父島の一件の後、光太郎から報告を聞いた戦治郎が、改めて元帥に転生個体の脅威を訴え掛けたのだが、やはりと言うべきか元帥の考えは変わる事は無かった……
それを確認した戦治郎は、表では悔しそうな表情を浮かべていたのだが、内心ではニヤリとほくそ笑んでいた。その方が戦治郎にとって都合が良いから……、彼の企み事を成功させるには、元帥には今のままでいてもらった方が良いからである……
そうして時が過ぎ、遂にこの時が、日米英独と穏健派連合+αの会合の日がやって来るのであった。因みに、穏健派連合が此処に来る事は、元帥や海軍の上層部には伏せてあった。その方が来た時のインパクトが強いからと言う、戦治郎の提案でそうなったのである
先ず最初に日本に到着したのは、ミッドウェーの一件で研究所兼軍事要塞と化したホノルル兵器開発研究所を本拠地に据える事にした、アメリカ海軍の総司令であるジョシュア・ルイスと、艦娘の艤装に関わる事と言う事で、彼に同伴した兵器開発研究所の局長であるサラであった
因みに、これは会合の後ジョシュアが戦治郎にポロリと零した事だが、如何やら彼はもう少し余裕を持って出発するつもりだったらしいのだが、同伴する事が決まったサラにかなりせっつかれた結果、出発予定時刻を大幅に早める事となったのだとか……
さて、そうして出発時間を早めたサラはと言うと……
「空さん、お久しぶりです♪」
ジョシュア達を出迎えたメンバーの中に空がいる事を確認すると、小走りで駆け寄って空の両手を取りながら、空に向かってこの様に挨拶するのであった。……空の隣に並ぶ翔鶴の目の前で……
その後、空が翔鶴にサラの事を紹介し、翔鶴がサラに笑顔で自己紹介をするのだが、その場にいた誰もが翔鶴とサラから只ならぬオーラを感じ取り、恐れおののいたのだそうな……
さて、2人の女が1人の男を巡って火花を散らしていると、戦治郎達の後方から大日本帝国陸軍の軍服を纏った男達が、1輌の極めて珍妙な戦車を引き連れて姿を現す。そう、今回の会合には日本陸軍のトップである剣持 刃衛元帥陸軍大将も参加する事になっているのである
「済まない、福岡に置いていたペーガソスがたった今届いてな、ペーガソスの受け入れ作業をやっていたら遅くなってしまった」
先頭を歩いていた剣持が、そう言いながらペーガソスに視線を送ると、彼と共にこの場に来た陸軍の兵達が左右に分かれて道を作り、その道を剣持達の後に続いていたペーガソスが通り、ペーガソスは剣持の後方に着くと8本の足を同時に曲げて車体を地面につけて、その場で停止するのであった
因みに、横須賀の艦娘達はペーガソスを見た瞬間、横須賀の乱の時の事を思い出して思わず警戒してしまうのだが、これが剣持の物であると分かるとすぐに警戒を解き、この珍妙な戦車をマジマジと観察し始めるのであった
尚、ペーガソスを初めて見るシゲはと言うと……
「何だこの戦車あああぁぁぁーーーっ!?めっちゃ興味深ぇぞおいぃっ!!!」
興奮の余り思わずそう叫び、戦治郎にやかましい!と注意されながら頭を叩かれるのであった
こうして誰もが剣持達が連れて来た戦車に釘付けになっているところで、ドイツ海軍の総司令官であるアクセル・レーダーと、その秘書艦を務める戦艦ビスマルク、そしてイギリス海軍総司令官であるセオドール・ヴァレンタインとその秘書艦が乗った航空機が、横須賀鎮守府内にある飛行場に降り立つのであった
そして飛行機からアクセル、ビスマルク、セオドールの順で降りて来て、最後に降りて来たセオドールの秘書艦を目の当たりにした時、欧州にいた頃から戦治郎達と行動して来た者達が同時に目を丸くして驚き、思わずその場で固まってしまうのであった
その中でも特に激しく驚いたのは、初期メンバーの中でもイギリス海軍とイギリスの王室と関りがある通であった
「えっと……、もしかして従者さん……、ですか……?」
誰よりも早く我に返った通が、恐る恐ると言った様子で彼女にそう尋ねると……
「久しぶりだな通、ああその通り、私はあの時の従者だった者……、今はイギリス海軍総司令の秘書艦、アークロイヤル級正規空母の1番艦、アークロイヤルだがな」
初めて会った時はイギリス王室の姫の従者であったアークロイヤルが、薄い微笑みを浮かべながらこの様に返答するのであった
何故彼女がセオドールの秘書艦となっているのかについてだが、如何やら戦治郎達が去った後のイギリスは、すぐにドイツから艦娘の艤装に関する技術を提供をしてもらい、先ずは王室関係者と軍の関係者を中心に艤装の適性検査を行ったそうだ
軍は兎も角何故王室関係者まで最初に適性検査を行ったのかだが、これは如何やら姫がこの様なご時世で軍や国民だけに戦争を任せる訳にはいかないと、王室関係者が率先して艤装適性検査を受け、戦いの時は先陣を切って戦いに挑み、国民を鼓舞して奮い立たせ、勝利に導いていくべきではないかと熱く訴え掛け、それが実現してしまった結果なのだとか……
そうして姫と従者であったアークロイヤルが適性検査を受けたところ、2人共見事に適性がある事が判明し、王室の従者であった彼女は艦娘のアークロイヤルとして、深海棲艦と戦う事となったのである
因みに姫の方だが、如何やら戦艦の適性はあるものの、軍に関する知識は足りないわ、戦う為に必要な体力が圧倒的に足りないわで、現在はイギリスの方で軍に関する知識を得る為の勉学に励むと同時に、己を鍛える為に軍で猛特訓しているのだとか……
こうしてアークが自分が艦娘になった経緯を通達に話していると、不意にセオドールが悪戯を思いついた少年の様にニヤニヤしながらアークに並び立つと、突然アークの肩を抱き寄せながら、通達に自身の左手薬指をかざして見せながら、この様な事を口にする
「んで、お互い姫さんに振り回された者同士、色々と姫さん関係の話をしていたら、気付いた時にはゴールインしてたってなっ!」
セオドールのこの言葉を耳にした者達が、一斉にセオドールの左手薬指を注視したところ、そこにはキラキラと輝く結婚指輪が存在しており、それと全く同じ物がセオドールに突然抱き寄せられた事で、恥ずかしさの余り顔を真っ赤にしたアークの左手薬指で輝いていたのであった……
「んん~?あれれ~?おっかしいな~?僕そんな事一言も聞いてない気がするぞ~?」
「あ?もしかして言い忘れてたか?だったら済まんっ!俺とアクセル、結婚したんだわっ!」
「ちょっとセオッ!?」
「如何やら巻き込まれちゃったみたいだね……」
そんな中、戦治郎が物凄く不思議そうな顔をしながらセオドールにそう尋ねたところ、セオドールは満面の笑顔を浮かべながら更なる爆弾発言を行い、直後にビスマルクが大慌てしながらセオドールに食って掛かり、アクセルは苦笑しながらそう呟く……。そんなアクセルの左手薬指にも結婚指輪がはめられており、ビスマルクの方は手袋の下にしっかりと指輪をはめていたのであった
このやり取りの後、2人に先を越されたと思った戦治郎が、思わず呆然としていると……
「提督……、大丈夫ですよ、提督には大和が付いていますから……♪」
その傍らで、大和が頬をほんのりと赤く染め、熱のこもった視線を戦治郎に向け、恥じらう様な仕種をしながらそう囁いていたのであった
「さて、これで面子は揃いましたな……、では……」
「ああ、ちょっち待った、実はまだ来てない人……?達がいるんですわ、なのでもうちょっちだけ待ってもらえません?」
アメリカ、ドイツ、イギリス、そして大日本帝国海軍と陸軍のトップが揃った事を確認した元帥が、彼等を会議室に案内しようとしたところで、不意に戦治郎が待ったをかける。そしてその直後、日本海軍の者達が持つ通信機に、通信指令室からこの様な通信が入るのであった
『現在、所属不明の輸送船がこちらに向かっています、元帥達は安全なところに避難をお願いします。そしてこの通信を聞く艦娘達は、至急警戒態勢に入って下さい。繰り返します……』
「如何やらそういう訳にはいかなくなったようだな……、済まんが我々は……」
通信を聞いた元帥が、戦治郎の方へ向き直ってそう口にしたところで……
「ああ、来た来た!あれが待ち人その1、深海棲艦穏健派連合の代表の方が乗ってる輸送船です」
戦治郎はこの様に返しながら輸送船に向かって手を振り、甲板にいた黒いローブを羽織った人影は、それに気付くと被っていたフードを外して戦治郎に向かって手を振り返すのであった。それを見た元帥や日本海軍の上層部の者達は、フードの下から現れた顔……、戦艦棲姫の顔を見るなり思わず驚愕し、硬直してしまうのであった……
「待たせてごめんよー!ちょっと荷物の搬入に手間取ってしまったんだー!」
そんな中、問題の戦艦棲姫……、深海棲艦穏健派連合の代表であるリチャード・マーティンは、暢気にそう叫びながら戦治郎達に向かって手を振り続けるのであった……