剣持が怪傑ズインこと鶴田 ムサシの勧誘に成功したその翌日、剣持はこの事を伝えると同時に、ある事に関して戦治郎に相談を持ち掛ける為に、朝も早くから戦治郎の通信機に通信を入れるのであった
『……以上が、鶴田 ムサシの勧誘に関する報告だ』
「神話憲兵の次は、転生憲兵ですか……。こりゃまたスゲェパワーインフレ起こしそうだな……、確かそのムサシって奴、剣もっさんだけでなく光太郎と剛さんも実力認めてるんでしたっけか……。ああ~……、俺もそいつの戦い見たかったな~……」
剣持の話を聞いた戦治郎は思わずこの様な感想を漏らし、陸軍兵の狙撃をモロに受けて倒れてしまった事を激しく悔むのであった
剣持がムサシを勧誘する際、彼の実力を認めていると何度も繰り返し言っていたが、彼の実力を認めているのは、何も剣持だけではなかったのである。先程戦治郎が言った様に、彼の戦いぶりをその目で見た光太郎と剛の2人も、彼の実力は本物であると認め、彼が敵ではなかった事を心底喜んだのだとか……
そんなムサシの実力だが、何と長門屋最速クラスのスピードの持ち主である光太郎に追いつけるほど足が速く、陸軍兵達が乗っていたペーガソスを片手で持ち上げて投げ飛ばすほどの腕力を持っており、その様子を見ていた剛はズインが武器を使っているのは、相手に手加減する為なのではないかと思うほどだったのだとか……
それほどの力が一体何処から来るものなのか、その事が少し気になった剛達がズインに尋ねてみたところ……
「相手が悪であれば悪であるほど、そしてその数が多ければ多いほど、私の心が何処までも熱く燃え盛り、その熱が全て私の力になってくれるのさっ!」
っとまあ、こんな調子でズインは変なポーズを決めながら、剛達の質問に対して答えたんだそうな……。これに関して剛は、彼のこの力は能力に依るものなのではないかと推測している
そしてこの事を剛の口から聞いた剣持は、彼を陸軍に引き込んで憲兵にすれば、その実力を十二分に発揮出来るのではないかと考え、その事を剣持から尋ねられた剛達もそれに大いに賛同したそうだ
故に、剣持は土下座してまでムサシを陸軍に入隊させようとしたのである
『ムサシはお前が提督になった時、ヴォルヴァドスとやらと共にお前の鎮守府に預けるつもりだ、だからムサシの実力はその時の楽しみにしておくといい』
「そいつが俺達を相手にした時、どのくらい強くなるかってのはホント気になるな~……。っとぉ、そういや剣もっさん、確か俺に相談があるんでしたっけか?元帥陸軍大将の剣もっさんの悩みって一体何ぞや?おせぇーておせぇーてプリーズプリーズ」
剣持とのやり取りの途中で、ふと思い出した様に戦治郎がこの様な事を言い出し、それを聞いた剣持は……
『俺の一番の悩みはお前達転生個体の存在そのものなんだが……、それは今この時はどうでもいい事だ。今の俺の最大の悩み……、それは陸軍の人員不足だ……』
「あぁ~……、確か今回の事件で陸軍全体の7割が逮捕されたんでしたね……。そんな事になりゃ確かに人手不足にもなりますわな……」
剣持の言葉を聞いた戦治郎は納得した様に声を漏らし、戦治郎の反応を聞いた剣持は手で額を押さえながらこの様に続ける
「そしてそれが政治家共の目に留まり、あいつらは有ろう事か陸軍の軍縮を検討しているそうだ……。なんでも人がいないなら枠を狭めても問題無いだろうし、その分だけ軍に回す予算を削っても大丈夫などと考えているようだぞ……?」
「ぼk……じゃなくって、現場見ろおおおぉぉぉーーーっ!!!お前ら今世界がどうなってるか分かってんのかっ!?お前らが安心して今の生活が送れているのは、一体誰のおかげか考えろおおおぉぉぉーーーっ!!!」
剣持のこの言葉を耳にした戦治郎は、驚くよりも呆れるよりも先にブチギレ、思わず絶叫するのであった……
戦治郎がこんな反応をしたのには理由がある
横須賀の乱により日本は一時大混乱に陥り、それが何とか落ち着いたところでこの件の首謀者であった桂島泊地の提督が所属していた海軍と、多くの者が桂島泊地の提督に手を貸した陸軍は、その責任を問われ罰として当面の間は予算を大きく削られてしまったのである
剣持の話が正しければ、この国のお偉い方はこの様な仕打ちを受けている陸軍に対して、更に追い撃ちを掛けようとしているのである。現在の陸軍のトップである剣持は、その件に加担するどころか、それを鎮圧する為に動いたにも関わらず、この国の政治家達は剣持の働きに見向きもせず、この件に加担した者達も剣持も同じ陸軍として扱い、国土防衛の要である陸軍を追い詰めようとしているのである
故に戦治郎はブチギレ、怒りの咆哮を上げたのである
『今回お前に相談したいのは、正にこの件についてなんだ……。あちらが言うには、今より人員が大きく増えたならば、軍縮の際削る予算の割合を減らすそうだ……。そういう訳で俺達は必死になって隊員を募集しているのだが……』
「確か艦娘ブームのせいで多くの人間が海軍に入隊希望を出して、陸軍に来るのは下心満載な腹黒野郎や、学生生活の殆どを試験勉強に当てておきながら、軍学の試験に落ちてしまった落ちこぼればかりなんでしたけか……。んで、今回の件で陸軍の連中が派手に暴れた関係で、陸軍の印象がかなり悪くなってしまって、そう言った連中からの入隊希望もガタっと減ったんでしたよね……?」
『ああ、大体それで合っている……』
剣持の言葉を聞いた戦治郎が、この世界の日本の就職事情を交えながら剣持に尋ねたところ、剣持はやや沈みながらこの様に返答するのであった……
「この状態で、陸軍の入隊希望者を増やすんですか~……」
『生前は会社の経営をしていたと言うお前なら、何か良い案を出してくれると思って相談したのだが……』
「会社って言っても有限会社レベルのちっさい修理工場と、リサイクルショップなんですけどね……」
戦治郎は剣持とこの様なやり取りを交わすと、陸軍の入隊希望者を増やす為の方法を考え始め……
「う~ん……、ちょっとズルい気はしますが~……、こんなんどうでしょ?」
『どんなものでも一向に構わん、お前が思いついた案を話してくれ』
ある方法を思いついた戦治郎がこの様に言ったところ、剣持は戦治郎に先程思いついた案をすぐに話す様にと促し、それを聞いた戦治郎は自身の思い付きを剣持に対して話し始めるのであった……
さて、戦治郎が思いついた方法とは一体どの様なものなのか……?
ぶっちゃけてしまえば、ズインの名前を使って入隊希望者を募ると言うものである
先ず陸軍はなけなしの予算を使って、ズインと陸軍が生まれ変わった事を全面的に押し出した広告を作り、それをテレビやラジオやインターネット、新聞の広告欄や道端のポスターと言ったあらゆるメディアで宣伝するのである
そうすれば真っ先に釣れるのは、実際にズインに助けられた横須賀の人達、次に釣れるのはローカルヒーローオタク達、そしてCMのズインの言葉に心を動かされた者達が行動を起こし始め、その大きな人の動きが多くの人間を巻き込み、それらを全て陸軍が受け入れると言った感じである
ここで剣持がそうして入隊した者達が、陸軍の訓練に耐えられるのか?と戦治郎に尋ねたところ……
「そこは飴鞭で頑張って下さい、そうだな~……、剣もっさんが鞭役で~、飴役はズインの姿で訓練に参加するムサシがいいかな~?そしたらそいつらは否が応でも訓練を頑張ろうって思うと思うんですよ。だってそうでしょ?ローカルとは言え本物のヒーローに叱咤激励されるんですから、大体の野郎はそれでやる気になると思いますよ」
戦治郎はこの様に返答するのであった
『ふむ……、ダメ元でやってみるか……。もしこれで成功した場合、良い酒を奢ってやろう』
「いや~……、呑めない訳じゃないんですけど、酒はちょっと止めておいてもらえます?代わりにチョコなら大歓迎ですわ。そもそもこの案の大元は、空が会社の宣伝の為にオリンピックに出場したって奴なので、お礼ならチョコ大好物人間の空の方にしてやって下さいな」
『……何がどうなったら、宣伝の為にオリンピックに出場するんだ……?』
「それは空本人に聞いて下さい、親友の俺でもたまにあいつの考えが分からなくなるんで……」
このやり取りの後、剣持は戦治郎に改めて礼を言って通信を切り、早速広告作りの為に行動を開始するのであった
こうして作られた陸軍の広告は、あっという間に日本全国に知れ渡り、戦治郎がターゲットにした者達だけでなく、ズインの影響で誕生した日本各地のヒーロー組織の人間までもが、履歴書を片手に大日本帝国陸軍の地方協力本部へ殺到するのであった……