「皆さんこっちです! 急いで下さいっ!」
陽炎が声を張り上げながらドイツ艦娘の皆さんを先導します、不知火は誰かがはぐれないように殿を務めています、もし誰か1人でも逸れてしまうと今回の作戦の成否に大きく関わってくるからです
海上訓練をやっていたところを深海棲艦に襲撃された不知火達ですが、神通先生のおかげでドイツへと何とか戻る事が出来ました、不知火と陽炎はその事をすぐにドイツ海軍に連絡したのです
ドイツ海軍はすぐに艦隊を編成して不知火達が襲撃された現場へと急行してくれましたが、その時には全てが終わっていました……、艦娘候補生だった不知火の仲間達の姿も、そして神通先生の姿も無くなっていました……
ドイツ海軍はこの件について生き残った不知火達に謝罪し日本へ戻す手配を始めましたが、不知火と陽炎はそれを拒否しました、不知火と陽炎はドイツへ逃げる時に数人の仲間達が攫われていく姿を目撃していたのです
仲間達を攫った深海棲艦が向かった方角も覚えていたので、ドイツ海軍に救助部隊に組み込んでもらい艦隊を先導させて欲しいと無理は承知で申し出たのです
戦闘に参加しない事を条件に参加を許可してもらい、ビスマルクさんを旗艦にレーベさん、マックスさん、最近になって配備されたというグラーフさんに陽炎と不知火の6人編成で仲間達を攫ったであろう深海棲艦達の拠点に向かう事になりました
ドイツ海軍の司令からは攫われた仲間達の救助を優先する為少数精鋭で潜入してもらうと言われましたが、総司令の秘書官をやっているというビスマルクさん曰くドイツにはまだ拠点を落とすだけの戦力が揃っていない事を道中で教えてもらいました、新人のグラーフさんを連れてきているのもそのあたりの都合との事……
それを聞いて不安になっているとビスマルクさんがこっそりと教えてくれました
「これはまだ私とアクs……総司令官しか知らない事だけど、運が良ければ非常に強力な援軍が来てくれるかもしれないから不安になる必要はないわ」
非常に強力な援軍というのも気にはなりますが、それよりも不知火達は仲間の安否の方が重要だったのでビスマルクさんの言葉をそんなに重要視していませんでした、来てくれるかもしれないという可能性があるだけで来ないかもしれませんからね……
攫われた皆……どうか無事でいて下さい……
「ああもう! 全っ然当たらないぃ! 光太郎さん、もうちょっと手加減してください、よっとっ!!!」
「おっと危ない危ない、手加減は十分してると思うんだけどね、っとほら!」
戦治郎から言われた通り俺は今天津風ちゃんと演習をしている、天津風ちゃんが砲撃してきたのを難なく回避してお返しとばかりに自分の右腕の砲を天津風ちゃんに向けて撃つ
「きゃあっ! ってしょっぱ! 口の中に入っちゃった……」
俺の砲撃は天津風ちゃんに直撃し彼女はずぶ濡れになってしまう、海水が口の中に入ったのだろうかペッペッと何かを吐き出している
俺が今使っているこの砲は正に俺の希望通りと言っても過言ではない仕上がりになっている、流石戦治郎達と言ったところだろうか
この砲の最大の特徴は何と言っても弾薬を一切消費しない事だ、ならば何を撃ち出したかと言うと海水である、この砲の後ろに給水ポンプが付けてあり海水を吸い上げて砲から発射するのである、発射方式も塊にして発射したり消防車のように放水する事も出来る、放水の方の威力は出力85%あたりにするとウォーターカッターへと変貌すると戦治郎から説明を受けた、なんてものを仕上げてるんだ……戦闘で使えるからいいんだけど……
砲だけでなく脚部の艤装も俺専用のものを作ってくれたようで、デザインは皆と同じ軍用ブーツが基になっているが内容は速度極振りにしているそうで個人的にはとてもありがたい仕様だ、これなら海上での事故などを感知した際すぐに現場に急行出来るからな、人命救助に未練を残したままハイパーレスキューを辞めてしまったから、こちらの世界でまた人命救助が出来るのは非常に嬉しい限りだ
尚、戦治郎がそれらの装備を俺に渡した後に、穏やかな笑顔を浮かべながら差し出してきた額のあたりに赤い十字のマークが付いたピポヘルとそれを操作する為の小型のリモコンは、笑顔で受け取った後戦治郎にそのピポヘルをそっと被せてリモコンを操作して起動するとランプは赤い光を放ちながらクルクルと回りだしピーポーピーポーと聞き慣れたサイレンを吐き出し始めた、それを確認したところで1度ゆっくりと頷いてから戦治郎の手を取りリモコンをゆっくりと握らせて、その拳を2度ポンポンと優しく叩いて返品した、あれはいらないからね……
さて、俺の装備語りはこのあたりにして天津風ちゃんとの演習だけど、先程言った通り手加減はしているがさっきの砲撃は直撃したら軽く吹き飛ばすくらいの威力は出してたはずだがあの子はどうやら耐える事が出来たようだ、機動力を活かして不規則に動く俺に必死に喰らい付いて砲撃してくる、回避もさっきのは当たってしまったがそれまでは被弾0だった事を考えると悪くないはずだ
「ほらほら、ボーっとしてたらやられちゃう、ぞっと!」
「それはこっちのセリフっと! 喰らいなさい!」
隙だらけだと思って砲撃するもしっかりと反応して回避しながら砲撃してくる天津風ちゃん、その口元がニヤリと笑っているが何かやったのか?そう思っていたら俺の元に魚雷が迫って来ていた、いつの間に撃ってたんだあの子!?
「うぉいしょ!!!あっぶねぇ!!!」
俺はそれに気付くと右腕の砲を足元に向け結構な出力で放水し高く飛び上がる
「ちょ!? それインチキ!!!」
そう叫ぶ天津風ちゃんを無視して俺は天津風ちゃんの背後に着水しそのままホールドアップ、少々大人げないがこの演習は俺の勝ちだ
「ああ~、もうちょっとだったのに~……」
あれは本当に惜しかった、相手が俺達の誰かじゃなかったら間違いなくさっきのは突き刺さって沈める事が出来ただろう、何時の間に魚雷を撃ったのか聞いてみれば口の中の海水を吐き出しながら発射準備を済ませ、その後俺が砲撃したタイミングに合わせて発射してそれを悟らせないように回避しながら砲撃する事で意識を天津風ちゃんの方に向けさせていたとの事、中々どうして……、この子やるじゃないか……
「さて、演習はこのくらいにしてちょっと休憩してからr「天津風ぇぇぇっ!!!」えっ?」
叫び声が聞こえてそちらの方を見てみれば眼前に迫る砲弾、あっこれ避けられないな……
「光太郎さんっ?!」
その砲弾は俺の顔面にクリーンヒット……したんだが全然痛くないです、はい……
「俺は全然大丈夫、この砲撃痛くもかゆくもなかったから……、それよりもこれを誰が撃ったかが問題だね……」
威力こそなかったものの煙はしっかり出ていた為、それを手でパタパタと扇いで散らした後に砲弾が飛んできた方角を見ると凄いスピードでこちらに向かってくる艦娘の姿が……、あれは……
「えっ陽炎!? 何であの娘がここに向かって来てるの?!」
どうやら天津風ちゃんの知り合い……、って事は施設の子か……
「天津風から離れろぉぉぉっ!!!」
そう叫びながら猛スピードで突っ込んで来る陽炎ちゃん、ああ、今の状態だと俺が天津風ちゃんにトドメ刺そうとしてる様にしか見えないもんな……、取り敢えず言われた通りにホールドアップを解除して天津風ちゃんからそれなりに距離を取る、あっ何か陽炎ちゃんが驚いてる
「えっ!? ちょ?! えっ!??」
そんな事言いながら天津風ちゃんと俺との間に滑りこんで来る陽炎ちゃん、さっきより混乱してる様な気がする
「えっと、取り敢えず天津風!あいつに襲われてたみたいだけど大丈夫?!」
「え? あっうん……」
陽炎ちゃんが気を取り直して天津風ちゃんの無事を確認しているが、当の天津風ちゃんは困惑しながら返事していた
「自力でここまで脱出したけど追手が追い付いて来た、そんなところね! 相手はすっごく強そうだけど大丈夫! 私と不知火がドイツの艦隊を連れて来たからきっと勝てるはずよっ!」
「「え?」」
陽炎ちゃんの発言を聞いて俺と天津風ちゃんは同時に陽炎ちゃんが来た方角を見てみれば、本当にドイツの艦隊が迫って来ていた、それを確認した直後今度は2人同時に通がいる方を見る、通は俺達に向かってサムズアップしているから多分戦治郎に連絡が行っていると判断してよさそうだ、ところで何で輝は剛さんにプロレス技の片翼の天使を掛けられて砂浜で犬神家しているのだろうか……?
「天津風、何処見てるの……、ってうげっ!あっちにもいっぱいいるじゃない!? それに艦娘が何人かいるm……ってえええっ!!!」
天津風ちゃんに釣られて陽炎ちゃんが通のいる方を見た後急に驚いた様に叫び出す、どうしたのだろうか?
「神通先生が何でここにいるのっ!? て言うか何で軽巡棲姫と寄り添ってるのよあの人っ?!」
ああ、そこ……、あの2人の事……、あの2人が俺達の中で公認カップルになってるとか言ったらどうなるだろう……
「陽炎! 危険だから先行しないでって言ったでしょう!」
そうこうしてたらドイツの艦隊来ちゃった……、あれはビスマルクか……
「こんにちは、遠路遥々お疲れ様です……、って日本語通じるかな?」
「……ええ、他の子達は兎も角私は分かるわ、その反応からして貴方達は……」
「お察しの通りです、あいつは既に呼んでるみたいなのでもう少ししたらこっちに来ると思います、それまでどうします?」
日本語で挨拶したら流暢な日本語で返してくれた、そしてこっちの事も察してくれたので後は陽炎ちゃんの方をどうにかするだけか……
「あ、あの……ビスマルクさん……?」
あ、不知火ちゃんだ、そういえば陽炎ちゃんが不知火ちゃんと一緒にドイツ艦隊呼んだって言ってたっけか、だったらこの場にいてもおかしくはないな
「どうしたの不知火?」
「何故この深海棲艦と平然と会話しているんですか?それも日本語で……」
「さっき非常に強力な援軍がいるって話をしたじゃない? それは彼らの事よ」
不知火ちゃんはオロオロしたり驚いたりと忙しそうだなぁ……、と言うかそんな話していたのか……、非常に強力な援軍ねぇ……うん、俺は兎も角戦治郎とか空とかヤバイくらい強いから納得出来てしまう
「お~いビス子や~い、一体何事ぞ~?」
そんな事考えていたら丁度戦治郎が到着した、後の事はあいつに任せて取り敢えず混乱している陽炎ちゃんを落ち着かせるとしますかね、必死に抑えている天津風ちゃんも涙目になっちゃってる事だし……