「シゲえええぇぇぇーーーっ!大丈夫かあああぁぁぁーーーっ!!」
「シゲさーん!生きてますかーっ!?」
シゲとクトゥグアの戦いを、戦いに巻き込まれない様遠くから見守っていたクタニドとヴォルヴァドスが、戦いが終わるなりこの様に叫びながらシゲに駆け寄ったところ、そこには炭で出来た像と化したシゲの姿があった
「健闘した様だが……、やはり駄目だったか……」
「相手があのクトゥグアさんですからね……、しかし、本当に惜しい人を……」
炭人形と化したシゲの姿を見たクタニドが、シゲから視線を逸らしながらこの様な事を呟き、それに続く様にしてヴォルヴァドスが苦悶の表情を浮かべながら言葉を紡ごうとしたその時である
「おい……、勝手に殺すな……」
2柱のやり取りを黙って聞いていたシゲが、思わずヴォルヴァドスの言葉に割って入る形でこの様な言葉を口にする
因みにこの時、シゲの口は炭のせいで動かす事が出来なくなっている為、シゲは雄叫びを上げた時に口を開いた状態のまま、2柱に向かって話し掛けていたりする
それを聞いた途端……
「「ぎゃあああぁぁぁーーーっ!!出たあああぁぁぁーーーっ!!!」」
シゲが言葉を発した事に心底驚いたクタニド達は、揃って大声で悲鳴を上げるのであった
「出たー!じゃねぇよ、っとそれよりもこの炭何とかしてくれねぇか?これのせいで全く動けねぇんだよ……」
シゲのこの言葉を聞いた2柱は、我に返るとすぐにシゲの身体を覆い尽くす炭を剥ぎ取ろうとするのだが、クトゥグアの炎に焼かれた事でシゲの皮膚が炭化して出来たこの炭は、中々上手く剥ぎ取れなかったのであった
さてどうしたものかと、クタニド達が頭を悩ませていると……
「あっはっはっはっは~っ!!!いや~、ホントシゲは面白いね~」
この炭を作り出した張本神、クトゥグアが大笑いしながらフヨフヨとシゲの下へ近付いて来るのであった
「クトゥグアか……、勝負の件、俺の勝ちって事でいいんだよな……?」
「うんうん、姿形は残っているし、何よりこうして僕と会話出来ている以上、シゲは僕の攻撃を耐え凌いでこの戦いに勝利した。これはまごう事無き事実であって、この事実は僕の権限で誰にも覆させないよ~」
近付いて来たクトゥグアに向かって、シゲがこの勝負の勝敗について尋ねたところ、クトゥグアは上機嫌なままこの様に答えるのであった
この時、クトゥグアの発言を聞いたクタニドが、これでもかと言う程驚愕していたのだが、それは誰にも気付かれる事は無く、闇に葬り去られるのであった
「っと、そのままじゃ話し辛いだろうから~……」
この言葉の後、クトゥグアが2本の指が付いたちっちゃな腕を身体から生やし、指を擦り合わせる様にしてパチン!と言う音を辺りに響かせると、突然シゲの全身にこびり付いた炭が動き出し、腕の炭はシゲの手の甲へ、足の炭はシゲの踝へ、その他の炭はシゲの腰の辺りに集まり始め、やがて炭はそれぞれの部位で1つの塊となるのであった
「……何だこりゃ?」
ようやく身体が動かせる様になったシゲが、身体を軽く動かした後自身の手の甲や踝、腰に集まった炭を見て、不思議そうにしながらこの様な事を言う。すると……
「は~いシゲ~、しばらく大人しくしててね~、手元狂うと大変な事になるからね~」
その様子を見ていたクトゥグアは、この様な事を言いながら再び指を鳴らして自身の周囲に4つの小さな火球とやや大きめの火球を1つ作り出し、小さな火球をシゲの四肢の炭へ、大きな火球をシゲの腰の炭目掛けて放つのであった
クトゥグアの突然の行動に驚いたシゲは、思わず火球を迎え撃とうと身構えようとするのだが、クトゥグアの言葉を思い出すなり大人しく従った方が身の為だと思い直し、シゲはクトゥグアの指示に素直に従い、クトゥグアが放った5つの火球をそれぞれの炭で受けるのであった
するとどうだ、クトゥグアの火球を受けるなり、突然炭の表面に亀裂が走り、塊となった炭が勢いよく弾け飛ぶと、中からまるでクトゥグアの身体の様に輝く宝石が姿を現すのであった
その様子を見て1人と2柱が愕然としていると、クトゥグアがその宝石について得意げに話し始めるのであった
「その宝石は~、僕の一部とも言える僕の身体を覆うこの炎を結晶化させた物……、クトゥグア焔晶とでも名付けておこうかな~?まあそんな感じの超激レアな宝石なんだよ~」
「クトゥグア焔晶……、……何に使うんだこれ?」
シゲが先程自身の四肢や腰に付いていた炭が変化して出来たクトゥグア焔晶を眺めながら、これを自分に授けたクトゥグアに対してこの様に質問したところ
「よくぞ聞いてくれました~、これのおかげでね~、今シゲの中で暴れ狂う僕の魔力とエネルギーを、完全に制御する事が出来る様になるんだよ~」
「……はいぃ?」
クトゥグアはこの様に返答し、それを聞いたシゲは思わず素っ頓狂な声を上げ、それを聞いたクトゥグアは一頻り大笑いした後、今のシゲの状態について話し始めるのであった
「この反応からして~、あれは無意識にやってたのかな~?っとこんな事言われても分からないと思うから言うんだけど~、シゲは僕のとっておきを受け止めている時、無意識の内にあの火球に込められた魔力とエネルギーを吸収していたんだよ~?その結果~、今のシゲの身体の中には~、あの火球程じゃないけど、尋常じゃないレベルの魔力とエネルギーが溜まっているんだよね~」
「具体的にはどのくらいだ?」
「う~ん……、少なくとも~、暴走させたら太陽系が2、3回程吹き飛ぶレベルだね~」
「おいちょっと待てっ!流石にそれは洒落になんねぇぞっ!!!」
「だから~、それを制御する為に、焔晶をシゲに取り付けたんだよ~」
このやり取りの後、シゲは自身の中に存在するエネルギーを感じ取る事に成功し、そのエネルギーの量に思わず戦慄、慌てふためき出すのであった……
この後もクトゥグアの話は続く、こうして焔晶を取り付けられたシゲは、焔晶のおかげでそのエネルギーを無尽蔵に扱える様になっただけでなく、シゲ自身が扱える温度の上限が大幅にアップしているのだとか……
身体の中のエネルギーが無尽蔵に扱える様になっているのは、腰の焔晶に太陽光をエネルギーに変換する仕掛けが組み込まれていて、これにより消費したエネルギーを補充出来る様になっているからである
そしてそのエネルギーを使って放てる炎や熱線の温度は、焔晶で制御している状態でも、これまでの上限であった50万度を大幅に上回る3兆度になっているんだそうな……。これには某宇宙恐竜もびっくりする事だろう……
しかも恐ろしい事に、今後シゲが放つ炎や熱線は、焔晶の影響で放熱によるエネルギーの減少が無くなり、何時でも相手に出来立てホヤホヤアッチアチをお届け出来るそうなのだ……
「おいおいおい……、何か俺、死んだらとんでもねぇ事になっちまったぞ……?」
「はっはっは~、これで終わりだと何時から錯覚した~?」
「あちょっ!?まだ何かあんのかっ?!」
クトゥグアの話を聞いて唖然とするシゲに向かって、クトゥグアは更に追い撃ちをかける……
「これな~んだ~?」
クトゥグアはそう言いながら、何処からともなく1振りの剣を取り出してシゲに見せて来る
「何だその剣……?」
「これはね~、『コルヴァズの剣』と言って、僕の眷属である炎の精が作った剣なんだ~。これの凄いところは、この剣の刀身に触れた物は全て、それも問答無用で焼き尽くされるってところ~。ただ代償として~、この剣を使用者は~、正気をこの剣に削られちゃうんだよね~」
「ふ~ん……、それで、それがどうしたんだ?」
剣術の心得が無いシゲが、クトゥグアの言葉に対して興味なさげに反応したところ、クトゥグアはとんでもない事を言い出すのであった
「これを特別に~、シゲにあげちゃう~。シゲが僕に勝った報酬が復活で~、僕を驚かせた報酬が焔晶だとしたら~、これは僕を楽しませてくれた報酬ってとこだね~」
「はぁっ!?いやいやいや……、いらねぇよそんなの……、俺がそれ使って正気失ってアニキ達に襲い掛かっちまったら、復活した意味無くなっちまうだろ……。それに俺剣とか使わねぇし……、俺格闘術メインだし……」
クトゥグアの言葉に驚いたシゲが、この様に返答したところ……
「え~……、じゃあ~……」
クトゥグアは不満そうな声を出しながら、コルヴァズの剣を追加で3本出すと、突然それを溶かし始めたのである
その様子をシゲだけでなく、クタニドとヴォルヴァドスまでもが驚愕しながら見守っていると、クトゥグアが溶かした剣はみるみる内にその姿を変えていき、それはやがて1対の金属質の真っ赤な手甲と具足となるのであった……
「これならシゲでも使えるでしょ~?ああ、正気の件は心配しなくていいよ~、それは焔晶が何とかしてくれるから~」
クトゥグアはこの様な事を言いながら、先程コルヴァズの剣を材料に作り上げた手甲と具足をシゲに押し付け、それを受け取ったシゲは只々困惑するのであった
如何やら焔晶には、翔のクタニド製ケープ&エプロンや鳳翔のリボンと同じく、身に付けている者の正気を保つ効果がある様である……
「こんなに色々貰っちまって、何か悪いな……」
「HAHAHA!いいのいいの~、シゲはそれだけの事をやったって事なんだから~」
シゲが申し訳なさそうにそう言うと、クトゥグアはケラケラ笑った後シゲに向かってこの様に返答するのであった
「いや、でも……、……ん?」
そんなクトゥグアに対して、シゲは何かを言おうとするのだが、ある事に気が付いて言葉を口にする事を中断し、先程クトゥグアから受け取った具足の中に視線を向ける。するとそこには、クトゥグアの屋敷で見かけた炎の精が隠れる様にして入っていたのであった
「クトゥグア……?」
「ああ、その子?その子はね~、その一式のメンテ要員だよ~。流石にその一式は普通の方法じゃ手入れ出来ないからね~、そういう訳でフォーマルハウトの職人達の中から~、僕が厳選した子をメンテ要員として付ける事にしたんだ~」
「冗談抜きで至れり尽くせりじゃねぇか……、俺がやった事ってマジでそんなに凄い事だったのか……?」
クトゥグアの返答を聞いたシゲは、自分がやらかした事に驚愕しながらこの様に呟くのであった……
因みにこの炎の精はこの姿のまま連れて行く訳にはいかないと言う訳で、クタニドの力によって妖精さんの姿に変えてもらい、シゲによってスパナ妖精と名付けられ炎の精は、シゲと共に地球に向かうと妖精さん達の技術をモリモリ吸収し、戦治郎のところのハンマー妖精さんや空のところのバーナー妖精さんと共に、工廠で大活躍する事となるのであった