※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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火の玉親子

時間はシゲ達が桂島泊地でジェットコースターのテスト中に事故に遭った所まで遡る……

 

ジェットコースターに同乗していた摩耶を庇い、地面に全身を強烈に打ち付けた瞬間にパンッ!と言う音と共にシゲの視界は暗転、全身に痺れるような感覚が走るなりシゲは意識を失ってしまうのであった

 

それからどれだけの時間が経過しただろうか……、シゲは何とか意識を覚醒させるのだが、全身の痺れが取れていない為身体を動かす事も、瞼を開いて周囲の確認する事も全く出来ずにいたのであった

 

(俺は一体どうなった……?いや、それより摩耶は無事なのか……?)

 

何も出来ないなら仕方ないと割り切ったシゲがぼんやりとこんな事を考えていると、突然辺りに冷気が立ち込め始め、痺れによって動かない身体が寒さの余りにブルリと震え、それと同時にシゲは何かの気配が、音も無くこちらに近付いて来ている事を察知するのであった

 

(何か急に肌寒く……、いや、もう肌寒いってレベルじゃねぇぞこれっ!?うおぉっ!!さっむっ!!!)

 

そして気配が近付くにつれて辺りの寒さは増していき、それはやがて真冬に全裸で氷が浮かぶプールにダイブするそれを圧倒する程の、正に極寒と呼ぶに相応しいものへと変貌していた……

 

(何だ何だ何事だっ!?一体俺の周りで何が起こってやg……)

 

この寒さの正体は一体何なのか……?その事についてシゲが考え始めた次の瞬間、突然シゲの腹部に謎のヒンヤリした物が乗って来る。突然の出来事にシゲが驚いていると、ヒンヤリした物が乗っている部分に、まるで大火傷でもしたかの様なジクジクした痛みが発生するのであった……

 

「いってえええぇぇぇーーーっ!!!」

 

シゲはその痛みに耐え切れず、全身の痺れも忘れて思わず叫びながら目を見開き、勢いよく上半身を起こすと……

 

「Σ(゚Д゚ノ)ノ」

 

シゲの目に見慣れないものが映るのであった……

 

先程痛みが走ったシゲの腹部に乗っかっているそれは、拳ほどの大きさの灰色の火の玉の様な物で、その中には驚きを現す顔文字が描かれており、それは痛みの余り飛び起きたシゲを見るなり……

 

「((((;゚Д゚))))」

 

顔文字をこの様に変化させた後、シゲの腹部から飛び降りて何処かへ飛んで行ってしまうのであった……

 

「……何だありゃ……?」

 

状況が全く理解出来ないシゲが、思わずそう呟いたその時である

 

「フーちゃ~ん、何処行ったの~?いくらウチの庭だからってパパから離れたら、迷子になっちゃうぞ~?」

 

遠くからこの様に叫ぶ、何処か気の抜けた声が聞こえて来るのであった。そして……

 

「あっ!フーちゃんそんなとこにいたんだ~、ってパパの事そんなに引っ張ってどうしたのフーちゃん?パパに何か見せたい物があるのかな~?」

 

先程の声の持ち主がこの様な事を言い、直後にシゲは何かが2つ程自分の方へ近づいて来ている事に気付き、すぐさま警戒心を高めるのであった……

 

「え~?人間を見つけた~?HAHAHAHAHA!!!フーちゃんは面白い事を言うね~、人間がこんなところに来れる訳がないじゃないか~」

 

この声が聞こえる度に気配は段々とシゲの方へと確実に近付き、それを感知する度にシゲの中で警鐘がけたたましく鳴り響く……

 

こいつとは絶対に戦うな……、こいつには絶対に勝てない……、勇気と蛮勇は別物だ……、今はこいつには逆らうな……、こいつは自分とは別次元の存在だ……。シゲの身体が、心が、頭が、魂が、本能が、次々にそう訴え掛けて来る……

 

そして遂に、シゲは声の持ち主の姿を視認し、驚愕の余り声も出せなくなってしまうのであった……

 

それは全てを焼き尽くさんと激しく燃え盛る火の玉であった、シゲと同じくらいの大きさのその火の玉は、先程シゲが見た灰色の火の玉を連れてシゲの方へと近付き、シゲの存在に気付くと……

 

「……」

 

しばらくの間、完全に沈黙してしまうのであった……

 

「……」

 

シゲもそんな巨大な火の玉を見ながら沈黙していると……

 

「おま↑え↓はだ↑れ↓だ↑っ!?」

 

「俺のn……、じゃなくって……、そりゃこっちのセリフだっての……」

 

沈黙を打ち破る様に火の玉が叫び、それを聞いたシゲが咄嗟に何かを言おうとするのだが、何とかその言葉を飲み込み、火の玉に対してこの様に返事をするのであった

 

「……おま↑」

 

「あ、これもしかして俺が名乗らない限り、ずっとループする流れ?」

 

「そう↓だよぉ↑~?」

 

(こいつ……、殴りてぇ……)

 

その後、火の玉がループに入ろうとしたのでシゲがこの様に尋ねたところ、火の玉はシゲを小馬鹿にした様に返事をし、それを聞いたシゲは思わず拳を握り締めながら、心の中でそう呟くのであった……

 

それから何とか落ち着いたシゲが、火の玉に自己紹介をしたところ……

 

「ほ~~~ん……、で、シゲだっけ~?何で君こんなとこにいるの~?」

 

火の玉は興味無さそうに返答した後、シゲに向かって再び質問し始めるのであった

 

「それは俺が聞きてぇところだな……、つか此処何処だよ……?」

 

「シゲったらそんな事も知らずに来たの~?プップップ~♪」

 

火の玉の質問に対し、シゲがこの様に返答したところ、火の玉はその燃え盛る身体から何処ぞの桃色一頭身の星の英雄の様な腕を生やすと、この様な事を言いながら先程生やした腕をシゲに向け、噴き出す様に笑うのであった

 

(こいつ……、一体何様のつもりだ……)

 

火の玉の返答を聞いたシゲが、怒りの余りに身体をプルプル震わせながら心の中で呟くと……

 

「そんなシゲに、僕が此処が何処なのか教えてあげるね~」

 

火の玉は仕方ないとばかりにそう言うと、先程生やした腕を引っ込めながら一呼吸すると、この場所が何処なのかをシゲに教えるのであった

 

「此処はみなみのうお座にあるフォーマルハウトの傍にある、コルヴァズって星にある僕の屋敷の庭さ~」

 

「フォーマルハウト……?コルヴァズ……?星……?ちょっと待て、此処は地球じゃねぇのか……?って言うかお前の屋敷……?」

 

「そう↓だよぉ↑~?」

 

火の玉の言葉を聞いたシゲが、話がよく分からなかった為確認する様に火の玉にこの様に尋ねたところ、火の玉はこの様に返答するのであった

 

それを聞いたシゲが周囲を見渡すと、シゲの視界には綺麗に整えられた広大な庭園と、大理石で建てられたかの様に白く美しい巨大な屋敷、そして空を見上げてみればそこには満天の星が輝いていたのであった

 

「話聞いたら余計混乱してきやがった……、マジで此処何処だよ……?つかあいつ何モンだ……?」

 

「ああ、そう言えばまだ自己紹介してなかったね~」

 

激しく混乱するシゲがそう呟くと、火の玉は思い出したかの様にこの様な事を言うと、シゲをしっかりと見据えながら自己紹介を行うのであった

 

「そう言う訳で自己紹介~、僕はクトゥグア、こんな見た目だけどれっきとした旧支配者なんだよ~?ってシゲは旧支配者って分かる~?」

 

「はぁっ!?旧支配者だとっ?!おめぇもゾアの仲間って事かよっ!?!」

 

火の玉改めクトゥグアの自己紹介を聞いたシゲは、思わず叫ぶ様にしてこの様な言葉を口にすると同時に、自身の本能が警鐘を鳴らしていた理由に納得するのであった

 

「旧支配者は知ってたか~、ってゾアって誰?」

 

クトゥグアのこの言葉の後、シゲがゾアことガタノトーアの事をクトゥグアに伝えたところ……

 

「あ~、クトゥルフさんのとこの~。一応あの子と僕、同い年なんだよね~」

 

この事実を知らされたシゲが、驚愕して固まっていると……

 

「そうそう、子供で思い出した。シゲにフーちゃんの事も紹介しておくね~」

 

クトゥグアはそう言うと、またしても腕を生やして少し前にシゲの腹に乗っていた灰色の火の玉を抱きかかえると……

 

「この子はアフーム=ザーのフーちゃん、僕の子供なんだ~。どう?可愛いでしょ~?この子も旧支配者なんだよ~?凄いでしょ~?」

 

デレデレした声でアフーム=ザーのフーちゃんを紹介すると、シゲの目の前でフーちゃんに頬擦りを始め……

 

「ヾ(*´∀`*)シ」

 

フーちゃんはそれが余程嬉しいのか、この様な顔文字を身体に浮かび上がらせながら、クトゥグアの腕の中ではしゃいで見せるのであった

 

そんな火の玉親子の触れ合いを黙ってみていたシゲは、何故か微かな苛立ちを覚えるのであった……。この苛立ちの正体が嫉妬であった事は、苛立ちを覚えたシゲ本人も最後まで気付く事はなかったと言う……

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