※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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初めての合同実習 反省会編

戦治郎達が合同実習を終えたところで正午となった事を告げるチャイムが屋内プール内に鳴り響き、それを合図に戦治郎達提督候補生は教官達の話を聞いた後、合同実習に参加した艦娘候補生達に向かって一礼し、屋内プールを後にすると各々に昼休みを過ごす為に行動を開始するのであった

 

その際、戦治郎は毅に一緒に食堂に向かわないかと誘われたのだが、戦治郎は先約があると告げて毅の誘いを断ると、ある場所に足早になりながら向かうのであった

 

そうして戦治郎が向かった場所、それは戦治郎が学校見学の際に発見し、もしかしたら朝練に使えるのではないかと思って位置を覚えていた、軍学校の敷地内にあるにも関わらず人通りが極めて少なく、人目に付きにくい場所にある砂浜であった

 

戦治郎が砂浜に到着した時、そこには人影一つ見当たらなかったので、戦治郎はフェイスベールを外して近くにあった岩に腰掛けて誰かを待っていると……

 

「遅くなって申し訳ありません、少し仕事の方で手間取ってしまいまして……」

 

「お~、ご苦労さん。なぁに俺もついさっき来たとこだから気にすんな」

 

程なくして、包みを持った大和が急いで来たのか、息を切らせながら岩に腰掛ける戦治郎に向かってこの様に声を掛け、それに対して戦治郎は片手を上げながら大和に労いの言葉を掛け、それを聞いた大和は嬉しそうに笑顔を浮かべながら、戦治郎の隣に腰掛けて手にした包みを戦治郎に手渡すのであった

 

包みを受け取った戦治郎が包みを解くと、中からは2段重ねになった重箱が姿を現し、戦治郎が重箱の蓋を開けたところ、辺りにはそれはそれは美味しそうな匂いが漂い始め、それと同時に戦治郎の目には、食べるのが勿体なくなってしまいそうな程色鮮やかで、とても美味しそうなオカズ達が並んでおり、下の段には綺麗な三角形を形作ったおにぎりが、これでもかと言わんばかりに詰め込まれていたのであった

 

そう、これは大和が戦治郎が起きる頃に合わせて起床し、戦治郎の為だけに作った手作り弁当なのである

 

何故大和が弁当作りなどを始めたのかと言えば、戦治郎の護衛役であるにも関わらず、スケジュールの都合で合同実習の時に顔出し出来なかった大和が、どうにかして埋め合わせをしたいと言ったところ、たまには変装を解いて食事がしたいと思っていた戦治郎が、合同実習がある日はここで食べる為の弁当を作って欲しいと提案、そしてそれを大和が了承した結果なのである

 

大和によくもまあ弁当を作る時間があったものだと思う方がいると思うが、艦娘科は提督科ほど厳しい訓練は行っておらず、提督候補生達がやっている朝練の様なものも、基本的にはオーバーワークになって故障の原因となるからと、艦娘科では禁止とは言わないものの推奨はされていなかったりする為、朝練に参加する戦治郎に合わせて起床する大和には、弁当を準備する時間的余裕があるのである

 

因みに、提督科の訓練が実際に戦場に出る艦娘科の生徒達より厳しい理由は、単純に提督候補生達を更に篩にかけているからであったりする

 

実際、提督と言うものは艦娘よりも必要数がどうしても少なくなり、もし大量に育成して海軍の拠点に着任させたとしても、大体1つの拠点に2人くらい提督がいたら十分その拠点は回せてしまう為、拠点に必要以上に提督を着任させても仕事にありつけなくなってしまう者が出てしまい、そう言った者に限って持て余した時間を使って良からぬ事を企み、憲兵の世話になってその拠点に汚点を残してしまうのである

 

こう言った理由がある為、提督科は提督候補生達を執拗なまでに篩にかけて人数を絞り、この厳しい訓練に耐え切った優秀な候補生達だけを育成、世に送り出す様にする事で、定年などを理由に退役する提督達と代わりとなる提督を輩出し、日本を護る提督の数を維持しながら、海軍内の風紀を保っているのである

 

「おぉ~……、こりゃまた美味そうだな……」

 

「提督の為に、大和が頑張って作ったお弁当です。さあ、遠慮なさらず食べてくださいね♪」

 

「応、そうさせてもらうわ。頂きますっ!」

 

さて、大和の弁当を目にした戦治郎は、大和とこの様なやり取りを交わした後、大和が愛情をたっぷり込めて作った弁当を食べ始め、その弁当の美味しさと変装を解いて食事を行える解放感に、思わず感嘆の声を上げるのであった

 

そうしてしばらくの間、戦治郎が大和の弁当に舌鼓を打っていると……

 

「すみません、遅くなりました~」

 

「あれが戦治郎さんの素顔か……、中々迫力があるな……」

 

「あの火傷痕……、あれを見れば戦治郎さんがどれだけの修羅場を潜って来たかが分かりますね……」

 

「陽炎達から戦治郎さん達はそこらの深海棲艦よりも強い転生個体なんじゃって聞いとったんじゃが……、今の戦場じゃったらそんな戦治郎さんでもこんな酷い怪我をするんじゃね……」

 

恐らく自分用の弁当と思われる物を手にした綾波が、今日の合同実習の際一緒になった磯風達を連れてこの場に姿を現し、戦治郎の素顔を初めて目にした磯風達は、思い思いの言葉でその感想を口にするのであった

 

「おっ!来たかっ!すまんな、余りにも大和の弁当が美味そうだったから、先に食わせてもらってたぜ」

 

「いえいえ、お気になさらずに。それとも、綾波達はもう少し遅れて来た方が良かったですか?」

 

「いや、昼休みには限りあっから、出来りゃ昼休み中に反省会やりてぇから、それこそ気にすんなって話だわ」

 

綾波達の存在に気付いた戦治郎が綾波達に向かってそう言ったところ、綾波がニコニコしながらこの様に返答し、それを聞いた戦治郎は少々困った顔をしながらこの様に答えた後、磯風達と食事を摂りながら今日の合同実習の反省会を始めるのであった

 

そう、綾波達がこの場に姿を現したのは、実習の後戦治郎が今日の反省会を行いたいと言い出し、それを聞いた磯風達が戦治郎ともう少し交流しておきたいと言う事を理由にその意見に賛成、この事を大和に伝えて欲しいと戦治郎が綾波に頼んだところ、自分もその反省会に教官と言う立場で参加したいと申し出て、それを戦治郎が了承したからである

 

因みに、綾波から話を聞いた大和は……

 

「折角提督と二人っきりになれると思ったのに……」

 

などとぼやいていたが、これが戦治郎が提案したものである事を知ると、渋々といった様子でこの件を了承したのだとか……

 

さて、こうして戦治郎達の反省会が始まったのだが、先ず最初に挙がったのは艦娘の接近戦についてであった

 

「今回は上手くいったが、次からはこうはいかなくなるだろうな~……」

 

「今回の件で、艦娘=砲雷撃戦及び航空戦と言う概念が、ものの見事に打ち砕かれたからな……、恐らく次回からは心得がある者達がこぞって得意な得物を持って合同実習に参加するだろうな……」

 

「恐らく私達がやった事は、他の艦種の艦娘候補生達にも知れ渡る事でしょう……」

 

「一応、駆逐艦の皆さんには、接近戦は心得がある人だけやって欲しいと、次の授業の際に釘を刺しておくつもりですね~……」

 

戦治郎と磯風、そして浜風が難しい顔をしながら、今後の合同実習の事を話していると、話を聞いていた綾波がこの様な事を言い……

 

「ああ、そう言や接近戦がOKと知るなり、艦娘候補生達に便所のデッキブラシやラバーカップ持たせる提督候補生がいたっけな……」

 

「あれはちと失礼かもしれんが、正直無様じゃったね……。武器を手にした候補生達は心得が無かったのか武器に振り回されて……、最後はそれで出来た隙を磯風達に突かれて轟沈判定……。幾ら磯風達に対しての対抗手段が欲しかったからとは言え、武器の使い方もよう知らん娘に武器を渡して、磯風達をなんとかせい言うんは酷じゃ思ったわ……」

 

「中には武器を持て余した者が、相手に怪我を負わせる事態になったからな……」

 

「それについては、ホント申し訳ないと思ってるわ……。流石の俺も、まさかこうなるとは思わなかったからな……」

 

それを聞いた戦治郎がその時の事を振り返りながらこの様な事を言い、それに続く様にして浦風が苦笑しながらこの様な言葉を口にし、更に磯風がこの様に言葉を続けたところ、戦治郎が心から申し訳なさそうにこの様な言葉を口にするのであった

 

先程戦治郎が言った様に、綾波から艦娘による接近戦がOKである事が提督候補生達に知らされると、待機中だった多くの提督候補生達が接近戦用の武器になりそうな物を求めて屋内プール内を走り回り、目当ての物を手にした提督候補生達はそれらを艦娘候補生達に握らせ、勝ち星を挙げて来いなどと無茶な命令を下したのである

 

そしてその結果、浦風が言った様に武器の扱いが分からない者達が次々と磯風達の餌食となる中、磯風が言った様な事故が発生してしまったのであった……

 

この件については、武器の心得の有無も確認せずに艦娘候補生達に無茶な命令を下した提督候補生の評価点は大幅に下げられ、事の発端となった戦治郎達も、接近戦がOKである事を前もって知っており、その上で磯風達に心得の有無の確認をしてからこの作戦を実行させていた事、そしてこの奇襲を見事に成功させた事が一応評価された関係で、評価点に影響はなかったものの、この様な事をやるなら事故を防ぐ観点から、少なくとも教官の方には事前に一言入れて欲しいと注意を受けたのだとか……

 

「取り敢えずこの件は後でたっぷり反省するとして、今後の対策について話すべさ。んでおめぇら、何か案はあるか?」

 

今回の実習で怪我人が出た事を思い出し、皆が暗くなってしまったところで、戦治郎が場の空気を変える為に話題変更を実行し……

 

「そうだな……、折角不知火から射撃の極意を教えてもらったのだ、それと磯風達が持つ格闘戦の技術を上手く組み合わせた戦い方を取り入れるのはどうだろうか?」

 

「それは……、本当にそんな事が可能なのでしょうか……?」

 

磯風がすぐさま意見を出し、それを聞いた浜風が疑問を口にしたところ……

 

「一応出来るな、実際不知火の師匠は、接近戦の際は銃剣付きハンドガンを使ったガン=カタで戦えるし、不知火もその戦い方仕込まれてたはずだが……、おめぇらそこら教えられなかったのか?」

 

「ああ、あれはガン=カタ言うんか。それならウチが少し教えてもろうとったんじゃ、ウチは磯風達みたいに武術の心得が無い言うたら、覚えとったら後々役立つから言うて教えてくれたんじゃ」

 

戦治郎は剛が不知火と共に銃剣付きのケルベロスでバッサバッサと敵を斬り捨てる光景を思い出しながらこの様な事を口にすると、浦風がその言葉に反応してこの様な事を言うのであった

 

尚、他の2人にガン=カタの件を尋ねたところ、2人は戦治郎に向かって首を横に振ってみせるのであった。如何やら不知火は射撃については磯風に集中しながらも全員に教えたものの、ガン=カタに関しては武術の心得の無い浦風にのみに教えた様だ……

 

「んじゃあ、浦風は俺が持ってるタブレットに入ってる剛さんのガン=カタに関する動画を見ながらガン=カタの技術を磨くとして、磯風達は接近戦と射撃を上手くスイッチ出来る様に鍛えて行くか」

 

「もし人手が必要だったら、綾波にも声を掛けて下さいね。特に浜風さんには、綾波が教えられそうな事が沢山ありそうですからね」

 

「その時はよろしくお願いします」

 

「その時は大和も皆さんに協力しますね。とは言っても、大和が皆さんに教えられそうなのは、砲撃くらいだと思いますが……」

 

「おお……、まさか大和さんからも稽古をつけてもらえるとは……」

 

「あ、戦治郎さん?ちょっとその動画をウチに見せてもらえんか?不知火のお師匠さんがどんな人か気になるんよ」

 

「おっ、いいぞ~。ちょっと待ってな~……」

 

こうして戦治郎達の初めての合同実習の反省会は終了し、戦治郎達は今後の方針を決めた後食事を済ませ、しばしの間雑談を楽しむと昼休みの終わりを告げるチャイムを合図に解散し、午後からの授業を受ける為に各自教室へと向かうのであった

 

因みに剛のガン=カタ動画を見た浦風は、タブレットの中で次々と繰り出されるその技のキレの凄まじさに驚愕し、これを本当に自身が体得出来るのか不安になりながらも、その研ぎ澄まされた日本刀の様な美しさを持つ技の数々に、強い憧れを抱く様になるのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、大和が仕事で手間取るって珍しいな。何かあったのか?」

 

「それが……、少々成績が危うくて、もしこのままいけば軍学校を追い出されかねない戦艦の艦娘候補生がいまして……、その子を如何にかしてあげられないかと考えていたんです……。その子はとてもまじめで学業面と生活態度に関しては問題ないのですが、実習の方の成績が芳しくなくて……」

 

「ほう……、んで、その艦娘候補生の名前は?」

 

教室に戻る途中、大和が仕事に手間取ったと言っていた事が気になった戦治郎が、大和に事情を尋ねたところ、大和は困った顔をしながら俯いてこの様に答え、問題の艦娘候補生とやらが気になった戦治郎が、再び大和にそう尋ねると……

 

「金剛型戦艦の3番艦である榛名さんです……」

 

大和は暗い表情を浮かべたまま、問題の艦娘候補生の名前を口にするのであった……

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