戦治郎が榛名と榛名のいじめ問題を解決すると言う約束を交わし、いじめ問題の解決の為に教官達の助力を得る事に成功してから数日が経過したある日の夜、整備科実習棟の中にある榛名の艤装が保管された棚の前に4つの人影があった
「ねえアンタ達、ちゃんと私達が言った通り、あの子の艤装に細工してるんでしょうね?」
「ああ、しっかりバッチリやってるっつぅの……」
「じゃあ何で最近のあの子、あんなに調子がいいのよっ!この間の実習で行われた的当てとか、全弾命中のフルスコアをクラス最速でやってのけたのよっ?おかしいじゃないっ?!」
「っるっせぇなっ!んなモン知るかよっ!!俺達ゃおめぇの指示通りに細工したっつっただろうがっ!!!」
その中の内の2人、戦艦艦娘候補生が整備兵候補生に対してこの様な質問をし、それを聞いた整備兵候補生が鬱陶しそうに返事をしたところ、戦艦艦娘候補生が怒りに任せてヒステリックな怒号を上げ、そんな彼女に怒りを覚えた整備兵候補生が、声を荒げながら彼女の言葉にこの様に言い返すのであった
「アンタ達静かにしなさいよっ!私達がやってる事があの子や霧島、戦艦艦娘以外の誰かにバレたら不味いの分かってるでしょっ!?痴話喧嘩は後でやんなさいよっ!!」
「おめぇも大概だっつの……、っと、ロック解除成功っと……、ほれ、さっさとやる事やってズラかるぞ」
こうして言い争いを始めたカップルに対して、もう1人の戦艦艦娘候補生が静かにするようにと注意を促し、それを聞いたもう1人の整備兵候補生が、ウンザリしながらも榛名の艤装が保管された棚のロックを解除し、榛名の艤装を棚から取り出すとこの様に言葉を続け、それを聞いた言い争うカップルは口論を止め、早速榛名の艤装に細工を始めるのだった
「今回は何処に細工するか、分かってるんでしょうね?」
「砲身と推進部、それに前回失敗した動力部と追加で装弾系だろ?わぁってるっての……」
「幾ら榛名って奴が憎たらしいとは言え、流石にこれはヤバイんじゃねぇか……?」
「どうせ艤装の動力部が暴走しても、艤装がちょっと爆発するくらいなんでしょ?そのくらいだったら別に問題ないでしょ?こっちはあの子をちょっと驚かせる事が出来れば十分なんだし」
「ちょっと爆発って……、これだから素人は……。っつか何時も思うが、バレない様にする為とは言え、こんなくらい実習棟の中でこのちっせぇライト1つで作業するってのは、骨が折れるな……」
榛名の艤装に細工を施す中、4人がこの様なやり取りを交わしていると……
「だったら照明点けりゃいいだろ、こんな感じにな」
不意に戦艦艦娘達には聞き慣れない声が実習棟内に響き渡ると同時に、突然実習棟内の照明が全て点灯し、その光によって榛名の艤装に細工を施す4人と声の主の姿が露わとなるのであった
「え……、何よあいつ……?」
「げぇっ!あいつは提督科の長門じゃねぇかっ!?」
「誰よそれ……、ってか何でアンタ達はあいつに怯えてんのよ?」
「あいつは整備科との合同実習の時、現在開発レシピの中で最高難易度を誇る艦載機を、俺達整備兵候補生に混じって作り上げて、こっちの科に転属しないかって話持ち掛けられるくらい、俺達のとこの教官達に滅茶苦茶気に入られてる奴なんだよっ!!」
「しかもあいつ、おめぇらのとこの教官の大和とデキてるとか噂されてんだぞっ!?実際入試の時も、呉鎮の武蔵に大和と一緒に送迎してもらってたらしいんだぞっ?!」
「あんな変な格好した奴がっ!?嘘でしょっ?!」
「整備科の教官と大和教官とパイプ持ってるって……、じゃああいつがその気になったら、私達この事教官達にチクられて終わっちゃうじゃないっ!!!」
「あ、俺ってそんな風に思われてんのか……、大和と付き合ってるってのは~……、まあ概ね合ってるな、うん」
突然聞こえて来た声の主である戦治郎の姿を確認するなり、榛名のいじめの主犯格である戦艦艦娘候補生2人と、そんな彼女達と交際している整備兵候補生2人が、取り乱しながらこの様なやり取りを交わす中、それを聞いていた戦治郎は暢気にこの様な事を呟き……
「こうなったら……、アンタ達っ!やっちゃいなさいっ!!」
「2人掛かりなら何とかなるでしょっ!?あいつをやっつけて教官達にチクらせない様にしなさいっ!!」
「分かってるっつのっ!!!一々指示すんじゃねぇっ!!!」
「うおおおぉぉぉーーーっ!!!やってやらあああぁぁぁーーーっ!!!」
戦艦艦娘候補生達が整備兵候補生達に向かって、口封じの為に戦治郎に攻撃する様指示を出し、それを聞いた整備兵候補生達が、工具を手に戦治郎に襲い掛かるのだが……
「2人相手は~……、やれん事もないが~……」
その様子を見た戦治郎が、自身の後頭部をガシガシと掻きながらそう呟いたその刹那、突然物陰から1つの影が飛び出して来て、整備兵候補生達の前に立ち塞がり……
「提督に手を上げるなどと言う愚行……、この大和が許しませんっ!!!」
「まあ、こうなるよな……。って事で大和、片方は任せたっ!」
飛び出して来た影の正体である、額に戦治郎お手製の暗視ゴーグルを装着した大和がこう言い放つと、戦治郎は大和に向かってこの様な指示を出し、それを聞いた大和は鋭い目つきで整備兵候補生達を見据えながらお任せ下さいっ!と返事をし……
「どっ……せいっ!!」「はぁっ!!」
戦治郎と大和は、自分達に向かって振り下ろされる工具が握られた整備兵候補生達の腕を全く同じタイミングで掴むと、まるで呼吸を合わせた様に同時に勢いよくその腕を自分の方へと引き寄せ、それによって引き寄せられた整備兵候補生達の腹に、息の合った掛け声と同時に腰と肩の捻りを加えた掌底を叩き込み・・・・・
「ぐはぁっ!?」「がふっ……っ!」
それを受けた整備兵候補生達は、呻き声を上げて地面に倒れ込み沈黙してしまうのであった……
「え……、嘘……、大和教官……?何で教官が此処に……?」
「ってか!生徒に暴力振るうってどう言う事っ!?幾ら教官だからって、そんな事が許される訳ないでしょっ?!この事は校長に報告するわよっ!!?」
突然姿を現した大和を見て、戦艦艦娘候補生の1人はその顔を真っ青にしながら、声を震わせてこの様な事を呟き、もう片方の戦艦艦娘候補生は半狂乱になりながら、自分達の事を棚に上げてそう言い放つ。しかし……
「残念だが大和には、戦治郎の護衛と言う元帥から正式に認められた任務がある都合、戦治郎に襲い掛かったそいつらに対して、暴力による鎮圧も認められているんだ」
「そもそも、そんな事をしたら間違いなく校長に、貴方達は何故こんな時間に整備科実習棟にいたのかって聞かれるんじゃないかしら?」
その直後、大和同様恐らく何処かに身を潜めていたであろう那智と五十鈴が、戦治郎が作った暗視ゴーグルを片手に姿を現し、戦艦艦娘候補生達に向かってこの様な事を言うのであった
大和に続き、他の艦種の教官達まで現れた事と、那智が発した言葉の内容に驚き呆然とする戦艦艦娘達だが、そんな彼女達に更なる追い打ちがかけられる……
「それ以前に、貴方達が今此処でやっていた事は、戦治郎さんのおかげでリアルタイムで校長先生に知られてたんですけどね~」
不意に整備科の校舎側と繋がる通路がある方向から綾波の声が聞こえて来て、その声が聞こえた直後に戦艦艦娘候補生達がビクリと身体を震わせ、慌ててそちらの方へと視線を向けたところ、そこには先程声を発した綾波と鹿島、そして整備科の教官達数名とこの江田島軍学校の校長が、険しい顔をしながらそこに立っていたのであった
尚、その傍には戦治郎の声を合図に、実習棟の照明を点けた戦治郎と仲のいい整備兵候補生3人組の姿もあったのだが、他の面子のインパクトが余りにも強過ぎた為、彼女達の視界には映っていなかった様である……
「おぅおめぇら、俺の右手の先を見てみろや……」
一体何が起こっているのか分からず、愕然とする戦艦艦娘候補生達に向かって、戦治郎がこの様な事を言いながら、榛名の艤装が保管されていた棚の天井の方へと右手を差し向け、彼女達がそれに従う様にそちらに視線を向けたところ、そこには艶消し加工が施された、闇に紛れ易いやや紺色っぽい色をした監視カメラが、死角が出来ない様に複数台設置されていたのであった
「此処以外にも、外に繋がる実習棟の出入口の方にも、これと同じ監視カメラが幾つか設置されててな、おめぇらが夜遅くに此処に出入りしてるとこも、細工してるとこもバッチシ記録されてんだよな~」
「そのカメラを設置する許可を得る為に、大和達が整備科の教官の皆様に今回のいじめの事を伝えたところ、皆さん喜んで許可を出してくれました」
「それどころかカメラ設置の手伝いや、交代制で監視までしてくれましたよね……」
「お前ら……、確かに艤装の動力部は小さいかもしれんが、それが暴走して爆発なんてしようものなら、人間の身体の1つや2つは軽く弾け飛ぶんだぞ?まさかそんな事も知らなかったのか?」
天井に設置された監視カメラを目の当たりにして驚愕する戦艦艦娘候補生達に対して、戦治郎がそう言い放つと、大和と鹿島、そして整備科の教官がこの様に言葉を続けるのであった
因みにこのカメラ、性能は護が作る物には流石に劣るものの、監視カメラとしては恐ろしく高性能で、夜間撮影用の赤外線カメラの他にも、かなり感度が良いマイクと熱源感知機能まで搭載されていたりする
そしてそのカメラの映像は、整備科の校舎に即席で作られた監視室に設置されたスクリーンに映し出され、先程校舎側から現れた者達は戦治郎が登場するまでの間、監視室で待機してそのスクリーンの映像を見ていたのだった
「まさか我が校でこの様な事件が発生していたとはな……、それに気付けなかった自分が、本当に情けなくて仕方が無い……」
「さて、これで言い逃れは出来なくなったな……。おめぇら、覚悟はいいか?」
彼女達の行いを目の当たりにし、悲し気な表情を浮かべながら俯く校長がそう呟き、それに戦治郎がこの様に言葉を続けた直後、屈強な整備科の教官達が一斉に動き出し、彼女達をあっという間に拘束してしまうのであった……
犯人達に対する処分の内容は、次回になると思います~