E2削りで早波、E3でゴトランドが出てくれて本当に良かった……
午前中の試験が終わった戦治郎達が向かった食堂では、先程の試験に辛くも合格した者、目標の勝利数に至らず不合格になった者問わず、軍学校から受験者達に昼食としてカレーが振舞われていた
何でもこのカレーは、合格者には週1でカレーの日がやって来る海軍での生活に慣れてもらう一環として、不合格者には思い出作りの一環として振舞われている様で、食堂の中には不合格になった者達のすすり泣く声が時折響いていたのであった
「こりゃまたえげつねぇ真似してんな……、不合格の連中はこれが原因でカレー食えなくなるんじゃねぇか……?」
「親切心のつもりでやってんだろうけど、間違いなくこれは裏目に出てるだろうな~……」
そんな中、試験を無事に突破出来た戦治郎と毅は、不合格者達の泣き声のせいで不味くなってしまったカレーをスプーンで突きながら、この様な会話をしていたのであった
因みにこの時、戦治郎は自身の目の前にあるカレーの本来の味と、横須賀で翔と間宮の指導の下本格的な料理の修行を始めたゾアが作ったカレーと味を比較し、ゾアのカレーの方が美味しいなどと思っていたりする。まあ、大日本帝国海軍屈指の料理人である間宮と、神話生物の胃袋すらも掴んでしまう料理を作る翔の2人から指導してもらえば、際限ない向上心と飲み込みの早さを兼ね備えたゾアならばすぐに上達してしまうものなのだから、仕方ないと言えば仕方ない事なのだが……
さて、そうして2人がこれまでの試験の事や、次に行われる予定となっている試験について話をしていると……
「ねぇ、相席してもいい?」
不意に聞き覚えの無い女性の声が2人の耳を打ち、何事かと思った2人が声がした方向へ視線を向けたところ、そこには1人の女性がカレーの乗ったトレイを手に立っていたのであった
女性の姿を確認した2人はアイコンタクトをした後頷き合い、女性に対して相席を了承する旨を伝え、女性は2人に向かって軽く礼を言った後毅の隣に腰を下ろすのであった
「ねえアナタ、さっきの試験のアレは一体どう言う仕掛けだったの?」
その直後、女性は戦治郎に向かって疑いの眼差しを向けながら、先程の試験の事を尋ね……
「仕掛け?んなモン使っちゃいねぇよ、ありゃ全部俺の運の良さ故の事故みたいなもんだ」
「運の良さって……、そんなジャンボ宝くじの1等を連続で当てる様な事と同じレベルの事が、小細工無しで出来る訳ないでしょ……」
戦治郎が女性を真っ直ぐ見据えながらも、やや冗談めかしながらこの様に返答すると、女性はやや呆れながらこの様な事を言い……
「宝くじなら四季折々のジャンボ宝くじの1等と前後賞を、1年間総なめした事あるぞ?」
「嘘でしょ……?」
「おっま……、実はとんでもねぇ金持ちなのか……?」
戦治郎は女性の言葉に対して、ムッとしながらこの様に返答し、それを聞いた女性と毅は、信じられないと言った様子でこの様な言葉をそれぞれ口にするのであった
「んで嬢ちゃん、アンタは俺がイカサマしてるかどうか確かめる為に、相席して来たって言うのか?」
「まあ……、そのつもりだったんだけど……、アナタの目を見てる限り嘘言ってる訳じゃなさそうだったし……」
「まあ、あんなんやられたら誰だってイカサマ疑うだろうな……、結局代打ちの件でイカサマじゃないって証明されてたが……、それでもな~……」
その後、戦治郎が女性に向かってこの様に尋ねたところ、女性は困惑した様子で戦治郎の問いに返答し、彼女の言葉を聞いた毅は苦笑しながら、この様な言葉を口にするのであった
こうして女性の戦治郎に対しての誤解が解けたところで、戦治郎達はこれも何かの縁と言う事で、それぞれ自己紹介と提督を目指す理由を話す事になったのだが……
「お金よお金、私が提督を目指す理由は、提督になったら貰える危険手当とかで沢山お金を貰う為よ」
戦治郎と毅が提督になろうとしている理由を話したところで、
「そっか~……、金の為か~……」
「お前……、それ本気で言ってんのか……?」
彼女の発言を聞いた戦治郎と毅は、その発言の内容に驚き最初はキョトンとしていたのだが、我に返ると戦治郎は少々困った様な表情を浮かべながら、そして毅は不快そうに眉を顰めながら、それぞれこの様な言葉を口にするのであった
「ええ本気よ、私は沢山のお金を得る為に提督になろうと思ってるわ。っと、そろそろ私は行くわ、貴方達も次の試験に遅れない様にしなさいよ?」
戦治郎達の言葉を聞いた紅葉は、この様に返答するといつの間にか空になったカレー皿が乗ったトレイを手に席を立ち、戦治郎達に背を向けて食器の返却口の方へとスタスタと歩いて行くのであった
「あいつマジかよ……、金の為に提督になろうとか……、ついこないだ桂島の提督の事があったばかりだってのに……」
そんな彼女の背中を見送る毅が、渋い顔をしながらこの様な言葉を呟く
さて、ここで毅が桂島の提督について言及したが、実際のところ彼や世間一般の桂島の提督の悪行についての認識には、僅かながらだが差異があったりするのである
その理由は燎が桂島の提督の悪行を世間に公表した際、実際は提督はプロフェッサー経由で世界征服をする為の支援をエデンから受ける為にこの様な手段で資金調達をしていたと言うところを、提督は世界征服に必要な軍資金を調達する為にこの様な悪行に手を染めたと発表したからである
何故この時提督とエデンが繋がっていた事を公表しなかったのかと言えば、もしここで日本海軍がエデンやシャングリラの事を認知している事を公表してしまえば、日本国内にいるエデンと繋がりがあると思われる者達が、エデンの情報を欲しがっている日本海軍に捕まる事や、情報漏洩防止の為にエデンサイドから始末される事を恐れ、国外に逃亡してしまう恐れがあった為、それを防ぐ為に燎は提督の事や転生個体の事を公表する際に、エデンやシャングリラの事を伏せた内容に変更したのである
因みに、護がイオドと協力して提督死亡の知らせを聞いた直後に世界中にばら撒いたあの動画だが、それも上記の理由で提督とエデンの繋がりについては伏せてあったりする
故に真実を知らない毅や日本国民は、桂島の提督は己の欲望の為に悪魔に魂を売った極悪人と認識していたりするのである
「なぁ……、あの女の事どう思うよ……?」
先程渋い顔をしながら呟いていた毅が、今度は困惑しながら戦治郎に向かってそう尋ねたところ……
「ありゃ本気で言ってるな……、だが、それは多分手段に過ぎないんじゃないかと思うわ……。本当の目的はもっと別のとこにある……、俺はあいつの目を見てそう思ったな……」
幼少の頃から色々な人間を見て来た事で養われ、修理屋兼リサイクルショップの経営者として面接を担当した事で研ぎ澄まされた戦治郎の人を見る目は、提督になりたい理由を話す彼女のその双眸から使命感の様な何かを感じ取り、戦治郎にこの様な言葉を口にさせるのであった
その後、2人はしばらくの間紅葉が提督になりたい本当の理由について議論し、戦治郎がふと思い出した様に腕時計を見て次の試験の時間が迫って来ている事に気付くと、2人は慌てて食器を片付けて食堂を後にすると、急いで準備を整えて次の試験会場へと向かうのであった
これが、後にショートランド泊地の提督となり、ブイン基地の提督である敷島 アリス少将と協力し、エデン壊滅の為に出撃した長門屋鎮守府の支援を行い、見事長門屋鎮守府を勝利に導いた宮島 紅葉と戦治郎の最初の出会いなのであった