「ごおおおぉぉぉーーーっ!!!」
シゲの方へ真っ直ぐ突っ込んで行く防人が、シゲを打ち砕かんと雄叫びと共に大振りの拳打を放つのだが……
「そんな大振りの攻撃が当たるかよっ!!」
過去に空手をやっていたシゲは、その拳をすぐに見切って軽々と回避し、反撃に移ろうとする。だが……
「……っ!?」
これまでの戦いで培われた彼の勘が突然警鐘を打ち鳴らし、それに反応したシゲはクロとゲータのジェット噴射を使って一気に後方へ飛び退く。その直後、先程までシゲが立っていた海面が、防人の腕から放たれた黒い衝撃波により一瞬だけだが削り取られてしまうのであった
(あっぶねぇ……、今のに反応していなかったら、今頃挽肉になってるところだったわ……。っつか、あいつの衝撃波、腕からも出せるのかよ……、厄介過ぎるってレベルの問題じゃねぇぞ……っ!?)
防人の追撃を咄嗟に躱したシゲは、冷や汗を流しながら内心でそう呟く……
その後、シゲは防人が放つこの黒い衝撃波に、大いに苦しめられる事となるのであった……
シゲが何とか防人に接近してインファイトに持ち込むも、防人の腕や足から放たれる衝撃波の有効範囲が予想以上に広い為、一撃入れた後すぐに大きく動いて衝撃波の有効範囲から逃れなければ、確実に手痛いダメージをもらう羽目になり、それを警戒してカイザー・フェニックスやフィンガー・フレア・ボムズによる遠隔攻撃を仕掛けても、それらは防人の衝撃波に易々と打ち消されてしまうのであった……
因みに、触れたもの全てを焼き尽くすと言われているコルヴァズの拳を装着したシゲに殴られた防人は、殴られた直後は火達磨になってしまうのだが、火傷を負うより早くその身を包み込む燃え盛る炎を気合いで吹き飛ばし、鎮火してしまうのだった
「貴様の実力はその程度かっ!?これでは準備運動にもならんぞおおおぉぉぉーーーっ!!!」
「うるっせえええぇぇぇーーーっ!!!だったらこいつはどうだあああぁぁぁーーーっ!!!
そんな事を何度も繰り返していると、シゲの攻撃を容易く打ち破って来た防人がシゲを煽る様に叫び、それを聞いたシゲはこの様に叫び返すなり、両手の間に大き目の火球を作り出す……、いや、、それだけではない……、クロとゲータの口の辺りにも、シゲが作り出す火球と同等の大きさの火球が浮かぶ様にして存在していた……
そして火球がある大きさになると、シゲは勢いよくその火球を前に突き出す。するとどうだ、3つの火球から膨大な熱を持った3本のそれはそれは太い熱線が撃ち出され、それは対象の全てを焼き尽くさんと、凄まじいスピードで防人の方へと殺到していくのであった
こうしてシゲから放たれたその熱線は、防人が放つ黒い衝撃波を難なく打ち破り、瞬く間の内に対象である防人を飲み込み、防人を炭人形に変えてしまうのだが……
「ちぃ……っ!冗談じゃねぇぞ……っ!」
炭人形が残っている事を確認したシゲは、思わず舌打ちしながらそう呟くのであった。何故なら、シゲは先程の熱線の温度を500万度に設定し、防人を炭人形にするどころか、プラズマ化させて跡形も無く吹き飛ばそうとしていたからだ……
しかし、シゲの目論見は外れ、防人だった炭人形は残ってしまった……。それはつまり……
「今のは多少効いたぞっ!!!これ程の力があるならばっ!!!先程の言葉は撤回してやろうっ!!!だからっ!!!この俺ともっと戦ええええぇぇぇーーーっ!!!!!」
防人は炭化した表皮を気合いで吹き飛ばし、全身の筋肉が剥き出しになった状態のまま大声でそう叫び、再びシゲに突撃してくるのであった……
そう、炭人形が残った……、是即ちシゲが防人を仕留め損ね、防人は健在である事に他ならないのである……
そんな防人の様子を見たシゲは、内心ではドン引きしながらも……
「黙れやぅ"お"るぁ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーーっ!!!」
防人に向かってこの様に叫び返し、防人を迎え撃つ為に、一か八かの反撃を繰り出す為に、彼をしっかりと見据えて構えを取るのであった
そして次の瞬間、絶好のチャンスが到来する
防人は最初の時と同じ様に、シゲに右腕で大振りの拳打を打ち込もうとするのだが、直後にシゲは防人の懐に潜り込み、即座に左手で防人の右腕を掴み、右手を防人の腹部に当てる……
「こんの……、化物があああぁぁぁーーーっ!!!」
そしてその次の瞬間、シゲの両手に莫大な量のエネルギーが集まり、それはシゲの咆哮と共に一気に解放され、大爆発を起こすのであった
「ぬおおおぉぉぉーーーっ!?」
この攻撃を受けた防人は、驚きの声と共に後方に勢いよく吹き飛ばされ、シゲに掴まれていた右腕は爆発の衝撃で千切れ、何処かへ飛んで行ってしまう
「そうだっ!!!いいぞっ!!!今のは素晴らしかったぞっ!!!さぁっ!!!もっとお前の力を見せてみろっ!!!もっと激しい闘争をっ!!!俺に生きている実感を与えろおおおぉぉぉーーーっ!!!」
(あぁ……、つえぇしうるせぇし気持ち悪ぃししつけぇし……、やたら上から目線でうざってぇし……、確かにこりゃ相手すんの嫌になるわ……)
先程の攻撃を受けて倒れた防人が、この様に叫びながら起き上がる様子を見たシゲは、内心で思わずうんざりしながらそう呟く……
だがそれもここまで……、次の防人の言葉を聞いた瞬間、シゲの心は怒りに支配され尽くしてしまうのであった……
「先程立ち寄った島の連中では味わえないっ!!!逃げ惑う者達を狩る狩猟ではなくっ!!!互いの力が激しくぶつかり合うっ!!!血沸き肉躍る様な熾烈な戦いをっ!!!もっと俺によこせえええぇぇぇーーーっ!!!」
「……あ"ぁ"?」
今の言葉をそのまま受け取れば、この化物は如何やら何処かの島に立ち寄って、そこに住む者達に今の調子で戦いを挑み、その圧倒的な力で逃げる住民達を蹂躙した事になる……
この近くの島と言えば、シゲ達の目的地である父島くらいしか無い……、つまり……
「……父島を襲った深海棲艦ってのは、お前の事だったのか……」
防人の言葉を聞いたシゲが、本当に小さな声でボソリと呟いたところ……
「あの島の連中の事などどうでもいいっ!!!」
シゲの言葉が聞こえたのか、防人はこの様に言い切るのであった……
「殺した相手の事などどうでもいい……、だと……?」
それを聞いたシゲは、そう呟くと一旦言葉を切り、大きく息を吸い込む……。そして……
「ふざけるのも大概にしやがれこの腐れ外道があああぁぁぁーーーっ!!!」
シゲは心の中で荒れ狂う怒りをこの叫び声に乗せ、シゲの心情を現す様に猛り狂う炎を全身から噴き出しながら、ジェット噴射まで使用して一気に防人との距離を詰めるのであった
「おおおぉぉぉーーーっ!!!」
そんなシゲの様子を見た防人は、全身から止めどなく溢れ出るシゲの殺気を受けてその身を震わせると、歓喜の雄叫びを上げながらシゲ目掛けて黒い衝撃波を口から放つ
直後にシゲは防人がアカムトルムのソニックブラストを連想させる黒い衝撃波を放った事を察知するのだが、そんな事等気にも留めず、シゲはそのまま真っ直ぐ防人の方へと突撃を仕掛け、黒い衝撃波の中に突っ込むのであった……
普通ならばこの衝撃波を受けた瞬間、対象はバラバラに砕け散りその破片は凄まじい速度で遥か彼方に撃ち出されてしまうのだが、その衝撃波の直撃を受けたシゲの身体は、小さな裂傷が幾つも走るだけでバラバラになる様な事にはならなかった……
それは何故か、今シゲの全身から噴き出している炎は、シゲ自身の能力に依るものではなく、生きる狂焔……、旧支配者であるクトゥグアからシゲが無意識の内に奪い取った、膨大な魔力が宿る炎なのである……
クトゥグアの魔力が宿った炎はシゲの全身を覆い尽くすと、炎が発する熱と魔力で衝撃波の軌道を無理矢理捻じ曲げ、掠りこそはするものの衝撃波がシゲに直撃しない様にしたのである
その様子を見た防人が、何が起こっているのか分からぬまま驚愕していると……
「くたばれやあああぁぁぁーーーっ!!!」
衝撃波を突き抜けて来たシゲが、雄叫びと共に腰と腕の捻りを加えた拳打を放ち、それは吸い込まれる様に防人の顔面に突き刺さり、防人を凄まじい勢いで吹き飛ばして見せるのであった
「うおおおぉぉぉーーーっ!!!いけえええぇぇぇーーーっ!!!そこだシゲエエエェェェーーーっ!!!ラッシュラッシュラッシュウウウゥゥゥーーーッ!!!」
コルヴァズの自宅でシゲの戦いを見ていたクトゥグアは、興奮の余り思わずそう叫んでいたのであった……
そんなクトゥグアの手の中では、ヘマをした炎の精が何度も何度もシガーカッターでその身体をカットされ、その様子を見守っていたフサッグァとルリムは、只々アワアワしながらクトゥグアが落ち着く事を待つのであった……