※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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勉強会と日本の現状編
異動希望パンデミック


海賊団を解散させ先程まで横須賀鎮守府に残っていた扶桑を見送った後、戦治郎は早速資格取得の為に動き出した空達と別れ、神通と共に川内が向かったであろう元帥の執務室へと向かっていた

 

何故神通と共に元帥の執務室へ向かっていたのかと言えば、神通は川内と共に実家に帰ろうと考えていたのだが、肝心な川内が異動願を提出しに元帥の執務室に向かってから中々帰ってこず、見兼ねた戦治郎が神通に一緒に様子を見に行く事を提案し、それを神通が受けた為2人は一緒に執務室へ向かっているのである

 

「……なんじゃこりゃ……?」

 

「これは一体……?」

 

そうして辿り着いた執務室の様子を見て、戦治郎と神通は思わず困惑してしまうのであった

 

現在、執務室の前には黒山の人だかりが出来ていて、何やら騒ぎ立てていたのである

 

この集まりは何だ?此処で一体何が起ころうとしているのか?戦治郎がそんな事を考えていると……

 

「ありゃ、もうこんなに人が集まってんのか……」

 

「これはかなり時間がかかりそうね~……」

 

背後から聞き覚えがある声が聞こえ、思わず振り向いてみるとそこには元桂島泊地の天龍と龍田の姿があった

 

「おおテンタツ、ナイスタイミング。こりゃ一体どう言う事だ?今の口振りからすると事情知ってるみてぇだが、一体此処で何が行われようとしてんだ?」

 

「あ、戦治郎さん。何がって、戦治郎さん達が着任する鎮守府に異動したいって思ってる艦娘達が、長門さんに異動願を提出しようとしてるに決まってんじゃねぇか」

 

戦治郎が不思議そうに天龍達に尋ねたところ、天龍の口から予想外の言葉が飛び出して来るのであった

 

「あちょ、これ全部異動希望者なわけ?うっそだろお前……」

 

「本当よ~?実際、私達も異動願を提出しに来たんだから~」

 

戦治郎が目を丸くして呟くと、龍田が天龍の言葉を肯定しながら、自分の異動願を戦治郎に見せて来るのであった

 

戦治郎が2人から詳しい話を聞いたところ、異動願を提出する為に自室に猛ダッシュして行った川内達が、異動の件を部屋に向かう途中ですれ違った艦娘達に教えた結果、凄まじい勢いでその情報が鎮守府内を駆け巡り、多くの艦娘が異動願を提出する為に執務室に殺到したんだとか……

 

事情を聞いた戦治郎が改めて執務室に群がる艦娘達を見ると、そこにいたのは元桂島泊地の艦娘達に元ショートランド泊地の艦娘達、更には元アムステルダム泊地にいた艦娘達と言った具合に、その殆どが戦治郎達と関りがあった艦娘達だったのだ

 

そう、彼女達は異動の話を聞いた時、自分達を助けてくれた戦治郎達の力になりたいと思い、こうして執務室に殺到しているのである

 

ただ、中には例外と言うものも存在する……

 

執務室に集まった艦娘達を、何とか落ち着かせようと奮闘している長門の後ろで、頭にたんこぶを作って正座する二航戦は、恐らくノリで異動願を提出して、長門に拳骨を貰ったのだろうと予想される……

 

「こうして見ると、俺達って多くの艦娘を助けたんだな~って思うわ……」

 

「戦治郎さん達が助けた艦娘は、何も此処にいる方々だけではありませんよ?ドイツの方々もそうですし、艦娘に拘らなければイギリスやハワイの皆さんも、戦治郎さん達に助けられたのですよ?」

 

「言われても実感湧かねぇな~……」

 

執務室に集まる艦娘達を眺めながら、戦治郎と神通がこの様なやり取りを交わしていると、突然ある方角から凄まじい気配が発生し、それを感知した2人は思わずそちらに視線を向ける

 

するとそこには、並々ならぬ威圧感を発しながらこちらへゆっくりと歩み寄って来る、大和と鳳翔の姿があった……

 

そんな2人が執務室に近付くと、執務室に群がっていた艦娘達も大和達の気配を察知し、その威圧感に気圧されて思わずその場から次々と身を引いていき、それはやがて元帥と大和達を繋ぐ1つの道となるのであった……

 

そうして出来た道を通って大和と鳳翔が元帥の下へ向かうと、2人はほぼ同時に懐から書類を取り出し元帥に提出する。その書類とは、天龍達が持つ異動願と全く同じ物であった……

 

 

 

そして……

 

 

 

「「書類の受理、して頂けますよね?」」

 

2人は元帥に向かって笑顔を浮かべながらそう言うと、これまで以上の威圧感を発し始めるのであった。その様子を元帥の隣で見ていた長門の腕には、2人の威圧感に気圧されてしまったのか鳥肌が立っていたのであった……

 

そんな2人に威圧された元帥はと言うと……

 

「異動希望かっ!いいぞっ!!」

 

2人の威圧感を全く感じていないのか、笑顔でそう言うと2人の異動願を受け取り、すぐさま承認印を押すのであった

 

その後大和達は威圧感を放つのを止め、元帥に一礼して執務室を退室し、鳳翔は来た道をスタスタと戻って行くのだが、大和は戦治郎の姿を見かけると、笑顔を浮かべながら小走りで戦治郎達のところへ駆け寄って来て……

 

「提督っ!大和は無事に提督のところへ向かう事が出来そうですっ!」

 

「良かったな大和っ!これからよろしくなっ!」

 

戦治郎に向かって元気一杯にこの様な言葉を口にし、それを聞いた戦治郎はこの様に返答した後大和の頭を撫で始め、大和は戦治郎の手が余程気持ちいいのか、幸せそうな表情を浮かべながら

 

「はい……♪」

 

この様に嬉しそうに返事を返すのであった

 

「え……?大和さん……?今戦治郎さんの事を提督って……」

 

「あの……、これはどう言う事でしょうか……?」

 

そんな中、大和がまだ提督になっていないはずの戦治郎を提督呼びした事に困惑する天龍と、事情が分からない神通が同時に疑問の声を上げるのであった

 

大和が戦治郎を提督と呼ぶ様になったのは、これまでの戦治郎の行動が大体の原因となっている

 

元帥から【国士無双】の二つ名を賜った大和は、これまではその立場上誰にも自身の弱い部分を見せられないでいた事と、提督に純潔を散らされた挙句性処理の相手までさせられていた為、精神的に参っていた節があったのである

 

そんな中、大和の全てを受け止めると言う戦治郎が現れ、本当に彼女の苦悩や悲しみを受け止めた挙句、桂島泊地の問題を解決してしまったのである

 

最初に会った時に自分を見るなりガチガチに緊張して、まともに会話も出来ないと言う戦治郎の醜態を見た大和は、最初は戦治郎の事を頼りなく思っていたのだが、自分が傷付く事すら恐れずに巨大な敵に立ち向かい、見事討ち取って見せた戦治郎の姿を見て考えを改めた結果、自分の提督は戦治郎しかいないと言う忠義と愛情が同居した様な感情に心を支配され、彼女はこの様な状態になってしまったのである

 

因みに、大和と共に異動願を提出した鳳翔だが、如何やら彼女は翔が目当てで異動願を提出した様だ

 

まあ、彼女の場合ルルイエでの一件や桂島泊地の件の他に、趣味が合う事や翔と共に行動する事が多かった為、彼女は自然と翔に惹かれてしまった様である

 

尚、この件が長門屋のメンバーに知れ渡ると、即座にプリンツと鳳翔、どちらが翔をGETするかのトトカルチョが始まった模様……

 

こうして大和が戦治郎の事を提督呼びしている理由を神通達に教えたところで、元帥が戦治郎の存在に気付き、戦治郎達を執務室に呼び込むなりこの様な事を言って来るのであった

 

「入試の勉強で忙しいかもしれんが、余裕が出来そうになったら是非時間を作って、司令室に来てくれんか?見せたいものがあるんだ」

 

それを聞いた戦治郎は内心では嫌な顔をするのだが、居候の身である故に元帥の頼みを断る事が出来ず、戦治郎は承諾する旨を言葉で伝えながら頷いて見せるのであった

 

この出来事により、戦治郎とその場にいた燎の元帥に対しての印象は、大きく変化するのであった……

 

 

 

それはそうと、元帥の執務室の前で発生したこの異動希望パンデミック、最終的には戦治郎の提案のおかげで無事問題解決するのであった

 

その提案とは、艦娘ランドのスタッフに関するものであった

 

戦治郎達は彼女達に、流石にこの場にいる全員を鎮守府に迎え入れるのは、収容人数的にも予算的にも難しいと言った後、艦娘ランドのスタッフとして、艦娘ランドの経営を手伝ってもらえると非常に助かると言ったのである

 

これに最初に食い付いたのは、他でもない元桂島泊地の艦娘である

 

彼女達は輝が建てたホテルと同じ規模のスタッフ用の寮を建ててくれれば、喜んで力を貸すと言い、それを聞いた戦治郎は通信機で輝と話し合った後、その要求を受け入れる事を約束し、彼女達の協力を取り付けたのであった

 

尚、この艦娘ランドのスタッフ寮は、桂島の北部に建てられる事となったそうだ

 

それから後は早いもので、今の横須賀鎮守府の艦娘寮と同じ様な寮が出来ると聞いた元ショートランド泊地の艦娘と、元アムステルダム泊地の艦娘も話に食い付き、あっという間に艦娘ランドのスタッフが揃ってしまうのであった

 

その後、スタッフがスタッフとして育ち切るまでの間は、矢矧と高雄が彼女達の教育係と連絡役を担当し、その補佐に初霜と春雨が回る事となるのであった

 

因みに、この4人は任期が満了すると、長門屋鎮守府に着任する予定となっている

 

さて、ここまでで名前が挙がっていない天龍と龍田、そして六駆の4人はどうなっているのかと言うと、この6人は長門屋鎮守府に直接異動する事となっているのである

 

理由としては、それぞれやりたい事を見つけた暁以外の六駆の3人は、長門屋のそれらのスペシャリスト達を師事したいらしく、暁は姉妹艦達の様にやりたい事を探す為に長門屋鎮守府に行きたいそうだ

 

そして天龍達は、何かの拍子に龍田のトラウマが再発した時に備えて、悟がいる長門屋鎮守府に身を置いておきたいのだとか……

 

こうした彼女達の都合と、軽巡と駆逐は数欲しいと言う戦治郎の考えが一致した為、彼女達は長門屋鎮守府に着任する事となったのである

 

こうして横須賀鎮守府で発生した異動希望パンデミックは、その原因となった戦治郎の手によって、無事収束する事となるのであった

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