※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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軍学校に向かって抜錨

「潮風が気持ちいいですね、提督♪」

 

「ああそうだな……」

 

時は3月下旬になった頃、横須賀鎮守府を発った輸送船の甲板の上で、自身の頬を撫でる心地良い風を感じた大和が、転落防止の為に設置された手すりに寄りかかる戦治郎に向かってそう言うと、戦治郎はやや不安そうな表情を浮かべながらこの様に返事をするのであった

 

現在戦治郎達が乗っている輸送船は、4月から始まる軍学校に必要な物資を送る為の輸送船の内の1隻で、戦治郎達はこの船が江田島に向かう事を知ると、無茶を承知で同乗させてもらえないかと頼み込んで何とか船長の了承を得て、こうして輸送船に同乗させてもらっているのである

 

「やはり一時的とは言え、長門屋の皆さんと離れるのが不安なのですか?でしたら安心して下さい提督、この大和、提督がお呼びになれば何時でもすぐに駆け付けますからっ!」

 

「あ、いや、不安なのはそこじゃねぇんだ。俺が不安に思ってるのは、あいつらが桂島ん時みたいに滅茶苦茶しないかって事なんよ。っと、変に心配させちまった様だな……、すまねぇな大和……、ありがとうな」

 

そんな戦治郎に対して、大和が気合いの入った表情を浮かべながらそう言うと、戦治郎はほんの僅かに慌てた様子を見せると、すぐに自身が不安に思っている事を告白した後、大和に向かって謝罪と感謝の言葉を口にするのであった

 

この時戦治郎が不安に思っていたのは、長門屋鎮守府建設の為に佐賀県鹿島市に向かった空達についてだったのである

 

空達は現地の状況を確認する為に、横須賀を発ち江田島へ向かう戦治郎達より早く横須賀を発ち、佐賀県へと向かったのである。その為、空達は江田島へ向かう戦治郎達の見送りには参加していなかったりするのである

 

一応、戦治郎は空達の事を心から信頼してはいるのだが、以前彼等が桂島泊地を大改造して艦娘ランドを作ってしまった前科があり、戦治郎はその事がどうも引っかかり、それが先程の戦治郎の態度に思わず出てしまったのである

 

その後、何とか気を持ち直した戦治郎が、江田島に到着するまでの間、時間潰しの為に大和と雑談していると……

 

「お二人共、こちらにいらしたんですね」

 

如何やら戦治郎達を探していたのか、船室から出て来た綾波が戦治郎達を見つけると、そう言いながら1枚の紙を手に2人の下へと歩み寄って来るのであった。そう、彼女も大和同様駆逐艦娘の教官として江田島に向かう事になっていた為、戦治郎達と共にこの船に同乗しているのである

 

「どしたよ綾波、何かトラブルでもあったのか?」

 

「いえ、そういう訳ではないですよ、綾波が戦治郎さん達を探していたのは、綾波達が軍学校にどれだけの期間滞在するのかについて、改めて確認しておこうと思っただけなんです」

 

そんな綾波に向かって戦治郎が不思議そうに尋ねたところ、綾波はこの様に返答した後、手にしていた軍学校に関する事が簡潔に書かれた紙を、戦治郎に手渡して来るのであった

 

さて、ここで戦治郎達が軍学校に滞在する期間について触れておこう

 

入試を見事合格し提督候補生となった者達は、1年の間軍学校に滞在して提督に必要な知識や技術をみっちり叩き込まれると同時に、軍人として恥ずかしくない筋力と体力の持ち主となる為に、その肉体を鍛え上げられる事となっているのである

 

又、軍学校には提督用の入試試験の後に行われた試験を突破し、無事軍に入隊した艦娘候補生達も通う事となっており、彼女達も1年間軍学校で己を鍛え上げ、卒業証書と共に渡される辞令に従って鎮守府や泊地に着任する事となっているのである

 

因みに、艦娘達の着任先を決めるのは、基本全ての日本海軍の拠点に設置されている妖精さん製建造装置であるのだが、どうしても着任したいところがあった場合、元帥相手に直接交渉を行い、元帥から了承を得る必要があったりする

 

何故期間がこんなにも短いのかと言えば、余りにも提督や艦娘の育成に時間をかけ過ぎて、戦況の変化に対応出来なくなる事を防ぐ事と、教官として招く現役の艦娘を1年以上軍学校に縛り付けている訳にはいかないからなど、複数の理由が存在している為、軍学校は1年制となっているのである

 

まあ、提督候補生や艦娘候補生は1年中休みなく軍学校にいなければいけないのかと言えばそう言う訳ではなく、それぞれ2週間程度ではあるが夏休みと冬休みがあり、提督候補生や艦娘候補生はその期間を利用して実家に帰省したり、事前に連絡を入れて鎮守府や泊地へと赴き、インターンシップの様な感じで現場を実体験して己を鍛えたり出来る様になっているのである

 

因みに我らが戦治郎だが、まだ軍学校に入学していないにも関わらず、面接の時にお世話になった提督の皆様方の方から、それはそれは熱いラヴコールの様なインターンシップのお誘いの手紙が届いていたりする

 

尚、その中には雲龍達が所属する舞鶴鎮守府からのものもあり、それを目にした戦治郎は、横須賀の乱の時に見かけた大井の事と、彼女の口から零れ落ちた北上の事を思い出し、その事が妙に心に引っかかったのだとか……

 

「取り敢えず、俺は1年の間協力者と協力して、正体を隠しながら軍学校に滞在するんだったな?」

 

「はい、その通りです。それで普通の候補生の場合、候補生用の寮で寝泊りする事になるのですが……」

 

「寮……、寮は確か……」

 

戦治郎と綾波が、軍学校の滞在期間についてこの様なやり取りを交わし、それに続く様にして候補生の宿泊について話そうとしたところで、2人はこの様な言葉を口にすると、それを合図にでもしたかの様に同時にゆっくりと大和の方へ視線を向けると、そこには心から幸せそうな微笑みを浮かべる大和の姿があった……

 

何故大和がこの様な状態になったかと言えば、それは戦治郎が寝泊りする場所が関係している……

 

そう、戦治郎は身体は女性である戦艦水鬼の身体なのだが、その魂は満31歳の男性のソレなのである……。その関係で戦治郎は提督候補生用の男子寮にも、女子寮にも泊まる事が出来ない状態となっていたのである……

 

この件で困った戦治郎が、横須賀鎮守府にいる知り合いを全て集めて話し合いを行った結果、大和の提案で戦治郎は教官用の寮の大和の部屋で寝泊りする事となったのである……

 

最初は戦治郎もこの提案に困惑していたのだが、大和の厚意を無碍に出来ない事、何かあった時はすぐに協力者を集めて事態に備えられる事、教官用の寮には各部屋に小さいながらも風呂がある事、そして期間中大好きな大和の可愛らしい寝顔を毎日拝めると言う誘惑に敗北Dした結果、大和の提案は認められ戦治郎は大和の部屋に厄介になる事になったのである……

 

因みにこの件、大和と綾波が各国の要人と繋がりがある戦治郎を護衛する為と言う事にし、大和が元帥に対して交渉を行ったところ、すんなりと承諾されたのだそうな……

 

尚、候補生用の寮には精神鍛錬の為にエアコンが付いてない事を毅経由で知った戦治郎は、エアコン完備の教官用寮で寝泊り出来る様にしてくれた大和に、心から感謝したとかなんとか……

 

こうして3人が軍学校生活について話していると、輸送船の速度が段々遅くなっていき、それに気付いた3人は船が目的地に近付いた事を察知すると、それぞれに与えられた部屋に荷物を取りに戻り、再び3人が甲板に集まった頃には輸送船は既に江田島の軍学校の最寄の港に停泊し、荷下ろしを始めていたのであった

 

「如何やら着いたみてぇだな……、んじゃあとっとと軍学校へと向かいますかっ!!!」

 

\はいっ!!!/

 

それぞれ荷物を手にした3人がタラップを通って港に降り立つと、戦治郎が大和達に向かってこの様な事を言い、それを聞いた2人は元気よく返事をした後、3人並んで軍学校へと歩き始めるのであった

 

こうして、戦治郎達の軍学校生活が始まり、そこで戦治郎は多くの大切な仲間達と出会い、その最中に発生した問題に立ち向かった際、余りにも強大な新たなる力を手に入れる事となるのであった……




戦治郎のトイレについては、軍学校内にある多目的トイレを使用する模様
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