「……とまあ、こんな事があった訳よ~」
『音声のみで視認している状態と、ほぼ同等の状態になれる、か……』
『何それ怖い……、日本の元帥は化物か……?』
『流石の僕もそんな真似は出来ないね~……、一応アドン達にカメラを内蔵して先行させれば、似た様な事は出来ると思うけど……』
元帥の戦い方を目の当たりにした日の夜、戦治郎は自室で通信機の先にいるアクセル達に、今日起こった出来事を話していた
最初戦治郎は、彼等に無事に日本に到着した事を伝える為に通信を開始した訳なのだが、気付けば話に花が咲き雑談モードに突入し、戦治郎は元帥の事や自分達の今後についてまで話していたのだった
『しかしそれほどの人物が、何故戦治郎達の価値に気付かないのか……、それが不思議でたまらないよ……』
『普通ならめっちゃ好待遇で招き入れるところなのに、実際は予算も給料も無しで軍人として戦えと……、こんなんウチの女王陛下や国民が聞いたら、暴動待った無しだろうな……』
ここまで戦治郎の話を聞いていたアクセルが、ふと思い出した様にこの様な事を口にし、それを聞いたセオドールがこの様に続く
「いや~、俺らも好き勝手暴れたからな~……、多少仕方ないと思うとこはあるんだわ~……」
『確か横須賀鎮守府を更地にしたり、九州にある陸軍の拠点を片っ端から襲撃したり、高速道路を封鎖して私的に利用した、だったっけ?でも鎮守府の方は輝が直しているんだし、陸軍の方も件の提督傘下のところだけで他には手を出して無い上に、刃衛からは逆に感謝されてたんだよね?』
『その通りだ、剛達が欲に駆られた馬鹿者共を炙り出してくれたおかげで、大日本帝国陸軍にこれ以上泥を塗る事も無くなり、膿を取り除き新編した陸軍で改めて祖国を護れるのだ、この件には感謝はすれど、非難する理由はどこにも無い』
戦治郎が苦い表情を浮かべながらそう言うと、リチャードが戦治郎を弁護する様な言葉を口にし、今まで静かに会話を聞いていた剣持がリチャードの発言を肯定する様に、この様な言葉を口にする
因みに、先程リチャードが剣持の事を刃衛と呼んだが、戦治郎がリチャードに剣持が剛と友好的な関係である事を話したところ、友達の友達は友達の理論でリチャードが剣持に歩み寄り、リチャードと剣持の間にも友好的な関係が生まれた為である
「まあ理由はどうあれ、俺はこの条件で呑んじまったからな、今更反故するつもりはねぇよ」
『戦治郎がそれで良いと言うなら、僕はこれ以上何も言わないけど……』
『戦治郎……、辛くなったら俺達に相談しろよ?そしたら俺達がそっちの元帥袋叩きにするし、その気があったらウチに来てくれてもいいんだぜ?』
戦治郎の言葉を聞いたアクセルが、やや不満そうにこの様な事を口にし、セオドールが物騒な事を言いながら、サラッと戦治郎達をイギリス海軍に引き込もうとする
『セオ、何サラッと戦治郎達の事勧誘してるんだ?抜け駆けは良くないぞ?』
『ああ、穏健派連合は何時でもwelcomeだから、日本に嫌気が差したらこっちに来てくれてもいいからね?』
『大日本帝国陸軍も歓迎するぞ、お前達の力はきっと俺達の助けになってくれるだろうからな。それに、今の陸軍は人員がな……』
すると先ず最初にアクセルがセオドールの発言に反応し、続いてリチャードと剣持が戦治郎達の勧誘を開始するのであった。特に剣持の声からは、何処か切実なものを感じ取る事が出来た……
こうしてアクセル達が、戦治郎達の勧誘合戦を始めると……
『戦治郎達の力を欲しているのは、何もドイツやイギリスだけではないぞ?彼等の戦闘能力と技術力は、私達も喉から手が出る程欲しいのだからな』
不意にアクセルとセオドール、そして剣持には聞き覚えの無い、何処か落ち着きのある低い男性の声が通信機から聞こえて来るのであった
「あ、ジョシュアの旦那。チ~ッス」
『戦治郎、この方は?』
突如聞こえて来た声にアクセルとセオドールが驚き、訝しんでいると戦治郎が声の主に軽い口調で挨拶を交わし、戦治郎のその様子から声の持ち主が戦治郎の関係者であると感付いたアクセルが、戦治郎に声の主が何者なのかを尋ねるのであった
『そう言えば自己紹介がまだだったな、私はジョシュア・ルイス、現アメリカ海軍の総司令を務めている者だ』
『んなっ!?アメリカのっ?!どう言う事だ戦治郎っ!?!』
ジョシュアの自己紹介を聞いたセオドールが驚愕し、どうして戦治郎がアメリカ海軍の関係者と知り合いになったのかについて問い詰める
さて、戦治郎はどうやってアメリカ海軍とパイプを作ったのか、それ以前に何故アメリカ海軍が無事なのか、そこについて触れようと思う
アメリカは深海棲艦との戦争が始まってすぐ、深海棲艦の攻撃を受けて音信不通に陥ってしまったのだが、アメリカ軍の者達は深海棲艦に核が通用しないと分かると、即座に国民を連れてアメリカを脱出、現在はアメリカ本土にいた多くの国民が、カナダやアラスカで過酷な難民生活を送っているのである
そんな中、アラスカで海軍を再建していたジョシュアは、アメリカ本土の偵察を行っていた艦隊がホノルルからの救援要請を受信した事を知ると、相当無茶をしてホノルルの救援に向かったのである
しかし、彼等が到着する頃にはホノルルで発生した問題は解決し、更には戦治郎達の手によって兵器開発研究所は見事な要塞へと変貌し、その周囲には要塞を守る為にディープ・ワン達が徘徊していたのであった……
ホノルルで一体何が起こったのか分からず、部下達と共に混乱しているところに戦治郎達とサラ達が姿を現し、その光景を目にして益々混乱するジョシュアをサラが落ち着かせ、何とか冷静になった彼に事の顛末を説明すると、彼は戦治郎達にサラ達を助けてくれた事に対して感謝の言葉を述べ、この時に戦治郎達から艦娘の重要性を説かれ、ジョシュアはアメリカにも艦娘を配備させた方が良いと考える様になり、それならばと戦治郎達から日本に艦娘に関わる技術を提供してもらう様勧められたのである
また、この時深海棲艦に対しての抵抗手段を碌に持っていなかったアメリカ海軍の為に、戦治郎達はジョシュアが乗って来た駆逐艦を徹底的に改造し、コアの代わりにゾアが統治者としての勉強をする為に持っていた、カソグサの出版社が出版している『ネクロノミコン』を演算ユニットと動力源にし、アリーズウェポンを基に作り出した兵装で武装した、対深海棲艦用駆逐艦に仕上げたりしている
こうして作られた対深海棲艦用駆逐艦は、ジョシュアに『ホーンド・サーペント』と名付けられ、アメリカ海軍に艦娘が配備されるまでの間、アラスカからホノルルに本拠地を変えたアメリカ海軍を、穏健派連合と協力して守り通す事に成功するのであった
因みに、このホーンド・サーペントが完成したタイミングで、ホノルルの救援要請を聞いて南方海域から遥々やって来たリチャード達の艦隊が到着し、戦治郎達によってジョシュア達に紹介されたリチャードが、彼等がアメリカ人である事を知るなり、ジョシュア達に協力を申し出たのである。その理由は、世界は違えども平和な祖国を取り戻したいと思う気持ちは同じだから、だそうだ
尚、この時に使用された技術は、後に大五郎のハコの強化兵装に流用される事となるのだが、それはまだ先の話である
『この様な経緯があって、私も君達の仲間入りを果たしたと言う訳だ。そう言う訳で、今後ともよろしくな』
ジョシュアが自分が戦治郎達と知り合った切っ掛けを話し、話を聞いていたアクセルとセオドールが呆然としていると……
『此処から息子の名前とネクロノミコンと言う単語が聞こえたが……、貴様ら一体何を話している……?』
突然このメンバーの内の誰もが聞いた覚えが無い声が、通信機から聞こえて来て……
\どちら様っ!?/
戦治郎達は思わず声を揃えて声の主、ルルイエの現統治者であるクトゥルフに向かって、この様な言葉を発するのであった……。実際、クトゥルフと直接会って話した事があるのは、翔と鳳翔、そして彼の息子であるゾアくらいしかいない為、戦治郎達がこの様な反応をしてしまったのは、本当に仕方が無い事なのでる……
その後、クトゥルフが自身の身分を明かした後、戦治郎達の雑談に加わって話を大いに盛り上げるのであった
因みに、話が盛り上がった原因は、クトゥルフのここ最近の趣味である世界各国の料理の食べ歩きの旅に関するものである
如何やらクトゥルフは翔に胃袋を掴まれて以来、人間が作る料理に大いに興味を示し、暇があったら人間に化けて色んな国に潜り込み、様々な料理を食べ歩いているのだとか……。そんなクトゥルフのお気に入りの料理は、やはりと言うべきか、食べ歩きの旅を始める切っ掛けとなった日本料理なのだとか……
この時、セオドールが金の方は大丈夫なのか?とクトゥルフに尋ねたところ……
『金に関しては問題無い、海底にある金鉱脈から採掘した金をインゴットにして、上陸する度に換金しているからな』
クトゥルフは、やや得意げにこの様に答えるのであった……
因みに、クトゥルフに日本海軍に所属する事になった戦治郎達の待遇を話したところ、彼もまた戦治郎達をルルイエに迎え入れても良いと返答したそうだ