預かってもらえないか聞いてみたところ、提督を連れて来るのはしばらく待って欲しいとの返答を受けるのであった
話を聞いている限り、今回の件で大量の逮捕者が出た為、日本中の軍刑務所が満杯になってしまっているそうだ。しかも横須賀鎮守府と共に大本営の施設までもがまとめて更地となっている為、逮捕者を裁こうにも裁く為の場所が無い故に、提督をブチ込んでおく軍刑務所に空きを作る事が出来なくなっているのだとか……
「あぁ、だから輝が呼ばれていたのな」
「はい、おかげであっという間に鎮守府も大本営も完全に復旧し、溢れていた逮捕者も輝さんが軍刑務所を新設してくれたおかげで全員無事に収容完了、現在は元帥達が頑張って逮捕者の皆さんを処理しているそうです」
ここで戦治郎は『元帥達』と言う単語に反応し、元帥以外に誰が逮捕者を裁いているのかについて大和に尋ね、大和の口から剣持大将の名前と彼が此処に来ている経緯を聞き、驚愕しながらも彼を此処に連れて来てくれた剛達に凄まじく感謝するのであった
因みに剣持を横須賀に連れて来た功労者である剛達は、現在福岡駐屯地以外の日本各地から横須賀鎮守府に集められているアリーズウェポンを、艦娘達と剣持傘下の陸軍兵達と協力して集計しているそうだ
尚、横須賀に集められたアリーズウェポンの処分だが、基本的には集計し終えたところで分解した後貨物用コンテナに積み込み、その中にコンクリートを流し込んで太平洋の何処かに投げ捨てる予定なんだそうな……
「んだよ~……、あいつら来てるんならこっちに顔出しゃいいのによぉ……」
「それが……、輝さんと悟さんはやる事があると言ってこちらでやるべき事を終えた後、泊地の方に戻られたんですよ……。でもまあ、それでも戦治郎さんが目を覚ますのを1日は待ってくれたんですから……」
戦治郎が大和とこの様なやり取りを交わしたところで、大和の言葉に違和感を感じてすぐさま大和に質問する
「ちょっち待ち、1日は待ってくれた……?大和、今日何日だ?俺が倒れてからどれだけ時間経った?」
「それなんですけど……、戦治郎さんは倒れてから3日間、ずっと眠りっぱなしだったそうなんですよ……」
「Oh, Jesus……」
戦治郎に質問された大和がありのままを戦治郎に伝えたところ、戦治郎は驚愕しながらかなりいい発音でそう呟くのであった
戦治郎に治療を施した矛崎と悟が言うには、戦治郎の身体にはかなりの疲労が蓄積していたのだとか……。戦治郎が大和の口からそれを聞いた直後、その原因は恐らく神之型と神帝之型にあるだろうと推測し、まだ使い慣れていないものを気分に任せて使うものではないなと、自分を戒めるのであった
「でも本当に良かった……、戦治郎さんが目を覚ましてくれて……」
戦治郎がこの様な事を考えていると、不意に大和がこの様な事を呟く。それに気付いた戦治郎が怪訝そうな表情をしていると、大和は目尻に涙を浮かべ始め、震える声で言葉を続ける……
「大和達の問題を解決する為に協力してくれ戦治郎さんが……、大和達のせいでこのままずっと目覚めなかったら……、そうなった時大和は……、海賊団の皆さんに何と言えばいいのか……、そう思うと本当に不安で不安で仕方がなかったんです……」
大和はここまで言うと、後の言葉は嗚咽混じりで良く聞こえなくなり、最後にはその瞳からボロボロと涙を流して泣き出してしまうのであった……
「いや、これは大和達のせいじゃねぇだろ……、この問題は桂島の提督を唆したプロフェッサーと、その誘いに乗っちまった提督、そして提督をそこまで追い詰めた元帥が悪いだろ……。まぁ元帥に罪の意識があるかどうかは分からんが……」
「でも……」
「それと俺達に関してだが、俺達は好き好んでこの問題に首突っ込んだ立場なんだ、俺達の方で起こった問題は俺達の自己責任だから、俺達関係については大和が責任感じる必要はねぇよ」
「うぅ……」
「……あぁもうっ!!」
戦治郎は大和とこの様なやり取りを交わした後、ぐずる大和の腕を掴んで自分の方に引き寄せる。そして……
「お前が落ち着くまでこうしててやる、だから今は思う存分泣いておけ。前にも言ったが俺がお前の苦しみも辛さも、全部受け止めてやっからよ」
大和を抱き寄せた戦治郎がそう言うと、大和は戦治郎の胸の中で再び泣き始めるのであった……
それからしばらくして、ようやく大和が落ち着いたところで、戦治郎はある疑問を大和にぶつける
「そういや悟達はここまでどうやって来て、どうやって帰ったんだ?やっぱ俺と同じで海路で移動したのか?」
「それなんですが……、当初はその予定だったのですが……、輝さんの強い要望で行きは新幹線を使いました……」
「Oh,あの馬鹿……」
大和の口から飛び出した返答を聞いた戦治郎は、額に手を当てながら思わずそう呟くのであった
因みに輝が新幹線を使いたがった理由だが……
「俺新幹線とか乗った事ねぇから乗ってみてぇっ!!!それに海路を自力で行く場合酒飲みながら移動出来ねぇじゃんっ!!!」
との事……。この理由には大和も唖然とし、悟は腹を抱えて大爆笑するのであった
その結果、輝は新幹線の中でこれでもかと言うくらい酒を飲み、横須賀に到着するとほろ酔いのまま復興作業を開始し、海戦ちゃんぽん要塞や護目炒飯基地を建てた時よりも早く作業を終わらせ、共に作業していた工兵達の度肝を抜いてしまったとかなんとか……
「取り敢えず行きの方法と次に輝と会った時に俺がやるべき事は分かった、そんで帰りは?」
「帰りについては、剣持大将の許可を得て陸軍が保有する揚陸艦をお借りして、長門さんと陸奥さん、そして剣持大将の部下の方々と共に海路でお帰りになられました」
「ああ、揚陸艦は俺が能力で鎮守府が保有する艦艇を、鎮守府ごと吹き飛ばしたせいで、長門達が付いて行ったのは輝のおかげで軍刑務所に空きが出来て、提督達を収容出来る様になったからか……」
大和とのやり取りの後、戦治郎はそう言うと腕を組み、納得した様に首を縦に振るのであった
時間は遡り、輝達が桂島に戻った頃……
「……何だあれは……?」
桂島泊地からそう離れていない海上に浮かぶ揚陸艦の甲板の上で、今の桂島泊地を見た長門が思わずそう呟く……
「どう見ても……、遊園地よね……?」
長門の隣で同じ様に桂島泊地を目にした陸奥が、愕然としながらそう呟く……。そう、先程陸奥が呟いた通り、現在桂島泊地があった場所には大量のアトラクションとアスレチックが溢れ返り、まるで遊園地の様になっているのである……
「どうだ?!すっげぇだろっ!?」
不意に後ろから声が聞こえ、長門達がそちらに視線を向けると、そこにはドヤ顔で胸を張る輝の姿が……
「輝……、あれは何なんだ……?」
長門が輝に疑問をぶつけたところ、輝は得意げにこう述べるのであった
「ありゃ桂島泊地の辛気臭い顔した艦娘達の表情を、最高の笑顔にする為に俺達が協力して完成させたテーマパーク、名付けて『艦娘ランド』だっ!!!」
その返答を聞いた長門達は、只々愕然とするばかりであった……