元帥達がリチャードの姿を見て愕然とする中、戦治郎達長門屋のメンツや横須賀の主力艦隊の面々が、元帥達そっちのけでリチャードが乗る輸送船の誘導を手際良く行い、輸送船が無事横須賀鎮守府に入港すると、リチャードはフードで顔を隠したローブ姿の人物を伴って、それはそれは優雅な動作でタラップを降り、戦治郎達の前に立つと……
「久しぶり……、と言う程でもないかな?」
「ホノルルの時に会ってますからね~……」
リチャードはそう言って戦治郎に握手を求める様に手を差し伸べ、戦治郎は苦笑しながらその手を取ると思わずこの様に返答するのであった
「戦治郎君、この戦艦棲姫は……?」
「えっと、この方が先程俺が言っていた、深海棲艦穏健派連合のトップを務める方で……」
「リチャード・マーティンと申します、どうぞお見知りおきを」
その様子を見ていた元帥が、我に返るなり戦治郎にリチャードの事について質問し、その質問に戦治郎が答えようとしたところで、戦治郎のセリフに被せる様にしてリチャードが笑顔で自己紹介を行うのであった
その後、リチャードは元帥や日本海軍の上層部の者達1人1人に握手を求め、それが終わったところで自身の傍に佇むローブ姿の人物の紹介に移る
「さて、僕の事はこれくらいにしておいて、彼女の事も紹介しておこうと思う。さあスイ、フードを外して」
「はい……、では……、ふぅ……、えっと……、先程紹介に与りました、リチャードの妻にして元深海棲艦指導者のスウと申します……」
リチャードの言葉に従い、ローブ姿の人物……、リチャードのこの世界での妻であるスウは、ローブのフードを外すと自己紹介を行い、それを耳にした元帥と日本海軍の上層部、更にはアクセル達も思わず驚愕するのであった……
「おい……、今深海棲艦の指導者って聞こえた気がするんだが……?」
「深海棲艦の指導者は、リコリスじゃなかったのか……?」
スウの言葉を聞いて困惑するセオドールとアクセルが、この様な言葉を口にし……
「貴様が……、祖国を……、私達のアメリカ合衆国を……」
それに続く様にして、ジョシュアがスウに鋭い視線を向け、歯軋りした後怒りを隠そうともせず、この様な言葉を呟くのであった……
「おっと、今の彼女は穏健派の純正深海棲艦の指導者であって、深海棲艦全体の指導者をやっていたのは昔の事なんだ。っと言っても恐らく納得出来ない人がいると思うから、詳細は話し合いの時に、ね?」
その後、ジョシュアの視線を受けて怯え始めたスウを見たリチャードが、その間に割って入るとこの様な事を口にして、何とかこの場を収める事に成功するのであった
尚、このやり取りを遠巻きに見ていた戦治郎と長門は……
「今の世界情勢について話すにあたって、どうしてもスウさんの話は聞いておいてもらいたいところだからな~……、こればっかりはシカタナイネ……」
「まあ、彼女に関してはリチャードさんに任せよう、彼ならきっと上手くやってくれるだろうからな……」
まるで内緒話をするかの様に、コソコソとこの様な会話を交わしていたのであった
それからすぐ、何とか落ち着きを取り戻した元帥が面子が揃った事だからと、再び来賓の皆様を会議室に案内しようとするのだが……
「ま~った待った待ったっ!今日此処に来る予定なのは、実はリチャードさん達だけじゃないんですよっ!ねっ!?剣もっさんっ?!」
「ぬ……?あぁ、そう言えばそうだったな……」
ここで再び戦治郎が待ったをかけ、戦治郎に話を振られた剣持は一瞬キョトンとするのだが、何かを思い出したのか僅かに苦笑しながらこの様に返答するのであった
と、その直後である、突然戦治郎の背後の空間が歪み始め、やがてそこにポッカリと大きな穴が開くと、その中から数人の男女が姿を現す……
その集団の先頭を歩くのは、スーツフェチの方なら思わず見入ってしまう程立派なスーツを着こなし、彫りの深い顔に切れ長の目、髪型はオールバックでまとめた初老ほどの男性、その傍には如何にも淑女然とした女性と、険しい表情で周囲を警戒する青年くらいの男性が控えており、女性の手には水色の髪を左右で団子状に纏めた少女の手が握られていたのであった……
更にその後、先程空間に開いた穴の隣に更に穴が開き、そこからはこれまたスーツ姿の女性を先頭にして計3名の男女が姿を現し、その場を騒然とさせるのであった……
「な、何なんだこの者達は……っ!?」
突然の出来事に動揺する元帥が、思わずそう言い放ったその時だ
「ち、父上っ!?それに母上にオトゥームにクティーラまでっ!!?」
事情を聞かされていなかったゾアが、驚愕しながらこの様な言葉を口にし……
「タニさんにヴォルヴァドスに~……、誰だこいつ?」
後から現れた3名を目にしたシゲが、この様な事を口にして不思議そうな表情を浮かべるのであった
「何、少々翔の食事が恋しくなってな、私達はそれを食べに来たのが主な目的だ。それで、丁度この日に戦治郎達が何やら世界の現状に関する話し合いをすると言う事だったから、食事の代金代わりに神話生物から見た世界情勢について、私直々に教えてやろうと思ったのだ」
そして驚愕するゾアに対して、今は初老の男性の姿をしているクトゥルフが、戦治郎に挨拶をした後にこの様に返答したところで、淑女然とした女性の姿をしたイダー=ヤアーとクティーラがクスクスと笑いだし、その光景を青年の姿をした護衛役のオトゥームが苦笑しながら眺めていた。イダー=ヤアー達がこの様な反応をしたのは、もう1つ目的であるゾアの様子を見に来た事を、クトゥルフが恥ずかしがって伏せたからだったりする
「私達の方はヴォルヴァドスを剣持に預けに来たついでに、こいつの紹介をしておこうと思ってな。っと言う訳でバステト、前へ」
「はいニャッ!」
クトゥルフの言葉を聞いてこの場が更に騒然とする中、後から現れたクタニドがそう言うと、猫耳を生やした女性が元気一杯に返事をした後、クタニドの前に出て自己紹介を始めるのであった
「私は旧神バステトニャッ!ヴォル君が大日本帝国軍の憲兵になるって事で、代わりに私がクタニドさんの補佐を務める事になったんだニャッ!」
「こいつには、こいつの眷属であるネコ達を使って、桂島の提督などの様な怪しい連中を監視してもらう事になっているんだ。その関係で、こいつが眷属のネコ達を通してお前達にコンタクトを取る可能性があると言う事で、こうして紹介する事にしたんだ。そう言う訳で、よろしくしてやってくれ」
「皆さんっ!どうぞよろしくお願いしますニャッ!」
バステトが自己紹介を終えたところで、クタニドが彼女を戦治郎達に紹介する事になった経緯を話し、そのすぐ後にバステトはそう言って深々とお辞儀するのであった
「それ、めっちゃ助かる奴じゃないですかーっ!クタニドさんマジ感謝っ!!そしてバステトだっけか?こちらこそよろしくなっ!!」
クタニドとバステトの話を聞いた戦治郎は、この様に返事をするとバステトに手を差し伸べて握手を求め、それに応える様にして戦治郎の手を掴んだバステトは、戦治郎に向けて満面の笑みを浮かべるのであった
「戦治郎君……、まさかとは思うが……」
この状況には流石の元帥も動揺し、恐る恐ると言った様子で戦治郎に質問をすると……
「ええ、この方々が最後の待ち人?待ち神?で……」
「海底に存在する都市、ルルイエを統治する旧支配者のクトゥルフだ」
「私は旧神のリーダーを務めているクタニドと言う者だ、因みに私も話し合いに参加するつもりなので、その時はよろしく頼むな」
元帥の言葉に反応した戦治郎が、クトゥルフ達の事を紹介をしようとすると、クトゥルフとクタニドは戦治郎のセリフに割って入る様にして自己紹介を行うのであった
こうしてようやく会合に参加する面子が全員揃い、戦治郎達は想像以上の出来事が発生し、頭の処理が追い付かなくなって呆然とする元帥と日本海軍の上層部を連れて、会議室へと向かって歩き出すのであった
因みにクトゥルフ達を目の当たりにしたアクセル達だが、事前に雑談会の時にクトゥルフ達がどんな存在であるかの説明を受けていた事や、クトゥルフ達が会合に参加する事を知っていた事、そしてクトゥルフ達が人の姿になっていた事も有って、元帥や日本海軍上層部程動揺する事はなかったのだとか……