「俺が……、死んだ……?」
クタニドの言葉を聞いた瞬間、視界が真っ暗になったシゲが我に返るなり震える声でこの様に呟くと、クタニドは沈痛な面持ちのままシゲの死因の詳細について話し始める
如何やらシゲの身体は、地面に叩きつけられると同時に摩耶の身体に押し潰されてしまい、その衝撃で心臓を含む多くの内臓と鼓膜が破裂、脊椎は粉々に砕け散りその破片が脊髄をズタズタに傷つけ、トドメとばかりに折れた肋骨が両方の肺に突き刺さり、シゲは即死してしまったのだとか……
「はは……、嘘だろ……?流石にそんな冗談笑えねぇぞ……?」
「信じたくないとは思いますが……、これは事実なんです……」
己の死を受け入れられないシゲが、乾いた笑い声を上げながらこの様な事を言うと、その表情を曇らせたヴォルヴァドスが、シゲから目を背けながらこの様に答えるのであった……
「……摩耶は……?摩耶は無事なのか……?」
「お前が庇ったおかげで、摩耶は何とか無事だ……。だが……」
「このままではきっと、シゲさんが死んだのは自分のせいだと、摩耶さんは自分を責め続ける事に……」
虚ろな目をしたシゲが摩耶の無事について尋ねたところ、クタニドが摩耶の無事をシゲに伝え、ヴォルヴァドスがクタニドに続いて言葉を発した瞬間、今までの虚ろな瞳が嘘だったかの様にシゲの目つきが鋭くなり、それと同時にシゲはヴォルヴァドスに飛び掛かる様にして近付き、彼の胸倉を乱暴に掴む
「お前ら神なんだろっ!?死んだ人間生き返らせるくらい訳ねぇんだろっ?!だったら今すぐ俺を生き返らせろっ!!そんぐらい簡単に出来んだろうがっ!!!」
ヴォルヴァドスの胸倉を掴んだシゲが、必死の形相でこの様に訴え掛けるのだが、旧神の2柱は苦悶の表情を浮かべたまま、シゲに残酷な追い撃ちをかけるのであった……
「私達がシゲを生き返らせる事は出来ない事は無い……、だが旧神達の間に存在する取り決めで、1度死んだ者を生き返らせる事が禁止されているんだ……」
「幾ら僕達が神だとしても、自然の摂理に反するような事は出来ないんだ……。そこだけは分かってもらえないかい……?」
2柱の言葉を聞いたシゲが、ヴォルヴァドスの胸倉を掴む腕の力を緩め、その場で膝を突いてガックリ項垂れ……
「何だよそれ……?ふざけんなよ……、他に何か手はねぇのかよ……?」
力なくこう呟いたその時……
「ん~、ネクロノミコンを使えば、シゲを蘇生出来るんじゃない~?確かあの魔道書には、死者蘇生の呪文が書かれてたはずだけど~?」
これまでのシゲ達の様子を傍観していたクトゥグアが、不意にこの様な事を言い、それを聞いたシゲは勢いよく顔を上げ
「そういや……、翔がそんな感じの名前の真・魔道書を貰ったとか言ってたな……っ!それがあれば……っ!!」
この様な言葉を口にするのだが、それにクタニドが待ったをかける
「そんな事をしたら、翔が死を冒涜した大罪人と見なされ、イゴーロナクやモルディギアンに襲われる様になるかもしれないぞ?」
「仮にそれをゾアと協力して撃退出来たとしても、今度は翔さんが旧支配者に逆らう存在と見なされ、ルルイエに住む者達以外から執拗に襲われる様になるかもしれません……」
「それに魔道書での蘇生では完全に生き返る事は出来ん上に、術を使った者が死後どうなるか分かったものではないぞ?それでもお前は翔に死者蘇生を行わせるのか?」
クタニドとヴォルヴァドスの話を聞くなり、シゲの表情がまたもや暗いものへと逆戻りし……
「打つ手無しかよ……、何とか生き返る事は出来ねぇのかよ……?」
シゲは暗い表情のまま、項垂れながらこの様に呟く……
「ね~シゲ~、何でそんなに生き返る事に固執してんの~?そんなに生き返らなきゃダメなの~?行く当て無いんなら、ここであったが何かの縁って事で僕が面倒見てもいいよ~?」
するとシゲの呟きを耳にしたクトゥグアが、シゲに対してこの様な質問をするのであった
「駄目だ……、それは出来ねぇ……。俺は今すぐにでもあっちに戻って、摩耶に一言『大丈夫だ』って、『お前が無事で良かった』って言ってやらなきゃ駄目なんだ……、あいつに俺の死を背負わせる訳にいかねぇんだ……。いや、それだけじゃねぇ……、アニキ達に『迷惑かけて済みません』って言わなきゃいけねぇし、仕掛けの事も話さなきゃなんねぇ……」
それに対してシゲは、項垂れたままこの様に返答し
「じゃあ翔って奴に、シゲを生き返らせる様僕が頼んでこようか?」
「それも駄目だっ!ただでさえ翔は何か変なのに目を付けられてるんだ、これ以上あいつに迷惑かける訳にはいかねぇよっ!!翔だけじゃねぇ、摩耶にもアニキ達にも、これ以上迷惑を掛けたくないんだよ……。俺にとってあいつらは……、あの人達は……、家族同然の……、大切な仲間なんだからよぉ……」
クトゥグアの更なる返しに対して、シゲは途中から涙を流しながらこの様に返答するのであった。この時、クトゥグアは家族と言う単語に反応し、その火の玉の様な身体をピクリと動かすのだが、それに気付いた者はこの場には誰もいなかったのであった……
「家族……、ねぇ……」
「ああ……、そうだよ……。同じ家に住みながら俺の事を全く見ようともしなかった母親に代わって、アニキ達が俺に家族の温かさを教えてくれたんだ……。俺はそんなアニキ達に恩返しがしてぇんだよ……、そんなアニキ達にこれ以上迷惑掛けたくないんだよ……っ!!!」
クトゥグアの呟きに対して、シゲが嗚咽混じりにこの様に返答したところ……
「よし分かった~!」
クトゥグアは大声でこの様な事を言いながら、今まで座っていた(?)椅子から飛び下り、シゲに向かってこう言い放つ
「家族は大事だもんね~!僕もフーちゃんがいるからその気持ち痛いくらいよ~く分かるよ~!そんな訳で~、そこの不甲斐無い旧神達に代わって、僕がシゲの事を何とかしてあげよう~!」
「はぁっ!?」「んなっ?!」「えぇっ!?」
クトゥグアの言葉を聞いた1人と2柱が、三者三様に思わず驚きの声を上げる
「待て待て待て!!!お前本当に何とか出来んのか!??」
「モチのロンよ~!僕を誰だと思ってるの~?」
「でかい火の玉」
「あぁんひどぅいっ!!!」
シゲとクトゥグアが、この様なやり取りを交わすその傍らでは
「クタニドさん、ここは止めるべきでは……?」
「いや、クトゥグアがやる気になっているなら、このままやらせても問題ないだろう」
「でも、それでは旧神の禁忌に……」
「私達は旧神、あいつは外なる神寄りの旧支配者、あいつは旧神ではないので旧神の禁忌に触れる事は無い。これの何処に問題がある?」
「えぇ……?本当にそれでいいんですか……?」
「何、何か問題があったらそれはクトゥグアの責任であって、我々の責任ではない。ならば問題は何処にもないだろうっ!」
クタニドとヴォルヴァドスがこの様なやり取りを交わし、ヴォルヴァドスはクタニドの発言に大いに困惑するのであった
「でもまあ~、タダで生き返らせるのは面白くないから~、ここは1つゲームをしよう~」
「「「ゲーム?」」」
クトゥグアの思いもよらぬ発言の後、場が落ち着いたところで不意にクトゥグアがこの様な事を言い出した
「そそ、ちょっとしたゲームだよ~、それでシゲが勝ったら~、僕の力でシゲを生き返らせてあげる~」
「……もし負けたら……?」
「その時は~、生き返らせるのは無しかな~?」
シゲがクトゥグアに恐る恐る負けた場合の事を尋ねたところ、クトゥグアは平然とこの様に返答するのであった
「で、その勝負の内容は?」
ゲームの内容が気になったクタニドが、クトゥグアにそう尋ねると……
「ルールは簡単~、制限時間の間、僕がシゲに攻撃を仕掛けるから~、シゲはそれを何とか躱して生き延びるってだけ~。ね~?簡単でしょ~?」
「「はぁっ?!」」
クトゥグアは事も無しと言った調子で返答し、それを聞いた旧神2柱は、驚愕の余り凄まじい声量で驚きの声を上げる
「おま……、シゲを殺す気かっ!?」
「このくらいのリスクがなけりゃ~、面白くないでしょ~?」
「要は俺の魂が掛け金って事か……?」
クタニドとクトゥグアのやり取りを聞いていたシゲが、この様な事を呟いたところ、クトゥグアはシゲに向かって大きく頷いて見せるのであった
「面白れぇ……、いいぜ、乗ってやんよその話……」
「待てシゲッ!流石にこれは分が悪いぞっ!!」
「そうですよっ!!幾ら何でもこれは無謀過ぎますっ!!!」
クトゥグアに対してシゲがこの様に返答すると、大慌てしながら旧神2柱がシゲを止めようとするのだが……
「旧神の間では、死者蘇生は禁忌なんでしょう?そんだけの事やらかそうってんなら、このくらいのリスクは仕方ねぇ事でしょうっ!!!」
先程まで泣いていたシゲが、力強くこの様な事を口にすると……
「きっとシゲならそう言うと思ったよ~、ではでは~……」
クトゥグアがこの様な言葉を口にした後、大きく息を吸いこみ始める。その様子を見たシゲも、クトゥグアと同じ様に大きく息を吸い込んだ後……
「「表出ろやあああぁぁぁーーーっ!!!!!」」
スイッチが入った1人と1柱は、同時に腹の底から声を出し、この様に叫ぶのであった……
クトゥグアが外なる神寄りの旧支配者と言う設定や、死者蘇生関係の設定の多くは、この作品独自の設定となっております