食堂で昼食を摂った戦治郎達が向かった試験会場には、既に多くの受験者達が集まっており、会場内に流れるアナウンスで自分が呼ばれる事を今か今かと待っていたのであった
戦治郎達が次に受ける事となっている試験の内容とは、部屋の中に設置されたシミュレーターを使って擬似的に艦娘を指揮して、迅速に仮想の深海棲艦を撃滅すると言うものになっている。ここで試されるのは、状況に合わせた艦隊編成を行い、シミュレーターのディスプレイに表示されている内容を瞬時に理解し、迅速に且つ正確に仮想の艦娘達に指示を出せるかどうかである
正直なところ、こんな事を突然やらされても素人が簡単に出来る訳がないのだが、ある程度才覚がある者はそれでも四苦八苦しながらも指揮が執れてしまっていたので、この試験が採用されたのである
因みにこのシミュレーター、戦治郎達が作戦指揮用ディスプレイを実装した事に合わせて今の仕様に改修が行われており、例えるならば以前の仕様がブラウザ版の艦これとするならば、今の仕様は音声入力式のアーケード版艦これと言った感じになっていたりする
そんなシミュレーターの改修を行ったのが……
「綾波っ!!旗艦にありったけの魚雷を叩き込んでやれっ!!!」
現在、受験者の誰もが戦艦や空母ばかりの編成し、昼戦で相手を仕留められずに突入してしまった夜戦で苦戦する中、シミュレーターの中にある膨大なデータの中から横須賀の利根と妙高と綾波、佐世保の長月と皐月、そして元ショートランドの川内を採用して、航空戦を利根の水戦と皐月の対空射撃でやり過ごし、昼砲撃戦は随伴艦をある程度排除してから回避に回って凌ぎ切り、夜戦に突入すると待ってましたとばかりにこうして攻勢に出ている戦治郎と愉快な仲間達なのである
戦治郎が何故この様な編成を行い、この様な戦術でシミュレーター試験に臨んでいるのかと言えば、単純に他の受験者達が戦艦や空母でゴリ押ししようとする中、この編成でクリアしたら面白いんじゃないかと思った事と、相手の旗艦が戦艦水鬼、随伴が戦艦棲姫、フラネ、エリツにフラグシップの駆逐2隻となっており、下手に艦載機を飛ばせば制空権は取れるものの、エリツに艦載機をボコボコと落とされて空母の火力低下を招き、戦艦やツ級のせいで弱体化した空母の攻撃が随伴艦である戦艦棲姫などに防がれ、その隙に行われた戦艦水鬼の砲撃で大破艦が大量に出てしまう可能性があった為である
とまあ、この様な理由でこの艦隊を編成した戦治郎は、妙高と綾波のカットイン攻撃で戦艦水鬼を沈め、残りの4隻で残った随伴艦を駆逐する事で、時間は少々かかったものの完全勝利Sをもぎ取って、この試験を見事クリアしてみせるのであった
その後、戦治郎は直感で編成した艦隊で辛くも勝利を手にした毅と合流し、少し休憩を挟んだ後に最後の試験である面接が行われる会場に向かおうとするのだが……
「痛っ!?」
「おっと悪ぃっ!」
その道中で、毅との話に夢中になっていた戦治郎が、前方にいた男性に気付かずぶつかってしまい、男性を軽くはね飛ばして尻もちをつかせてしまうのであった
「あ~、ホント済まなかった……」
自身の身体に男性がぶつかった時に発生した衝撃で、ようやく男性の存在に気付いた戦治郎が、申し訳無さそうな表情を浮かべながら彼を引き起こそうと手を差し伸べたところ……
「ひぅっ!?」
戦治郎の目測で155cmくらいの身長で、やや幼さの残る顔をしたその男性は、手を差し伸べて来た戦治郎の姿を見るなり、その可愛らしい顔を恐怖で歪めながら短い悲鳴を上げ、直後に懐から財布を取り出すと中から1万円札を2枚を引き抜き、それを戦治郎が差し伸べた手の上に乗せると凄まじい勢いで体勢を立て直して、尋常ではない速度で戦治郎達に背を向けて逃げる様に走り出したのであった……
そんな男性の行動に驚き呆然としていた戦治郎は、我に返ると自身の掌の上にある2万円を握り締め、クラウチングスタートの姿勢を取ると……
「START UP……」
この様な事を呟くと同時に、先程の男性を追いかける為にとんでもない速度で走り出し、その様子を見ていた毅は思わず声を殺して大笑いするのであった……。如何やら怪しげな恰好をした戦治郎がこの様ないらぬ誤解を受けた事が、彼の笑いのツボにクリティカルヒットした様である……
こうして戦治郎と童顔の男性の追いかけっこが始まり、しばらく時間が経過したところでようやく戦治郎が問題の男性の背中を捕捉、直後に一気に加速して男性を追い抜き、彼を追い抜いたその瞬間に戦治郎は3・2・1とカウントダウンしながら彼の胸ポケットに先程受け取った2万円をねじ込むと……
「TIME OUT……」
そう呟きながら、彼の前に立ちはだかるのであった……
その後、戦治郎が何とか彼の誤解を解いたところでようやく毅が追い付いて来て、落ち着きを取り戻した童顔の男性は戦治郎に謝罪した後、簡単な自己紹介を行うのであった
彼、
因みに、勉の先程の行動はいじめを回避する為に自然に身に付いたものらしく、その怪しげな格好と少々漏れ出ていた戦治郎のオーラに恐怖を覚えた結果、彼は戦治郎とぶつかった際トラブル回避の為にあの様な行動に走ったのだとか……
「いや……、あんなんされたら、完全に俺が悪者になっちまうだろうが……」
彼の行動の真相を知った時、戦治郎は思わずガックリと肩を落としながら、この様な言葉を口にしたのであった……
こうして勉と知り合った戦治郎達は、勉と戦治郎達が受ける事になっている面接の会場が離れている事を知ると、お互いに試験に合格出来る様激励し合った後、それぞれの面接会場へと向かって行くのであった
さて、こうして戦治郎と知り合った勉は、戦治郎達と共に無事に試験に合格し軍学校を卒業すると、大湊警備府の提督の補佐官を経験してから大湊警備府の提督に着任し、後に発生する北極で活動していたミ=ゴの大量飛来事件の際、オホーツク海に艦隊を展開して防衛線を引き、佐世保の文月とヴルトゥームのヴル、長門屋の翔とゾア、シゲとクトゥグア、摩耶とアフーム=ザーのフー、暁とショゴス軍団、護とイオドのイオッチ、空とアトラク=ナクアのエイブラムス、舞鶴の由良とグラーキのグラグラからなる神話生物部隊の到着まで、戦線を維持し続けると言う偉業を成し遂げる事となるのであった……