※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

40 / 655
通算UA1万突破!!!

まさか1万の大台に乗るなんて想像すらしていませんでした……

まだまだ未熟ではありますがこれからも見て下さる方々も作者自身も楽しめる作品にしていけるよう頑張りたいと思います

本当にありがとうございます

今回は通視点になっております


闇に呑まれゆく魂と影と踊る一対の刃

今対峙している相手を見ながら、私は柄にもなく心の中で軽く舌打ちをしました

 

これまでの動きから相手が只者ではない事は分かり切っている、この個体が持つ高い身体能力だけでなくそれを完全に制御する技術、幾度となく戦場に身を投じる事で研ぎ澄まされた戦士としての勘も持ち合わせている……、これが非常に厄介極まりない……

 

空蝉を使った奇襲すらも頬に浅い傷を付ける程度の損害で留めてしまう相手、異質な気配を漂わせたこの軽巡棲姫、その頬を伝う雫の色は紫色、そして彼女が見つめる先には天津風さんの姿……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題が発生したのは食事の後、工廠で護がやっていた妖精さんとの情報交換を空さんとシゲにもやっていた時でした

 

「ご主人様大変だ! 誰かが凄い速さでこちらに向かって来てるよ!」

 

哨戒機を飛ばしていた太郎丸が慌てて報告してきたのです

 

「ほう……、で、数はどのくらいだ? 出来ればどんな姿してる奴がいるかも分かるか?」

 

「えっと……数は1人だね! それで姿だけど~……えっ!!!」

 

太郎丸はとても驚いた顔をして私の方へ顔を向けてきました、一体どうしたのでしょうか? そんな事を考えてると太郎丸が驚きを隠す事なく続きを報告してきました

 

「通とおんなじ姿をしてる! 一体どういう事なの!? 通は分身の術も使えたの?!」

 

分身云々の件は皆さんの耳には届いていなかったでしょうね……、私もそうでしたから……、それよりも重要な事、それは軽巡棲姫が単独とは言えこちらに向かって来ているという事実……

 

食後に雑談を楽しんでいた空気が瞬時に張り詰めたものに変わりました

 

「先輩、私が先行して様子を見てきます」

 

妙な胸騒ぎがするものの私は先行して相手を窺う役を買って出ました、私の勘と先程先輩から頂いたばかりの朝日影と月影がそうするよう訴えかけるように小さく震えている気がしたからです

 

「分かった、だがヤバイと思ったらすぐ退けよ? そんときゃ俺らが何とかすっから」

 

「承知しました、でh「待って!」……天津風さん?」

 

「お願い! 何か胸騒ぎがするの……、その深海棲艦に会わないといけない……そんな気がするの! だからお願い! 私も連れていって!」

 

天津風さんも私と同じで胸騒ぎですか……

 

「天津風、こればっかりは流石n「奇遇ですね、実は私もさっきから妙な胸騒ぎがしていたのですよ、だからこの役を買って出たわけなんですけど……、いいですよね、先輩?」……、あぁもうわぁった! おめぇは言い出すと聞きやしねぇからな全く……、だがさっきも言ったが無茶だけはすんなよ? それ守れるんなら行ってこい」

 

「はい! 通さん、ありがとうございます!」

 

「あぁ、ちょっと待って欲しいッス、2人にはこれ渡しておくッス」

 

そう言って護が私と天津風さんに渡したのは小型の片耳ヘッドセットのような物、護が言うには今護が装着している最低野郎共御用達HMDと通信出来る通信機との事、いつか機能拡張を施してHMDを中継して装着した者全員と通信出来る様にしたいそうです

 

「それは海の中でも使えるッスからね、何かあったら海中に潜ったりして身を隠してからそれですぐ連絡するんスよ?」

 

「承知、通信機の件ありがとうございます、では行って参ります」

 

私はそう返して天津風さんを抱き上げる、所謂お姫様抱っこという奴ですね

 

「え? ちょっと!? 通さん?!」

 

顔を真っ赤にしながら尋ねてくる天津風さん、恥ずかしいかもしれませんが我慢して下さい、そうしないと置いて行かざるを得なくなりますからね……

 

「しっかり捕まってて下さいね」 「え"!?もしかしてまた?!」

 

太郎丸に方角を聞きその方角へと走り出す、私が走った後には天津風さんの絶叫が木霊していたそうな……

 

 

 

 

「さて、あれが問題の軽巡棲姫ですか……」

 

私は天津風さんを降ろしながら呟く

 

「貴方達って何で皆揃いも揃ってこんなに足が速いのよ……」

 

ぶつぶつと呟く天津風さん、これでも私は上から3番目程度の速さなんですけどね、因みに1番は空さんで2番は先程の装備で速度強化を施した光太郎さんです

 

「天津風さんは隠れていて下さい、私が仕掛けますのでそれで得た情報を逐一護に教えてあげて下さい」

 

不安そうな顔をしながらも了承して身を隠す天津風さんを見送り、私は件の軽巡の姫君の方へと向き直る

 

「それでは、参りますか……」

 

そう呟いて私は海上へと飛び出し朝日影と月影を引き抜き真っ直ぐ軽巡棲姫の方へ突撃していきます

 

それに気付いた軽巡棲姫はすぐに私の方へ砲を向け砲撃を開始、その砲撃はかなりの精度を持ち正確にこちらを狙ってはいるものの中々命中させる事が出来ずにいました、私もわざと当たってあげるわけにもいきませんからね、上手く砲撃を躱しながらその距離を詰めていきます

 

直接狙うのがダメだと分かったら今度は足止め、減速、誘導を織り交ぜながらの砲撃を開始、私が射程内に入って来たあたりで魚雷の使用も開始し先程よりも回避が困難になってきました……、そろそろ頃合いでしょうか?

 

そう思っていたところでこちらに向かってくる魚雷があったので、空蝉を使い私に魚雷が直撃したように見せかけて私は海の中に潜り軽巡棲姫の背後に回ります

 

「通さん! 無事ですかっ!?」

 

天津風さんの声が私の耳に届きます、不味い!そういえば天津風さんには私が空蝉を使える事をまだ教えていませんでした!

 

天津風さんが狙われる事を危惧してすぐに飛び出そうとしましたが、軽巡棲姫は予想外の反応を示し天津風さんの方を見るなり動きを止めていたのでした

 

勝機! これを逃す手はない! そう思い私は当初の予定通り軽巡棲姫の背後から海面に飛び出し首を刎ねるつもりで朝日影を横薙ぎに振るいました

 

が、それは失敗し精々頬に浅い傷を付ける程度で終わってしまいました、軽巡棲姫が私の想像以上の速度で反応し躱されてしまい、そこからすぐに反撃に移って来たのです

 

この軽巡棲姫、どうやら体術の心得があるようですね……、身のこなしからすぐに気付くことが出来ましたが……、その体術は一体何処で覚えたものなのでしょうか……?

 

この軽巡棲姫が使う体術は恐らく日本の柔術……、それもかなりの使い手の様なのですが、果たして普通の深海棲艦が体術などを使うものなのでしょうか……?

 

軽巡棲姫が繰り出す拳や蹴りを上手く捌きながらも疑問を払拭する為に改めてこの軽巡棲姫を見据えていると、とある事に気付く事が出来ました

 

その頬に付いた傷、その傷から流れ出る血液の色が深海棲艦とも人類及び私達とも違っていたのです、青でも赤でもない……、彼女の血の色は紫色だったのです……

 

「護、聞こえていますか」

 

私は軽巡棲姫から間合いを取り通信機を起動させて護の反応を待ちます、私が間合いを取ると軽巡棲姫は少しだけ大人しくなり、私の後方にいるであろう天津風さんの方を見つめていました

 

「通! よかったッス! あまつんから通に魚雷が直撃したって聞いて心配してたんッスよ~?」

 

「それは後で謝ります、それより妖精さんに聞いてもらいたい事があるのですが……」

 

私は紫色の血の深海棲艦が存在するか否かを尋ねるようにお願いしたところ、予想外の答えが返ってきました

 

「いいッスか通!心して聞いて欲しいッス!妖精さんが言うには紫色の血の深海棲艦は元は艦娘だった深海棲艦だって言ってるッス! 但しこれは時間が経過するとどんどん青色に変化していって最終的には完全に深海棲艦に変わってしまうみたいッスよ!」

 

元艦娘の深海棲艦……、そんなものまでいるのですか……、正直知りたくなかった情報ですよ……

 

「まだ血液が紫色だったら何とか出来るとも言ってるッス! 今からそっちに……ってあまつんどうした? ……えっ神通先生? ちょっとあまつん! それどういう事ッスか?!」

 

なるほど……、先程から天津風さんを気にかけるように見つめているのはそう言う事ですか……

 

あの軽巡棲姫は天津風さんが食事中に教えてくれた、彼女達を艦娘として戦えるように訓練していたという教導艦の神通さんの変わり果てた姿だと言うのですか……

 

変わり果てた姿になっても攫われた教え子達を助ける為にたった1人でこの島に来たのですね……

 

「護、ここは私に任せてもらえませんか? 大人数で来ると彼女を刺激してしまいまた暴れだすかもしれません」

 

「ちょっ大丈夫なんッスか?! シャチョーも後ろで無茶すんなって叫んでるッスよ!?」

 

「出来る出来ないじゃないんです、やってみせるんですよ、彼女の為にも、天津風さんの為にも……っ!」

 

私がそう言うと護はしばらく黙った後

 

「わかったッス、くれぐれも無茶はしないで欲しいッス……」

 

「ありがとうございます、それと天津風さんに伝えておいて下さい、神通さんは必ず助け出してみせます、と……」

 

私は通信を終え再び軽巡棲姫を見据えます、先程から朝日影と月影の震えが大きくなっているのは軽巡棲姫を、神通さんを助けたいという私の心に呼応しているからなのでしょうか? 朝日影、月影、もしそうならば是非私に力を貸して下さい……

 

そう願ったところ朝日影と月影の震えは止まる、そしてそれと同時に軽巡棲姫の双眸を覆う仮面から滲み出る禍々しい何かが見える様になっていました

 

「あれは……、あれが神通さんを縛る異質な気配の根源なのですね……」

 

仮面から出るそれはジワリジワリと軽巡棲姫の身体を徐々に覆っていく……、このままでは神通さんが完全に深海棲艦に変貌してしまう……、ならば……!

 

私は覚悟を決めて軽巡棲姫へ一気に詰め寄る、軽巡棲姫はそれに気付くと先程同様砲撃を開始する、私はそれらを一切回避せずに朝日影と月影を振るい悉く斬り捨てながら更に加速する、もう軽巡棲姫は目と鼻の先にいる!

 

「朝日影よっ! 月影よっ! 今こそ力をっ!!!」

 

朝日影と月影を交差させるように振るい軽巡棲姫の仮面のみを斬り捨てる

 

先程まで軽巡棲姫を覆っていた何かは霧散し仮面が割れて海面に落ちるなり消えてしまいました

 

仮面を失い素顔を晒す軽巡棲姫、その顔は私が知っている川内型軽巡洋艦2番艦の神通のそれそのものでした

 

その顔が天の光に晒されたとき彼女の身体に変化が起き、淡い光を放ちながらその姿は軽巡棲姫のものから神通の、それも改二の姿へと変化しました……

 

その姿が完全に神通のものに変わった後、彼女はフラリと倒れそうになってしまいましたので急いで抱き留め呼吸と脈の有無を確認……、よかった……どちらもありました……

 

彼女を無事助ける事が出来た安心感からふらつきそうになるも踏ん張って耐え、私は穏やかな寝息を立てる彼女を抱き上げて彼女の教え子の元へと歩き出すのでした

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