戦治郎達が昼食を摂りながら反省会を行っていた頃、鎮守府建築に勤しんでいる空達も自分達が作り上げた食堂の中で、各々に好きな席に座って談笑しながら昼食を摂っていた
「お~い、もらって来たぞ~」
翔達食堂組の希望を取り入れて作り上げられた厨房の方から、それはそれは大きなピザを手にしたシゲが、席を確保してくれていた摩耶、シゲ達と食事を摂りたいと言って付いて来たヴェル、摩耶と食事を摂る為に同席を申し出て来た木曾と阿武隈、そして食事中シゲをからかおうと思って同席して来た護の5人に向かって、声を掛けながら近付いていく
「思った以上にでかいな……」
「翔の奴、俺が作った石窯が相当気に入ったみたいでな、かなり気合い入れて作ってくれたみたいだぜ?」
シゲが手にしてるピザを見て少々驚いた摩耶が思わずそう呟くと、シゲはやや得意げになりながらこの様に答えた後、テーブルの上にピザを置いて席に着くのであった
「これだけ大きいと、全部食べきれるか少々不安になるな……」
「それに関しては、しっかり対策練ってあるみたいだわ。ほれ、結構細かくカットしてあるだろ?これくらいなら別府でも問題無く食べきれるだろうよ」
「最悪、余った分は全部シゲが責任持って食ってくれるはずッス、だから細かい事は考えるだけ損ッスよ~」
改めてピザを見たヴェルが不安になりながらこの様に零したところ、シゲがこの様に答えながらかなり細目にカットされたピザを小皿に乗せてヴェルに手渡した直後、護がキシシッと言った調子で笑いながらこの様な事を口走り、刹那にそれを聞いたシゲに無言で頭を小突かれるのであった
こうしてシゲ達の昼食が始まり、シゲ達は翔特製のマルゲリータを頬張りながら、談笑を楽しんでいたのだが……
「そう言えば、空さんの家の入口近くに作られたエレベーターだが……、ありゃ一体何なんだ?」
ふと思い出したかのように木曾がこの様な言葉を口にし、それを聞いた摩耶と阿武隈も木曾に同調する様に頭に疑問符を浮かべ、件のエレベーターの用途を知るシゲ達工廠組は、そう言えば自分達以外にこの事を話していなかった事を思い出し、思わず『あ~……』と言う少々間抜けな声を出すのであった
さて、エレベーターについて気になるところだろうが、恐らくそれ以上に空の家の入口とやらが気になるところだろう……
この空の家と言うのは、今日の作業で作られた工廠に併設された空の居住スペースの事であり、今は無きショートランド泊地の工廠や、横須賀鎮守府の工廠の隅にひっそりと作られたこれまでの居住スペースとは打って変わり、今回の居住スペースは防音性に優れた2階建て家屋が、工廠とドッキングしている様な建物となっているのである。因みに、家の入口は工廠内にある模様……
何故この様な構造になっているかと言えば、長門屋鎮守府の工廠長に正式に任命された空が、工廠内でトラブルが発生した際、すぐに現場に駆け付けられる様にする為なのだとか……
又、二階建て家屋に進化している理由だが、如何やら空は翔鶴と正式に結婚した際、翔鶴と共にこの家で暮らそうと考えているのだそうな……
そんな空の家の入口の隣には、先程木曾が言った通り工廠に2階が存在していないにも関わらず、空の家とも繋がっている様子も無いエレベーターが付いているのである
「あれなんだが……、実は……」
「あのエレベーターは工廠の地下に作る予定である、地下ドックに向かう為のエレベーターなんだ」
シゲがエレベーターの正体について話そうとしたその直後、突然シゲの言葉を遮る様にして誰かが問題のエレベーターの正体について、この様に答えるのであった
突如聞こえた声に驚いた一同が声がした方へと視線を向けたところ、そこには大盛りのかつ丼と大きめの器に注がれた味噌汁、そしてお新香が乗った盆を手にした空が立っていたのであった
如何やら空の耳に先程の会話が届いていたらしく、空はシゲ達以上にその件に深く関わっている自分が、事情を知らない木曾達に分かり易く詳細を伝えようと思い立ち、こうしてシゲ達の席にやって来たのだそうな
その後、空がシゲ達に同席の許可を求め、シゲが代表してそれを了承したところ、空は手にした大盛りかつ丼定食をテーブルに置きながら護の隣の席に腰を下ろし、地下ドックの件について話し始めるのであった
さてこの地下ドック、何の為に作られようとしているのかと言えば、それは戦治郎がクトゥルフから受け取った出版版ネクロノミコンと、アメリカ海軍海軍は現在保有するホーンド・サーペントが深く関わっている
そう、戦治郎達はこの出版版ネクロノミコンを使用して、ホーンド・サーペントと同じ機構を持つ長門屋専用の艦艇を作ろうと考えており、この地下ドックはその艦艇専用のドックとして作られる予定となっているのである
「ああ、だから工廠は海に近い場所に建てられたんですね」
「その通りだ、そもそも、態々地下を長々と掘って海に繋げる道理は無いだろう?」
合点がいったと言った様子で阿武隈がそう言うと、空はタブレットを操作しながらこの様に返答し、目当てのデータを見つけた空は、それをディスプレイに表示させると少しテーブルの上を片付けた後、タブレットを木曾達が見易い場所へと置いて、表示されている画像の解説を始めるのであった
この空のタブレットに表示されている画像こそが、戦治郎達が作り上げようと考えている艦娘支援用工作戦艦の設計図なのである
そこには艦橋を取り払い、3連装砲を巨大な単装砲に換装し、至る所にCIWSを装備した実艦の大和と武蔵の様な戦艦が、飛行甲板のド真ん中にイージスシステムに使われていそうなレーダー群が取り付けられた艦橋が取り付けられた信濃を左右から挟み込んだ様な姿をした3胴戦艦が描かれており、それを見た摩耶が何故態々飛行甲板に艦橋を付けたのかと尋ねたところ……
「そこ、飛行甲板じゃないんッスよね~。この図面のここ……、よ~く見て欲しいッス」
護がこの様に答えながら件の飛行甲板の辺りを拡大して指差し、摩耶達が護の指先に意識を集中させたところ、そこには小さな四角形が列を形成しながらビッシリと描かれていたのであった……
「おい護……、これってまさか……」
「多分木曾が考えてる奴で正解ッス、これぜ~んぶVLS……、ミサイルの発射口ッス」
「全部っ!?これ全部ミサイルの発射口って言うのかっ?!」
「そうッスよ~、艦橋から前の方に8基64セル、後ろの方にも同じく8基64セルの計128セルあるッスよ~」
護の言葉に木曾と摩耶が呆然とする中、摩耶達の様子など気にも留めず空が話を進めていく……
この戦艦、これだけミサイルが撃てるにも関わらず、艦種は艦娘支援用工作戦艦と呼ばれている訳だが、一体何処に工作艦の要素があると言うのだろうか……?
その答えは、両サイドの戦艦の艦橋があった部分にある。本来戦艦の艦橋があるべきその場所には、それはそれは大きなクレーンが取り付けられているのである
又、この戦艦の3つの艦首下部には大きな乗り込み口が備わっており、船内には大型の資源保管庫、食堂、食糧保管庫、医療施設、工廠、補給施設までもが備え付けられているのだとか……
「凄い……、まるで洋上を移動する要塞みたいな船ですね……」
「そうだ、これは阿武隈が先程言った様に、洋上を移動する要塞がコンセプトとなっているんだ」
「例の魔道書のおかげで、この船は燃料無しで動けるもんだから、おめぇらを乗せて移動すりゃおめぇらが移動で疲労する事も無くなるし、かなりの燃料削減になるからな。それにこの武装ならおめぇらの援護も問題なくこなせるだろうよ」
空の話を聞いた阿武隈が思わずこの様な事を呟いたところ、空が阿武隈の言葉を肯定する様にこの様な事を言い、シゲがそれに続く様にしてこの様な言葉を口にするのであった
「そいつぁスゲェなっ!!んで、こいつは何て名前なんだ?」
シゲの言葉を聞いた摩耶が、感激しながらこの艦艇の名を空達に尋ねたところ、空達工廠組は苦笑を浮かべながらアイコンタクトを交わし……
「これは戦治郎さんが考えた名前なんだけど……」
ヴェルが苦笑したまま、この様に前置きし……
「この工作戦艦の名は、『大黒丸』だそうだ……」
それに続く様にして空がこの艦艇の名を答えたところ、興味深げに前のめりになりながら空の言葉を聞いていた摩耶達3人は、空の口からまるで漁船の様な名前が出て来た瞬間、思わずつんのめる様にしてテーブルに突っ伏してしまうのであった……