※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

468 / 655
強硬派の拠点(笑)

空達が長門屋鎮守府の食堂で大黒丸に関する話をしていた頃、時を同じくして佐賀県武雄市にあるとあるマンションの一室で、今しがた起きたばかりなのか、とある人物がモゾモゾとベッドから出ると、欠伸を噛み殺しながら身体を解す様に伸びをするのであった

 

その後、その者はバイトから帰った時に回収し、テーブルの上に置いておいた新聞を手に取り、その内容に目を通すと……

 

「如何やら件の鎮守府の建設は、順調に進んでいる様ね……。以前鎮守府建設の邪魔をしていたデモ隊、もうちょっと頑張ってくれてたらこっちも助かったのだけど……」

 

とある記事を読み終えたところで、思わずこの様な事を呟くのであった……

 

「しかし、リコリス様の命令で佐世保鎮守府を探りに来たところで、まさか近場に鎮守府が出来るなんて……。しかもその鎮守府の名前があの忌々しい海賊団と同じ長門屋と来てるし……、ホント嫌になるわ……」

 

その者は読み終えた新聞を片付けると、この様な事をぶつくさと呟きながら着替えを始めるのであった

 

そんな事を呟くこの者は、見た目こそ普通の人間とそう大差の無い容姿をしていたが、ある部分が決定的に人間離れしていたのであった

 

透き通る様な白い肌、有り得ないくらい長く美しい白髪、たわわに実った立派な乳房……、ここまでならまだ何とか頑張れば人間であると言い張れるところなのだが、まるでルビーの様に赤く輝く双眸と、頭部の左右から生えた2本の太く短い角が、この者が普通の人間では無い事を証明していたのであった……

 

そう、この者は人間ではなく深海棲艦、それもそれなりに実力を持った姫クラスの深海棲艦である中間棲姫……、それもハワイなどがある中部海域にて、戦治郎達が戦い打ち破った飛行場姫の右腕だったあの中間棲姫なのである……

 

何故彼女が佐賀県の武雄市にいるのかと言えば、それは彼女が飛行場姫の敗北を知るなり、ミッドウェーを放棄し部下達を連れて強硬派深海棲艦の総本山であるアメリカに戻ったところまで遡る……

 

 

 

 

 

ミッドウェーを放棄してアメリカに戻った中間棲姫の報告を聞いたリコリスは、それはそれは激しく怒り狂い、先程中間棲姫が連れて来た部下達を率いて、ミッドウェーを奪還する様にと彼女に命令を下し、リコリスに逆らえない中間棲姫はその命令に渋々と言った様子で従い、すぐさま部下を率いてミッドウェーに向かうのだが……

 

\ギシャアアアァァァーーーッ!!!/

 

\テケリ・リッ!!テケリ・リッ!!!/

 

\……ッ!!!/

 

「奴等をこれ以上このミッドウェーに近付けさせるなっ!!!ホーンド・サーペントも神話生物達に続いて突撃せよっ!!!」

 

\了解っ!!!/

 

「俺達も負けてられないなっ!!!穏健派連合も行くぞおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

\おおぉぉぉーーーっ!!!/

 

彼女達がアメリカに戻っている間に配備された神話生物達や、戦治郎達のおかげでホーンド・サーペントと言う凶悪な力を得たジョシュア達アメリカ海軍、そしてリチャードの指示でミッドウェーに配備された穏健派連合の転生個体達の猛攻を受け、この戦力でのミッドウェーの奪還は無理だと判断した彼女は、部下の多くを失いながらも這う這うの体でアメリカに帰還するとこの事をリコリスに報告、ミッドウェー奪還は諦めるべきだと進言するのであった……

 

それを聞いたリコリスは中間棲姫がミッドウェーから戻って来た時以上に怒りを露わにし、執務室内にあるあらゆる物に当たり散らし、何とか落ち着くと中間棲姫に向かってこの様な命令を出すのであった

 

「中間棲姫、貴方にはミッドウェーを奪われた件と今回の件の責任を取ってもらう為に、単身で最も艦娘を保有している日本に向かい、日本海軍の内部事情を探ると共に、可能であれば奴等の作戦の妨害の為の破壊工作を行ってもらうわ」

 

「日本の偵察ですか……?私としては、現状最も脅威となっている穏健派の連中の偵察をした方が、よっぽど効果的なのではないかと思うのですが……」

 

「ダメよ、あそこは潜り込むのは容易だけど、リチャードとか言う奴が恐ろしく有能で、以前送り込んだスパイが2時間もしない内に正体がバレて、ガダルカナルから叩き出されていたわ……。しかもその件が原因で、かなりスパイに対しての警戒が高まっているのよ……」

 

「そう言う事ですか……」

 

リコリスの命令に疑問を覚えた中間棲姫が、リコリスに向かってこの様に尋ねたところ、リコリスはうんざりした様子でこの様に返答し、それを聞いた中間も肩を落としながらこの様に返答し、その命令に従う事にするのであった……

 

その後、中間はリコリスから資金としてかなりの量の金塊と、正体がバレない様にする為の変装セット、そして恐らく使う事になるだろうと準備された偽造した身分証明を受け取ると、アメリカ海軍の防衛網を何とか掻い潜って日本に向かい、横須賀の乱のどさくさに紛れて日本に上陸すると、早速変装して資金調達の為に金塊を換金し、そうして得た日本円で買ったコンビニで売られている新聞や最寄りの図書館、拠点を構えるまで寝泊りしていたホテルのテレビ、ネットカフェのパソコンなどを用いて情報収集を開始するのであった

 

ここで中間は集めた情報から、日本海軍の本拠地である横須賀に潜入するのは流石に無謀だと判断し、戦治郎達の働きによって拠点としての機能を失った桂島泊地に次ぐ、もしくはそれと同等の実力を持つ佐世保鎮守府に目を付け、拠点を構えた後はそこを重点的に調べる事にするのであった

 

この時、幾ら佐世保鎮守府を調べるからと言って、佐世保市内に拠点を構えていてはすぐに自分の事がバレ、最悪始末されてしまうのではないかと考えた中間は、怪しまれる可能性を可能な限り抑える為に佐世保市から離れた場所に拠点を構え、そこから佐世保に定期的に向かい情報収集しようと考えるのであった

 

そんな時、中間は佐賀県の鹿島市に新たに鎮守府が建てられる事になったと言う情報を入手すると、ついでにそこの偵察も行おうと思い立ち、作戦実行のし易さ以外にも交通の便や生活のし易さなどを考慮した結果、佐賀県の武雄市に拠点を構える事にしたのであった

 

因みに、拠点を構える場所の候補として伊万里市も挙がっていたのだが、如何せんこの時点では移動手段が鉄道かタクシーしか無かった中間にとって、伊万里市から鹿島市に向かうのはかなり面倒であった為、鉄道で佐世保市に向かう事が出来てタクシーで伊万里市からより安く鹿島市に向かえる武雄市に軍配が上がったのである

 

そう言った理由で武雄市に拠点を構える事にした中間は、偽造した身分証明と金塊を換金して得た資金を使ってマンションの一室の購入、その後そこの住所を基に市役所での各種手続きを済ませ、更には近隣の住人に1日中部屋にいる事を不審がられる事を避ける為にバイトを探し、何とか深夜営業のスナックバーのバイトに就くと、普段はスナックバーで客の接待をしながら情報収集を行い、休日は佐世保市へと赴き佐世保鎮守府に関する情報収集を行ったり、バイトの時に入手した情報の真偽の確認の為に行動すると言う生活を送る事となったのであった

 

 

 

 

 

「さて……、と……。それじゃそろそろ買い出しに行きますか……」

 

着替えと身支度を済ませた中間はそう呟くと、玄関に置いている角が隠せる様に細工したバイク用のハーフヘルメットを手に自室を出て、バイトの合間に取った普通自動車免許が発行される日と同じ日に納車される様に購入した原付に跨ると、手にしたヘルメットを被って目的地である最寄りのスーパーに向けて原付を発進させるのであった

 

因みに、原付を得た事で鹿島市へのアクセスは楽にはなったものの、佐世保市に向かう時は相変わらず彼女は鉄道を利用していた。武雄市から佐世保市まで、原付で向かうには流石に距離があり過ぎるからである……。尤も、それも彼女が車を購入するまでだが……

 

そんな彼女が、問題の鎮守府に自分がこの様な生活を送る羽目になった原因である戦治郎達が着任する事を知る事となるのは、まだまだ先の話である……

 

またその頃には、彼女同様何かしらやらかして左遷された者や、拠点を失った事をリコリスに知られる事を恐れて逃亡して来た者、実力はあるものの与えられた任務をサボる為に中間のマンションに住み着く者などが集まったりするのだが、それもまだ少し先の話であった……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。