※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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さらば!長門屋海賊団!

「いきなり解散って……、一体どう言う風の吹き回しだ……?」

 

「旦那、その辺しっかり説明してくれ……」

 

戦治郎の海賊団解散宣言の後、我に返って戦治郎に解散理由を問い詰めるのは、海賊団最古参とも言える木曾と摩耶、そんな2人の言葉には僅かながら怒気が含まれていた

 

それはまあ仕方が無い事である、半年にも満たない期間とは言え、海賊団として今まで一緒に行動して来たにも関わらず、摩耶達には何の相談も無く、長門屋のメンバーだけで話を進めて解散宣言しているのだ。そんなの誰だって怒りを覚えるものだろう

 

「解散する理由は幾つかあって、今からそれを1つ1つ説明していくわ。よく聞いててくれよ?」

 

ムッとする摩耶達に対して戦治郎はそう言うと、海賊団解散の理由を艦娘達に説明し始めるのであった

 

 

 

先ず最大の理由は、海賊団の最大の目的を達成したからである

 

海賊団の最大の目的と言えば、メンバーが全員揃って無事に日本に辿り着く事である。そしてそれは大日本帝国海軍の中枢と言える横須賀鎮守府に到着した事で、見事達成した事になるのである

 

これだけだと戦治郎が目的を達成したら後の事などどうでもいいと考える、極めて無責任な奴になってしまうが、先程も言った通り理由は複数あるのである

 

その内の1つが、戦治郎達が軍属扱いになる事である。これは軍学校の入試や資格取得の為に、戦治郎達が横須賀に滞在する事が大いに関わっている

 

元々元帥は戦治郎に軍学入学を勧めた後、彼等なら出来るだろうと心から信じて、身分証明も何も持っていない戦治郎達を横須賀の街に放り出して、各自で寝床や食い扶持を稼ぐ為の仕事を探してもらおうと考えていたのだが、それに長門と燎が待ったをかけたのである

 

そう、長門達は知っているのである、戦治郎達に鍛えられた艦娘がどれ程強くなるか、彼等が持つ技術があれば艤装や兵装の性能がどれだけ向上するか、そして彼等の力があればどんな苦境も乗り越えられる事を、長門達は身を以て知っているのである

 

それらを知っていたから、長門達は戦治郎達に期間中の寝床と食糧、そして公的な身分証明を提供する代わりに、軍属として力を貸して欲しいとお願いしたのである

 

だが、ここで元帥が横やりを入れて来る

 

桂島の提督が起こした一連の事件は、国民に事情を説明する為に報道される予定となっている。そしてそれを聞けばきっと多くの国民が、海軍はとんでもない極悪人を野放しにしていたと思い、海軍に不信感を抱くだろう

 

そんな中で海賊を名乗っている者達を軍に引き入れれば、間違いなく国民の不満は爆発するだろうと、元帥はそう主張したのである

 

これには流石に戦治郎達も長門達も納得し、寝床等を提供する為の条件に海賊団の解散が追加されたのであった

 

 

 

「取り敢えず、ここまでで質問あるか?」

 

戦治郎が皆の顔を見ながら尋ねたところ、不知火が挙手して戦治郎に質問する

 

「それならば態々解散などせず、長門屋海賊団と言う名前を変更し、そのまま全員で軍属になればいいのでは?」

 

「確かにそれが一番いいかもなんだが~……、実はこれ、後の方にクッソでっかい問題があるんだわ……」

 

「大きな問題……?」

 

不知火の質問を聞いた戦治郎が、後頭部をバリバリ掻きながら答えると、陽炎が不思議そうにそう尋ねて来る

 

「俺が提督になったとして、どっか拠点に着任するじゃん?」

 

「普通はそうだね、それで問題って?」

 

陽炎の疑問に答えようと戦治郎が皆にこの様な事を尋ね、それに対して戦治郎達の監視任務をやっていた軍属の川内が尋ね返すと……

 

「そしたらお前達も付いて来るじゃん?」

 

「まあ……、そうなるわよね……」

 

戦治郎の追加の問い掛けに、天津風がこの様に答える

 

「そうなったら、お前達皆しばらくの間給料もらえないんよ……」

 

\……えぇ~っ!!!/

 

戦治郎の口から衝撃の事実が語られ、それを聞いた艦娘達は思わず驚愕し大声を上げるのであった

 

何故そんな事になるのか……?それは桂島に到着してからの戦治郎達の行動が原因となっているのである

 

 

 

先ず戦治郎はピンチに陥った横須賀の面々を助ける為とは言え、碌に効果を把握していない神之型と神帝之型を発動させ、横須賀鎮守府をものの見事に更地にしてしまったのである

 

そして空と輝は大和の許可を取ったとは言え、軍の所有地である泊地を大幅に改造し、軍事拠点としての機能を完全に潰してしまったのである

 

続いて剛はその行動の結果が最終的には横須賀の面々を救う事となったが、やった事は大日本帝国陸軍に対してのテロ行為、剣持は気にしていないと言っているが、その行為は陸軍の駐屯地の近隣に住む国民を大いに混乱させたのである

 

そしてそれに加担していた光太郎は、剣持の指示ではあるが高速道路を一時的に封鎖させて国民の交通を妨げた挙句、その高速道路を武装したバスで尋常じゃない速度で爆走しているのである

 

最後を飾る悟は医者であるにも関わらず、提督に非人道的な拷問する戦治郎達を止めないどころか拷問に加担、更には空達を唆し憲兵達にまで拷問を行ったのである

 

これらの行いが原因となり、戦治郎が着任する事となる拠点には永久に予算が一切割かれず、戦治郎、空、輝、剛は軍に所属している間は永久に、光太郎と悟は1年の間、軍から給料をもらえなくなってしまったのである……

 

これにより予算を貰えない=艦娘達に給料を渡せないに繋がったのである

 

「戦治郎さん……、そないな仕打ちされるくらいなら、いっそ海賊団続けた方がええんやないか?」

 

話を聞いた龍驤が、その表情を引き攣らせながら戦治郎に尋ねると……

 

「いや、それでも俺は提督になるさ。国から予算は貰えないが、予算を稼ぐ当てが無い訳じゃねぇからな」

 

戦治郎は、ニヤリを不敵な笑みを浮かべながらそう答え……

 

「元帥との交渉の結果、俺達は艦娘ランドの所有権を手に入れたんだ。この艦娘ランドの売り上げこそが、俺達の給料と拠点の予算になる予定だ」

 

「まあ、その売り上げの半分を海軍に納めないといけないんッスけどね~……」

 

戦治郎の言葉に空と護が続き……

 

\はぁっ!?/

 

艦娘達が再び驚きの声を上げるのであった……

 

 

 

この艦娘ランドの所有権についての交渉が、今回の話し合いで一番エキサイトしたところだったりする

 

元帥は空達が頑張って建てた艦娘ランドを解体し、元の泊地に戻そうと考えていたのだが、それに戦治郎達が猛反発したのである

 

それにより元帥と戦治郎達が激しく激突する事となったのだが、ここで大和と長門が戦治郎達に超弩級戦艦クラスの助け舟を出してくれた

 

先ず大和が艦娘ランドを泊地に戻した場合、泊地の艦娘達の心の傷を抉る可能性が極めて高い事と、提督の行いを聞いた泊地以外の艦娘達が問題の提督がいなくなったにも関わらず、もしかしたら自分達も同じ目に遭うのではないかと危惧し、泊地への着任を拒否する可能性がある事、艦娘ランドを建てる際泊地の艦娘達が自発的に作業を手伝い、艦娘ランドが完成した時には皆揃って満面の笑みを浮かべながら、艦娘ランドの完成を喜んでいた事を元帥に訴え掛けたのである

 

次に実際に艦娘ランドを目にした長門が、ここを上手く使えばドロップ艦問題を抑えられる可能性がある事と、艦娘人気が原因で日に日に増加する軍属艦娘が原因で発生している予算の圧迫を軽減出来る可能性、そして今回の件が原因で行われるであろう、軍への予算の削減対策に使えそうである事を、元帥に伝えたのである

 

その結果、艦娘にだけは激アマな元帥が言いくるめられ、元帥は売り上げの半分を海軍に納める事を条件に、戦治郎達に艦娘ランドの経営を一任したのであった

 

 

 

「ただまあ、艦娘ランドも何時から開園出来るか分からねぇからな……。そうなるとしばらくの間おめぇらは無給で働く事になるんだが……、それでも付いて来るか?」

 

戦治郎が艦娘達にそう尋ねると、艦娘達は何とも言えない表情をしながら沈黙する……

 

「まあそうなるよな、こればかりは簡単に決められないよな、だから1度海賊団を解散させて、家族がいる奴は家族のとこ戻って自分が無事である事を伝えて、家族と過ごしている間にどうするか考えてくれ。これが海賊団を解散させる3つ目の理由なんだ」

 

「給料無しでも一向に構わんと言う奴は、実家に戻った後横須賀鎮守府に来て、長門か日向経由で軍への入隊手続きをしてくれ。そうでない奴は今まで本当によく頑張ってくれた、本当に感謝している。また機会があればまた会おうじゃないか」

 

「どの道を進むかは皆の自由、だからよく考えて頂戴ね~」

 

戦治郎、空、剛が立て続けに話した後、戦治郎が改めて解散宣言をすると、艦娘達はやや重そうな足取りでこの場を後にするのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一部を除いて……

 

「あの、戦治郎さん……?」

 

この場に留まっていた川内と同じく軍属である龍鳳が、恐る恐ると言った様子で戦治郎に尋ねる

 

「どったよ?」

 

「元から軍属である私達が、戦治郎さん達に付いて行こうと思ったら、どうしたらいいんですか?」

 

「ああ、今のはどちらかと言えばドロップ艦の娘向けって感じだったね」

 

「確かに、入隊手続きと言っていたね……」

 

「ンで、その辺はどうなンだ?」

 

「夕立としては、お給料よりも空さんの技の方が、よっぽど価値があると思うっぽい!ねぇ?夕立達はどうしたらいいっぽい?」

 

龍鳳の質問を皮切りに、川内と龍鳳と同じく軍属である時雨、江風、夕立が口を開く

 

「おめぇらの場合は、家族に挨拶した後その気があるなら、異動願を長門か日向に出してくれ。希望先の名前は『長門屋鎮守府(仮)』なっ!」

 

「厳密には『長門屋鎮守府(仮)建設予定地』だがな……」

 

龍鳳の質問に戦治郎が答えた後、空がこの様に言葉を続けた

 

「ところで、何で長門さんと日向さん経由なの?」

 

「それな、俺達長門屋は元帥じゃなくて、燎の下に就く事になってるんだわ」

 

「あの元帥、アニキの暴れっぷりをその目で見ておきながら、転生個体の事完全に舐め切ってんだよ……。なぁにが頑張れば普通の艦娘でも倒せるだ……」

 

「そんな訳で、転生個体の恐ろしさを嫌ってくらい知ってる燎さんと長門さんの指示の下、僕達は作戦行動を行う事になってるんだ」

 

戦治郎達が龍鳳の質問に答えた直後、川内がふと思った事を尋ねたところ、戦治郎、シゲ、翔が川内の疑問に答えるのであった

 

実際、戦治郎達は提督の日記の件で、元帥を信用していないのである。そんな状態の戦治郎達の前で、元帥は転生個体を侮っている様な発言をし、それを聞いた戦治郎達は更に元帥に不信感を抱いた為、交渉の結果戦治郎達の鎮守府は燎の管轄下に置かれる事となったのである。この交渉もかなりエキサイトしたが、艦娘ランドの件には到底及ばなかったりする

 

因みに、先程空が言っていた鎮守府の建設予定地は、佐賀県は有明海に面した鹿島市にあるそうだ。現在有明海は佐世保鎮守府の予備戦力が担当しているのだが、それでは不安と言う事で佐賀県の漁協が新しい拠点を作って欲しいと、前々から要望を出していたのである

 

これに関しては海軍も早期に手を打とうとしていたのだが、拠点建設予定地を確保したところで、桂島の提督がプロフェッサーの協力の下幅を利かせ始め、そちらの対策のせいで拠点建設にまで手が回らなくなり、しばらくの間この件は放置される事となったのである

 

そして今、戦治郎達が提督を拘束して問題を解決し、更に自分達が住む為の拠点が欲しいと言ってきたので、元帥は戦治郎達にこの拠点建設予定地に拠点を作ってくれたら、そこを自分達の拠点にしていいと言ったのである

 

こうして戦治郎達はその地に長門屋鎮守府を作る事を決定し、鎮守府を建てる為に必要な資格を取り戻す為に、空達も戦治郎同様横須賀鎮守府にお世話になる事にしたのである

 

その後、戦治郎達の話を聞き終えた川内達は、長門達の下へ猛ダッシュするのであった。全ては長門屋鎮守府に異動する為に、川内達は全力疾走するのであった……

 

その途中、川内達は大和や天龍と言った泊地の艦娘達や、翔鶴や神風と言った戦治郎達と関りがある艦娘達とすれ違い、鎮守府内を猛ダッシュする理由を尋ねられた際、長門屋鎮守府の事を話してしまったのである

 

これが原因で横須賀鎮守府内で異動希望パンデミックが発生し、多くの艦娘達が長門がよくいる元帥の執務室に押しかけるのであった……

 

 

 

 

 

「すっげぇ勢いで走って行ったな……」

 

「本人達がそれでいいんなら、いいんじゃないかしら?」

 

この場から凄まじい速度で走り去って行った川内達が向かった先を眺めながら、戦治郎と剛がこの様なやり取りを交わしていると……

 

「戦治郎さん、少々お話が……」

 

「あの……、私達の処遇はどうなっているのでしょうか……?」

 

不意に背後から声を掛けられ、驚いた2人がそちらに顔を向けると、そこには黄泉個体となってしまった扶桑と神通の姿があった……

 

「ああ~……、おめぇら2人はな~……、一応1度家族のとこに戻る事になるけど、その後は強制的に長門屋鎮守府所属になるんよな~……。おめぇらは黄泉個体だからな、他の提督じゃ持て余すかもしれねぇって事で、俺達が預かる事になったんだわ……。何かすまんな……」

 

戦治郎はそう言うと、2人に向かって厄介事に巻き込んだ件について謝罪する為に頭を下げるのだが……

 

「「あ、頭を上げて下さいっ!」」

 

その様子を見ていた2人は、声をハモらせながら慌てて戦治郎に頭を上げる様に言うのであった

 

扶桑達が言うには、もしかしたら黄泉個体である自分達は、何かの実験に使われるのではないかと言う恐怖に苛まれ、不安で不安で仕方が無かったそうだ。そして先程の戦治郎の発言のおかげでその不安は払拭され、それと同時に自分達の事情をよく知る戦治郎達のところに配属される事が心から嬉しかったのだとか……

 

こうして長門屋海賊団は解散し、メンバーだった艦娘達は自分の道を探す為に苦悩し、戦治郎は予想以上に難しい軍学入試の過去問に苦戦を強いられ、空達は資格取得試験の難易度や受験資格に只々唖然とするのであった……

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