※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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クティーラと間宮

突如ロシアに出現し、たった1人だけでロシア東部を焦土に変えてしまったクロエとの戦闘の後、あの場で倒し損ねたクロエを倒し損ねたクトゥルフは、クロエの再出現を大変危惧したのであった

 

もし傷が癒えたクロエがこの世界に再び姿を現し、まるで天使の様なその柔らかい笑みを浮かべながら、ロシアの時以上の暴虐の限りを尽くした場合、その時は間違いなくこれまでとは比べ物にならない被害が出る事であろう……

 

そう考えたクトゥルフは、ゾス三神とは年が離れた幼くか弱い3柱の愛娘達を、この戦いに巻き込まない様にする為に木星に避難させる事を思い付き、早速それを実行するのであった

 

しかし、そんな親心に気付く事が出来なかったお転婆姫のクティーラは、退屈そうな避難生活なんてまっぴらごめんと言わんばかりに、護衛のディープ・ワンの目を盗んでルルイエから見事脱走してみせるのであった

 

その後クティーラは追手に追いつかれない様にする為に、目的地も定めず只々がむしゃらに移動し、追手が来ていない事を確認するなり急に襲って来た疲労を癒す為に、偶々近くにあった日本にこっそりと上陸するのであった

 

そうして無事日本に上陸したクティーラは、取り敢えず人の集まる場所へ向かってみたのだが、そこで余りの人の多さに度肝を抜かれ、それと同時に1柱でいる事に不安を覚え狼狽え始めるのであった……

 

そう、ここに来て彼女は思い出してしまったのである、以前母であるイダー=ヤアーや父であるクトゥルフの言葉を……、この世界にはクトゥルフやその眷属であるダゴンを崇拝する、ダゴン秘密教団なる宗教団体が存在し、細かい事はどうも忘れてしまったが、如何やら彼等は何らかの理由でクティーラの事を狙っていると言う事を……

 

もしこの場所にこれだけの人間がいるなら、その中に少なからずその教団に所属する者がいるかもしれない……、もしかしたら自分は自分の存在に気付いたそいつらに掴まってしまい、何か酷い事をされてしまうかもしれない……

 

押し寄せる不安のせいで彼女の思考はネガティブなものになってしまい、その思考が彼女に更なる不安を与え、それに耐えられなくなってしまったクティーラは、遂に涙ぐんで助けを求める様に、辺りに視線を巡らせ始めるのであった……

 

そんな時である

 

「どうしたの?お母さんとはぐれたの?」

 

不意に見知らぬ女性がクティーラに話し掛け、声に反応したクティーラは反射的に声がする方へと視線を向けると、そこにはクティーラと視線を合わせる為に屈みこみ、彼女に優しい笑みを見せる女性……、給糧艦の艦娘になる前の間宮の姿があったのであった

 

その時クティーラは、間宮の事を教団の関係者だと疑い、何とかこの場から逃げ出そうと頭の中で考えはするものの、恐怖で竦み上がってしまった彼女の身体は、彼女が思った通りには動いてはくれず、クティーラは間宮に怯えながら只々その場に立ち尽くしてしまうのであった

 

さて、こんな調子で間宮を警戒するクティーラの姿を見た間宮は、このままでは彼女から事情を聞く事も、彼女を警察に届ける事も出来ないと思い、何とかして彼女の警戒心を解かないといけないと考えながら、やや困った表情を浮かべながら辺りを見回してみたところ、ある物が偶然彼女の目に留まり、何かを思いついた間宮はそこである物を2つほど購入し、間宮に怯えるクティーラに向かってその片方を差し出すのであった

 

間宮が差し出して来る物を初めて見たクティーラは、当然の事ながらソレを警戒して受け取ろうとしなかったのだが……

 

「これに変な物は入っていないから、安心して食べていいよ」

 

そう言って笑顔を向ける間宮を見たクティーラは、恐る恐ると言った様子でそれを受け取る。そしてそれをしばらく眺めた後、それを渡して来た間宮の方へ視線を向けたところ、そこにはクティーラが手にしたている物と全く同じ物を、美味しそうに食べる間宮の姿が映り、クティーラの視線に気が付いた間宮が再びクティーラに笑顔を向けたところ、クティーラは間宮から視線を外して、間宮の見様見真似でそれを食べ始めるのであった

 

それは口の中に含むとひんやりと冷たく、それが口の中で溶けると口いっぱいに甘味が広がっていき、クティーラは生まれて初めて経験するこの感覚と、その美味しさから来る幸福感に驚いた後……

 

「ねぇっ!これなぁにっ?!」

 

今まで間宮の事を警戒していた事がまるで嘘だったかの様に、クティーラは間宮にキラキラと輝かせた双眸を向けながら、この手にした物について尋ね……

 

「それはアイスクリームって言うお菓子なの、っと、早く食べないと溶けちゃうよ?」

 

クティーラに質問された間宮は、相変わらず笑顔のままクティーラにそう返答すると、間宮に指摘された事でアイスが溶け始めている事に気付いたクティーラは、慌てた様子でアイスクリームを再び食べ始めるのであった

 

こうしてクティーラが間宮に対して警戒を解いたところで、間宮はクティーラに名前と彼女の身に何があったのかを尋ね、クティーラは流石に本名を名乗るのは不味いと思うと、咄嗟に思いついたクリスと言う偽名を名乗った後、細かい部分は伏せながら間宮に自身の事情を、親に反発して家出して来た事を告げたのであった……

 

その後、間宮はクティーラを警察に届けようとしたのだが、それに対してクティーラが猛反発した為、彼女はクティーラを警察に届ける事を諦め、取り敢えず彼女をしばらくの間預かる事にしたのであった

 

もしここで間宮がクティーラの事を無視していたら、恐らく彼女が現在住んでいる横須賀は、最近になって増加して来た犯罪者に襲われたクティーラの反撃によって、とんでもない被害が出ていたかもしれない……

 

こうして間宮のところで世話になる事になったクティーラは、その日の晩に出された間宮特製カレーに感動し、食後に出て来た間宮の手作りアイスを見て大いに驚き、そのアイスが昼間に食べた物より格段に美味しかった事で更に驚くと同時に、間宮に対して敬意を抱き始めるのであった

 

その後、クティーラは間宮から色々な事を教わった、ルルイエにいた頃には知る事も無かった人間の事、人を思いやりお互いに助け合う事の大切さなど、本当に大切な事を数多く間宮の言動から学び、それは今のクティーラの性格の土台となる程に、彼女に影響を与えたのであった

 

そんな2人を引き裂く出来事が、遂に起こってしまう……。そう、オリジナルコアとクロエが作り出した、能力を持った転生個体の出現である……

 

これまでの深海棲艦より強力な転生個体の出現により、人間だけでなく深海棲艦を含めた世界中が大混乱に陥り、今まで以上に戦争による被害が大きくなってしまったのである……

 

これが切っ掛けとなり、適性はあったものの艦娘にはなっていなかった間宮は、艦娘になる事について考え始める様になるのであった……

 

自分が艦娘になれば、微力ながらも手助けが出来る様になるかもしれない……、クティーラの事を守れるかもしれない……、しかし自分が艦娘になった場合、クティーラと離れ離れになってしまうのではないか……?この様な葛藤が、毎日の様に間宮の心の中で繰り広げられる事となるのであった……

 

そんな間宮の様子を察したクティーラは、自分が間宮の枷になる訳にはいかない、そう考えるとルルイエに戻る決意を固め、ある日の夜、クティーラは間宮に対しての感謝の手紙を残し、間宮には何も告げずに2人で暮らしていた間宮の家を後にしたのであった……

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