さて、いよいよ提督になる為の戦いの1つである筆記試験が、教官の合図の下に始まった訳なのだが……
(あっ!これ横須賀ゼミでやった事ある問題だっ!)
戦治郎はそんなふざけた事を内心でほざきながら、スラスラとペンを走らせ答案用紙を埋めて行くのであった
戦治郎がこんなにも容易く試験問題に答えられるのは、偏に横須賀鎮守府での勉強が功を奏しているからに他ならないのである
現在、大日本帝国海軍の本拠地となっている横須賀鎮守府には、これまで行われて来た軍学入試の問題用紙が、それはもう大量に、そしてとても大切に資料室に保管してあるのである。戦治郎は元帥の勧めでこれらを用いて試験勉強を行って来たのである
最初にこの膨大な数の過去問を目にした戦治郎は、その問題の難しさと多様性に思わず眩暈を起こすのだが、大和の献身や燎と長門の激励で何とか持ち直し、只管ノートにペンを走らせたり、時には横須賀鎮守府の主力艦隊の指揮を執らせてもらって、問題の内容と実際の艦隊指揮に関する物事を照らし合わせてしっかり理解したりして、艦隊運用に関する知識を深めていったのだ
そんな過去問の中にあった資源や資材の管理に関する問題に関しては、自分の得意分野であると言わんばかりの勢いで、戦治郎はサクサクと問題を解いていたそうな……。まあ戦治郎は生前長門屋の経営をやっていた為、それに必要な知識を応用すればその手の問題が問題にならないのは当然の事である……
そうして横須賀鎮守府で知識を得た戦治郎は……
(っしゃっ!!終わったっ!!!)
この教室の中にいる受験者の誰よりも早く答案用紙の欄を埋め、書き漏らしや間違いが無いかを確認し終えるのであった
『お疲れさんだな、旦那』
(おう、ありがとうな鷲四郎。っと時間までまだまだ全然余裕あるし、時間来るまで俺の話し相手になってくんね?)
『了解了解、んで、何について話すんだ?』
その直後、緊急時に使うつもりで搭載して連れて来た鷲四郎が、戦治郎の頭の中に直接労いの言葉を掛け、それに反応した戦治郎はそう言って筆記試験が終わるまでの間、ずっと鷲四郎と他愛もない話をするのであった
この時、鷲四郎から空のところの猫達の様に自分と共に出撃し、連携をとって作戦行動が出来る艦載機を戦治郎に搭載して欲しいと言う要望があったのだが、艦載機の搭載数が少ない戦艦である戦治郎は、その回答を保留するのであった……
それからしばらく経ったところで、筆記試験終了を告げるチャイムが軍学校内に響き渡り、ある者はやり遂げた感に溢れた表情を浮かべ、ある者は未練がましく回収される答案用紙を睨み続けるのであった
「ん~……、あ~……」
「どうだった戦治郎、手応えはあったか?」
答案用紙を回収した教官が教室から出て行ったところで、戦治郎が身体を解す様に軽くストレッチをしていると、隣の席で試験を受けていた毅が試験の出来について尋ねて来る
「そりゃもうバッチシよっ!んで、お前の方は?」
「なんとかってとこだな……、正直不安なとこが幾つかあってな……」
「ふむ……、まあ何とかなるだろ、それより次だが……」
「ああ、あれか……、ったく、何でこんなモンまで試験の内容にあるんだよ……」
こうしてお互いの試験の出来を言い合った後、続く試験の内容について戦治郎が困惑しながら言及し、それを聞いた毅はゲンナリしながらこの様に答えるのであった
戦治郎達が言う次の試験とは、将棋とチェス、そして麻雀と言う3種類のボードゲームを受験者達で行い、将棋とチェスは5人抜き、麻雀は3回ほど1位になれば合格と言う試験の事である
ここで疑問に思うのは、何故麻雀が試験内容に入っているのかについてであろう……。将棋とチェスならまだ分かるが、何故麻雀なのか……
これについては受験者の勝負運の強さと、捨て牌から相手の待ち牌を正確に読み取り、相手が和がる事を阻止しながら自分の役を作ると言う戦略性を試す為の試験であると、筆記試験の前に教官から説明されているのだが……
「納得いかねぇ……」
「だよな~……」
その試験内容が不服なのか、毅は仏頂面になりながら不平を漏らし、戦治郎はゲンナリしながら毅の言葉に同調し、2人は筆記試験を受けた教室を出て、問題の試験が行われる事となっている場所へ移動し始めるのであった
そうして次の試験会場に着いた戦治郎達が、自分の受験票の番号が割り振られた席に着くと、この試験の担当であると思わしき教官から改めてこの試験の説明を受け、合図と共に試験を開始するのであった
さてこの試験、戦治郎は将棋とチェスでやや苦しい場面もあったもののストレートで5人抜きを達成し、麻雀に至っては最早蹂躙と言う言葉以外では言い表せない様な結果を叩き出して、この試験を突破して見せるのであった
正直なところ、戦治郎は生まれ持っての豪運のおかげで、これまで1度たりとも麻雀で負けた事が無いのである。実際、今回の試験でも戦治郎は常に親の状態で対局が始まり、延々と天和を出し続けて対戦相手を全員まとめてハコらせると言う事態に陥ったのである……
因みに、この通常では考えられない様な戦治郎の和了り方は、教官達や対戦相手からイカサマだと疑われるのだが、戦治郎が身の潔白を証明する為に教官に配牌から代打ちさせたところ、戦治郎の豪運が代打ちをしている教官にまで影響を及ぼし、対局は教官の親から始まり、教官は手牌を見るなり目を見開いて驚き、カンを宣言し嶺上牌を手にする度に呼吸を荒くし、震える手で最後の嶺上牌を取って牌を確認すると、それはそれはか細い声でツモを宣言しながら手牌を公開、直後に教官はショックで気絶して軍学校内にある医務室へと運ばれて行ったのであった
そんな教官が揃えた役は天和こそつかなかったものの、四暗刻単騎待ち、四槓子、字一色、大四喜の5倍役満であり、公開された教官の手牌を見た対戦相手達も一斉に泡を吹いてひっくり返り、教官同様医務室へと運ばれて行くのであった……
こうして戦治郎のイカサマ疑惑は晴れるのだが、それと同時に戦治郎は毅以外の受験者全員から『絶対に戦ってはいけないやべー奴』認定される事となり、戦治郎の最後の対局に参加する羽目になった受験者達は、皆死んだ魚の様な目をして麻雀卓を囲んでいたのであった……。そんな受験者達に対して、倒れた教官の代わりに戦治郎達の対局を監視していた教官は、憐れむ様な眼差しを送っていたそうだ……
尚、その関係で長門屋の面子で麻雀をやる際、豪運持ちの戦治郎は皆からハブられて麻雀に参加出来ない訳なのだが、まあこれは仕方が無いことなのだろう……
そんなこんなでこの試験を終えた戦治郎が、試験合格者の為に準備された待合室で時間になるまで鷲四郎と話していると、心底不思議そうな表情を浮かべた毅が姿を現し、そんな毅の様子を見た戦治郎が彼に対して何があったか尋ねてみたところ……
「いや……、何か将棋とチェスは相手がアホみたいなミス連発してくれたおかげで勝てて、麻雀に至っては妙に配牌がよくてな……、気付いたら合格出来てたわ……」
毅は一体自分の身に何があったか分からないと言った様子で、戦治郎の問いに対してこの様に返事をするのであった
如何やら戦治郎の豪運は、試験開始前に話をしていた毅にまで影響を及ぼした様である……
それからしばらくすると試験終了を知らせるチャイムが会場に響き渡り、それを耳にした戦治郎と毅は直後に待合室に姿を現した教官の指示に従い、軍学校側が準備した昼食をとる為に軍学校の敷地内にある食堂へ足を運ぶのであった
気絶した教官の手牌は
東東東東南南南西西西北北北白
先ず東で暗槓、それから嶺上牌で南、西、北を順に暗槓していき、最後は嶺上牌で白を揃えてフィニッシュ、5倍役満の出来上がりです
2021/04/14追記
大四喜はルールによってはダブル役満になる事もあるので、場合によってはこれは6倍役満になってしまいそうですね