クトゥグアの正体を知ってショックを受けたシゲが、何とか立ち直って翔達に今回の件は内密にして欲しいと頼み、話を聞いていた翔達がそれを了承すると、シゲはホッと胸を撫で下ろした後、自分の部屋へと戻って行くのであった
何故シゲが翔達にこの事を話したのかについてだが、それはシゲが今回の件は一人で抱え込むのは流石に無理だと判断し、この件を話せる相手を作っておこうと考え、シゲが一体誰に話そうかと迷ったところで、自分と同じく神話生物と関わり合いがある翔に白羽の矢が立ったのである
因みに内密にして欲しいと頼んだ理由だが、これは戦治郎と摩耶を心配させたくないと言うものだけでなく、シャングリラのル級に負けて以来、やたら力を欲する様になった通を下手に刺激しないようにする為である。もしここで通に対してクトゥグアから力を授かったなどと言ってしまえば、通が何をしでかすか分かったものではないのである……
とまあ、シゲがこうして悩みを吐き出す方法を確立した頃、自室で色んな所の要人達と雑談を興じていた戦治郎はどうしているかと言うと……
「いや本当にあの時は助かりました~、重ね重ねお礼申し上げます~」
『いやいやこちらこそ、お前の仲間である翔のおかげでこちらの問題が解決したんだ、礼を言うのはこちらの方だ』
「いやいやいや……」
『いやいやいやいや……』
とまあ、こんな調子で突然戦治郎達が話をしているチャンネルに乱入して来たクタニドと、お礼お辞儀合戦を繰り広げていたのであった……
因みに、クタニドの事はクタニドが回線に乱入して来た直後、クトゥルフの方からこのチャンネルのメンツに説明してあったりする
『なぁ、戦治郎の奴はこのやり取り中ずっと、見えない相手に向かって土下座してんのか?』
『セオ、流石にそれは無いんじゃないか……?』
『流石に土下座は無いだろう……、精々見えない相手に只管お辞儀していると言ったところだろう……』
『それはそれでシュールだな……』
『その光景を想像したら、噴き出しそうになっちゃったよ……』
そんな戦治郎達のやり取りを聞いていたセオドール達が、この様な会話をしていると……
『クタニド……、そろそろその辺りで……、んぐ・・・・・・、すまんクティーラ、アイスのおかわりをくれ。っと、失礼した、お礼合戦はその辺りにして、ここに乱入して来た理由を聞かせてもらえないか?』
雑談の途中からクティーラが作ったアイスを食べ始めたクトゥルフが、クタニドに向かってこの様な言葉を言い放つのであった
「ああ悪ぃ、クタニドさんには今回の件のお礼を何時か言わなきゃって思ってたから、ついやっちまった……。んでクタニドさん、今日はどう言ったご用件で?」
クトゥルフの言葉で我に返った戦治郎が、詫びを入れた後クタニドに対してそう尋ねたところ……
『こちらこそ、雑談を楽しんでいるところにすまんな……。で、この回線に乱入した理由なんだが……、戦治郎は日本陸軍の関係者に知り合いはおらんか?』
『陸軍に……?邪神が一体何の用だ?』
クタニドの思いもよらぬ発言を耳にして戦治郎達が揃って驚愕する中、現在陸軍のトップである剣持だけは、クタニドの言葉に即座に反応し訝しむのであった
『その反応からして、お前は陸軍の関係者か?』
『如何にも、大日本帝国陸軍の現元帥陸軍大将の剣持 刃衛だ』
『何だとっ!?』
剣持の自己紹介を聞くなり、今度はクタニドが驚愕するのであった
『まさかこの中に陸軍のトップがいたとはな……、これには流石の私も驚いたぞ……』
『御託はいい、早く用件を教えてもらおうか……』
思わずこの様な言葉を口走るクタニドに対して、剣持は不信感全開の剣呑な声で用件を早く話す様催促する
そうしてクタニドの口から放たれた言葉を耳にした者全員が、その内容に更に驚愕し我が耳を疑うのであった
『そう急かすな、お前に頼みたい事があってな、もしよければヴォルヴァドスと言う私の部下を陸軍の憲兵として、戦治郎が着任するであろう鎮守府に着任させて欲しいんだ』
「ちょっと何言ってるか分かんないです……」
クタニドの言葉を聞いた戦治郎は、我に返るなり思わずこの様な言葉を口にするのであった……
さて、何故クタニドはヴォルヴァドスを憲兵として戦治郎の傍に置こうとしているのか……、それは大体シゲの身に起こった出来事が関係しているのである……
シゲが事故で1度死んだ事で戦治郎の仕掛けが1つ解除され、クタニド達が懸念している戦治郎暴走の可能性が高まったのである
そんな事故を未然に防ぐ為、そしてもし戦治郎の仕掛けが全て外れ、戦治郎が暴走してしまった時に備える為に、クタニドはヴォルヴァドスを戦治郎の傍に置こうと考えたのである
因みにこの時、クタニドはシゲが死んだと言う事実を隠蔽し、シゲの身に起こった出来事は全て、シゲが臨死体験している最中に経験した出来事だと戦治郎達には説明していたりする
クタニドの話を聞いたクトゥルフ以外の面々が、主に戦治郎の秘密に関する事で騒然とする中……
『本人の了承は……?』
剣持はクタニドに対してこの様な事を尋ね……
『勿論取っている、っと言うかヴォルヴァドスと私で話し合った結果、この様な結論に至ったと言った方が正しいな』
それに対してクタニドはこの様に返答し……
『ならばよし』
「いや待って剣もっさん、貴方自分が何口走ってるか分かってらっしゃる?貴方が陸軍に入れようとしてるのは神様よ?超常の存在よ?ホント分かってる?」
クタニドの返答を聞いた剣持が、クタニドにその提案を受けると伝えた直後、戦治郎が大慌てしながら剣持にこの様に尋ねる。それに対して剣持は……
『承知の上だ、正直なところ、俺はお前が着任する事になる鎮守府に派遣する憲兵に関する問題で、頭を悩ませていたところだったんだ。事実、俺はお前のあの超常の力をこの目で見ているからな……、お前が提督として何処かに着任するとなると、俺は陸軍の長として、その超常の力に耐えうる憲兵を厳選しなければいけないと思っていたのだが、お前を抑えられそうな超常の方から憲兵にしてくれと来るのならば、断る理由など何処にも無い。そもそも、今の陸軍の人手不足は、お前が想像しているよりよっぽど深刻なんだ……』
最後の辺りはやや沈みながら、この様に返答するのであった……
こうしてヴォルヴァドスの陸軍入隊の許可が下りたところで、クタニドがちょっとした用事があるからと、このチャンネルから出ようとしたその直後
『なぁなぁ、欧州の方にも何か超常の存在を派遣してもらえねぇか?』
突然セオドールが、この様な事を口走るのであった
それを聞いて驚いた戦治郎が、その真意をセオドールに尋ねたところ、日本とアメリカだけが神話生物を味方に付けているのはずるいと感じたんだとか……
『そう言われると、確かにそうだね……。この世界にクトゥルフさん達の様な超常の存在がいる事がこうやって証明された以上、運悪く彼等と敵対する様な事になった時に備えておきたいところだね……』
『出来れば穏健派連合にも、邪神様達の加護が欲しいところだね……』
セオドールの言い分を聞いたアクセルとリチャードが、納得した様にこの様な言葉を口にするのだが……
『穏健派連合に関しては、ホノルルの警護に当たっているディープ・ワン達から少しだけ人員を割けそうだが……、欧州となるとな……。それに現在ルルイエでは、ある計画が進行していてな……』
クトゥルフの方からは、渋い回答しか返って来なかったのであった……
その後戦治郎達はこの問題に関して少しだけ話し合いを重ねたのだが、いい解決方法が思い浮かばず、クタニドが慌てた様子でこのチャンネルから出た事を合図に、今日の所はお開きと言う流れになり、戦治郎はアクセル達に挨拶を済ませると通信を切るのであった
因みに、クタニドの用事とは何だったのかと言えば、それはハスターの所にカチコミに行ったクトゥグアから、フーちゃんの世話を頼まれたと言うものであり、クタニドが慌ててチャンネルから出たのは、はしゃぐフーちゃんが勢い余ってクタニドの私室の机に激突し、泣き出してしまったからであったりする……