※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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涙の理由と反撃の狼煙

(そういやミッドウェーの時も、大和の事をこうやって慰めてたっけな~……。あの時の大和は、理想と現実の乖離と周囲からの重圧、それに自身の無力さを実感して泣いてたっけか……。もしかしたら、大和は榛名のいじめの事に気付いてて、それに耐える榛名を俺と会う前の自分と重ねちまったのかもな……。だったら大和が榛名の事気にかけてたってのも、何か納得しちまうな……)

 

そんな事を考えていた戦治郎が、榛名を慰め始めてからしばらく時間が経過したところで、何とか落ち着いた榛名が礼と謝罪を述べながら戦治郎から離れると、戦治郎は荒ぶる自身の心を榛名に悟られない様細心の注意を払いながら何とか静め、気にするなと榛名に向かって一言言った後、少々酷な事をすると自覚しながらも、榛名に自分が受けているいじめの事を何故誰にも相談しなかったのか、どうして双子の妹である霧島にも黙っていたのかについて尋ねるのであった

 

「それは……、榛名が少し我慢していれば、きっと彼女達もいじめは無意味な事だと気付いて、榛名に対するいじめを止めてくれると思っていたからです……。そしていじめの事を霧島に黙っていたのは、その……、霧島はああ見えて怒ると凄く怖いんです……。そんな霧島にいじめの事を相談したら、きっと霧島は凄く怒って……、その……、大変な事に……、そう、とても大変な事になってしまう様な気がしたので……」

 

それに対して榛名は、俯きながらいじめの事を誰にも相談しなかった理由を口にし、それに続く様にして霧島にもいじめについて黙っていた理由を話すのだが、霧島の話になった途端、榛名は俯いたまま視線を泳がせ、発する言葉の内容もややしどろもどろになってしまうのであった……

 

尚、この事が少々気になった戦治郎が、後に大和に頼んで霧島の事を調べてもらったところ、如何やら霧島は反抗期くらいの頃に所謂チームとやらに所属し、戦治郎と出会う前のシゲがやっていた事からバイク要素を取り払った様な事を、毎日の様にやっていたのだとか……

 

この事実を知った戦治郎は……

 

「これ、やんちゃとか言うレベルじゃなくね?病院送りにした野郎の数が3桁超えてるって、相当な危険人物じゃね?霧島の奴よく合格出来たな……」

 

思わずこの様な言葉を口にするのであった……

 

因みにこんな霧島が軍学校に受かった理由は、今の彼女はこれまでの行為を反省してしっかりと更生しており、佐世保鎮守府のエースである金剛の実の妹であり、軍学校に来る前から金剛から直々に手解きを受けていた事が判明し、これなら下手に刺激しなければ、活躍が期待出来ると判断された為なんだそうな……

 

「いじめに耐えていれば、いつかいじめられなくなる、なぁ……。榛名……、そんなおめぇに残念な知らせがあるんだ……」

 

榛名がいじめについて黙っていた理由を聞いた戦治郎は、そんな榛名の期待を裏切ってしまう様な気持ちになり、申し訳なさそうな表情を浮かべ、自身の後頭部をワシワシと掻きながら、先程の榛名の艤装の修理の際、艤装の動力部にまで細工がしてあった事と、それに気付かず自主練を続けていた場合、榛名がどんな目に遭っていたかについて、黄泉個体の事を少々ぼかしながら榛名に伝え、それを聞いた榛名は、とても信じられないと言った表情を浮かべながら、呆然としてしまうのであった……

 

「動力部にまで細工するって事は、相手はおめぇを殺したいくらい憎んでいるか、或いは艤装のこの小さな動力部の爆発は大した事無いものだろうとか思ってた、只の超極絶クソ馬鹿野郎だったかのどっちかだな……」

 

「そんな……、どうして……、どうして榛名はそんな事をされなければ……」

 

戦治郎の言葉を聞いた榛名が、その身をプルプルと震わせながら、再びその双眸に涙を溜めながら、何とか言葉を紡いだその直後、不意に榛名の頭に戦治郎の手が乗せられ、その温かい手はそれはそれは優しく榛名の頭を撫で始め……

 

「おめぇのいじめの件、俺は確かに聞いた。それでおめぇがとんでもなく苦しんでいる事を知った、だから俺はそんなおめぇを助けたいと、力になってやりてぇと思った。そんな俺がそう思った以上、おめぇが幾ら嫌だと言っても、俺は何としてでもおめぇを助けようと動く。だからそんな顔すんな、このいじめ……、ぜってぇ俺が何とかしてやっからっ!!!」

 

榛名の頭を撫でる戦治郎は、突然の出来事に驚き戸惑う榛名に向かってそう言い放つと、歯を見せる様にニカッと笑ってみせるのであった

 

この言葉を聞いた榛名は、結局感極まって戦治郎に飛びついて泣き出し、そんな榛名を戦治郎は再び優しく抱き締めながら落ち着かせ……

 

「今日会ったばかりだと言うのに、みっともないところをお見せして申し訳ありません……」

 

「気にすんなって、それよりも、もう大丈夫か?」

 

何とか落ち着きを取り戻した榛名が、戦治郎に向かって申し訳なさそうに、そしてやや恥ずかしそうにしながら謝罪の言葉を述べ、それを聞いた戦治郎が気にするなとばかりに手をヒラヒラさせながら、榛名に向かってこの様に尋ねると……

 

「はいっ!榛名はもう大丈夫ですっ!!」

 

榛名はさっきまでとは打って変わって、元気よくこの様に返答するのであった

 

その後、戦治郎は改めて榛名に対してこの問題を解決すると約束し、それを聞いた榛名は戦治郎に向かって一礼しながら礼を述べると、自主練を終えて自室へと戻っていくのであった……

 

「さて……、と……。おめぇら、話は聞いてたな?」

 

そんな榛名の背中を見送った戦治郎が、一息入れた後そう言ったその直後、先程戦治郎達がいた場所の近くにある、大き目の岩の陰からゾロゾロと人影が姿を現す……

 

「何時から気付いてらしたのですか……?」

 

「俺が最初に榛名を抱きしめた辺りから、ずっとそこにいただろ?」

 

「それ、五十鈴達が此処に来た時からって事じゃない……」

 

「これでもかなり気配を消していたのだがな……」

 

「何ですかその察知能力……、下手な電探より感度がいいじゃないですか……」

 

「これは経験の違いなのかもしれませんね~……」

 

人影の内の1人、戦治郎に差し入れを持って来た大和がこの様に尋ねると、戦治郎は彼女達が盗み聞きをしていた事が気に入らなかったのか、僅かに唇を尖らせながら返答すると、それを聞いた五十鈴、那智、鹿島、綾波が続け様にこの様な言葉を口にするのであった

 

大和は兎も角、何故五十鈴達がこの浜辺にいるのかについてだが、それは彼女達が綾波から戦治郎が此処で自主練をしている事を聞き、鹿島を除く者達は教官任務で鈍りそうになる身体を鍛えるついでに、割とヘビーな内容となっている戦治郎の自主練を出来る限りサポートする為に、軍学校に常勤している鹿島は、話でしか聞いていない戦治郎の実力とやらを、自身の目で確認する為にこの浜辺にやって来たのである

 

こう言った理由があって、大和達はこの浜辺にやって来たのだが、彼女達は浜辺に到着した直後に榛名と抱き合う戦治郎の姿を目撃してしまい、思わずそこの岩陰に隠れて戦治郎達の様子を窺っていたのだとか……

 

尚、その直後の大和の瞳からは、ハイライトが消え失せていたとかなんとか……

 

「あ~……、それは兎も角だ、この件……、教官の皆様はどう思います?」

 

話題を変える為に、戦治郎が大和達に向かって、榛名のいじめの件を尋ねたところ……

 

「気に入らんな……」

 

「少なくとも、そんな事をする様な候補生を、卒業させて鎮守府に送り出す訳にはいかないわね……」

 

「嫉妬でこの様な行動に走る様ならば、きっと現場でも似た様な事をするでしょうからね……」

 

「こんな事、絶対に許されませんっ!絶対に犯人を捕まえましょうっ!!」

 

那智、五十鈴、綾波、鹿島の4人はこの様に答え……

 

「まさか提督の手をここまで煩わせる様な輩がいるとは……、その方達には、大和達が味わった地獄よりも辛く苦しい世界を見てもらわなければいけませんね……」

 

自分の想像を遥かに上回るレベルで行われていたいじめに対して、戦治郎が動かざるを得なくなってしまった事に怒りを覚えた大和は、途轍もなく恐ろしい事を言い出すのであった……

 

「約1名、おっそろしい事言ってるが……、まあいいか。それで俺は榛名に言った通り、この問題を何とか解決しようと考えてる。んで、巻き込む様で悪ぃんだが……、力貸してくれねぇか?」

 

戦治郎がこの場にいる教官達に向かって、こう言って頼み込んだところ、彼女達は戦治郎に向かって静かに頷き返すのであった

 

その後、戦治郎達はこの一件で自主練と言う気分では無くなった為この場で解散し、戦治郎は大和と共に部屋に戻るなり、早速この問題を解決すべく行動を開始するのであった……

 

尚その最中、戦治郎と榛名が抱き合っていたところを目撃した事で、我慢出来なくなった大和が戦治郎にハグをおねだりし、戦治郎がその要望に応えて大和を抱きしめたところ、しばらくの間大和の身体から常にキラキラとした輝きが放たれていたのだとか……

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