「とまあ、こんな感じで俺はクトゥグアのおかげで、何とか復活する事が出来たんだわ」
「何それ怖い」
こうしてシゲが翔達に事の顛末を話し終えると、目を丸くしながらシゲの話を聞いていた翔が、思わずこの様な事を口にするのであった
「まさかクトゥグアがシゲに対してここまでやるとは……、クトゥグアの奴……、一体何を企んでいるのだ……?」
「いや、幾ら何でもそれは考え過ぎじゃねぇか?俺が見たクトゥグアは、何かそんな腹に一物ある様な感じじゃなかったぜ?」
そしてシゲの話を黙って聞いていたゾアが、思案顔でこの様な言葉を口にしたところ、シゲが間髪入れずにこの様な反論をする
「ああ、シゲはクトゥグアさんがどんな神性なのか知らないんだっけか……」
「んあ?どんな神性か……?俺が見た限り、クトゥグアはのんびりした親バカって感じだったが……、あいつ裏に何かあんのか?」
するとシゲの反論を聞いた翔がこの様な事を言い、それを聞いたシゲは思わず小首を傾げながら翔にこの様に尋ねる
「うむ、有りも有り、大有りなのだ」
「ちょっと待ってて、丁度良い物があるから……」
シゲの質問に対してゾアがこの様に答えた直後、翔がそう言って資格試験の勉強の際に使用していた机に立て掛けていた鼓翼を手にすると、鼓翼を鞘から抜くなり何かの呪文の詠唱を開始し、翔が呪文を唱え終えた直後に突然鼓翼の刀身から黒い塊が出現し、その中からそれはそれは大きな封筒が飛び出して来るのであった
「む、翔は何時の間に鼓翼から真・魔道書を摘出する呪文を覚えたのだ?」
「それが、鼓翼を手にしていると、真・魔道書に刻まれた呪文が頭の中に勝手に入って来るんだよね……」
「何それ怖い」
その様子を見ていたゾアが翔に尋ねたところ、翔は困った顔をしながらこの様に返答し、そのやり取りを聞いていたシゲは意趣返しとばかりにこの様な言葉を口にするのであった
その後、翔は先程出現した真・魔道書を手にすると、中身を確認した後シゲに手渡すなり
「この封筒の中身を見たら、クトゥグアさんがどんな神性か良く分かると思うよ」
この様な言葉を口にし、その言葉と共に翔から封筒を受け取ったシゲは
「何だこりゃ?」
思わず疑問を口にするのであった
「それは『真・ネクロノミコン』と言って、ゾアの叔母さんにあたるカソグサさんが書いた物で、それを読んだらほぼ全ての神話生物と魔法に関する知識を手に入れる事が出来るって言う代物だよ」
「何かスゲェモン持ってんな……」
「クトゥグアからコルヴァズの剣ならぬ、コルヴァズの拳を貰ったシゲが言うのか……?」
シゲの疑問に翔が答え、それを聞いたシゲがこの様な事を呟いたところ、ゾアがこの様なツッコミをシゲに入れるのであった
因みに、翔がほぼ全ての神話生物と言った通り、この原稿にはティンダロスの猟犬に関する記述こそあるものの、ティンダロスの王の最強個体、言わばティンダロスの皇帝であるミゼーアに関する記述は存在しない。何故ならカソグサがミゼーアの所在を掴む事が出来ず、彼に対して取材を行う事が出来なかったからである
それはさて置き、シゲがこの原稿の中からクトゥグアのページを見つけ、一字一句見逃さない様熟読したところ……
「俺……、これ……、宇宙規模のヤクザから施し受けたって事なのか……?」
シゲは顔面蒼白になり、カタカタと身体を小刻みに震わせながら、翔達に向かってこの様な事を掠れた声で尋ねるのであった……
それに対して翔達が同時に、静かに頷き返したところ、シゲの表情は驚愕と絶望の色に染め上げられてしまうのであった……
「その……、シゲ……?……ガンバ?」
「恐らくその贈り物の量から、シゲはクトゥグアに大いに気に入られたのだろう……。だからきっとクトゥグアは、シゲの事を悪い様にはしないと思うぞ……?多分……」
そんなシゲの様子を見た翔達は、何とも言えない微妙な表情を浮かべながら、シゲに向かってこの様な言葉を掛けるのであった……
一方その頃、ヒアデス星団内の古代都市カルコサ付近にある黒きハリ湖の中央に浮かぶ様にして存在する、ハスターの居城では……
\助けてくれー!/\死にたくなーい!死にたくなーい!/\ギャーーー!/
ロイガーとツァールによって厳選され、自分達の兵士とするべく連れて来られたチョー・チョー人達が、悲鳴を上げながら逃げ惑い……
\テメッコラー!/\ザッケンナコラー!/\スッゾコラー!/
そんなチョー・チョー人達を、ヤクザスラングを口走る炎の精や冷たきものたちが、これでもかと言うくらいに執拗に追い回し、挙句の果てには逃げ遅れたチョー・チョー人達を無慈悲にボッコボコにするのであった
更に城内の別の区画では……
「数いりゃ何とかなるとか……、思い上がりも大概にしろやボケがあああぁぁぁーーーっ!!!」
城を守ろうと廊下の奥から次から次へと姿を現し、襲い掛かって来るハスターの眷属であるビヤーキー達を、フサッグァがそう叫びながら次々と焼き払っていく……
「「「そこまでだっ!!!」」」
そんなフサッグァの暴挙を制するかの如く、3つの声がフサッグァに掛けられ……
「貴様の暴挙、見過ごす訳にはいかん!」「それ以上攻撃を続けると言うのであれば……」「我々が相手をしようっ!!!」
声が聞こえた方角へ顔を向けたフサッグァの視線の先では、イタクァとロイガーとツァールがポーズを決めながらこの様な事を叫ぶのだが……
「邪魔じゃクソボケがグォルァアアアァァァーーーっ!!!」
重戦車と見紛う程の重武装を施したルリム・シャイコースが、先程まで彼の相手をしていたと思わしき複数のビヤーキーと共に壁を突き破りながら姿を現し……
「「「ぎゃあああぁぁぁーーーーっ!!!」」」
そんなルリムに轢き潰されたイタクァ達は、断末魔の悲鳴を上げた後に完全に沈黙してしまうのであった……
因みにルリムが装備していた武装は、その全てがフォーマルハウトの兵器職人達謹製の代物だったりする
こうしてクトゥグア・ファミリーの面々がハスターの城で暴れ回る中、彼等を纏めているクトゥグアは何をしているかと言えば……
「とっとと同盟組んだ時に書いた書類出せっつってんだろうがオ"ルア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ーーーッ!!!」
「待てクトゥグアッ!話せば分かるっ!!」
やたらドスが利いた声で、この城の主であるハスターと【お話し合い】をしていたのであった……
「あ"ぁ"っ?!何だゴルァッ!?ツマラネェ事抜かすとぶっ殺すぞボケがっ!!」
「少しは落ち着けっ!大体何だ、突然押しかけて来るなり同盟結成時の契約書を出せなどと……、お前は何をしようと考えているんだ?」
「決まってんだろうがクソボケがっ!!!同盟破棄する為にその契約書を処分しに来たんだよっ!!!耄碌してんじゃねぇぞクソがぁっ!!!」
「んなっ!?」
このやり取りを交わした瞬間、ハスターは目を見開いて激しく動揺し始めるのであった……
「ちょっと待ってくれっ!そんな事をしたら、私が主催しているビヤーキーレースにお前のチームが参加出来なくなるんだぞっ!?」
「くだらねぇ事抜かすんじゃねぇぞっ!!!俺はビヤーキーレースから手を引くっつってんだよっ!!!ウチのスターレーサーが
クトゥグアのこの言葉を聞くなり、ハスターの顔色は見る見るうちに悪くなっていく……
何故ハスターがその様な事になっているのか、それはハスターの戦力がクトゥグアが治める工業都市で作られる兵器と、クトゥグア・ファミリーそのものの戦力に依存しているからに他ならないのである
ハスターは万が一ではあるが、クトゥルフが攻め込んで来た時に備えて戦力を蓄えようと考え、その時にビヤーキーレースのチームを作りたいと言って来たクトゥグアに、クトゥグアのところの兵器を安く売ってくれるならば、チームを作って良いと言う話を持ち掛け、その交渉の中で上手くクトゥグアを丸め込んで、クトゥグアの戦力も自分のところで扱えると言う内容を織り込んだ契約書にクトゥグアのサインを書かせ、同盟を結成したのである
クトゥグアのところの戦力があれば、ほぼ間違いなくクトゥルフの軍勢を抑え込む事が出来る、ハスターはそう考えた為この様な行動に走ったのである
それが今この瞬間、ハスターの目の前で破棄されようとしているのである……。それだけは何とか避けたい……、そう思ったハスターは
「流石にそんな理由だけで、同盟を破棄される訳にはいかんな……」
震えそうになる声を何とか抑えながら、クトゥグアに向かってそう言ったところ……
「あ"ぁ"っ!?つべこべ言わずとっとと契約書を出しやがれっ!!!でねぇとてめぇとてめぇの部下諸共、この城燃やすぞっ!!!??」
クトゥグアは殺気を撒き散らしながらこの様に言い放つと、その身体に纏った炎を活性化させ始めるのであった……
その後、クトゥグアの脅しに屈したハスターは、クトゥグアの望み通り契約書を彼に差し出し、目の前で契約書が焼却される光景を絶望しながら見守り、クトゥグアが帰った後は自室で茫然自失に陥ったのだとか……
尚、後にクトゥグアがシゲの為に同盟を破棄し、新たにクトゥルフと手を組んだと言う報を聞いたハスターは、地球には干渉せずずっと城に引き籠る決意を固めるのであった