その日の朝礼はシゲへのお仕置きから始まり、空は【明王九印】の直撃を受けたせいでうつ伏せになって痙攣するシゲを尻目に、集まった面々に今日の作業内容を良く聞こえる様に大声で説明し始める
尚、そんなシゲの様子を見た作業に参加する者達は、皆揃って引き攣った表情を浮かべながら、空の話に耳を傾けていた
空の説明によると今日の作業で巡洋艦エリアと病院船エリア、そして戦艦エリアを完成させる予定となっており、作業は作業効率を上げる為に二手に分かれて行う事となり、巡洋艦エリアは藤吉……ではなく九尺のチームが担当し、病院船エリアと戦艦エリアは空のチームが担当する事となった
こうしてチーム分けをする事になったのだが……
「巡洋艦エリアは広かけんね、皆で協力せんぎん時間内に終わらすっ事出来んけんねー!やけん皆はよ集まりんしゃーい!!!」
九尺が自分のチームのメンバーに早く集まる様に訴えるのだが、肝心のメンバーの中で九尺の事を知らない者達は、九尺の性格と口調の変化に驚き戸惑い、本当に自分はこの人のところで合っているのか不安になり、思わず二の足を踏んでしまうのであった
その後九尺の存在を知る者達による説明のおかげで、九尺チームは何とか全員揃って巡洋艦エリア建設予定地に向かって歩き出し、その様子を見届けた後に空も自分のチームのメンバーを集めて、先ずは昨晩望に指摘されて建てる事が決定した病院船エリアを完成させる為に、病院船エリア建設予定地へと足を運ぶのであった
それからしばらくすると、滞る事無く順調に作業を進めていた空のチームは無事に病院船エリアを完成させる事に成功し、少しの休憩を挟んだ後に次の作業場である戦艦エリア建設予定地へ向かい始めるのであった
(やはり使える重機が複数あると作業が捗るな……)
その途中、空は内心でそんな事を考えながら、ある方角へと視線を向ける。そんな空の視線の先には時雨が駆るキュクロープスの他に、泊地の艦娘達が搭乗した4輌のピロシキの姿が映るのであった
そう、前回の作業の時、時雨と天龍がそれぞれキュクロープスとポリ戦車を使っているところを見ていた泊地の艦娘達が、大和達の許可を取って泊地に贈られたピロシキを作業で使える様にしてくれたのだ
これにより重量物の運搬や高所作業での作業効率と安全性が格段に向上し、作業が昨日以上にスムーズに行える様になったのである
因みにどちらのチームにも4輌ずつピロシキが配備されており、その指揮は空チームの時雨と九尺チームの天龍が担当している
さて、そうこうしている間に空達は戦艦エリア建設予定地に辿り着き、早速作業に取り掛かるのであった
ここでキュクロープスとピロシキが真価を発揮し、ジェットコースターを作る際、壁面走行を利用して設置するレールを担いだ状態で先に建てた支柱を伝って上に登り、支柱同士をレールで繋ぐと言う作業をサクサクと進めてくれたのである。そのおかげもあってか、戦艦エリアは予定時間よりもかなり早く完成するのであった
遊園地の華であるジェットコースターが完成した事で、作業に参加した者達が一斉に沸き立つのだが、ここで空がとある疑問を口にする……
「……このジェットコースター達は、果たして安全なのか……?」
この時空は、余りにも早く作業が完了した事に疑問を抱き、もしかしたら何処かに見落としがあるのではないかと言う不安に駆られたのである……
「んじゃあ念の為テストしておきますか」
「そうだな……、何かあってからでは遅いからな……」
空の疑問に対してシゲがこの様な提案をすると、空はシゲの提案に乗りジェットコースターの試運転を行う事を決定するのであった
先ずはライドに誰も載せていない状態で走行させ、ライドが無事に戻って来た事を確認すると、今度はライドに日本人男性の平均体重と同じ重量の人形を乗せて、テストを行おうとするのだが……
「あれだったら、俺が乗ってもいいですか?多分人形じゃ微かなガタつきに気付けないかもしれないですからね」
ここで何と一緒にテストを行っていたシゲが、この様な事を言い出したのである
「大丈夫なのか?最悪脱線やレールの欠落で墜落する恐れがあるぞ?」
「今朝方、かなりの出力で奥義クラスの技を俺にかけた貴方がそれを言いますか……?まあそれの直撃喰らって五体満足でいられるんだから、墜落の衝撃くらい何とかなるでしょう!」
シゲを心配して忠告する空に向かって、シゲは冗談めかしながらこの様に返答し、空がそれを渋々了承するとシゲは早速ライドに乗り込んで、僅かなガタつきも見逃さない様に精神を集中させ、発車の時を待つのであった……
さて、こうして実施されたシゲが乗り込んでのテストの結果だが、1つ目の速度重視のジェットコースターは問題が無かった事が確認されたのだが、2つ目のジェットコースターの有人テストを行った時、遂に最悪の事態が発生してしまうのであった……
「……なあ摩耶、何でお前が乗ってんだ……?空さんはどうした……?」
「空さんはあっちだ、もしかしたら外から見ないと分からない異常があるかもって事で、急遽あたしが乗る事になったんだよ」
自身の隣に座る摩耶に対してシゲがそう尋ねたところ、摩耶は下の方でシゲ達の様子を観察する空の方を指差しながら、この様に返答するのであった
さて、ここで何故テストで2人もライドに乗せる事になったのかについて触れておこう
次のジェットコースターはカーブなどの数が非常に多く、ライドに乗っている人間がカーブを怖がって反射的に身体を傾けたりする可能性があり、それによって重心が移動する事で何らかの事故が発生する可能性が示唆されたのである
これについてはカーブに合わせて身体を動かさない人形ではどうにもならず、1人だけ乗せるのはバランスが悪くなるのではないかと考えられた結果、先頭車両に人を2人乗せてテストをする事になったのである
この時、本当は事故が発生しても艤装で飛ぶ事で墜落を回避出来る空がライドに乗る予定だったのだが、シゲの事が心配になった摩耶が無理を言って交代してしてもらったのである。そう、先程の摩耶の言葉は全て嘘なのである
そうこうしている間にシゲ達が乗るライドが動き出し……
「うおおぉぉぉーーーっ!!!こりゃこえぇなっ!!!なぁシゲッ!?」
「お前……、はしゃいでないで異常が無いか調べろよ……、何の為に乗ったか分かってんのか……?」
このジェットコースターの中で最も大きな垂直ループに差し掛かったところで、摩耶が本来の目的を忘れてはしゃぎだし、その様子を見ていたシゲはそんな摩耶に対してこの様な言葉を掛ける。と、その時だ……っ!
ライドが垂直ループの頂点に達したところで、レールが人が乗ったライドの重さに耐え切れなかったのか突如2人が乗ったライドごと欠落し、2人はこのジェットコースターの最頂点とも言える高さから、真っ逆さまに墜落し始めるのであった
「え……?」
突然の出来事に状況を呑み込めず、驚愕の表情のままライドと共に落下し始めた摩耶が、思わずこの様な声を発したところで
「摩耶っ!!!」
シゲが必死の形相を浮かべながらそう叫ぶと同時に、自身の身体に取り付けられた安全バーを力任せに引き千切り、続いて摩耶に取り付けられた安全バーを腕力だけで強引に引き千切る
「シゲ……っ!?」
「黙ってろっ!!!歯ぁ食い縛っとけっ!!!」
ここでようやく状況を呑み込めた摩耶が、自分の腕を引いて空中で身体を抱き寄せるシゲに声を掛けようとするのだが、それをシゲがこの様に言って制し、摩耶はシゲに言われた通りグッと歯を食い縛る。それからシゲは摩耶を庇う為に自分の身体を下にして、摩耶の身体が自分から離れない様に力強く抱き締める。そして……
「ガッハァッ!!!」
「シゲッ!?大丈夫かっ?!」
シゲの身体は勢いよく地面に叩きつけられ、シゲはその衝撃の強さに思わず声を上げ、それを聞いた摩耶は顔面蒼白になりながら、安否確認の為にシゲに声を掛けるのであった……