長月達が突如佐世保鎮守府の中庭の花壇に出現し、文月にお世話されてた事で文月に絶賛心酔中の旧支配者ヴルトゥームと初めて会話した日の翌日、文月は日課の水やりとある事の為に中庭の花壇にやって来る
如何やら文月と長月達は今日は休みの様で、文月はこの休みを利用して普段はやらないであろう花壇への追肥を行おうとしている様で、その日の文月はやけに張り切っている様であった
因みに追肥に使う肥料についてだが、如何やら佐世保鎮守府花壇再生作戦の後、兼継がこの様な事態に二度と陥らない様にと、業者に依頼して花壇に使う肥料を定期購入する様にした上に、この作戦を実行する切っ掛けとなった文月と一部の所属艦娘達に、正しい追肥の仕方を専門家から指導してもらっていたりしているのだとか……
正直なところ、花壇の世話など業者でも雇ってやってもらえばいいとか、そもそも花壇に金を使うくらいならその金で戦力強化した方がいいのでは?と言う意見もあるだろうが、艦娘達に花壇の世話をさせようと言い出したのは、他でもないこの佐世保鎮守府の提督である兼続なのである
彼は小さい頃から自分の事は可能であるならば自分でやるを地で行く兄、戦治郎の背中を見て育って来たのである。兼継はそんな兄の様子からそれがどれ程自分の為になるかを知っていた為、所属艦娘達が艦娘を辞めた後の事を考え、彼女達に様々な経験をさせようと思ってその様な事を言ったのである
さて話を戻そう、文月が花壇の花達の世話をしようと張り切っていたその時である
『文月……、文月……』
「……?」
『文月……、花壇の方を向いてごらん……』
突然文月の頭の中に直接誰かが話し掛けて来て、それを聞いた文月は声の主を探す為にキョロキョロと周囲を見回す。そして周囲に誰もいない事が判明し、文月が思わず不思議そうに小首を傾げていると再び文月の頭の中に声が響き渡り、文月はその声に従って花壇の方を向いたところ、何と文月が花壇の方を向いたタイミングと合わせた様に、花壇の中央に生えた巨大植物の蕾が開き始めたではないか……っ!?
「ほわぁ~……」
その光景が余りにも幻想的で美しく、文月が巨大植物の開花に思わず感嘆の声を上げながら見惚れていると、巨大植物の開花が終わり蕾の中から何処かで見た事がある様な何かが姿を現すのであった
恐らく、この場に皐月や水無月がいたならば、それを見た瞬間『ロズレイド』と叫んでいた事であろう……
「ありがとう文月、君のおかげで私は無事に花を咲かせる事が出来たよ」
「花を咲かせる……?もしかして、貴方はこのおっきなお花さんなの~?」
「そうだよ文月、私の名前はヴルトゥーム、君がこの花壇で見つけ、大切に育ててくれたその大きな花そのものなんだ」
「ほわぁ~!凄い凄~い!お花さんが喋ってる~!」
「これも全部、文月が頑張って私のお世話をしてくれたからなんだよ。本当にありがとう、文月……」
蕾の中から出て来たロズレイド……の姿をしたヴルトゥームが、恭しく地面に片膝を突きながら文月にお礼を述べると、文月はヴルトゥームにこの様な質問を投げかけ、その返事を耳にした文月は興奮した様子でこの様な言葉を口にし、それを聞いたヴルトゥームは、改めて文月に感謝の言葉を贈るのであった
さて、ここで不思議に思うところがあるだろう……、何故ヴルトゥームはロズレイドの姿をしているのだろうか……?
その答えは、昨日ヴルトゥームが長月達と行った話し合いの中にあった
昨日の話し合いの結果、ヴルトゥームは文月に正体を明かす事を決意したのである。この話し合いでヴルトゥームの本心を知り、ヴルトゥームに悪意が無い事を知った長月達が、ならばせめて文月に礼くらいは言えと言った感じで、彼の後押しをしたからである
ただ、そのままの姿では文月が危ないと言う事で、ヴルトゥームは長月の勧めで皐月の記憶を魔法で読み、その中からポケモンのロズレイドに関する記憶に触れ、自身の花弁をロズレイドに変化させる事が出来る様にしたのであった
尚、予定ではヴルトゥームが文月とコンタクトを取った後、機会を見て長月達が戦治郎達からもらった通信機で文月を呼び出し、文月がいなくなったところでロズレイドの姿をした花弁が本体を取り込み、ヴルトゥームは今後ロズレイドの姿で活動する事になっていたりする
因みに、何故最初から本体ごとロズレイドにならないのかと言うと……
「その方がドラマチックだろう?」
とまあこんな調子でヴルトゥームが、美しい演出の為にこの様な手間がかかる方法でいく方向で、話を押し通したからなのである……
その後、予定通り長月達が文月を自室に呼び出し、その間にヴルトゥームが本体を取り込んで完全にロズレイド化すると、すぐさま文月が戻って来るなりヴルトゥームの腕を掴み、長月達にもヴルトゥームを紹介すると言い放ってヴルトゥームを引っ張って自室に帰還、ヴルトゥームは長月達とは初対面である様に振舞いながら、長月達に簡単に自己紹介を行うのであった
そうしてヴルトゥームの自己紹介が終わると……
「この事を司令官達にも教えてあげなくちゃ~!」
文月はそう言って再びヴルトゥームの腕を掴んで自室を飛び出し、今度は兼継や金剛達がいる執務室へ向かい、ヴルトゥームに兼続達意に対して挨拶をさせたところ、兼続達はその信じ難い事実に思わず呆然としてしまうのであった……
因みに、クトゥルフ神話に精通した翔の友人であった兼継は、ヴルトゥームと言う単語に反応し、内心でヴルトゥームを激しく警戒するのだが、その事は旧支配者であるヴルトゥームにはお見通しだった模様……
その後、文月達を追って来た長月達が執務室に現れ、彼が本物のヴルトゥームである事や、彼に悪意が無いどころか文月に心酔している事を兼続達に伝えたところ……
「長月達が言っている事は本当なのか……?」
兼継が恐る恐ると言った様子で、ヴルトゥームにそう尋ね……
「ああ、長月達が言っている事は本当だ。私はまごう事無き本物の旧支配者のヴルトゥーム……、いや、今の私は文月とその仲間達を守る薔薇の騎士ヴルトゥームと名乗っておこうではないか」
それを聞いたヴルトゥームは、自信満々にそう答えるのであった
その後、ヴルトゥームの言葉が本心から来るものであると判断した兼継は、彼の言葉を信じて彼を佐世保鎮守府に迎え入れる事にする
だがここで金剛と赤城が待ったをかける、如何やら彼女達はまだヴルトゥームの事が信用出来ない様だったのである……
それを聞いたヴルトゥームは、ならば行動でそれが本心である事を証明すると言い出し、執務室にいたメンバーは急遽ヴルトゥームを連れて出撃する事となってしまうのであった……
そうして出撃した赤城と金剛は、ヴルトゥームの戦いぶりを見て彼の実力を思い知ると同時に、彼の言葉に嘘偽りが無かった事を知ると、素直にヴルトゥームに対して謝罪を入れるのであった
この出撃の中でヴルトゥームは、深海棲艦との戦闘になった直後に花粉を飛ばして深海棲艦達に幻覚を見せて同士討ちを行わせ、それより前にこちらに向かって撃ち出された砲弾を全て両腕から射出する種子や花弁で撃ち落として赤城達を守り、相手が同士討ちで弱ったと見るなりすぐさま突撃を仕掛け、両腕から発射した蔓を深海棲艦達に突き刺すと、蛋白質などと化合するとヴルトゥームの養分になる毒を蔓を通して深海棲艦達に流し込むと同時に、それによって出来た養分を吸い取ってあっという間に深海棲艦達をまるでミイラの様にしてしまったのである
更にヴルトゥームはそこから追撃を仕掛け、伸ばした蔓をある程度まで戻してから束ね、蔓で出来た剣を両腕に携えるなりミイラの様になった深海棲艦達を、これでもかと言うくらいに切り刻んで見事相手を全て沈めて見せたのである
これだけでも凄まじいのだが、驚くべき事にこれらの行動は全て敵発見から終了まで、5分とかかっていなかったのである……。これには歴戦の猛者である赤城と金剛も驚愕した様である……
こうしてヴルトゥームは佐世保鎮守府の者達に受け入れられ、鎮守府内の植物達を通して鎮守府内に異常が無いかを監視する一方で、持ち前の科学技術で艦娘達の兵装の開発や艤装の強化を施したり、文月と共に出撃して襲い来る深海棲艦達を纏めて薙ぎ払うなどして戦闘面でも貢献し、佐世保鎮守府の守護神と言う地位を確立するのであった
また、ヴルトゥームが薔薇の花の様なポケモンであるロズレイドの姿をしている事と、ヴルトゥームの監視が行き渡る様に鎮守府の至る所に花が植えられている事から、佐世保鎮守府は後に『花の佐世保鎮守府』と呼ばれる事となるのであった
因みに、文月が戦治郎達によって作られた義肢でパワーアップした長月と皐月の事を羨ましく思っていた事を知ったヴルトゥームは、流石に文月に義肢を付ける訳にもいかないと言う事で、クトゥルフが横須賀鎮守府での会合中に配った出版版ネクロノミコンと同じ物をこっそりと文月に渡して魔法を使える様に仕立て上げ、密かに砲撃と魚雷と魔法で戦う『魔法艦娘文月』を誕生させていたりする……
尚、文月のマジックユーザーとしての実力は、真・魔道書を複数所有する翔には流石に敵わず、彼女は長門屋鎮守府が完成してからは、光太郎の様に人助けが出来る艦娘を目指しながら、翔に弟子入りしてマジックユーザーとしての腕を磨く様になるらしい……